鹿児島湾
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鹿児島湾(かごしまわん)は、別名を錦江湾(きんこうわん)とも言い、鹿児島県の薩摩半島と大隅半島に挟まれた湾である。海域としては薩摩半島の長崎鼻と大隅半島の立目崎とを結ぶ直線から北側を指す。
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[編集] 地理
面積1130km2、南北約80km、東西約20kmのやや蛇行した形状をなし、北から湾奥部、湾中央部、湾口部の3海域に分けられる。湾奥部と湾中央部の間に活火山である桜島を擁する。平均水深は117mと比較的深く海岸付近の傾斜角が大きい椀形の海底地形となっている。海岸線総延長は約330kmあり、そのうち約60%は護岸など何らかの人工的な措置が施されている。
- 湾奥部
- 面積250km2、平均水深140m、最大水深206m、南北10-20km、東西約20kmにわたる海域。桜島の北側に位置し姶良カルデラと呼ばれるカルデラ地形を構成する。南部には鹿児島湾唯一の有人島として新島があり、北部には神造島または隼人三島と総称される辺田小島、弁天島、沖小島がある。北東部に海底活火山の若尊があり、たぎりと呼ばれる火山性噴気活動が確認されている。天降川、別府川などの河川が流入する。沿岸の自治体は鹿児島市、姶良町、加治木町、霧島市、垂水市。
- 西桜島水道(桜島西側水道)
- 桜島と薩摩半島の間に位置する水深40m、幅1.9kmの水道(海峡)。
- 湾中央部
- 面積580km2、平均水深126m、最大水深237m、南北約30km、東西約20kmにわたる海域。甲突川、神川などの河川が流入する。沿岸の自治体は鹿児島市、垂水市、鹿屋市、錦江町、指宿市。
- 湾口部
- 面積300km2、平均水深80m、南北約20km、東西幅約10kmにわたる海域。知林ヶ島の南側に位置し阿多カルデラと呼ばれるカルデラ地形の東側を構成する。薩摩半島側に山川湾が分岐する。雄川などの河川が流入する。沿岸の自治体は指宿市、錦江町、南大隅町。
[編集] 自然環境
湾中央部に注ぐ鈴川、米倉川、岩崎川の河口付近(鹿児島市喜入地区)に広がるメヒルギの林は日本におけるマングローブ林の北限であり、米倉川、岩崎川河口のそれは国の天然記念物になっている。湾内をイルカが回遊しており、沿岸から時折その姿を見ることができる。また海浜には海亀の産卵場所の南限がある。湾奥部、若尊付近の海底にはサツマハオリムシが生息する。
湾奥部および湾中央部が深く湾口部が浅いため海水の入れ替わりに時間がかかる。また、流入する河川の流域に約90万人の人口を抱えており、生活排水や産業廃水による水質の悪化が進んでいる。年間数回の頻度で赤潮が発生しており、特に1977年(昭和52年)、1985年(昭和60年)、1995年(平成7年)に大きな漁業被害を受けた。1979年(昭和54年)5月に鹿児島湾水質環境管理計画(鹿児島湾ブルー計画)が策定され、周辺地域の下水道普及などの対策が行われている。
[編集] 港湾
[編集] 交通
- 桜島フェリー(桜島桟橋~桜島港)
- 鹿児島市営行政連絡船(新島・新島港~桜島・浦之前港)
- 鴨池・垂水フェリー(鴨池港~垂水港)
[編集] 歴史
鹿児島湾は南北に連なる正断層に沿った地殻の沈降によって形成されたと考えられている。この沈降地形は鹿児島湾の南側にある鬼界カルデラ付近から鹿児島湾、加久藤盆地を経て人吉盆地付近にまで及び、鹿児島地溝と呼ばれている。この地溝に阿多カルデラや姶良カルデラなどの火山地形が加わることによって現在の鹿児島湾ができあがった。約2万5千年前に姶良カルデラで発生した姶良大噴火以前は大隅半島中部に浅い海が広がっており、鹿児島湾と志布志湾が接続していたと考えられている。
桜島は約2万2千年前に鹿児島湾内の火山島として活動を始めた。明治以前は湾内に浮かぶ島であり、島の東側にも水深80m、幅360mの海峡があり瀬戸海峡と呼ばれていた。1914年の桜島大正大噴火によって桜島と大隅半島が繋がり、湾の形状、海流を大きく変えた。
新島は、1779年の桜島安永大噴火の際に海底が隆起して出来た。
ハワイの真珠湾と形が似ていることから、真珠湾攻撃を前にした日本海軍航空隊や連合艦隊が周辺で実戦を想定した入念な秘密演習を行っている。
[編集] 参考文献
- 大木公彦 『かごしま文庫61 鹿児島湾の謎を追って』 春苑堂出版、2000年、ISBN 4-915093-68-9。
- 鹿児島県環境生活部環境管理課 『第4期 鹿児島湾ブルー計画』 鹿児島県、2005年。
- 町田洋他編 『日本の地形7 九州・南西諸島』 財団法人東京大学出版会、2001年、ISBN 4-13-064717-2。