病客車
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病客車(びょうきゃくしゃ)とは、負傷した軍人等を輸送するための鉄道の客車である。主に日本各地の軍港、軍病院周辺から発車する列車に併結もしくは専用編成が組まれ運用された。
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[編集] 概要
名目上は、負傷した軍人の治療を行うために誂えた特別車両であるが、戦地から後方搬送されてくる重傷者や発狂者を隠し、一般国民の戦意を維持する(戦争の負の側面を見せて動揺させない)理由もあったと考えられている。
皇室用客車(といっても霊柩車)から転用した一等病客車(兵士は三等病客車を利用)や精神を患った軍人のための保護室(要するに監禁用スペース)を設けた車両が存在するなど、利用する軍人の階級や症状に応じて利用形態が規定されていた。 外部は誤乗車防止のために赤十字のマークが描かれ施錠が行われていた。三等病客車の内部は座席を撤去し畳敷きスペースが造られていた(朝鮮戦争時にGHQが利用した際にはベッドが持ち込まれた)。
[編集] 歴史
日露戦争が激化した明治時代後期から存在したものと考えられているが、各種資料に散見されるようになるのは大正時代以降である。日本の傷病兵の輸送は太平洋戦争の終結と、引揚者の輸送が一段落した時点で終了したが、朝鮮戦争が開始されるとともにGHQ側の要求により運用が再開。負傷した国連軍兵士を各地方の病院へ向け輸送したという。朝鮮戦争が終結した後には、客車の絶対数が不足していた背景もあり、一般の座席車に復旧した車両も存在する。
[編集] 車両
病客車の用途記号である「ヘ」は兵隊の「ヘ」から採られたように、あくまでも病客車は軍人の輸送を目的としたものである。一等病客車の記号は「イヘ」、二等病客車の記号は「ロヘ」で、三等病客車は単に「ヘ」と称する。精神病患者の保護室を設けた車両は「セ」を末尾に付している。末尾の「セ」は記号の左上に小さく表示することとされた。
- 例:スヘ30、スヘフ30(傷病兵用病客車、同緩急車)、スヘセ30(傷病兵用保護室付病客車)
形態は似ているものの国立ハンセン病療養所への民間人患者の輸送は、病客車ではなく一般(といっても「伝染病患者輸送」と大書してある)の客車や有蓋貨車が用いられている。
[編集] 関連項目
日本国有鉄道(鉄道院・鉄道省)・JRの客車 |
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木造ボギー客車 |
9500系・12000系・22000系・28400系 |
鋼製一般形客車 |
オハ31系・スハ32系・オハ35系・70系・マロネ40形・60系・スハ43系・10系・50系 |
新系列客車 |
20系・12系・14系・24系・E26系 |
その他 |
マニ30形・ナハ29000形・ハテ8000形・オハフ17形 |
事業用車/試験車 |
オヤ31形・マヤ34形・マヤ50形 |
車種別 |
皇室用・一等寝台車・二等寝台車・三等寝台車・一等車・特別二等車・二等車・三等車・展望車・病客車 A寝台車・B寝台車・グリーン車・普通車・食堂車・郵便車・荷物車 |