ウェスト・ウィング
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ウェストウィング (West Wing) とは、ホワイトハウス西棟の名称である。「ウェストウィング」の名を冠する建物は他にも多くあるが、アメリカで「ザ・ウェストウィング」といえば通常これをさす。
[編集] 概要
ウェストウィングは、一般にホワイトハウスとして知られる本館 (メインハウス) の西側に隣接した建物で、東側のイーストウィングとともに、本館とは渡り廊下で連結している。低い建物で、樹木に囲まれているため、外部からはその姿を見ることができない。
メインハウスが大統領の住居であり国内外の要人との会談やレセプションなどに使用するどちらかといえば私的なスペースであるのに対して、ウェストウィングは大統領の仕事場であり、オーバルオフィス (Oval Office, 大統領執務室)、閣議室、国家安全保障会議室、定例記者会見室などのほか、現在では副大統領、首席補佐官、大統領補佐官、報道官、法律顧問、上級顧問などの上級スタッフのオフィスなどが入る、アメリカ政府の中枢である。
[編集] 歴史
長らくメインハウスの二階部分にはホワイトハウス スタッフのオフィスが入っていた。しかし1901年にセオドア・ルーズベルト副大統領が42歳の若さで大統領に昇格し、夫人と六人の子供たちを引き連れてホワイトハウスに引っ越してくると、この建物が突然手狭なものになってきたのは誰も目にも明らかだった。そこで大統領はメインハウスの西隣の温室と厩舎があったところに別棟を建築させ、スタッフのオフィスをここに移した。これがウェストウィングである。
この当時のウェストウィングはまだ仮オフィスビル的な状態で、内装が完成してオーバルオフィスが初めて作られたのは次のタフト大統領のときである。
しかし1929年末には漏電による火災でウェストウィングは半焼してしまった。そこで1933年にフランクリン・ルーズベルトが大統領に就任すると、これを機会に小児麻痺の後遺症で体が不自由な大統領にも使い勝手が良いように、ウェストウィングには大改装が施された。このときオーバルオフィスはメインハウスと渡り廊下で直結する現在の位置に移され、これにより大統領はスタッフの目を気にせず自由にメインハウスとの間を行き来ができるなど、プライバシーの面が強化された。またリハビリのための水泳を好んだ大統領のために屋内プールも作られたが、この部屋は後のニクソン大統領のときに定例記者会見室に改装され現在に至っている。
なおホワイトハウス スタッフの増加に伴い、今日ではウェストウィングにオフィスをかまえるのは上級スタッフとそのアシスタントで、多くの事務方は小道をはさんだウェストウィングの西側に隣接するアイゼンハワー行政府ビル (Eisenhower Executive Office Building) に入っている。
[編集] ドラマ『The West Wing』
2002年からNHK総合で放送されたアメリカNBC製作のドラマ『ザ・ホワイトハウス』(1999年–2006) はこのウェスト・ウィングが舞台となっており、原作のタイトルは『The West Wing』である。この番組の放送が始まった頃、ドラマで描かれているウェストウィングの間取りや内装・環境などが、実際のウェストウィングをどこまで反映しているかという質問が、ホワイトハウスのスタッフにしきりに寄せられた。こにれ対して多くのスタッフは「よくできているが、実物はもっと狭くて混み合っている」と答えている。2003年には当時のホワイトハウス報道官も「ドラマの中では実際より人の行き来が多く、若干広く作られているようだ」とコメントしている。