荒岱介
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荒 岱介(あら たいすけ、1945年-)は、日本の左翼活動家である。BUND(ブント、旧「戦旗・共産主義者同盟」、通称「日向戦旗」「戦旗荒派」)代表。千葉県東葛飾郡関宿町生まれ。
[編集] 人物
1945年6月、母親の疎開先の千葉県関宿町で生まれる。父親は運送業者だが小児マヒの後遺症による障害者であった。
渋谷区立幡代小学校、代々木中学、都立駒場高校に進む。中学と高校時代は野球部。1965年早稲田大学第一法学部入学。現代文学会に所属し文学活動を志していた。その年の秋よりベトナム戦争を背景に早大学費学館闘争がはじまり苦学生として闘争に参加。そのプロセスで、のちの赤軍派議長塩見孝也のオルグにより、共産主義者同盟(ブント)の学生組織である社会主義学生同盟に加盟。学生運動の活動家になり、67年10・8羽田闘争から第2次羽田闘争、王子野戦病院阻止闘争、68年1月佐世保エンプラ入港反対闘争などに参加。68年3月三里塚闘争で逮捕・起訴される。第2次ブント8回大会で社会主義学生同盟の委員長に選任されるが、69年1月東大安田講堂占拠で再び逮捕・起訴される。当時の反帝全学連の委員長が藤本敏夫。
早大在籍中に『若きボリシェビキ』、社学同学対部のときに『理論戦線』6号、7号、8号、9号を発刊。宇野弘蔵の経済学をもとにした革命論の方法論的整理を主張。ペンネームであった日向翔の名をとった日向過渡期世界論とよばれた。 安田講堂占拠での東拘在監中に第2次ブントは、70年武装蜂起を主張する赤軍派が分派・分裂する。荒は獄中から塩見孝也の前段階蜂起論に反対。荒の主張に共鳴した学生部分が戦旗派を形成する。71年『過渡期世界の革命』を上梓。77年より80年初頭まで実刑判決を受け下獄。下獄中に戦旗派・第4インター・プロ青同が参加した78年3・26管制塔占拠闘争がおきる。
荒の出所後、戦旗派は次第に三里塚闘争を担う主力党派になり、83年3・8分裂では、空港反対同盟の熱田派を支持。このとき中核派により党派戦争宣言が発せられるが、対権力のゲリラ戦はやるが内ゲバは回避すべきと中核派に申し入れる。以降80年代は三里塚闘争を中心にした武装闘争をつづける。しかし89年東欧で社会主義政権は崩壊し社会主義革命の展望は喪失。
(有)赤石印刷取締役、(有)実践社取締役社長など出版・印刷業を生業とする。
この頃東大教授であった哲学者廣松渉と親交をふかめ、廣松の校閲により93年に『マルクス・ラジカリズムの復興』を上梓。その後『左翼思想のパラダイムチェンジ』からマルクス離れを開始し、共産主義革命をすて環境保護運動に転換することを訴える。実践社より雑誌『理戦』を発行し、人権と環境をテーマとした運動をつづけている。 60年代学生叛乱から三里塚闘争に深くかかわった荒の軌跡は、日本の新左翼を象徴するものとして、ドイツ・フライブルク大学の日本研究でも紹介されるなどの位置をしめている。知のクロスオーバーをかかげるグランワークショップには多数の参加者があり、廣松学徒のみならず各界人士と多彩な親交をもつ。
朝日新聞社刊宮崎学『叛乱者グラフィティ』、メディア・ワークス刊本橋信宏『悪人志願』鹿砦社『スキャンダル大戦争』①などが荒の人物紹介をしている。自伝としては太田出版刊『破天荒伝』『大逆のゲリラ』がある。
[編集] 著書
- 著書
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- 『マルクス・ラジカリズムの復興』 御茶の水書房
- 『左翼思想のパラダイム・チェンジ』 実践社
- 『ハイデガー解釈』 社会評論社
- 『マルクス 残された可能性』 実践社
- 『行動するエチカ――反形而上学の冒険』 社会思想社
- 『環境革命の世紀へ』 社会評論社
- 『破天荒伝 ある叛乱世代の遍歴』 太田出版
- 『テロと報復とコミュニズム』 実践社
- 『大逆のゲリラ』 太田出版
- 『反体制的考察』 実践社
- 『近代の超克論者 廣松渉理解』 夏目書房
- 共著・編著
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- 『こんなご時世戦争論を読む』(共著 実践社)
- 『全共闘三〇年』(共著 実践社)
- 『ブントの連赤問題総括』(編著 実践社)
- 荒岱介について書かれたもの
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- 『自由を翔る 荒岱介 異端の革命思想を読む』(渋谷要編著 実践社)
- 『悪人志願』(本橋信宏著 メディアワークス)
- ドイツ・ハンブルグ大学日本研究誌『鏡』 独語訳「マルクス・ラジカリズムはかく考える」
- クラウディア・デリヒッス『日本の新左翼』(独語) (ハンブルグ大学東アジア文化人類学研究書)
- 対談集
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- 『情況』2005年4月号(情況出版) 近代の超克とマルクス主義 荒岱介/古賀暹/いいだもも
- 『情況』2002年4・5月号(情況出版) 「ブントから見た廣松哲学の思想と哲学」(上)(下) 荒岱介/古賀暹/高橋順一
- 『スキャンダル大戦争①』(鹿砦社) 荒岱介インタビュー「特殊思想の悲劇としての連合赤軍事件」
- 『叛乱者グラフィティー』(宮崎学著 朝日新聞社) 60~70年代の学生と若者たちの叛乱は何を意味していたのか? 左翼運動とアウトローに投じた自らの生き様を、『突破者』で描き切った著者が、同時代を駆け抜けたかつての「戦友」や「敵」たちと語り、時代の真実をえぐり出す。
- 『破天荒な人々』(彩流社) ニューレフトが最も光り輝いた時期に、自らが滅びることをおそれず、闘いの可能性に賭け、壮絶な生き方をした叛乱世代とのインタビュー 小嵐九八郎/花園紀男/青砥幹夫/古賀暹/望月彰/斎藤まさし/大里晃弘