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国鉄10系客車 - Wikipedia

国鉄10系客車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

国鉄10系客車(こくてつ10けいきゃくしゃ)は、日本国有鉄道(国鉄)が1955年に開発・試作し、その後量産した軽量構造の客車のグループである。

目次

[編集] 概要

1950年代当時、軽量化設計で世界をリードしていた、スイス国鉄の軽量客車(Leichtstahlwagen[1]の影響を強く受けて開発された。

従来の鉄道車両が、構造上、土台となる「台枠」のみに強度を負担させる方式であったのに対し、台枠中梁を省略し、台枠側梁、構体、屋根、側板、妻板そして床を組んだ車体全体で衝撃を分散負担する「セミ・モノコック構造(準張殻構造)」を採用した。

モノコック構造は、元来重量制限の特に厳しい航空機の為に考案されたものであり[2]、戦後の航空技術開発禁止に伴う技術者の移籍でその理論及び設計ノウハウがもたらされ、日本の鉄道車両でも実現可能となったものである。

この結果、梁や柱が重い形鋼の加工品から、薄い鋼板のプレス一体成型品[3]に置換えられて軽量化と工数の低減が図られ、また溶接の最適化やひずみ除去技術の進歩等によって側板厚の削減(2.3mm→1.6mm)が実現[4]するなど、車体の大幅な軽量化が可能となった。

また、台車についても第二次世界大戦後盛んになった高速電車用台車の研究開発成果を受けて、重い形鋼や一体鋳鋼に代えて、プレスした鋼板部材を溶接して組立てることで重量の大幅な軽減を実現した、軽量構造の軸バネ式台車(TR50形またはTR200形)が採用された。

その他にも、従来は砲金や鋳鋼が当たり前であった内装金具の軽金属部品への置換えや、アルミサッシの採用、それにプラスチック等の合成樹脂材料の多用などによって、新素材を活用した総合的な軽量化対策が施されている。この結果、内装から木材をほとんど廃した「全金属車体」となった。

こうした新しい設計の導入により、本系列は従来の鉄道車両に比べて格段の軽量化[5]を実現し、輸送力増強や車両性能の向上に著しい効果を上げた。

1955年から1965年まで大量に製作され、座席車寝台車をはじめとして多数の派生形式が生まれている。初期には2等座席車と食堂車が特急「つばめ」・「はと」に投入されたほか、新設の「かもめ」には2・3等座席車が、「はつかり」には2等座席車と食堂車がそれぞれ投入され、その後も急行列車を中心とする優等列車に多数が使用された。

気動車の導入が最優先とされて、新製配置が実施されなかった四国を除く全国の主要路線で幅広く運用された。特に信越本線には、牽引定数が換算36両(=360t)と非常に厳しいアプト式区間の輸送力制限の回避を目的として重点配備され、「3両分の牽引定数で4両連結できる」軽量設計の強みを最大限に発揮し、同線の輸送力強化に大きく貢献した。また、寝台車は新造車以外に、占領軍からの返還や特急の電車化で余剰となった、展望車などの旧型優等客車の台枠流用による改造車が多数製造された。こちらも高度経済成長期の輸送力確保に大きな成果を上げている。

しかし、極度に軽量化に徹しすぎたために短所も生じた。断熱・保温が構体内に吹付けられたアスベストに依存するため、内装に木材を多用する従来型客車と比較して保温性が悪いことも不評だった。さらに1970年代以降、薄い鋼板が災いし、疲労による外板の波打ちや各部の腐食が急速に進行、著しい老朽化が目立つようになった。国鉄の労使紛争により保守環境が悪化したことも状態の悪化に拍車をかけた。この時期は10系客車に限らず、大規模な塗装の剥落などで無惨な姿のまま使用された車両が少なからず見受けられた。

また、激しい混雑が当り前であった当時、3等座席車は乗車率200%での使用も考慮され、枕ばねは軽い車重に不釣合いな硬いものとされたことも問題であった。逆にダンパー歩留まりや耐久性ばかりが重視され、減衰力は完全に不足していた。これにより、従来型客車では見られない、短周期の上下動が常時発生する結果となり、乗心地について多くの不評が寄せられることとなった。これは、「すし詰め」を考慮していない欧州型のような柔らかいばねは望むべくも無いが、量産時にばね定数が上げられて、より硬いセッティングとされたことは、問題をさらに悪化させた。

1972年に発生した北陸トンネル火災事故の際に、当初出火原因が石炭レンジにあったとされ[6]、しかも10系客車が内装材として、可燃性でしかも有毒ガスが発生する危険のある合成樹脂材を多用していることの危険性が露呈し、防災面での不備が問題視された。このため事故後、当時急行列車用として残存していたオシ17形は、やはり石炭レンジを搭載するマシ35形と共に、全車がただちに営業運転から外され、事故にともなう保全命令が出された1両と事業用車に転用された2両を除きそのまま廃車となった。座席車についても、すきま風や乗心地の不評もあって、1970年代中盤に急行列車運用を早々と撤退し、前任車であったスハ43系などの旧型「重量客車」にその座を明渡した。

寝台車については適当な代替車両が存在せず、また新幹線の延伸で寝台急行そのものの運行本数が減少傾向にあったことから新造車による置換えも困難で、このため1982年11月15日国鉄ダイヤ改正まで急行列車や普通列車に広く使用されていた。

その後、普通列車用途の座席車については、客車の根本的近代化が図られた50系客車の登場により追われる形となり、寝台車についても20系客車14系客車の格下げ転用と、夜行列車そのものの本数削減によって働き場が失われたため、1985年までに全車が営業車としての現役を退いている。

ナハフ11形が2両のみ(2021・2022)その後も事業用車代用(控車)として尾久客車区に車籍を残していたが、これらも1995年11月1日をもって除籍された。

[編集] 形式各説

本系列に属する車輛として、以下の形式がある。

※等級は製造時のもの(1960年以前は3等級制)
※年は製造初年
※2000番台の番号は電気暖房付の車両に付される番号

[編集] 座席車

  • ナハ10形三等車 1955年 (1~8初代→901~908、1~114)
    本系列の基本形式。定員88名。122両製造(試作車900番台8両、量産車114両)。試作車と量産車の相違点は台車[7]、客用扉[8]、そして妻板[9])など。当時、客車の製造は日本車輌と日立製作所が指定メーカーであったが、本形式の試作車に限り、技術習得を目的として汽車製造と川崎車輌が生産に参加している。
  • ナハ11形:三等車 1957年 (1~97、2098~2102)
    室内灯に蛍光灯を採用したナハ10形の近代形。定員88名。104両製造。北陸トンネル列車火災事故のあと、新形車両の難燃化のため、国鉄大宮工場での定置燃焼実験、宮古線狩勝実験線での走行燃焼実験に使用された。
  • ナハフ10形:三等緩急車 1956年 (1~48)
    ナハ10形に対応する緩急車。定員80名。48両製造
  • ナハフ11形:三等緩急車 1957年 (1~30)
    ナハ11形に対応する緩急車。定員80名。30両製造
  • ナロ10形特別二等車 1957年 (1~33)
    定員48名。33両製造。のちAU13形分散式冷房装置(5台)搭載と、これにともなう低屋根化およびディーゼル発電機セットの搭載で自重が増大し、オロ11形となる。

[編集] 寝台車

  • ナハネ10形三等寝台車 1955年 (1~100、501~510)
    第二次世界大戦後初の三等寝台車。10系初の量産車として設計され、ナハ10形試作車で収集されたデータが完全に解析される前に見切発車で製造が開始されたため、側扉や妻板など、ナハ10形試作車に準じた仕様のままで設計され、量産されている。2.9mの広幅車体を国鉄で初採用した。定員60名。110両(一般型100両、北海道用500番台10両)製造。1963年に寝台一区画をつぶして緩急車化によりナハネフ10形に(定員は54名に減少)、さらに1967年から冷房化改造によりオハネフ12形となった。
  • ナハネ11形:三等寝台車 1957年 (1~72、501~502)
    定員を54名に減じた形式。74両(一般型72両、北海道用500番台2両)製造。自重の関係から最後まで電気暖房は取付けられなかった。1965年から冷房改造によりオハネ12形となった。
  • オハネ17形:二等寝台車 1961年 (1~2259、401~2405、501~514、2601~624)
    台枠を主として戦前製の陳腐化した2軸ボギー式客車から流用し、台車も在来型車両から捻出、ナハネ11形に準じた車体を軽量構造で新製した車両。改造扱で、車籍は種車のものを引継いでいる。種車の台枠構造の関係で、新造車に比べて車体長が500mm短い。1964年にかけて計301両が改造された。台車は改造種車にかかわらず一般仕様車がTR47形、電気暖房装備車がTR23形(TR34形)とされたが、後年の冷房化でスハネ16形となった際に軸重増大に対応してTR47形に統一された。その関係でスハ43形の一部がTR47形台車を本形式に提供してTR23形に履替え、オハ47形となっている。
  • ナハネフ11形:二等寝台緩急車 1961年 (601~608、2609~2616)
    利用債によって製造された団体列車用のオハネ17形600番台に対応して製造されたナハネ11形の緩急車仕様。全車が600(2600)番台である。定員54名。16両製造。1968年に冷房改造によりオハネフ13形となった。
  • オロネ10形二等寝台車 1959年 (1~91、501~506)
    20系ナロネ21形を元に開発。プルマン寝台で新製段階から20系同様に床下に冷房装置を搭載するが、駆動電源を供給するディーゼル発電機セットを自車に搭載する必要から自重が増加して1ランクアップの「オ」級となり、20系のTR55形台車をベースに耐荷重上限その他を変更したTR60形空気バネ台車を装着する。定員28名。97両(一般型91両、北海道用500番台6両)製造。1969年、1974年に6両が緩急車化され、オロネフ10形となった。
  • ナロハネ10形:二・三等寝台車 1958年 (1~9)
    勾配が多く、牽引定数の限られる亜幹線用の夜行列車に使用するための二・三等合造寝台車。車体中央部の二等室・三等室の境に出入台を設置している。
    定員42名(二等寝台12名、三等寝台30名)。9両製造。*:当初は両室とも冷房装置を搭載していなかったが、1964年の5~7月に「ロネ」側に冷房装置を設置するとともに、複層固定窓化、重量増によりオロハネ10形へと改称され、二等室は「Cロネ」から「Bロネ」へ格上げされた。
    北海道に配置されていたナロハネ10 6~9は、同時に寒冷地仕様への改造を実施、500番台に区分され、オロハネ10 501~504に改番された(後にオロハネ10 2を505へ追加改造)。1969年には、全車「ハネ」側にも冷房装置を設置している。

[編集] 食堂車

  • オシ17形食堂車 1957年 (1~25、2051~2055)
    車幅拡大により、すべてのテーブルが4人がけの、定員40名とした初めての食堂車。
    講和条約発効に伴い占領軍から順次返還されつつあった展望車や食堂車など、戦前製3軸ボギー式客車の台枠を流用し、長野、高砂の両工場で車体を新製した。
    4人がけ実現のために、車両限界いっぱいまで最大幅を広げ、裾を絞った車体断面で、当初より床下搭載のディーゼル発電機を電源とする冷房装置を搭載した。
    厨房内については、カシ36形で試みられた電気レンジの失敗から、完全電化は時期尚早と判断され、マシ35形以前と同様の「石炭レンジ」を搭載していた[10]
    台車は、新造の近畿車輌製シュリーレン式(円筒案内式)台車[11]であるTR53形を履くが、唯一10のみは、TR53形を基本として近畿車輌で試作された、空気バネ式のTR57形を履いて竣工し、タイ国皇太子のご乗用列車に連結されるという栄誉に浴した。
    新製当初は、東海道本線の特急列車、「つばめ」と「はと」に、続いて、東北本線・常磐線に新設された特急「はつかり」に用いられたが、1960年に3列車が電車・気動車化されたあとは、全車急行列車用に転じ、増備車を含め、老朽化した戦前製食堂車の淘汰に充てられた。1972年11月、本形式中の1両、2018が北陸トンネル火災事故の火元となったことから、事故後直ちに全車の使用が停止され、2両が教習車オヤ17形に改造された他は、すべて廃車解体された[12]。オヤ17形に改造されたうちの1両、2055が外観のみ復元され、碓氷峠鉄道文化むらで保存されている。
  • オシ16形:食堂車 1962年 (1~3、2004~2006)
    夜行急行の寝台セット・解体中の乗客の待避場所とするために製造された、テーブル席とカウンター席を併設したサロン室付きビュフェ車。冷房付。オシ17形と同様に長野・高砂工場の手になる戦前製客車からの台枠流用・車体新製車であるが、こちらは台車も流用品で、1~3はTR47形、2004~2006はTR23形を履いている。加熱調理器具として電子レンジを採用したため、その電源として冷房用とは別に床下にディーゼル発電機を1セット追加搭載した。1972年3月のダイヤ改正で運用がなくなり、全車廃車解体された。

[編集] 郵便車

  • オユ10形:1957年 (1~10、2011~2039、40~44、2045~2058、2501~2514)
    郵政省所有の区分室(扱い便)郵便車で、車内に郵便物を区分するための設備を設けている。荷重は一般仕様車で8t(郵袋数600個)、北海道用及び冷房改造車は7t(郵袋数532個)である。当初は冷房装置を搭載していなかったが、1973年から取付が開始され、同時に改番(2551~2583)として、計38両に実施された。現在、2555が東京都国立市の中央郵政研修所に、のと鉄道能登中島駅構内に2565が保存されている。車体塗色は当初はぶどう色2号、のちに青15号に変更。
  • オユ11形:1957年 (1~11、101~105)
    区分室付郵便車で、オユ10形に比べて区分室を拡大したため別形式とされたものである。荷重は7t(郵袋数532個)である。新製後は東京~門司間に限定運用された。100番台は1971年製の新製冷房車で、1~11についても1972年から冷房改造が実施され、1001~1011に改番された。100番台は、1982年に北海道運用可能に改造され、2501~2505となった。新製冷房車は屋根に冷房機が4基設けられたのに対して、改造冷房車はそれが3基になっているのが外見上の違いである。車体塗色は当初はぶどう色2号、のちに青15号に変更。
  • オユ12形/スユ13形:1958年 (1~4、20~28、33~35/2005~2019、2029~2032、2036~2039)
    区分室を持たない護送便専用郵便車である。オユ12形は蒸気暖房設備のみ、電気暖房の設置で自重が増え「ス」級にランクアップした車両がスユ13形に形式区分される。換算両数を「オ」級に収めるためオユ12形の荷重は12t(郵袋数906個)とされたが、スユ13形については制限がなくなったことから荷重13t(郵袋数977個)とされた。電気暖房設備の設置・撤去により、実際に形式が変更(オユ12形⇔スユ13形)となった車両もある。車体塗色は当初はぶどう色2号、後に青15号に変更。
  • オユ14形/スユ16形:1972年/1973年 (1~4、201~205/2001~2013、2201~2207)
    オユ14形は、区分室付郵便車で、オユ11形の後継として新製されたものである。台車は空気バネのTR217形、最高運転速度110km/hに対応しており、走行性能的には14系客車に準拠している。スユ16形は、オユ14形に電気暖房装置を取付けたものである。オユ11形に準じた構造のものを第1種(1~/2001~)、東京~門司間の拠点間輸送に適合した構造を持つものを第2種(201~/2201~)として区分している。荷重は自重増により6t(郵袋数532個)である。冷房装置は全車が新製時より搭載。車体塗色は青15号。
  • スユ15形:1973年 (2001~2039)
    最高運転速度110km/hに対応するスユ13形後継の護送便専用郵便車で、事故で焼失し廃車となったスユ43形の補充として1973年に1両(2001)がオユ12形に準じた車体で製造後、1978年から車体形状を14系客車ベースに改めた量産車(2002~2018)が登場した。1981年以降の新製車(2019~2039)は、車体形状を50系客車と同仕様に改めている。2001の荷重は14t(郵袋数985個)であったが、2002以降は中央の乗務員室が拡大され、荷重は13t(郵袋数977個)に変更された。車体は3タイプも存在しながら、台車は全車がTR217形を使用する。車体塗色は青15号。

郵便車1986年、鉄道郵便輸送が廃止されたことによりすべて現役を退いている。オユ14・スユ15・スユ16形の後期製造車は、実働5年に満たない車両も存在した。

[編集] 荷物車

  • カニ38形:1959年 (1)
    駅での荷役作業時間の短縮を目的として、占領軍から返還されたマハネ29 12の台枠・台車(TR71形)を流用して設計され、大井工場で改造された試作荷物車。通常の物と比較して4ランク上の「カ」と超重量級で、厳密な意味では10系の範疇から外れる[13]が、車体の基本構造は10系のそれを踏襲しており、2.3m幅の巻上式シャッターを5台並べた特徴的な側面レイアウトを持つ。品川客車区に配置されて同区受持の急行列車で試験が実施された。荷物車としての後半は主として急行「安芸」に連結して運用されたが、開口部の大きいその構造を生かして大型美術品輸送に使用される機会も多く、特に奈良の寺院と東京の美術館の間で仏像が貸出・返却される場合には、日本通運の荷扱いで急行「大和」に併結して運用された。パレット式荷物車であるスニ40・41形の実用化でその役割を終え、1969年に救援車へ格下げされてスエ38 8となった。その後は佐倉客貨車区に配置されて待機していたが、同区廃止に伴い1981年に廃車され、解体処分されている。

[編集] 脚注

  1. ^ 1937年に試作車が製造され、1939年より量産が開始された。なお、本系列の試作が開始された1955年の段階で、スイスでは既に1,000両を超える軽量客車が就役していた。
  2. ^ これを可能とするワグナーの張力場ウエブ理論などの重要な基礎理論は、日本でも航空界には早くから伝えられていたが、これを鉄道車両の軽量化に応用しようと考える鉄道関係者は戦前の日本にはほぼ皆無であり、軽量化で最も進んでいた気動車設計ですら、基本的な構想においては従来の設計から一歩も踏み出してはいなかった。
  3. ^ さらなる軽量化のため、強度上不要な部分に軽め穴が開けられていた。これもスイス国鉄向け軽量客車で先行して採用されていた技術の一つである。
  4. ^ もっとも軽量化に対する要求が厳しかった気動車では1.6mm厚側板が戦前より標準的に用いられていたから、それを援用したとも言える。
  5. ^ 三等座席車の場合、ナハ10形900番台が自重23.0tで、量産車でも23.8tに収まった。それ以前の標準型であったスハ43形の自重が33.5tであるから、これと比較して約30%減、換算両数にして約1両減、という驚異的な軽量化が実現した。また、デザインの面でもスイス流の軽快かつ明朗なデザインが導入され、以後の国鉄車両デザインに新風を吹き込んだ。その後の国鉄車両のほとんどは、この10系客車に範を採った軽量構造を採用しており、その影響力は多大なものであった。中でも折戸式の客用扉や寝台車通路側の下降窓は、設計陣が欧州視察の際に強く影響された箇所で、是非とも日本で実現したかったものと言われているが、両方とも欧州ほどの経験が無かったため、前者は破損頻発により量産時に見送りとなり、後者は雨水や鉄粉の進入を許し、車体腐食を早めることとなった。
  6. ^ 後の調査で電気配線の問題により発火したものと判明し石炭レンジ原因説は否定された。しかし、合成樹脂の燃焼により有毒なガスが発生し被害を広げたことは事実である。
  7. ^ 枕バネがシングルで減衰用オイルダンパ付きのTR50X形から枕バネがダブルでオイルダンパ無しのTR50形へ変更。
  8. ^ アルミ合金製2枚折戸を鋼製1枚開戸へ変更。
  9. ^ 補強リブ入りプレス鋼板一体成型品から通常構造へ変更。
  10. ^ 電気レンジの搭載は20系のナシ20形で実現した。
  11. ^ シュリーレン式は本家スイス国鉄のLeichtstahlwagen用台車で標準的に採用されていた軸箱支持機構であり、それゆえ本形式は日本の国鉄が製造した軽量客車シリーズ中、オリジナルの構造に最も忠実な仕様となった。
  12. ^ 事故車の2018は事故の裁判で証拠物件となり、裁判終結後の1981年まで車籍があった。
  13. ^ 荷物車としての現役当時に、天賞堂が発売した16番ゲージ鉄道模型の10系客車シリーズには本車が含まれていたため、ベテランの鉄道ファンの間では1形式1両の異端改造車であり、しかもその形式称号が10系の範疇から外れる本車を10系の一員として認識している人間が多いという。

[編集] 参考文献

  • 鉄道ピクトリアル アーカイブス セレクション 10 国鉄客車開発記 1950』(電気車研究会、2006年)
林 正造「軽量3等車ナハ10形の概要」(初出:『鉄道ピクトリアル』1955年12月号 No.53) p84~p88
星 晃「3等寝台車の復活」(初出:『鉄道ピクトリアル』1956年5月号 No.58) p89~p94
  • 電気車研究会『鉄道ピクトリアル』1999年6月号 No.670 特集・国鉄形(10系)軽量客車・座席車編
  • 電気車研究会『鉄道ピクトリアル』1999年4月号 No.667 特集・国鉄形(10系)軽量客車・寝台車編
  • 桜井貴夫「10系軽量客車 保存車について」/ 交友社『鉄道ファン』1999年1月号 No.453 p113~p115

[編集] 外部リンク

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