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上方落語 - Wikipedia

上方落語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

上方落語(かみがたらくご)とは、大阪京都を中心とする関西圏で主に演じられる落語

目次

[編集] 「上方落語」の語源

「上方落語」という言葉は、花月亭九里丸著書の『寄席楽屋事典』によると、1932年(昭和7年)7月1日発行の雑誌『上方』十九号で初めて使われた。それまでは「大阪落語」、「京都落語」と呼ばれていた。現在では京都落語が衰えてしまったので、大阪落語のことを指して上方落語と呼んでいる。

[編集] 歴史

[編集] 江戸時代まで

江戸時代中期に、京都の初代露の五郎兵衛や大阪の初代米沢彦八が道端に舞台を設け、自作の噺を披露して銭を稼いだ「辻咄」(つじばなし)が落語の起源といわれている。寛政から文化にかけては浄瑠璃作家から転じた芝屋芝艘や、京都から大阪へ下って御霊などの社地で噺を演じた松田弥助が台頭。弥助一門には松田弥七、2代目松田弥助や「桂一門の祖」初代桂文治がおり、とりわけ初代文治は大阪で初めて寄席を開き、また声色鳴物道具入りの芝居話を創始したことで知られる。文治は3代目、4代目と東西に並立するが、上方4代目の弟子である桂文枝は文治を継がず、以来上方桂一門は文枝を止め名とした。初代文枝は「三十石」などで人気を博し、その門下の初代桂文之助(のち2代目曽呂利新左衛門)、桂文都(のち月亭文都)、桂文三(のち2代目桂文枝)、初代桂文團治も人気・実力ともに高く、「四天王」と称された。

桂一門と並んで現代の上方落語の主力門派を成す笑福亭一門は、始祖とされる笑富久亭松竹の詳細が明らかでないが、天保安永期には既に成立しており、この両門派に立川、林屋(林家)を加えた4門派が明治期までの上方落語の主流を形成していた。上方林屋一門は江戸の初代林屋正蔵の孫弟子に当たる初代林屋正三が故郷岡山に近い大阪に腰を据えたのが発端で、明治維新前後の時期までは最大勢力であったが、やがて桂一門に取って代わられていく。

[編集] 明治時代

明治期に入ると、2代目文枝襲名をきっかけに四天王は割れ、2代目文枝らを中心に滋味で噺をじっくりと聞かせる「桂派」と、文都、2代目文團治(のち7代目桂文治)、初代笑福亭福松、3代目笑福亭松鶴らを核とする派手で陽気な「三友派」が鼎立。 この他諸派がたくさん出来ては消えつつも、2代目文團治の7代目文治襲名前後に全盛期を迎えた。この間、大阪では3代目桂文三、初代露の五郎、3代目桂文團治、2代目林家染丸、初代桂枝雀、初代桂ざこばなどの名人上手を輩出。京都では2代目曾呂利新左衛門、2代目桂文之助、初代桂枝太郎が活躍した。また東京から初代橘ノ圓2代目三遊亭圓馬5代目翁家さん馬らが移住し、寄席を盛り上げた。

[編集] 大正から昭和初期まで

大正から昭和初期にかけては初代桂春團治2代目桂三木助、3代目三遊亭圓馬、2代目立花家花橘、初代桂小春團治(のち舞踊に転じ花柳芳兵衛)らが人気を集めたが、やがて横山エンタツ花菱アチャコなどの新興の漫才の人気や吉本興行部による定席の寄席や諸派の買収、看板落語家の相次ぐ他界もあって衰亡の危機にさらされた。

この原因としては、落語家同志の内部抗争でまとまりが無かった事、漫才がニュース性のある新しい笑いを創造(エンタツ・アチャコがラジオの大学野球の中継から『早慶戦』を作ったのが好例)したのに対し、旧態依然の古い芸に安住してファンが離れ、吉本興行部(なかんずく林正之助)に商品の価値が無いと見なされた事などがある。そのなかで、唯一、新しい笑いを提供し多くのファンを獲得したのが初代春團治であった。だが、いかんせん孤軍奮闘の感を禁じ得ず、春團治の死によって上方落語はその王座を漫才に譲ったと見られていた。

この危機にあって5代目笑福亭松鶴4代目桂米團治らは「楽語荘」というグループを結成し、落語会「上方はなしを聞く会」の運営や雑誌『上方はなし』の発行などを通じて上方落語の保存・継承に尽力した。

[編集] 太平洋戦争後~昭和30年代

太平洋戦争終結後の数年間、5代目松鶴、4代目米團治、2代目花橘、2代目桂春團治らは大阪ミナミの「戎橋松竹」や京都・新京極の「富貴」といった新興の演芸場を拠点としつつ、関西各地でも落語会を開き、新人の育成にも力を注いだ。これらの大看板は昭和20年代に相次いで亡くなるが、彼らの下に参じた6代目笑福亭松鶴(5代目松鶴の子)、3代目桂米朝3代目桂春團治(2代目春團治の子)、5代目桂文枝らは「さえずり会」というサークルを結成し団結。「戎松日曜会」「宝塚落語会」などの若手勉強会への参加や、初代橘ノ圓都、3代目笑福亭福松、桂右之助、4代目桂文團治桂南天、桂文蝶、三桝紋三郎ら引退同然だった古老に噺の伝授を乞うなど、精力的に活動した。古老の中でも圓都は持ちネタ数が飛びぬけて多く、上方のみならず東京の噺家にも積極的に稽古をつけるなど古典落語の継承に努め、晩年は高座に復帰し1972年(昭和47年)に没するまで、明治の上方落語を最後まで残した。

一方、1951年(昭和26年)9月1日新日本放送開局に始まる民間放送ブームの中で、NHKを含めた各放送局は内容の充実を図って「コンテンツとしての上方落語」と「タレントとしての落語家」に着目。番組と連動した落語会の主催や、専属タレントとして落語家と契約を交わすなどした。米朝や初代森乃福郎らがこの流れに乗って知名度を上げたが、これは上方落語界にもプラスに働いた。とりわけNHKと朝日放送は積極的で、NHKは心斎橋日立ホールを拠点に「放送演芸会」と連携した「上方落語の会」を開催。朝日放送も「ABC上方落語をきく会」を主催し、のちには「ABCヤングリクエスト」内に「ミッドナイト寄席」というコーナーを設けて「上方落語をきく会」での演目を放送した。

そのような中で1959年(昭和34年)に3代目桂春團治、1962年(昭和37年)に6代目笑福亭松鶴と大名跡が相次いで復活。この二人とほぼ同時期に入門した2代目露の五郎兵衛2代目笑福亭松之助3代目桂文我、戦前入門ながら彼らとは同世代の3代目林家染語楼、昭和30年代前半入門組の4代目桂文紅3代目桂米紫月亭可朝などの中堅も力をつけてくるなど、落語家の人数も着実に増え始め、上方落語は奇蹟的な復興へと向かっていった。

[編集] 昭和40年代~昭和末

昭和40年代に入ると、松鶴、米朝、春團治、文枝(当時は3代目小文枝)らが積極的に採り続けてきた弟子たちが、テレビ時代・深夜放送ブームを背景に台頭。可朝、笑福亭仁鶴桂三枝笑福亭鶴光2代目桂春蝶笑福亭鶴瓶、2代目桂ざこば(当時は桂朝丸)らが注目を浴びる。ラジオによる寄席中継が、従来の漫才や東京落語から、上方落語中心になったのもこのころで、1971年(昭和46年)10月には朝日放送が開局20周年を記念して「1080分落語会」を開催。朝7時から深夜1時まで計56席(講談1席含む)が生放送で流された。ほかラジオ大阪の「オンワード落語特選」、FM大阪の「上方FM寄席」などが、若者を中心に多くのファンを開拓した。

ー方では1966年(昭和41年)の「米朝スポットショー」を皮切りに、大ホールでの独演会が行なわれるようになり、特に米朝は放送タレントとしての知名度のフォローもあって独演会や一門会を展開。文枝も「小文枝の会」に集うファンと一体となった独演会を東阪で開催した。当時東京では大学生を中心に上方落語ファンが増えており、やがてこのムーブメントは全国的に広がっていった。この頃から松鶴、米朝、春團治、文枝に対する評価は高まり、やがて彼らは「上方落語の四天王」と呼ばれるようになっていく。

落語人気とともに、戦前は「天狗連」と呼ばれた素人落語のサークルも次々と生まれたが、特に大学生から成る「落語研究会」が最もさかんであった。ここから多くの俊才がプロの門をくぐって、現在の上方落語界を支えている。

1986年(昭和61年)、戦後の上方落語を牽引してきた6代目松鶴が他界する。前後して2代目桂枝雀が台頭し、いわゆる「MANZAIプーム」の渦中にありながら、のちに「爆笑王」と呼ばれる程の人気を築く。ここに至って上方落語は復興期を終え、次の時代へ向かうこととなる。

[編集] 平成期

平成に入っても、落語、漫才などいわゆる「お笑い(芸)」に対する世間の関心は下がらなかったが、「MANZAIプーム」以降、お笑いの主舞台は寄席から放送メディアに移る。その反面演芸番組は減少し、有力落語家のバラエティ番組への起用が相次いだ。この結果、落語家は「お笑い芸人」という抽象的名称の下に漫才師・漫談家・コント芸人と観客・視聴者レベルでボーダーレスとなり、落語の独自性を示す機会は狭まっていった。放送タレントとしてのお笑い芸人(実質上は漫才・漫談・コント。ただし彼らとて放送メディアで本来の芸を披露する機会は少ない)を希望する人材は多いものの、具体的に落語の世界に入る者は、昭和40年代に比べると少なくなっている。

これは東西とも同様の現象であるが、上方落語においては1999年(平成11年)の2代目枝雀の早世の影響も大きい。カリスマ性を持った人気者だった枝雀の穴は、容易に埋められるものではなかった。また、7代目笑福亭松鶴、2代目桂歌之助桂喜丸4代目林家染語楼桂吉朝といった、将来を嘱望されていた戦後生まれの落語家の相次ぐ他界も痛手であった。そのような中で、「六人の会」などを通じた笑福亭鶴瓶の活動や、4代目桂文我による古典の発掘作業、海外公演を積極的に進める3代目桂小春團治笑福亭鶴笑(マペット落語)、戦後初の落語専門定席「天満天神繁昌亭」(後述)の開設などは注目されるところだろう。

なお、2007年には桂歌々志の3代目桂歌之助襲名、桂春菜の3代目桂春蝶襲名などのイべントが控えている。

[編集] 江戸落語との違い

[編集] 言葉

主に関西弁を用いるため、近畿圏外出身者がその会得に苦労する点でもある。噺の登場人物によって、京都弁や大阪弁などを使い分ける。また近年は、自身の出身地に由来する方言(和歌山弁など)で演じる落語家もいる。

江戸落語では上方の言葉を話す人物が多く出るが(例「御神酒徳利」「金明竹」「三十石」「祇園会」)、上方落語では江戸弁はあまり出ない。「ざこ八」や「江戸荒物」くらいである。戦前までは言葉や芸風の違いで、上方落語は東京の客層には受け入れてもらえなかったが、戦後マスコミの発達で大阪の言葉が東京にも浸透し、初代桂小文治(7代目文治(2代目文團治)門下)、2代目三遊亭百生(初代桂文我門下)ら在京の上方落語家の努力や前述の「上方落語の四天王」の活躍で、東京でもさかんに聴ける様になった。

[編集] 演目

古典落語については、3代目柳家小さんらによって多くのネタが東京に移植され、逆に東京から上方に移植された噺もある。そのため、同じ内容でも上方落語と江戸(東京)落語で題名が異なる噺や、「饅頭こわい」のように中身まで異なる噺もある。ただし片方にしかない噺については、東西交流の進んだ太平洋戦争後はこの限りではない。

  • 江戸→上方:「長屋の花見」(同「貧乏花見」)、「粗忽の釘」(同「宿替え」)、「反魂香」(同「高尾」)、「かぼちゃ屋」(同「みかん屋」)、「締めこみ」(同「盗人の仲裁」)「唐茄子屋政談」(同「南京屋政談」または「なんきん政談」)
  • 上方→江戸:「時うどん」(東京では「時そば」)、「寝床」、「ちりとてちん」(同「酢豆腐」)、「骨つり」(同「野ざらし」)、「桜の宮」(同「花見の仇討」)、「累草子」、「饅頭こわい」、「地獄八景亡者戯」(同「地獄めぐり」)、「宿屋仇」(同「宿屋の仇討」)、「高津の富」(同「宿屋の富」)、「近日息子」、「らくだ」、「子ほめ」など。
  • 上方のみ:「三十石」、「三枚起請」、「百年目」など。
  • 江戸のみ:「二番煎じ」、「強情」、「景清」など。
詳細は古典落語を参照

[編集] 旅ネタ

上方落語の中心をなす「旅ネタ」は、「東の旅」、「西の旅」、「南の旅」、「北の旅」の四つに分かれる。特に「東の旅」は全てをきちんと演じると優に半年かかるという大河落語であり、入門したての落語家が口馴らしとして教えられるが、中には「三十石」のようにかなりの技量を要するネタもある。

  • 東の旅:本題「伊勢参宮神乃賑」。「発端」、「煮売屋」、「七度狐」、「軽業」、「三人旅」、「運つく酒」、「矢橋舟」、「宿屋町」「こぶ弁慶」、「三十石」(「三十石夢乃通路」)など現存する噺が最も多い。二人(又は三人)の男が大阪から伊勢神宮に参り、近江、京を経て大阪に戻る。
  • 西の旅:「明石名所」、「兵庫船」(「兵庫渡海鱶魅入」)。金刀比羅宮参詣が主題。
  • 南の旅:「紀州飛脚」
  • 北の旅:「池田の猪買い

このほかの旅ネタには、冥土の旅に「地獄八景亡者戯」、海底の旅に「小倉船」(「竜宮界竜の都」)、天空の旅に「月宮殿星の都」、異国の旅に「島巡り」(「島巡り大人の屁」)があり、いずれも、奇想天外な内容ではめものを用いた派手な演出が見られる。

[編集] 人情噺

落とし噺(狭義の落語)と並んで江戸落語の軸を成す人情噺(狭義の人情噺。内容が講談に近く、サゲがない。「牡丹灯篭」、「文七元結」、「真景累ヶ淵」など)は、上方落語には存在しないと言ってよい。広い意味での人情噺に含まれるとされる「立ち切れ線香」、「ざこ八」、「大丸屋騒動」などは落とし噺である。ただし、「鬼あざみ」のように例外的にサゲがつかないネタもある(講釈から移植されたものなど)。

東西交流の進む現代では、人情噺を上方風の演出で口演する落語家がいるので、「上方には人情噺はない(少ない)」という原則も崩れつつあるが、総体的には上方の演目は落とし噺が中心である。

[編集] 芝居噺

歌舞伎をテーマにした上方落語には

1. 歌舞伎の芝居をそのままに演じるやり方:「加賀見山」「本能寺」「自来也」「綱七」

サゲ:普通のサゲが用いられる場合と、幕切れのあと、「やあれ、日本一だっせ。日本一」「やかましなあ。あんさん。日本一って言うてんと、成駒屋、葉村屋言うて誉めなはれ」「いいえな。わたい、日本橋一丁目の薬屋の者だすねやが、ここで店の宣伝しょう思いまして。やあれ、日本一!」すると小屋の若いもんが来て「こら。日本一の薬屋ておのれかい」「へえ」「こっちへこい」「もうし、何しなはんねん!」「二三丁ほど振り出したるんじゃ」とサゲるパターンとがある。

2. 普通の落語から芝居になるやり方:「昆布巻芝居」「蛸芝居」「蔵丁稚」「質屋芝居」「足あがり」

サゲ:ここでは普通のサゲである。

の2種類に分別される。

江戸の芝居噺の演出は人情噺の途中から一転、衣装を引き抜き背景に書割を設けるが、上方はそのような演出は用いない。明治期に初代桂文我、昭和に入って初代桂小春團治、東京に移った桂小文治などが得意としていたが、上方落語や上方歌舞伎の衰退などが原因で、現在ではその殆ど(特に1. のやり方)が絶滅している。ただ、初代小春團治が花柳芳兵衛として舞踊家に転じたのち、芸の伝承のためNHKに幾つかのネタを映像として収録させており、現在、桂米朝らがそれを元に「本能寺」や「そってん芝居」などの復活を試みている。

[編集] 新作落語

昭和に入っていくつかの新作落語が東西の落語界で作られたが、上方では4代目桂米團治作「代書」(「代書屋」とも)、3代目桂米朝作「一文笛」、3代目林家染語楼作「青空散髪」、三田純市作「まめだ」などが古典の範疇になっており、一部の演目は東京でも演じられている。現在は、桂三枝(「妻の旅行」、「鯛」、「ゴルフ夜明け前」などを創作)を中心に「創作落語」の名でさかんに作られている。「御膳しるこ」(「改良ぜんざい」→「文化しるこ」→「ぜんざい公社」→「マキシム・ド・ゼンザイ」。元は江戸落語からの移植)のように多くの演者によって手が加えられていくうちに演題が変わっていったものもある。

小佐田定雄一門のように専業の落語作家が存在するのも特徴である。2代目笑福亭松之助は「明石光司」、4代目桂文紅は「青井竿竹」の筆名で、新作を手がけていた。

[編集] 登場人物

噺の登場人物は、喜六、清八、おさき、源兵衛、家主、医者(「赤壁周庵」の名が多い)など。

喜六(喜イ公、喜イさんとも)は、江戸の「与太郎」にあたる「アホ」役だが、生業(下駄屋がよく出る)を持ち、妻帯(妻の名は「おさき」「お松」がよく用いられる)している点が「与太郎」と異なる。性格は、与太郎が天然の馬鹿と設定されることが多いのに対し、どことなく醒めたところがみられる。

江戸落語によく出てくる熊五郎、八五郎は、上方では喜六・清八の役どころとなる。上方で熊五郎、八五郎の名が登場するのは「らくだ」「へっつい幽霊」に「脳天の熊五郎」(「らくだ」では「弥猛(ヤタケタ)の熊五郎」とも)、「八五郎坊主」に「八五郎」があるくらいである。また江戸落語「三軒長屋」などに出てくる大工の棟梁は、上方では手伝い(テッタイ)の又兵衛として登場する。

時代設定を特に定めない、あるいは庶民にも名字を名乗ることが許された明治以降に置いた演出では、演者にゆかりのある噺家の本名に因みかつ一般的な姓が出る場合がある(例えば6代目松鶴一門なら「竹内さん」、林家一門なら「大橋さん」「岡本さん」)。

[編集] 道具

落語では一般的に扇子手拭を小道具として用いるが、上方落語でしか用いない小道具として以下のものがある。

  • 見台(けんだい):演者の前に置く小さな机。書き物机や湯船、布団や床といったものに見立てる。もっとも、演じる噺によって使わない場合や、滅多に使わない落語家もいる(3代目桂春団治、2代目桂枝雀、桂三枝など大きな動きのある演目をする落語家など)。
  • 小拍子(こびょうし):小さな拍子木。普段は見台の上に置かれており、鳴らすときは左手で小拍子を持ち、見台を打つ。噺の合いの手などに使ったり、雰囲気を変えるために使ったりする。また、舞台の袖でお囃子や鐘の音など効果音を出す裏方に合図を送るためにも使う。前座の若手が、調子をとって小拍子を打ち鳴らしながら口上を述べて客を集める用途もある。変わったところでは、創作落語でパソコンのマウスに見立てて使用した例(桂文珍)がある。
  • 膝隠(ひざかくし):演者のひざを隠す小さな衝立。

通常、以上の3点はセットで用いられ、舞台への出し入れで持ち運ぶ際は、見台の上に膝隠しを乗せる。

今日では普通に使用されている、演者の名前を書いた名ビラやそれを掲げておく台のメクリ明治時代まで、出囃子は昭和初期まで、上方の寄席でしか使用されていなかった。

[編集] はめもの

口演中に演出としてお囃子を盛り込む点も江戸落語との違いである。このお囃子をはめものと呼ぶ。

たとえば、「新町にまいります。その陽気な事」(「三枚起請」)と演者が言うと、楽屋にいるお囃子が三味線を弾き唄を唄って華やかな遊里を表現する。逆に「ふたなり」「皿屋敷」などで登場人物が寂しい夜道を歩くときは、三味線が静かに弾かれ寂しい情景を表現する。

以上のように情景描写に使われる事が多いが、「野崎詣り」などでは舟が移動するなどの擬音に用いられる。「紙屑屋」「辻占茶屋」などの「音曲噺」では演者と掛け合いの型となる。「蛸芝居」「質屋芝居」「本能寺」などの芝居噺では、歌舞伎の下座音楽となる。

桂文珍はコンピューターの機械音を用いる事があるが、これもはめものの一変形である。

お囃子奏者は「下座」あるいは「ヘタリ」とも呼ばれ、三味線奏者と太鼓・笛などの鳴物奏者で構成される。三味線奏者は専業だが、鳴物奏者は若手の落語家が勤めることが多い。三味線奏者は、戦後の後継者難から、選択無形文化財に指定された林家トミ(2代目林家染丸の妻)の没後滅亡の危機に晒されたが、3代目桂米朝が自身の番組『米朝ファミリー 和朗亭』(朝日放送テレビ)で取り上げたことや、4代目林家染丸らによる後進育成活動などにより徐々に増え、2006年12月現在、上方落語協会会員だけでも11名を数える。現代の代表的な三味線奏者としては内海英華、かつら枝代(2代目枝雀の妻)、林家和女(5代目林家小染の妻、3代目桂あやめの姉)らがいる。

[編集] 制度

真打制度大正時代に一旦廃止され、戦後、上方落語協会の部外秘の内規として復活したが、昭和40年代の上方落語ブームによって有名無実化した。 天満天神繁昌亭の開設を機に、桂三枝上方落語協会会長が真打制度を復活させる計画だったが、反対意見が多く断念した。

現在は香盤(上方落語協会の内規)が真打制度の代替として存在し、芸歴5年以上を中座(江戸落語の二つ目に相当)、15年以上を真打と同格としており、真打相当からA、B、Cのランクに分かれている。 よって通常上方落語で「前座」などの言葉を用いる際は、出番を表す言葉として使われることが多い。 順番は以下のとおり。

  • 前座(ぜんざ):勉強中の若手が出る。名ビラや座布団を返すなどの雑用もこなす。元は、仏教の高僧が説教をする際、出番前に話をする修行僧を「前座(まえざ)」と呼んだことに由来する。
  • 二つ目三つ目(以降、四つ目……と適宜続く)
  • 中トリ:仲入り(休憩)直前の演者を指す。
(仲入り)
  • カブリ:「かぶりつき」、「ツカミ」、江戸落語では「くいつき」とも言う。
  • シバリ:江戸の「膝前」とも。色物など。だれ始めた客を縛り付ける、という意味から。
  • モタレ:「膝がわり」とも。
  • トリ:「主任」とも。その会の責任者。「売り上げ金をとる」、「興行の真をとる」などの意味合いから。
  • 追い出し:「バラシ」とも。退場する客がはけるまでの間、軽い噺でつなぐ役割で出演する。現在では稀。

[編集] 所属団体

東京の落語家は、概ね落語協会落語芸術協会といった所属団体によって色分けされているが、上方の落語家は、戦後の経緯から、吉本興業松竹芸能米朝事務所などの所属芸能事務所によって色分けされている。各事務所には、以下に示すように基本的に一門単位で加入する事が多いが、一門の多数とは異なる事務所に属したり(笑福亭仁鶴、月亭可朝、笑福亭笑瓶など)や個人事務所を構えたり(桂文福、4代目立花家千橘など)、フリーで活動する落語家もいる。

  • 米朝事務所-3代目桂米朝一門(月亭一門を除く)
  • 松竹芸能-6代目笑福亭松鶴一門、3代目桂春団治一門、森乃福郎一門
  • 吉本興業-5代目桂文枝一門、林家一門、月亭一門のうち月亭八方一門
  • 露の五郎兵衛事務所-2代目露の五郎兵衛一門

しかし、大多数の落語家は上方落語協会の会員であり、天満天神繁盛亭(後述)への出演や「彦八まつり」への参加などでは事務所の枠を超えて協力し合っている。この事もあり、漫才やコントなどの他の上方演芸ではよく見られ、テレビ番組の出演者編成でも時にネックとなる『所属芸能事務所間の壁』というものについても、落語界では決して絶無ではないがそれほど高くないとされている。

上方落語協会とは別の落語家団体としては関西落語文芸協会がある。これは四天王(特に6代目松鶴)との確執などで上方落語協会を脱退した3代目林家染三が設立したものである。

なお上方演芸全般の組織として関西演芸協会があり、落語家も多数所属する。2006年12月現在の会長は落語家の4代目桂福團治である。

[編集] 定席

[編集] 歴史

[編集] 明治から昭和初期まで

明治時代から昭和初期の大阪市内、特にミナミ法善寺周辺には、北側に三友派の象徴であった「紅梅亭」(旧称「今嘉の席」「泉熊の席」。後に吉本興業が買収し「西花月亭」)、南側に桂派の象徴であった「南地金沢亭」(同じく吉本の買収後「南地花月」)が存在ししのぎを削った。

他にもキタ北新地の「永楽館」(同じく吉本の買収後「北新地花月倶楽部」)はじめ、上本町堀江松屋町、新町、大阪天満宮界隈などに十数軒の落語専門定席が存在していたが、天満宮の「第二文芸館」(同じく吉本の買収後「天満花月吉川館」)を皮切りに順次吉本に買収された事により、次第に漫才中心の興行内容にシフトしていった。

太平洋戦争時は戦地への慰問や落語家の高齢化に伴い寄席も一日4時間ほどしか開演していなかった。足りない芸人などは東京吉本から、柳家金語楼柳家三亀松等を呼び寄せ興行をなんとかつないでいた。しかし戦争の激化により一部は閉鎖され、残った寄席も大阪大空襲によって灰塵に帰した。

[編集] 太平洋戦争後

1947年、ミナミに「戎橋松竹」(通称「戎松」)が開場。その後も戎松の後身の「千日劇場」や、松竹芸能系の「角座」「浪花座」、吉本興業系の「なんば花月」、キタに「うめだ花月」「トップホットシアター」、新世界に「新花月」、京都・新京極に「富貴」「京洛劇場」「京都花月」、神戸・兵庫駅前に「寄席のパレス」、新開地に「神戸松竹座」などが新設されたが、いずれも漫才との混成演芸場であり、落語の定席とは言い難かった。

落語専門定席の不在が上方落語の滅亡につながる事を懸念した上方落語協会は、会長笑福亭松鶴の主導の下、南区千年町の島之内教会を借りて、1972年(昭和47年)2月より、月5日の「島之内寄席」を開催。芸能事務所や放送局(当時、一部の名のある落語家は放送局と専属契約を交わしていた)の枠を超えた定席として位置づけたが、会場側の都合によりわずか2年で潰えてしまう(「島之内寄席」自体は現在も落語会として存続)。

その後も専門定席の構想が浮上しては消えていったが、上方落語協会が桂三枝体制に入ると具体化し、2006年平成18年)9月15日に「天満天神繁昌亭」が大阪天満宮境内付近に開席。「島之内寄席」が島之内教会を離れて32年、大阪大空襲から61年を経て落語専門定席は名実共に復活した。

なお、純然たる落語専門定席ではないが、「なんばグランド花月」、「B1角座」などの演芸場でも落語のプログラムが組み込まれ、大阪府立上方演芸資料館(ワッハ上方)、国立文楽劇場などの公立文化施設でも落語会が行なわれている。。

[編集] 地域寄席

落語定席の復活がなかなか実現しない一方で、昭和40年代より地域に密着した勉強会や自主公演がさかんに行われた。これがいわゆる「地域寄席」であり、1972年8月から1992年(平成4年)8月まで3代目桂米之助が主催した「岩田寄席」(東大阪市)がその始まりとされる。現在では「田辺寄席」(大阪市)、「もとまち寄席恋雅亭」(神戸市)、「尼崎落語研究会」(尼崎市)、「京都市民寄席」(京都市)をはじめ数多く行われ、上方落語普及と演者の修業の場として活発な活動を行っている。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

[編集] 出典

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