MZ-2200
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MZ-2200(えむぜっと にせんにひゃく)は、SHARPが1983年に発売した8ビットパーソナルコンピュータである。
目次 |
[編集] 概要
- クリーンコンピュータ設計
- 当時のパーソナルコンピュータ(パソコン、当時は「マイコン」と呼ばれることが多かった)の多くは、ROMにBASICが記録してあり、パソコンの電源を入れるとROMのBASICを起動した。しかし、MZ-2200はROMにBASICを持たず、何らかのプログラムを読み込むだけの作業をROMに持たせたため、電源を入れたらまずBASICなどのプログラミング言語(言語)や、ゲームなどのソフトウェアをカセットテープやフロッピーディスクなどから読み込ませる必要があった。この方法の欠点としては、電源を入れるたびに言語を読み込ませる手間と時間が必要であった[1]ことが挙げられる。一方、利点としては、使用することができる言語は一つに限定されず、いろいろな言語を扱うことができ、サードパーティからも、後述のようなユニークな言語が発売された。この設計思想をクリーンコンピュータ設計という。
- MZ-2000の完全上位互換
- コンポタイプMZ
- MZ-2000は一体型であったが、MZ-2200はパソコン本体とディスプレイ・データレコーダを分離し、補助記憶装置と共に、自由に組み合わせることができるようになった。カタログのキャッチフレーズは、「いま発展的コンポ思想を、MZに。」「グリーンか、カラーか。カセットか、フロッピーか……。自由に組めるコンポタイプMZ、登場。」。値段の最も手軽な組合せは、MZ-2200本体+グリーンディスプレイ(MZ-1D12) +データレコーダ(MZ-1T02) で、その標準価格の合計は179,800円である。一般的に購入されたと思われる組合せは、MZ-2200本体+カラーディスプレイ(MZ-1D15)+データレコーダ(MZ-1T02) で、その標準価格の合計は219,800円である。本体の筐体の形・強度から、ディスプレイは本体の上にのせて使うことができた。
- その他
[編集] ハードウェア仕様
- 表示能力
- キャラクタ
- 8×8ドットマトリクス、1000文字(40桁×25行)/ 2000文字(80桁×25行)、2モードソフト切換
- グラフィック
- グリーンディスプレイ使用時 - 3画面(各640×200ドット)、ページ1・2・3およびキャラクタとの混在可能。
- カラーディスプレイ使用時 - 8色1画面(640×200ドット)、ドット単位に8色指定可能、キャラクタとの混在可能。
- キャラクタ
- インターフェイス
- カセットインターフェイス(MZ-1T02専用)
- CRTインターフェイス
- サウンド出力 250mW最大
- 拡張ユニット 4スロット - 詳細は後述。
- 外形寸法 幅440mm × 奥行490mm(拡張ユニット装着時562mm) × 高さ118mm
- 重量 約7kg(拡張ユニット装着時 約8.5kg)
[編集] 標準添付品
[編集] システムソフトウエア
- BASICインタープリタ(MZ-1Z001)
- カラーBASICインタープリタ(MZ-1Z002)
[編集] マニュアル
- BASIC/MONITOR MANUAL
- 主に標準添付のBASICのコマンドをカテゴリー別に解説したマニュアル。
- OWNER'S MANUAL
- BASICテキスト
- BASICをわかりやすく解説したテキスト。MZ-80シリーズで添付され、初心者にもわかりやすく好評だったため、MZ-2200でも添付された。
[編集] その他
- APPLICATONS カセットテープ
- 拡張ユニット
- 4スロット装備。ユーザーにおいてMZ-2200本体の後側に差し込むように取り付けることで使用できる。ディスプレイと専用データレコーダのみの使用であれば拡張ユニットは使用しないので、本体に取り付ける必要はない。
[編集] 周辺機器
[編集] シャープ純正
[編集] ディスプレイ
今日コンピューターのディスプレイといえば、液晶ディスプレイを思い浮かべることがほとんどであるが、その当時、ディスプレイといえばブラウン管型のディスプレイのことであった。カラー表示命令ができたMZ-2200は、赤・緑・青(光の三原色)それぞれ1ビットによるデジタル信号処理をおこない、カラーディスプレイ使用時8色を表現することができた。ディスプレイによっては、テレビチューナーを内蔵するものや、コンピューター画面とテレビ画面をスーパーインポーズ表示することができるディスプレイもあった。
- 12型グリーンディスプレイ(MZ-1D12)
- 2000文字表示のグリーンディスプレイ。標準価格32,000円。
- 14型カラーディスプレイ(MZ-1D15)
- 2000文字、8色表示のカラーディスプレイ。標準価格72,000円。
- 14型TVモニタ(MZ-1D09)
- 標準価格110,000円
- RFコンバータ(MZ-1X08)
- 家庭用カラーテレビをカラーディスプレイとして使用するためのコンバータ。
[編集] 補助記憶装置
当時のパーソナルコンピューターで普及した記録メディアは、オーディオ用のカセットテープであった。また、データ記録用に高い周波数も安定して再生できるような高性能な短時間(片面で5分~15分程度)カセットテープも市販された。プログラムやデータが大きければ、保存時間・読込時間は長くなるため、それに応じた録音時間のカセットテープを用意する必要がある。1本のカセットテープに複数のプログラムやデータを保存することもできる。カセットテープは両面に録音することができることから、プログラム保存時間の倍程度のカセットテープに、同じプログラムやデータを両面に記録保存し、テープの伸びや磁気変質などによる読込みエラーを防ぐ工夫をした市販ソフトも多かった。
記録メディアとしてフロッピーディスクもあったが、ドライブはまだ高価で、メディアも1枚1,000円(5.25インチ2D)を超えたことから、MZ-2200が発売された頃は、さほど普及していなかった。
- データレコーダ(MZ-1T02)
- ミニフロッピーディスクドライブ(MZ-1F07)
- 両面倍密度(2D)の2ドライブフロッピードライブ。記憶容量は2ドライブ使用時560KB。インターフェイス、接続ケーブル同梱。標準価格158,000円。
- クイックディスクドライブ(MZ-1F11)
- クイックディスク(QD、標準価格450円)は3.5インチフロッピーディスクより小さなサイズ(78mm×78mm、厚さ3mm)に、片面64Kバイトを保存、カセットテープのように裏返し、両面で128Kバイトを保存できた、ローディングタイム約8秒という高速なドライブで、「フロッピーの高速性とカセットの経済性を備えた新しい記憶装置」であった。QDを標準搭載したMZ-1500が発売された1984年6月に、MZシリーズ用QDドライブとして外付けドライブも発売、MZ-700やMZ-2000にも接続できた。QD-BASICが添付されたクイックディスクインターフェイス(MZ-1E18(MZ-2200専用)、標準価格9,800円)が別途必要。標準価格24,800円。
[編集] プリンタ
- 80桁シリアルプリンタ(MZ-1P07)
- キャラクターのほか、グラフィックも印字することができた。印字速度は普通文字で120文字/秒。拡大文字・縮小文字・強調文字・アンダーラインも印字できた。複写能力はオリジナル+3枚。インターフェイスはセントロニクス社準拠。標準価格79,800円。
- カラーインクジェットプリンタ(MZ-1P04)
- 120ドット/インチの高解像度7色カラープリンタ。標準価格228,000円。
[編集] その他
- 漢字ROM(MZ-1R13)
- 16ビットボードキットを使用せずに、漢字を表示するためのROMボード。別途、フロッピー供給の漢字BASIC(MZ-2Z021、標準価格10,000円)が必要。標準価格41,800円。
- 16ビットボードキット(MZ-1M01)
- 本体内に装着することで16ビット環境と8ビット環境のマルチCPUマシンに進化させることができた。16ビット時のCPUは8088。128KバイトRAM実装により、より高度なプログラミング環境のほか、漢字ROMボード(MZ-1R08、標準価格29,000円)を装着することにより、漢字表示環境も提供された。標準価格78,000円。
- マークカードリーダ(MZ-80MCR)
[編集] サードパーティ製
[編集] 補助記憶装置
- ミニディスクユニット(LFD-550MZ)
- 東京電子科学機材製。1ドライブ当たりの記憶容量327.68Kバイト。デュアルドライブ(1台に2ドライブ装備)で、4台まで増設可能。本体に接続するにはフロッピーI/Fカード、接続ケーブルが必要。本体128,000円。
- ディスクドライブ(TFP-200)
- 問い合わせ先は天昇電子。コントローラーを分離することにより、機種の異なるパソコンで使用できるコンパチブル設計。0.5Mバイトの5インチ両面倍密度FDD×2、JA551ドライブメカ採用。本体95,800円。
[編集] その他
[編集] ソフトウェア
MZ-2200はMZ-2000の完全上位互換であるため、MZ-2000向けのソフトウェアも動作する。但し、MZ-2000の表示能力はモノクロ[4]であり、MZ-2000向けに開発されたソフトウェアもカラー表示の概念はなかったため、MZ-2200に読み込ませて動作させる場合もモノクロ表示である。MZ-2200発売後に発売されたソフトウェアによっては、カセットのA面をカラー対応のMZ-2200向け、B面をモノクロ対応のMZ-2000向けといった提供をしたものもあった。
[編集] シャープ純正
[編集] システムソフトウェア
型番のハイフンの次が1で始まるものはカセットテープ、2で始まるものはフロッピーディスクによる供給である。
- BASICインタープリタ(MZ-1Z001)
- カラーBASICインタープリタ(MZ-1Z002)
- 上記2つのBASICテープは、本体に標準添付されている。
- 倍精度テープBASIC(MZ-1Z003)
- インタープリタPASCAL(MZ-1Z004)
- システムプログラム(MZ-1Z005)
- マシンランゲージ(MZ-1Z006)
- RS-232C/GP-IBコントロールBASIC(MZ-1Z010)
- ディスクBASIC(MZ-2Z001)
- カラーディスクBASIC(MZ-2Z002)
- 倍精度ディスクBASIC(MZ-2Z003)
- 数値演算の有効桁数が標準BASICよりも高いディスクベースのBASIC。
- フロッピーDOS(MZ-2Z004)
- 標準価格50,000円
- 漢字カラーディスクBASIC(MZ-2Z021)
[編集] サードパーティ製
[編集] システムソフトウェア
クリーンコンピュータ設計により、サードパーティからもユニークなプログラム言語が提供された。
- キャリーラボ(Carry Lab.)
- デービーソフト(dB-SOFT)
- dB BASIC
- dB I BASIC & COMPILER
- マイコンシステム企画
- 不明もしくは未分類
[編集] ゲーム
- エニックス(ENIX)
- キャリーラボ(Carry Lab.)
- 大脱走
- ハイドライド
- MZ-2200向けのソフトウェアの発売がほぼ無くなってから、キャリーラボによる移植で発売された。美しいグラフィックと幻想的な世界観(項目「ハイドライド」より引用)で、MZ-2200向けのゲームソフトのジャンルとしては珍しいアクションロールプレイングゲームであった。
- F2グランプリ
- テクノソフト(TECNOSOFT)
- ナムコ(namco)
- 日本ファルコム(Falcom)
- MONSTER HOUSE
- ハドソンソフト(HUDSONSOFT)
- ブレーンメディア(BrainMedia)
- ALIEN EQUATIONS -宇宙船ガルムーン号の危機-
- 定価3,800円。
- ALIEN EQUATIONS -宇宙船ガルムーン号の危機-
- マイクロキャビン(MICRO CABIN)
- MYSTERY HOUSE II
- ドリームランド
- 不思議の国のアリス
- マイクロネット(Micronet)
- チャンピオンプロレス
- フリッキー
- HARVEST
- 階段によって繋がったフロアに散らばる果物を時間内に全て集めるとクリア。ステージには動きにクセのある虫が追いかけてくるので、ジャンプしたり階段で撒いたりして逃れる。ステージによっては、ブランコやエレベーターなども出てくる。捕まったり、フロアから落ちたりするとミス(失敗)となり、主人公が「あれっ?」としゃべった。MZ-2200はBGM機能がないが、サウンドを細切れに出力することでBGMのように鳴らした。
- 不明もしくは未分類
[編集] その他
- 久留米マイコンセンター
[編集] 関連書籍・雑誌
[編集] 書籍
- 『MZ-2200 HuBASIC』(著者:戸川隼人、発行:サイエンス社、1983年)- 定価2,200円?
- 『MZ-2200・2000・80B・K・C おもしろゲームランド』(著者:エニックス、発行:学研、1984年)- 定価2,200円
- 『MZ-2000・2200ゲーム・ライブラリー 遊びながら覚えるプログラミング・テクニック』(著者:SMCマイコンプロ、発行:新星出版社、1983年)- 定価1,300円
- 『MZ110番 シャープ MZ-1500/700/2200/2000シリーズ編』(発行:ラジオ技術社、1985年)- 定価1,700円
- 『ズバリわかる! BASIC クリーン・コンピューター シャープMZ-2000,MZ-2200』(著者:館野哲哉、発行:誠文堂新光社、1984年)- 定価1,500円
- 『ズバリわかる! BASIC シャープMZ-2000,MZ-2200』(著者:館野哲哉、発行:誠文堂新光社、1983年
- 『楽しく学ぶパソコンBASIC』(編著者:パソコンジャーナル編集部、発行:新紀元社、1983年)
- 『マシン語でゲームを作る本』(著者:前田光男、発行:技術評論社、1983年)
[編集] 雑誌
- 『MZ APPLICATION』(発行:シャープ)
- 機種別、目的別に、ソフトウエアとハードウエアを満載したガイドブック。MZ取扱店で販売されていた。定価300円。
- 『Oh!MZ』(発行:日本ソフトバンク)
- MZシリーズの情報専門誌として発行された月刊誌。MZ-2200が発売された年に発売されたX1シリーズのパソコンや、後に発売されたX68000シリーズのパソコンがMZシリーズより普及したことから、後に誌名を『Oh!X』に変更した。1995年12月号をもって休刊し、それ以後はムックとして数巻発行している。1983年頃の定価は480円。
- 『月刊マイコン』(発行:電波新聞社)
- 『マイコンBASICマガジン』(発行:電波新聞社)
[編集] 注釈
- ^ カセットテープから読み込む場合、数分程度、プログラムによっては10分以上の時間が必要なものもあった。またカセットテープの構造上、テープが伸びたり、折れてしまったり、音声が劣化したりで、プログラムの読み込みが上手くいかないこともあり「テープを巻き戻してまた読み直す」ということを繰り返すことで、パソコンを起動するだけなのに「ひと作業」となることもあった。個人向けのハードディスクはまだ無く、今日のように時間がかかっても数分でパソコンを毎回(ほぼ)確実に起動することが至極当然ではなかったのである。
- ^ 後継機種は新しいCPUを使用することで高速処理・多機能を得ることができたが、今日のデバイスドライバをはじめとする機種による違いを吸収する仕組みもなかったことから、旧機種との互換性を保つことが難しかった。これを解決するため、旧機種と同じCPUも併せて搭載しハードウエア的にスイッチ切替による方法(例えば、MZ-2500やPC-9801VX)、起動時に動作モードをメニューを表示し選択させる方法(例えば、PC-6001mkII)などによって、互換性を保たせたパソコンもあった。
- ^ パーソナルコンピュータの詳細な回路図がマニュアルとして添付されている事は、今日でも珍しいことである。この回路図を読みとることで、パソコンの設計を学んだユーザーも多いことであろう。拡張ユニットなどのインターフェイス部分の掲載もあったことから、純正でない周辺機器のインターフェイスカードを自作したり流用して接続することもできたわけである。特定機器の操作をはじめ、自作のロボットなどを動かしたりして楽しんだ人もいることであろう。
- ^ MZ-2000は10インチグリーンディスプレイを有した一体型パソコンなので、厳密に言えばモノクロ表示ではなくグリーン表示である。MZ-2000でカラー表示をすることもでき、そのために、グラフィックボード(MZ-1R01、標準価格39,000円)、グラフィックメモリ(MZ-1R02、標準価格8,000円)、カラーディスプレイが別途必要である。
[編集] 関連項目
- アイビット電子株式会社
- シャープ株式会社
- 現在は、MZシリーズのパソコンに関する情報の掲載はない。