市松
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市松(いちまつ)は、『必殺仕置屋稼業』に登場した仕事師の一人。沖雅也が演じた。
[編集] キャラクター
表の稼業は竹細工職人。父親の市造(第2話、6話、10話の回想シーンでやはり沖が演じた)も竹細工師で、裏の仕事師であった。第2話で弟分・鳶辰(津川雅彦)の罠にはまって絶命した(市松はその過去との決別のため鳶辰を自ら葬った)。裏の仕事の遂行時には手製の竹串を悪人の首筋に刺す。刺した後、傷口がすぐに分からないように串の刺さっている部分を折って首筋に食い込ませることもある。また、扇子に仕込んだり(第1話他)、折鶴に装着して、標的の首筋目掛けて飛ばしたりもする(第2話、4話。その際、折鶴は真っ赤な血の色に染まり、地面に落ちて行く描写は圧巻)。竹とんぼを飛ばし、悪人の喉元をかき切ったり(第10話)、おでんの串を使い、相手の心臓を刺すといった変則技も披露した(第21話)。
とある夜、中村主水(藤田まこと)に殺しの現場を目撃されたため、主水を狙おうとしたところを彼に誘われた。当初は主水、印玄(新克利)、捨三(渡辺篤史)と裏の仕事で対立することも多かったが、徐々に他のメンバーとも人間性を取り戻していった。しかし、その後も単独で仕事を引き受けたり、他の元締の依頼を引き受けることも止まらなかったため、その行動が仕置屋の崩壊につながっていった。
その仕置屋の崩壊劇を描いた最終回で、市松は奉行所に捕らえられかけたが、主水に解放された。これが原因で、主水は定町廻りから伝馬町の牢屋同心に降格させられることとなる。逃亡後の市松は、信州信濃宿で、真野森之助(後の赤井剣之介=中村敦夫)と出会う。剣之介は恋人のお歌(中尾ミエ)とともに江戸に赴き、主水を頼って仲間入りした(『必殺仕業人』)。
[編集] 解説
- 沖雅也にとって、『必殺仕置人』以来「必殺シリーズ」2度目の登場となる本作は、前回の棺桶の錠の熱血漢とは正反対の、浮世離れしたクールな美形仕事師を演じ、大当たりした。この路線は、『必殺からくり人・血風編』新之介(ピーター)、『新・必殺仕事人』から登場した三味線屋の勇次(中条きよし)、『必殺仕事人V』、『同・激闘編』で活躍した組紐屋の竜(京本政樹)に受け継がれることとなる。特に京本は、後年のインタビューで竜役について「風貌から仕草まで市松の影響を直接受けた」と公言している。
- 新聞やテレビ情報誌の番宣広告、番組表、宣伝ポスターでは主水の次にクレジットされているが、エンディングのキャストロールでは、市松が先頭で、主水が最後尾(起き上がってくる)となっている。沖の養父兼所属事務所社長・日景忠男が、主水が完全な主人公であることにクレームをつけたため、制作サイドが日景に配慮する形で市松を先頭にした(現在発売中のDVDソフトでも同様)。日景は制作サイドに感謝していたという。このため、旧作の雰囲気をこよなく愛するマニアと呼ばれるファンや、沖のファンの一部からは、主人公は主水でなくキャストロールの順番通り市松だという声も多い。
- 捨三役の渡辺とは、その後も『俺たちは天使だ!』(日テレ)、『同心部屋御用帳 新・江戸の旋風』『江戸の朝焼け』(ともにフジテレビ、全作品とも東宝製作)で共演している。