インターネットスラング
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インターネットスラングは、文字通りインターネットで使用されるスラングであり、ネットワーカーの間で使用されている。
ただしスラングの常として発祥が不明確で、パソコン通信時代から使われている言葉も少なくないため、パソコン通信時代から見られたものはパソコン通信とインターネットの両方の意味を内包し、ネットスラングと表現する者も見られる。或いは、単にスラング全般のインターネットコミュニティ上での利用や引用に過ぎない場合や何らかの娯楽作品などよりの引用もあるが、この部分は割愛する。本項では主にコンピュータネットワークのサービス上に見出されるものを例として示すが、必ずしもコンピュータなど情報処理技術や、それらを基盤とする通信媒体に固有の制約に密接に関係する訳ではない(後述)。
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[編集] 概説
これに属する語は、主にインターネットコミュニティでのみ使用される隠語(ジャーゴン)である。その多くはバズワードの域を出ないが、一部は一般に認知されてマスメディア上で取り扱われることもある。米国などにおいてはLeet speakのような類似する語もあり、同時多発的なサブカルチャー現象の一端と言えよう。
チャットや電子掲示板、あるいは電子メールでユーザー間の交流から生まれた語ではあるが、2000年頃からはインターネット上の広告にも一部含まれ、このような隠語や俗語に敏感な層にアピールしようとする動きも散見される。
これらの語は、インターネット上のコミュニティを離れた場合には、オタクやマニア同士の会話でしか用いられない傾向が強く、実際の面と向かって会話する場合には殆ど聞かれない。インターネットスラングは「目で文章や文字を読む」というインターネットコミュニティの特性からか、声に出して読むことはあまり想定されておらず、中には表記からは類推出来ないような語も見られる。
日本語によるインターネットスラングの中で、電子掲示板サイト2ちゃんねるを中心に用いられるものは2ちゃんねる用語の項目に詳しい。ただしこれら2ちゃんねる語の一部はあめぞうやパソコン通信時代から引き継がれたものも見られ、コンピュータネットワークのサービス上で発生した流行語の一種ともいえよう。
2ちゃんねる用語とは言っても、その一部は2ちゃんねると全く関係のないようなサイトでもしばしば散見されるほか、これが他のサブカルチャー中に取り込まれているケースもあり、インターネットスラングとは言っても、その成立にインターネット以前のメディアが関連していたり、またはインターネット経由で流布された別起源のバズワードである場合も含まれ、しばしばこの境界は曖昧である。
[編集] 分類
以下に挙げる分類は、便宜的な物である。使っている当時者らは慣習的に使っているだけで、特にそういう意識も無い場合も多い。その一方で幾つかの分類に跨る語もみられる。
- 略字・略語
- これはパソコン通信時代からその類型が見出されるが、キー入力の遅い者などが率先して使う傾向もあり、主にチャットやインスタントメッセージ上で発達した語といえよう。これらでは簡便な入力を意図したもので、感情表現に日本語入力システムに予め登録された顔文字を使う形態もこれに含まれるかもしれない。
- 誤入力・誤変換・代替語・置換文字
- キー入力のミス(タイポ)や、日本語など入力変換の際の見落とし(誤変換)などから発生したものでは、本来は偶発的に発生したものが、意図したかのように興味深い文字列となっている場合に好んで用いられるようになった物がある一方、禁止ワードとして入力が制限される言葉の代替として意図的に誤変換したものなどがある。例えば攻撃的な文言をシステム上で差し止めてしまう電子掲示板などでは、様々な代替語が発生した。この他にも不正アクセスや著作権法違反などといった実質的に犯罪や、あるいはコミュニティ上で嫌われる行為を行う上での隠語や符丁として、やはり意図的に誤変換しているケースも少なくない。特にWarezやブートレグに関する語では、犯罪行為の露見を恐れた側が、検索エンジンによる発見を妨害しようとした意図も見られる。また一部の文字を外見の似た文字に置換したり、ひとつの漢字を複数の漢字に分解する(あるいはその逆)物もよく見られるが、これは特に日本向けの中国製品の日本語説明書によく見られる同様の誤植が元になっていると考えられる。
- 絵文字・アスキーアート
- 絵文字は上に挙げた通り、日本語変換プログラムなどに登録して、簡便な入力を支援するためにも利用されるが、その一方で「相手の顔が見えない」というネットコミュニティの性質上で発達した。アスキーアートはそれを更に発展させた物ではあるが、更にはこれが単体の映像表現としても成立しており、アスキーアート作成支援プログラムや入力支援プログラムも、様々な物が出まわっている。
- インターネット関連用語
- 元々は情報処理の技術用語であったり、あるいは特定企業の製品の名前だったりといったものが流用される形で利用されている。これらでは関連性や連想で、様々な意味が付与されている場合もあり、その一方でインターネットを含む情報処理関連とは全く関係の無い所からの引用である場合も少なくない。後者の有名なところではスパム(迷惑メール)などが挙げられるだろう。更にこれらは略されたり誤変換されたりしても利用されている。
- 下品な単語
- これらの多くはインターネット以前より「下品な言葉」として扱われていたものがそのまま流用されているものもあるが、その一方で上に挙げたような様々な過程を経てインターネットスラング流に改変されたものも見られる。
[編集] 略字
- 英語の略字
- 欧米のインターネットスラングはスピードが求められるオンラインゲームなどの世界で入力が簡単な略字がよく利用されている。例としてlol(laugh out loud、邦訳「大笑い」)、ty(thank you、邦訳 「ありがとう」))、fyi(for your information、邦訳「参考までに」)、afk(away from keyboard、邦訳「一時退席中」)などといった頭字語や、thx(thanks、邦訳「ありがとう」)、cul8r(see you later、邦訳「じゃあ、また」)などといったLeet表記がある。これらはモールス符号による電信通信で用いられていた略語が流入してきたと考えられる。
- 日本語の略字
- 例として、おめ(おめでとう)、あり(ありがとう)、こん(こんにちは/こんばんは)、乙(お疲れ様)、コピペ(コピー&ペースト)などがある。
- ローマ字の略字
- 例として、kwsk(詳しく)、dkwk(ドキドキワクワク)、DQN(ドキュン)などかある。
- 日本語の括弧内における略字
- 文末に括弧をつける際、途中で省略する記載方法。例として、「(w」『(笑)』、「(ry」『(略)』、「(オ」「(ぉ」『おいおい』、などがある。
[編集] 誤変換
本来かなやアルファベットで表記される言葉を略字にしながら無理矢理漢字変換して生まれた言葉もある。例として鯖(サーバ)、垢(アカウント)、プロ串・風呂串・串・プロ棋士(プロクシ・プロキシ)、尻(シリアル番号)、悪化(アッカ・ネットワークス)、良悪(イー・アクセス)などがある。
[編集] 誤入力
文字の不足または過多等のタイプミスによって生まれた言葉もある。例として、日本語キーボードにおいてかな入力モードで英字をタイプしたため生じた「みかか」(NTT)、「みいそ」(NEC)、「もせあ」(mp3音楽ファイル)や、ローマ字入力モードで英語をタイプしたため生じた「うp」(up=アップロード)や「おk」(OK)、「うd」(UD=United Devices)などがある。
[編集] 代替語
システム上で「禁止ワード」を設定しているチャットや掲示板に対する荒らしが、ネガティブな語の代替語を多用する傾向が見られるが、その荒らしが属するネットコミュニティの事情など知らない者には、滑稽に映る傾向も見られる。荒らしを参照されたし。
[編集] 置換文字
例として「ドキュソ」(ドキュン)、「ヤシ」「香具師」(ヤツ)、「ネ申」(神)、「儲」(信者)など。
[編集] 絵文字
文字で顔や体などの表情を表現することがある。顔文字を参照。
[編集] インターネット関連用語
その他、インターネット関連用語におけるスラングもある。
[編集] 下品な単語
性的又は卑猥な文章はインターネット上でもよく見られるが、一般的なコミュニティでは敬遠され、忌避されることが多い。また、下品な言葉遣いは発言の削除、アクセス制限にも繋がるため、婉曲な言い回しや単語が多く用いられる。
[編集] 蔑称等
特定の人物を軽蔑する呼称または決まり文句として使用されるもの
- DQN
- 頭狂人
- 池沼(ちしょう)
[編集] 利用の形態
これらは、チャットや電子掲示板上での利用が主となるが、オンラインゲームでもチャット機能を備えるものに利用が見られる。特にパソコン側にクライアントソフトウェアをインストールさせる、また課金制の有料サービスでは、コミュニティの健全化や不快なユーザーの締め出しと言う意図も在って、禁止用語がかなり多岐に渡る傾向が見られ、代替語や置換語など抜け穴を探すユーザーとのいたちごっこといった動きもある。
また感情表現が文字媒体に制約されるインターネットコミュニティに在っては、親しみ易さや感情表現を求めてこういったスラングの利用を行う者もいて、スラングからジャーゴン化したりする傾向も無いではないが、比較的砕けた場の雰囲気を表現するために利用される。
ただ、これらの語はその多くが若者文化としての側面もあり、対象年齢以外の者が利用すると世代的な問題もあって、ジェネレーションギャップなど感覚の違いにもより、通常の利用者層から見て些か違和感のある文体に仕上がる傾向もある。先に挙げた広告媒体での利用では、広告制作者が意図したところから外れてしまい「ズレた雰囲気」を醸してしまうケースも見られる。
[編集] 関連項目
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