機動戦士Vガンダム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
機動戦士Vガンダム | |
---|---|
ジャンル | ロボットアニメ |
テレビアニメ | |
監督 | 富野由悠季 |
アニメーション制作 | サンライズ |
放送局 | テレビ朝日 |
放送期間 | 1993年4月2日 - 1994年3月25日 |
話数 | 全51話 |
■テンプレート使用方法 ■ノート |
『機動戦士Vガンダム』(きどうせんしヴィクトリーガンダム、Mobile Suit Victory Gundam)は、サンライズ制作のテレビアニメであり、「ガンダムシリーズ」の1つ。1993年(平成5年)4月2日から1994年(平成6年)3月25日まで全51話がANN系で毎週金曜日17:00 - 17:30に放送された。「Vガンダム」、「Vガン」と略される。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] 物語
宇宙世紀0153年、地球圏を統治している地球連邦政府は形骸化し、宇宙に存在する各サイドは連邦政府の統制を離れた独自の道を歩み始め、各地で紛争が勃発する「宇宙戦国時代」に突入していた。
そのなかでもサイド2に存在するザンスカール帝国はギロチンによる恐怖政治と、救済と慰謝を基調とするマリア主義を掲げて急激に民衆の支持を獲得し、地球に向けてベスパと呼ばれる帝国軍を派遣した。ベスパはヨーロッパの都市ラゲーンを制圧下に置いた後、地球侵攻のための拠点とする。また、ザンスカール帝国への抵抗活動を続けている組織リガ・ミリティアの構成員たちも、それに対抗してヨーロッパで散発的な抵抗を始める。
こうした中、ヨーロッパの都市ウーイッグ近くに存在するカサレリア近辺にてパラグライダーを操っていた主人公の少年ウッソ・エヴィンはベスパのモビルスーツ、シャッコーとリガ・ミリティアに所属する小型戦闘機との戦闘に巻き込まれ、シャッコーに引っかかり取り付いた挙句、パイロットを引き摺り落としてモビルスーツを奪ってしまう。これを発端に、その後ウッソはリガ・ミリティアと共に、数奇な運命をたどることになる。
[編集] 作品解説
2007年時点では、宇宙世紀を舞台としたガンダムの中では最後のテレビシリーズ。宇宙世紀のテーマであるスペースノイドとアースノイドの対立構図は既に終焉したとされており、地球連邦の中央議会も月のフォン・ブラウン・シティに置かれている。
主人公は13歳と従来のガンダムシリーズから更に引き下げられ、主役機Vガンダムのデザインにはカトキハジメを起用、シンプルなデザインながらも合体変形機構を持った玩具性の高いものとなった。また敵モビルスーツもファンに「ネコ目」と呼ばれたカメラアイやビームローター、車輪型のアインラッドといった従来の機構とは一線を画す設定が取り入れられ、敵味方ともにサブフライトシステム無しで飛行が可能となっている。 そしてキャラクターデザインには逢坂浩司を起用しており、他のガンダムシリーズとは違った優しいキャラクターのラインが特徴的で、ストーリーとは直接は関係の無いような細かな人物の動きも豊富である等、本作の描写はガンダムのテレビシリーズにおいては最高峰ともいえる出来である。富野由悠季監督はこれらの部分が本作の救いであったと後日語っている。
物語は明朗活発な主人公ウッソ・エヴィンが幼馴染のシャクティ・カリンや憧れの女性カテジナ・ルースを守るためにガンダムに乗り込み、トリッキーな戦法で敵を打ち負かすという、ある意味シンプルな活劇としての方向付けがなされ、物語序盤はこの形式で通されていた。
しかし、1991年に始まったユーゴスラビア紛争や、宗教などを背景にした民族主義の高まりといった世界情勢を設定に反映させたことや、富野監督の作品作りが徐々に当初の路線から変化していった事などにより、本作のストーリーは従来のガンダムシリーズ同様の難解さを含むようになった。また、序盤ではギロチンが登場して首を切り落としたり、女性だけの部隊「シュラク隊」、上官オリファー、親友オデロ、戦艦に乗艦していた老人達、あまつさえ主人公ウッソの母までもが続々と戦死するという、殺伐とした内容になってしまった。また殺し方もえげつないことこの上なく、ウッソに母親の千切れた生首の入ったヘルメットを持たせる、水着姿の女性兵士をビームサーベルで焼き殺すなど、その凄惨な内容はかつての悲惨さで有名な『機動戦士Ζガンダム』をも上回る。また今作では次回予告でのネタバレが多く、キャラが頻繁に死ぬため「予告で名前を言われたキャラは死ぬ」と言われた(というよりも予告に死ぬシーンが出ていた。)。 それらに加えて、スポンサーからの圧力や富野監督の精神状態等、様々な要因が作中所々に見られる迷シーンを生み出してしまい、物語全体としては混沌とした作品になっていった。だがその混沌とした中に名シーンも多く、それが大きな魅力を放っているのも事実であり、同じ富野由悠季監督作品である『伝説巨神イデオン』『機動戦士Ζガンダム』に連なる、同監督独特の物語には熱狂的なファンも多い。(実際には『Vガンダム』はこれらの作品と異なり、穏やかな終わり方である。)
[編集] 制作の背景
当初は劇場アニメ『機動戦士ガンダムF91』のテレビシリーズ化が予定されていたが、興行成績が振るわなかったため、新たに低年齢層の視聴者の取り込みを目的として企画されたのが本作である。またこの時、既にバンダイがサンライズ買収を予定しており、サンライズ上層部は主力作品であるガンダムの人気を再燃させることで、より有利に買収を行わせようと意図していた。富野監督は後年、この事実を知らずに製作に入った事を述べており、今でもその時のサンライズ上層部からの謝罪は無く、許せないとも言っている。こうした状況の中でアニメの作品論より経営論を優先しすぎた結果、本作は「当時のサンライズのドキュメンタリーである」との表現を監督自身が認めるほど制作現場は追い込まれていた。そして買収相手であり、実質既に親会社であるバンダイの意向によって、より玩具的に見せる為のバイク戦艦やタイヤにまつわる設定が付け足される等、制作における混乱を招いたため、いくつかの迷シーンを生み出すこととなった。
結果として一部のファンの心を掴みはしたものの、主力商品であったガンプラも当初はSDモデルを意図的に排除しており、本来の目的であった低年齢層の取り込みは失敗する。そのため、後番組の『機動武闘伝Gガンダム』はより明確に低年齢層を意識した設定が盛り込まれることとなった。 (監督自身は、『Vガンダム』はガンダムシリーズを壊して終わらせる為の刺客で、それを達成できなかったため、今川氏を推薦して更に既存路線から外れたものを作ってもらったという。)
[編集] 主要登場人物
- ウッソ・エヴィン(声:阪口大助)
- シャクティ・カリン(声:黒田由美)
- マーベット・フィンガーハット(声:白石文子)
- オデロ・ヘンリーク(声:中田雅之)
- カテジナ・ルース(声:渡辺久美子)
- クロノクル・アシャー(声:檀臣幸)
- ファラ・グリフォン(声:折笠愛)
- マリア・ピァ・アーモニア(声:篠原恵美)
上記以外の登場人物に関しては機動戦士Vガンダムの登場人物の項を参照。
[編集] スタッフ
[編集] シリーズスタッフ
- 企画:サンライズ
- プロデューサー:小泉美明、植田益朗
- アシスタントプロデューサー:望月真人
- 原作:矢立肇、富野由悠季
- 総監督:富野由悠季
- キャラクターデザイン:逢坂浩司
- メカニカルデザイン:大河原邦男、カトキハジメ、石垣純哉
- メカニカルデザイン協力:佐野浩敏
- 動画チェック:石井康雄、大谷美樹、流出保
- 色指定:小暮優子、加瀬結起、松本真司、中島紀子、舟田圭一
- 色彩設定:小松佳江、中山昇
- 特殊効果:千葉豊
- 美術監督:池田繁美
- 音響監督:浦上靖夫
- 撮影監督:奥井敦、大神洋一
- 音楽:千住明
- 背景:獏プロダクション、アトリエムサ
- 撮影:旭プロダクション
- 編集:鶴渕友彰
- 効果:松田昭彦
- 整音:大城久典、田中章喜
- 設定制作:川口佳高
- 製作助手:外池葉子
- 演出助手:峯岸功、武井良幸、渡邊哲哉
- 制作事務:小林史枝
- 仕上助手:新垣純子
- 文芸設定:井上幸一
- 制作:テレビ朝日、サンライズ
- 制作協力:電通、創通エージェンシー
[編集] 各話スタッフ
- 脚本:桶谷顕、園田英樹、神戸一彦、富田祐弘、斧谷稔
- 絵コンテ:佐藤育郎、斧谷稔、西森章、江上潔、高瀬節夫、加瀬充子、芦沢剛史、杉島邦久、福田己津央、山本裕介、山口頼房
- 演出:佐藤育郎、江上潔、高瀬節夫、西森章、玉田博、加瀬充子、芦沢剛史、関田修、山本裕介、藤本義孝、武井良幸、渡邊哲哉
- 作画監督:瀬尾康博、西村誠芳、前田明寿、谷口守泰、吉田徹、村瀬修功、逢坂浩司、新保卓郎(現・しんぼたくろう)、板倉和弘、森下博光、さとうけいいち
[編集] 主題歌
- 前期オープニングテーマ『STAND UP TO THE VICTORY ~トゥ・ザ・ヴィクトリー~』
- 後期オープニングテーマ『DON'T STOP! CARRY ON!』
- 前期エンディングテーマ『WINNERS FOREVER -勝利者よ-』
- 後期エンディングテーマ『もう一度TENDERNESS』
- 作詞:浜口司 作曲:安宅美春 編曲:葉山たけし 歌:KIX・S
『WINNERS FOREVER -勝利者よ-』は当初仮面ライダーZOのテーマ曲として作曲されたために歌詞がガンダムよりもむしろ仮面ライダーなどのヒーロー作品を連想させる物になっている。
[編集] 放送リスト
もともとの構成ではVガンダムが初登場するのは第4話の予定であったが、第1話から主人公メカが登場しないことにスポンサーが難色を示したため、Vガンダム初登場を第1話として、第2話~第4話はそれ以前の話をシャクティが回想するという構成になった。また、マーケティング的にはそれほど成功してはいなかったものの、51話という、SD以外のガンダムの中では最も多い話数を記録している(最も話数が多いのは、『SDガンダムフォース』)
- 白いモビルスーツ
- マシンと会った日
- ウッソの戦い
- 戦いは誰のために
- ゴッゾーラの反撃
- 戦士のかがやき
- ギロチンの音
- 激闘! 波状攻撃
- 旅立ち
- 鮮烈! シュラク隊
- シュラク隊の防壁
- ギロチンを粉砕せよ
- ジブラルタル空域
- ジブラルタル攻防
- スペースダスト
- リーンホース浮上
- 帝国の女王
- 宇宙艦隊戦
- シャクティを捜せ
- 決戦前夜
- 戦略衛星を叩け
- 宇宙の虎
- ザンスカール潜入
- 首都攻防
- 敵艦と敵地へ
- マリアとウッソ
- 宇宙を走る閃光
- 大脱走
- 新しいスーツV2
- 母のガンダム
- モトラッド発進
- ドッゴーラ激進
- 海に住む人々
- 巨大ローラー作戦
- 母かシャクティか
- 母よ、大地にかえれ
- 逆襲ツインラッド
- 北海を炎にそめて
- 光の翼の歌
- 超高空攻撃の下
- 父のつくった戦場
- 鮮血は光の渦に
- 戦場の彗星ファラ
- 愛は光の果てに
- 幻覚に踊るウッソ
- タシロ反乱
- 女たちの戦場
- 消える命 咲く命
- 天使の輪の上で
- 憎しみが呼ぶ対決
- 天使たちの昇天
[編集] 関連作品
[編集] 映像作品
2004年にアニメ全話を収録したDVDが発売されたが、初回限定版DVDボックスのブックレットに掲載された富野由悠季のインタビューが「このDVDは、見られたものではないので買ってはいけません!!」と言うタイトルであったため、衝撃を受けたファンもいたと思われる。富野氏は良くこのような「商売人なら絶対やらないような発言」を行うので、アニメ業界人の受けは良くない。なお富野は同様のコメントを『機動戦士Ζガンダム』のDVDにおけるインタビューでも発言している。
[編集] 漫画
他のガンダム作品と同様、本作も漫画雑誌コミックボンボンにおいて漫画化がなされている。作画は岩村俊哉。ただし、アニメにおけるシリアスな雰囲気はほとんど排除され(後半はシリアスにならざるを得なかったが)、半ばギャグ漫画的な展開と破天荒な行動を取るウッソ他のキャラクター等が描かれるこの漫画作品には、一部の好事家の人気が集まっている側面もある。ちなみにカテジナが登場せず、最後の敵は姉を殺されて復讐の鬼と化したクロノクルであった。また、ウッソを守って死んでしまうオデロの最後の言葉やウッソと父ハンゲルグの親子の絆など、名場面も存在する。
サンライズ公認のスピンアウト作品として、長谷川裕一作の『機動戦士Vガンダム外伝』がある。本作で、ウッソは後に長谷川裕一の手に寄る『機動戦士クロスボーン・ガンダム』にも登場するグレイ・ストーク或いは「木星じいさん」と名乗る老人と遭遇する。
また直接関係は無いが、ガンダムエースにて連載中の『クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人』に当作品のキャラが登場し、『機動戦士クロスボーン・ガンダム』と当作品の間を繋ぐ物語にもなっている。
さらにそれらとは別にことぶきつかさの手による『いけ!いけ!ぼくらのVガンダム!!』がある。こちらは原作のエピソードをパロディにした完全なギャグ仕立てとなっているが、ガンダムファンだけではなく業界内にも多大な影響を与えた。エヴァンゲリオンで知られる庵野秀明もこの作品の大ファンで、自身の代表作の1つ『トップをねらえ!』のCD『トップをねらえ! 響綜覧』に収録されている台詞集の中で白石文子に『いけ!いけ!~』でのマーベット・フィンガーハットによる名言集をオマージュで挿入させるほどである。尚、この作品でカテジナ・ルースを「カテ公」と呼んだ事から、一部のファンからこの愛称(?)が定着するようになるなど、『Vガンダム』という作品に対して貢献することとなった。
[編集] 小説
富野由悠季監督により著述された全5巻の小説が角川文庫より刊行されている。こちらにはテレビシリーズのV2ガンダムに相当するものとしてVガンダムのミノフスキードライブ装着タイプであるセカンドVガンダムが登場している。『機動戦士ガンダムF91』で出てきた殺人機械バグが登場したりするなど、原作とは異なる物語である。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
テレビ朝日系 金曜17時台前半 | ||
---|---|---|
前番組 | 機動戦士Vガンダム | 次番組 |
(再放送枠) | 機動武闘伝Gガンダム |
ガンダムシリーズ (カテゴリ) | ||
シリーズ一覧: | ガンダムシリーズ一覧 - ゲーム作品一覧 - SDガンダム | |
世界観: | 宇宙世紀 - 未来世紀 - アフターコロニー - アフターウォー - 正暦 - コズミック・イラ - SDガンダム | |
ガンダムシリーズの映像作品 | ||
テレビシリーズ: | 機動戦士ガンダム - Ζガンダム - ガンダムΖΖ - Vガンダム - Gガンダム - ガンダムW - ガンダムX - ∀ガンダム - ガンダムSEED - SEED DESTINY - SDガンダムフォース | |
OVA: | 0080 - 0083 - 第08MS小隊 - Endless Waltz - MS IGLOO - SEED STARGAZER - SD外伝 ジークジオン編 - - GUNDAM EVOLVE | |
劇場版: | 逆襲のシャア - ガンダムF91 - G-SAVIOUR - GUNDAM THE RIDE - グリーンダイバーズ - SD外伝 聖機兵物語 | |
ガンダムシリーズの劇中項目 | ||
劇中項目一覧: | 人物一覧 - 機動兵器一覧 - 艦船及びその他の兵器一覧 - 用語一覧 | |
テンプレート |