沖雅也
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沖 雅也(おき まさや、1952年6月12日-1983年6月28日、本名:日景城児、旧姓:楠)は、大分県別府市出身の俳優である。大分県立大分舞鶴高等学校中退。
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[編集] 来歴
1968年、日活映画「ある少女の告白・純潔」で俳優デビュー。「金メダルへのターン!」(1971年)、「キイハンター」(1972年)にセミレギュラー出演するなど、気鋭の若手として注目を浴びる。初期はアイドル的な人気であったが、1972年後半頃から大人の役者への脱皮を試みる時期となり、1973年に必殺シリーズ(朝日放送)第2作「必殺仕置人」の棺桶の錠役に抜擢。山崎努、藤田まことらとの共演で脚光を浴び、2年後(1975年)のシリーズ第6作「必殺仕置屋稼業」にもレギュラー出演。棺桶の錠とはガラリと印象の変わった冷徹な殺し屋・市松を演じきって、その評価を更に高めた。そして日本テレビ系列の人気テレビドラマ「太陽にほえろ!」に滝隆一(スコッチ刑事)役で出演し、爆発的な人気を得ることとなる。
「太陽にほえろ!」では、スコッチ刑事として2期に分けて出演していた。第1期は勝野洋演じるテキサス刑事の後任として1976年9月から登場し、1977年3月までの約半年間出演後、転勤という形で一旦降板。その後、同じく日本テレビ作品である「大追跡」や「俺たちは天使だ!」への出演を経て、「太陽-」の視聴率が低迷気味となっていた事からテコ入れの必要を感じた制作陣からの要望に応じ、1980年3月に3年ぶりのレギュラー復帰となった。しかし、他にもレギュラー番組を抱える過密スケジュールに加え、ノイローゼ・躁鬱病の症状が出ており、1981年4月に東名高速道路・都夫良野トンネル付近で単独交通事故を起こし、身体的には軽症で済んだが2週間ほど入院、「太陽-」は6週分休演する事態となった。6月放映の第463話から復帰し、3ヶ月間は出演を続けるが、抑うつ剤の副作用に悩まされており10月以後再び長期休演となり、このため最終的には翌1982年1月に短期復帰し病死という形で劇中から降板することになったが、その頃にはとてもテレビ出演できるような状態ではなかったという。この当時は現在よりも心の病に対する認識が一般的にまだ一段と低く、週刊誌・ワイドショー番組などでの報道も「ノイローゼ」と言う言葉のみで語られる事がほとんどであり、様々な憶測記事も飛び交った。
1983年6月28日、『おやじ、涅槃でまっている』という遺言を残して新宿京王プラザホテルの最上階(47階)より飛び降り自殺、31歳の若さでこの世を去る。
死後20年以上経った現在でも熱烈なファンが多数おり、墓に花を手向けていく者も少なくない。
[編集] エピソード
- 趣味は盆栽。「太陽にほえろ!」スコッチ刑事も自宅に帰ると、こよなくサボテンを愛する孤高な刑事役と言う設定であった。クールな役どころを演じることが多かったが、実際には非常に明るく「俺たちは天使だ!」のキャプテン役そのままの性格だったという。
- 「太陽にほえろ!」や「必殺仕置人」では、最大限スタントを使わず、数々の激しいアクションを自分でこなしていた。俳優としての高いプロ意識の表れであろうが、この完璧主義者的な性格が所謂ノイローゼの要因になった、とも言われている。
- 生前から、ガラス工芸作家ルネ・ラリックの作品コレクターとしても有名で、ワイドショーのスターのお宅訪問企画で所蔵品の一部が紹介されたこともある。没後に開かれたラリックの作品展で、沖のコレクションが出品されたこともあった。
- 遺書にある「おやじ」とは、義父であり所属事務所社長でもあった日景忠男の事である。日景は、十五歳で家出同然に上京し、職を転々としながら荒んだ生活を続ける沖を、養父として公私に渡って面倒を見ていた。
- 沖の飛び降り自殺は、高層ビルの安全管理が見直されるきっかけとなった。それまで比較的自由に行けたビル屋上は、これ以降厳重に閉ざされ管理されるようになっている。
[編集] 公表された遺書内容
『今・・・
プラザホテル様へ 大変申し訳なく、お許し下さいませ。
つかこうへい様 あなたの名、つかを使いし僕をゆるせるものならおゆるし下さい。
人は病む。いつかは老いる。死を免れることはできない。
若さも、健康も生きていることもどんな意味があるというのか。
人間が生きていることは、結局何かを求めていることにほかならない。
老いと病と死とを超えた人間の苦悩のすべてを離れた境地を求めることが
正しいものを求めることと思うが、今の私は誤ったものの方を求めている者
おやじ、涅槃でまっている。』
*「人は病む」以後の文はホテルの部屋に常備の聖書から引用された一文であったことも発表されている。
[編集] 出演作品
[編集] 映画
- ある少女の告白・純潔 (1968年、日活) - 近藤徹役
- 男の世界(1971年、日活) - 緒方修役
- 高校生無頼控(1972年、東宝) - 村木正人役
- ザ・ゴキブリ(1973年、東宝・石原プロモーション) - 橋本役
- 白熱デッドヒート(1977年、東宝) - 島本三郎役
- 惑星大戦争(1977年、東宝) - 室井礼介役
- ブルークリスマス(1978年、東宝) - 原田役
- 女王蜂(1978年、東宝) - 多門連太郎役
- 火の鳥(1978年) - ウラジ役
- 乱れからくり(1979年、東宝) - 馬割朋浩役
- 地球へ…(1980年、東映アニメ映画(原作:竹宮惠子)) - キース・アニアン役
- 最初で最後の声優挑戦
- 古都(1980年、東宝) - 竜助役
[編集] テレビ
- 高校生ブルース クラスメイト(1971年、日本テレビ)
- 金メダルへのターン!(1971年、フジテレビ)
- さぼてんとマシュマロ(1971年 - 1972年、日本テレビ)
- だから大好き!(1972年、日本テレビ)
- 1・2・3と4・5・ロク(1972年、TBS)
- キイハンター(1972年、TBS)
- 小さな恋の物語(1972年、日本テレビ)
- 光る海(1972年 - 1973年、フジテレビ)
- 嫁の縁談(1973年、朝日放送)
- 大空の勇者 GO!GOスカイヤー(1973年、フジテレビ)
- 必殺シリーズ(朝日放送)
- 必殺仕置人(1973年)棺桶の錠役
- 必殺仕置屋稼業(1975年)市松役
- 必殺からくり人・富嶽百景殺し旅(1978年)唐十郎役
- おやじの嫁さん(1973年、フジテレビ)
- 新十郎捕物帳・快刀乱麻(1973年 - 1974年、朝日放送)
- バーディ大作戦(1974年、TBS)
- ふりむくな鶴吉(1974年 - 1975年、NHK)
- おからの華(1974年 - 1975年、よみうりテレビ)
- はぐれ刑事(1975年、日本テレビ)
- 隠し目付参上(1976年、毎日放送)左吉役
- 太陽にほえろ!(1976年 - 1982年、日本テレビ・東宝)滝隆一役
- 横溝正史シリーズ 「悪魔が来りて笛を吹く」(1977年、毎日放送)
- 大追跡(1978年、日本テレビ)矢吹史朗役
- 姿三四郎(1978年、日本テレビ)檜垣源之助役
- 俺たちは天使だ!(1979年、日本テレビ)麻生"CAP"雅人役
- 同心部屋御用帳 新・江戸の旋風(1980年、フジテレビ)
- 江戸の朝焼け(1980年 - 1981年、フジテレビ)
- 赤かぶ検事奮戦記Ⅰ(1980年、朝日放送)
- 大奥(1983年版)(関西テレビ)
- 火曜サスペンス劇場「天使の復讐」
- かけおち83(NHK)
- 蒲田行進曲(1983年6月22日に前編、6月29日に後編、TBS)
[編集] レコード
[編集] シングルレコード(EP)
- 哀しみをこえて / 明日の虹(1972年)- ユニオンレコード US737
- 君と二人で / 幸福への出発(1972年10月)US754
- 青春しぐれ / 青春アパッチ(1973年)US764
- 孤独の青春 / 夜汽車の汽笛が遠ざかる(1973年)US791
- 激愛 / 遠くへ行きたい US807
- ひとすじの黒髪 / 何も言うな(1977年)- 東宝レコード AT4048
- ジャックナイフ / 季節がひとつ - AT4057
- 裏通りのランプ / 嘘が好きだよ(1978年)- AT4080
[編集] アルバムレコード(LP)
- 沖雅也 オン・ステージ(ULP-2008 ユニオンレコード)
- 青春の伝説 沖雅也青春の詩集(ULP-2013 ユニオンレコード)
- 孤独(AX-5009 東宝レコード)
- 哀情(AX-7006 東宝レコード)
[編集] その他
- 70’s TVヒッツ・コレクション テレビ主題歌(テイチク TECD-25464)でCDで「君と二人で」が収録されている
[編集] 写真集
- 沖雅也 in 太陽にほえろ!
[編集] 関連項目
- 双極性障害(躁うつ病)