イヴァン・イリイチ
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イヴァン・イリイチ(Ivan Illich, 1926年9月4日 - 2002年12月2日)は、オーストリアのウィーン生まれのユダヤ系知識人。社会評論家。文明批評家。イバン・イリッチとも表記される。
父親はクロアチア貴族、母親はセファルディ系のユダヤ人。 ザルツブルク大学、パドゥア大学などで神学、哲学、歴史を学び、カトリックの宣教師となる。南米での解放の神学などの運動に共感を抱き、のちカトリックから離れる。 プエルトリコのカトリック大学の副学長を経て、メキシコのクエルナバカで、世界文化情報センター(CIDOC、ケドック)を主催。このセンターは、1976年に閉鎖。
学校、交通、医療といった社会的サービスの根幹に、道具的な権力、専門家の権力を見て、それから離れて地に足を下ろした生き方を模索。過剰な効率性を追い求めるがあまり、人間の自立、自律を喪失させる現代文明を批判し、学校教育においては、真に学びを取り戻すために、学校という制度の撤廃を提言。「脱学校論」として知られる。 これは、当時のフリースクール運動の中で、指導的な理論のひとつになった。
また、彼は家庭の主婦の家事労働など、報酬を受けない再生産労働を「シャドウワーク」(影法師の仕事—鶴見和子の訳)と命名、女性の家庭内労働の捉え方で新しい視点を提示したことでも知られている。
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[編集] 邦訳著書
[編集] 単著
- 『脱学校の社会』(東京創元社, 1977年)
- 『脱病院化社会――医療の限界』(晶文社, 1979年)
- 『エネルギーと公正』(晶文社, 1979年)
- 『自由の奪回――現代社会における「のびやかさ」を求めて』(佑学社, 1979年)
- 『シャドウ・ワーク――生活のあり方を問う』(岩波書店, 1982年/新装版, 2005年/岩波現代文庫, 2005年)
- 『ジェンダー――女と男の世界』(岩波書店, 1984年)
- 『人類の希望――イリイチ日本で語る』(新評論, 1984年)
- 『オルターナティヴズ――制度変革の提唱』(新評論, 1985年)
- 『コンヴィヴィアリティのための道具』(日本エディタースクール出版部, 1989年)
- 『政治的転換』(日本エディタースクール出版部, 1989年)
- 『テクストのぶどう畑で』(法政大学出版局, 1995年)
- 『生きる思想――反=教育/技術/生命』(藤原書店, 1999年)
- 『生きる希望――イバン・イリイチの遺言』(藤原書店, 2006年)
[編集] 共著
- 『脱学校化の可能性――学校をなくせばどうなるか』(東京創元社, 1979年)
- (P・フレイレ)『対話・教育を超えて――I・イリイチ vs P・フレイレ』(野草社, 1980年)
- 『専門家時代の幻想』(新評論, 1984年)
- (B・サンダース)『ABC――民衆の知性のアルファベット化』(岩波書店, 1991年)