ん廻し
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ん廻し(んまわし)は古典落語の演目の一つ。原話は寛永5年に書かれた笑話本、『醒睡笑』の中の一遍である『児の噂』。
上方落語が発祥で、特に桂春団治代々の口演や6代目 笑福亭松鶴の口演が有名。東京には明治の頃に移入され、近年では6代目三遊亭圓生が得意にしていた。別題は『寄り合い酒』。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] あらすじ
『宵越しの銭は持たない』町内の若い衆が、暑気払いを思いつくが金がない。仕方がないので、めいめい肴を持ち寄って呑む事にしたが、何しろ不慣れな男ばかりが集まったものだから大混乱になってしまう。
結局、持ち寄った食材の殆どを駄目にしてしまい、大騒ぎしているところへ豆腐屋から田楽が焼き上がってきた。
気を取り直した兄貴分が『運がつくように、「ん」がつく言葉を一つ言うごとに田楽を一枚進呈する』ゲームを提案。
食い気に染まった仲間は必死に頭を絞り、『人参と大根』、『万金丹の看板』と名・珍回答を続発する。
そんな中、一人の男が『30枚はもらう』と大見得を切った。
「せんねん、しんぜんえんのもんぜんにげんえんにんげんはんみょうはんしんはんきんかっぱんきんかんばんぎんかんばん、きんかんばんこんぼんまんきんたんきんかんばんこんじんはんごんたんひょうたん、かんばんきほうてん」
でまかせかと思いもう一度言わせて見るが、結局また成功されて都合56枚も進呈する事になってしまう。
当然、こうなると『もっとすごい事を言ってやろう』と考える輩が出現する。負けずに『算盤を用意しろ』と言い
「半鐘がジャンジャン、ボンボンボン、あっちでジャンジャンジャンジャン、こっちでジャンジャンジャンジャンジャン、 消防自動車が鐘をカンカンカンカン…」
延々と言い続ける男に辟易した兄貴分は
「生の田楽を食わせてやる」
男が文句を言うと
「今のは消防の真似だろ? だから焼けない内に食わせるんだ」
[編集] 料理風景
今回掲載したあらすじは、後半の『ん回し』に重点を置いた型を掲載しているが、これとは別に前半の『料理風景』に重点を置いた型も存在する。
この場合は『寄り合い酒』と呼ばれる事が多く、「男の料理」を皮肉った内容になっている。なお、ここに重点を置き、後半の【ん回し】をやらない演者もいた。
[編集] 料理の顛末
食材 | 入手経路 | 顛末 |
---|---|---|
数の子 | 乾物屋で数の子の上に風呂敷を広げ、たたんだ時に一緒に持ってくる | 煮てしまう |
棒鱈 | 乾物屋で店主の目を盗み、背中に隠して失敬 | 鰹節削り器でかりおろしてしまう |
鰹節 | 乾物屋の子供に鬼ごっこをやろうと提案し、『角の代わりにする』と言って持ってこさせた上で散々脅かして追い払う | 長すぎるので下記に別記 |
鯛 | 魚の行商の籠から犬が盗んだのを、隣町まで追いかけて奪い取る。 | 長すぎるので下記に別記 |
- 鰹節の顛末
- 全部一遍にかいてしまい、大釜でグラグラと煮立ててしまう。しかも、担当者は『出し殻』の方を使うと勘違いしており、不要と思った汁は行水に使い、バケツに一杯だけ残して後は捨ててしまっていた。しかも、『残りのバケツ一杯をもってこい』と言うと、『今、褌を洗濯しているのがいる』と言う返事。『絞って持っていこうか?』と言われて兄貴分は唖然。
- 鯛の顛末
- 料理していると何処かから犬がやって来て、ちょんと座って動かない。兄貴分に報告すると『そんなのは頭を一発食らわして追っ払え』と言う返事。兄貴分は蹴りを食らわせろと言ったつもりだったが、担当者は勘違いして鯛の頭を食べさせてしまう。その後も胴・尻尾と次々にやってしまい、とうとう全部犬の腹へ。