空港ターミナルビル
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空港ターミナルビル(くうこう-、airport terminal)は空港施設のひとつで、旅客が飛行機に乗降する際に必要な手続や待ち合わせを行う場所である。鉄道やバス・タクシー・自家用車など地上交通機関との乗り換え、チケット購入や搭乗手続き、手荷物預かりや手荷物引取り、航空保安検査、CIQ(税関、出入国管理、検疫)はここで行われる。ターミナルビルから飛行機へは、乗降のための施設(ボーディング・ブリッジや構内バス)を利用する。
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[編集] ターミナル建築の構造
搭乗手続きを行うターミナルに対し、飛行機への乗降をする搭乗ゲートや待ち合わせ用座席のある部分はコンコースと呼ばれるが、空港によっては「ターミナル」と「コンコース」の言葉の違いは厳密ではない場合もある。ダラス・フォートワース国際空港のように、複数のターミナルビルの個々が、ターミナル機能とコンコース機能を同時にこなしている例もある。
小さな空港ではターミナルビルは一つで、ターミナルやコンコースの全ての役割を一つの建物内でこなしているが、大きな空港では行き先や航空会社ごとに複数のターミナルビルやコンコースがあるところも多い。また大きな空港でも、ターミナルビルが一つしかない代わりに、通路やスカイブリッジ、地下トンネルなどがターミナルと多数のコンコースを繋いでいる構造になっているところもある。
ターミナルビルは多くの旅客や手荷物をさばくために実用本位の簡素な設計で建てられる場合が多いが、一方でターミナルビルは国家や都市を代表する顔であり非日常的な旅への出発地でもあるため、著名な建築家が起用されて高い天井や壮大な空間を備えた立派な建物となることもある。バグダード国際空港(旧名:サッダーム国際空港)のように独裁者の偉大さを示す記念碑となることもあれば、シャルル・ド・ゴール国際空港のポール・アンドリュー設計によるターミナル1、ジョン・F・ケネディ国際空港のエーロ・サーリネン設計によるターミナル5など当時のハイテクの粋を集め、今日では名作とされている現代建築もある。また建てられる国や地域の伝統や文化を反映したターミナル建築も多い。例えばアメリカ合衆国のニューメキシコ州にあるアルバカーキ国際空港は、先住民族プエブロが建てたアドビ(日干しレンガ)を使った集合住宅の様式にならったもので、同地を拠点としプエブロ・リバイバルを先導した建築家ジョン・ガウ・ミームが設計している。
[編集] ターミナルと飛行機との接続
初期の空港旅客ターミナルは、ターマックで舗装された駐機場に直接面して建っていた。旅客はターミナルビルを出て飛行機まで歩き、タラップを昇って搭乗していた。ターミナルから徒歩やバスで飛行機に向かうスタイルは今でも小さな空港ではよく見られる。また、大空港でも、ターミナルから離れたところに駐機している飛行機までバスで移動させられることはよくある。
乗客がバスに乗り換えることなく、ボーディングブリッジを使ってターミナルビルから直接飛行機に搭乗できるようにするには、飛行機がとまる固定スポットを一つでも多く増やす必要がある。このため、ターミナルビルやコンコースの設計にあたり様々な構造上の工夫が行われている。
ピア方式は、ターミナル本館から桟橋(ピア)のような長細い建物が突き出し、その両側に飛行機のつくスポットを確保するものである。ピアの片側は、待合室やゲート、手荷物を受け取るバゲージクレイムなどにつながっている。ピア方式は多くの飛行機をとめることができる上にデザインもシンプルとなるため世界の多くの空港が起用しているが、旅客はチェックインカウンターから搭乗口まで延々歩かされることになる。関西国際空港の場合、ウイングはターミナル本体から1km近く伸びているため、移動用にウイングシャトルと呼ばれる新交通システムが走り旅客が歩く距離を抑えている。
サテライト・ターミナル方式は、ターミナル本体から離れた建物が駐機場の真ん中にあり、飛行機はこのサテライトの建物の全方向にとまることができる。この方式を最初に採用したのはロンドン・ガトウィック空港であった。メイン・ターミナルからサテライトまでの間に地下トンネルを作り、旅客はその中を移動した。ロサンゼルス国際空港も当初はサテライト方式を用いたが、後にピア方式に改造された。動く歩道を用いてターミナル本体とサテライトを繋いだのはタンパ国際空港が最初であった。中央のターミナル本体「ランドサイド」から周囲の四つのサテライト「エアサイド」へとピープルムーバーが伸びる設計は、今日のターミナルの標準の一つとなっており、多くの大規模空港がサテライトターミナルを採用している。
空港の中にはターミナルビルが扇形(半円形)になっているものもある。タクシーやバスは扇の内側に停車し、扇の外側に飛行機が駐機する。このデザインでは、航空便を乗り継ぐ旅客は扇形の両端を延々移動させられることになるが、ここで乗降する旅客にとっては道路からカウンター、搭乗口までの歩行距離が短くすむ。このタイプにはシャルル・ド・ゴール国際空港ターミナル2、ダラス・フォートワース国際空港、新千歳空港などがある。
その他、珍しいタイプのターミナルデザインには「モバイル・ラウンジ」というものがある。旅客はターミナルビルにドッキング中の車両に設けられた待合室に集まり、この車両がビルから切り離されて飛行機まで走り、飛行機にドッキングするという仕組みになっている。ワシントン・ダレス国際空港とモントリオール・ミラベル国際空港はこの方法を用いていた。
[編集] ターミナルと他の交通機関との接続
中小規模の空港では、2車線か3車線の一方通行のループ状道路がターミナルの前を通過するように設けられており、バスや自動車が旅客を乗降させている。
大規模な国際空港になると、ループ状道路は二つに分かれ、一方は出発ゲートへ、もう一方は到着ゲートへつながるようになっている。こうした道路はそのまま高速道路へとつながることが多い。また空港と都市を結ぶ鉄道や新交通システム、地下鉄の駅がターミナルビルに設けられていることもある。
空港の周囲には利用者のための駐車場があるほか、空港内にタクシー業者やレンタカー業者のカウンターが設けられ、旅行者が移動用の車を取り寄せることができるようになっている。
[編集] ターミナルビル内の施設
空港ターミナルビルは、飛行機の出発待ちや乗り継ぎのために長い時間を過ごす場所である。このため、旅行者を退屈させないよう、また空港内でたくさん消費してくれるよう、ショップやレストランやバー、ラウンジ、さらにはプール、ジム、エステティックサロン、公園、子供の遊び場、博物館、映画館、カジノなどを備えるところもある。
[編集] セキュリティおよび出入国管理の外側
- バス、タクシー、レンタカー、ホテルの案内
- 各航空会社のチェックイン・カウンター
- 土産物店、コンビニ、書店、レストランなど