エンバーミング (漫画)
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『エンバーミング』は、2005年~2006年に『ジャンプ the REVOLUTION!』に掲載された和月伸宏の漫画作品。
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[編集] 概要
19世紀の欧州で、1.21ジゴワットの雷と、異能の天才・ヴィクトル=フランケンシュタインが書き記した禁書を元に、人間の死体を基盤にして製作される、恐怖の人造人間(通称・フランケンシュタイン)の活躍を描く。
作中で繰り返される"人造人間に進んで関わるのは悪人か狂人のどちらかだけ"という言葉からも分かる通り、基本的に死者蘇生の生命観を否定する物語であり、各エピソードの結末は決して明るいものとはいえない。「エンタテイメントの基本は笑顔とハッピーエンド」を公言している和月伸宏の作品としては、珍しい手法が取られていると言える。
2007年2月現在、『ジャンプ the REVOLUTION!』で、『エンバーミング -DEAD BODY and BRIDE-』と『エンバーミングII -DEAD BODY and LOVER-』の2作品が読切作品として掲載された。続編の掲載や連載化については明かされていない。
『エンバーミング -DEAD BODY and BRIDE-』は『武装錬金』10巻の巻末に収録されているが、その中で作者は「錬金術とフランケンシュタインはちょっとした繋がりがある」とコメントしている。これは史実としての繋がりなのか、『武装錬金』の作中で登場する錬金術が裏設定として『エンバーミング』のフランケンシュタインと繋がっているのかが曖昧であり、真意が明らかでない。一応、作者は本作が『武装錬金』のスピンアウト的な話である事を明かしている。
ただし、『エンバーミング』では、フランケンシュタイン製造の技術で死者が甦生されると生前の人格や人間性が崩壊した化物になるとして、その技術での「死者蘇生」を否定している。『武装錬金』では核鉄の機能により死者の命を再生する事ができるので、互いの世界観は矛盾しているように見える。
なお、『エンバーミング -DEAD BODY and BRIDE-』では、少年誌の制約が無かった為か、過去の作者の作品に比べ、陰険で残虐的な描写が目立つ。続編の『エンバーミングII -DEAD BODY and LOVER-』では前回に比べ、残虐的な描写は緩やかである。
余談だが、アニメ版『武装錬金』の世界では本作は劇中劇となっているのか、ジョン・ドゥがテレビの画面に登場する形でゲスト出演した。
エンバーミング(embalming)とは、日本語に訳すと遺体衛生保全。詳しくはエンバーミングを参照。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] 登場人物
[編集] 『エンバーミング』-DEAD BODY and BRIDE-
- ジョン・ドゥ
- 人造人間。名前は「身元不明の死体」という意味。本名(生前の名前)は本人も知らない。自らが何者で何の目的で造られたかなども全く覚えておらず、劇中でも大きな秘密とされている。右目に瞳がない。
- 相棒のリトル・ロゼと共に、人造人間専門の壊し屋として旅を続けている。その目的は、報酬として得た若く美しい女性のパーツで、自分の花嫁を造る事。心臓を始めとする血液循環系の全機能が強化されており、あらかじめ設けてある全身の傷口から超高圧の血液を瞬間噴射させ、対象物を破壊する能力の持ち主。
- 作者の代表作『るろうに剣心』の志々雄真実を一部リボーンしている。
- アニメ版『武装錬金』にて一瞬だけ(アニメのキャラクターとして)登場している。
- リトル・ロゼ
- 人間。ジョン・ドゥの相棒で援護と整備を担当。一人称は「ボク」。
- 普段は自称「博士の卵」として、気の弱い少女を装っている。だが、その正体はジョン・ドゥの失われた記憶と目的を呼び起こさせない為の監視役であり、詳細は不明。人造人間用の縫合糸と針を武器に使う。
- 作者の代表作『武装錬金』の若宮千里のリボーンキャラである。
- マリゴールド
- 人間。『エンバーミング』-DEAD BODY and BRIDE-における実質的なヒロイン。
- 死体卿により家族を殺された上に両脚を切断されて奪われたことで、人生を滅茶苦茶にされ病に臥す薄幸の少女。ジョン・ドゥに死体卿の破壊を依頼し、達成された時は危篤状態に陥っていたが、ジョン・ドゥの垣間見せた情により、安らかに息を引き取った(両脚を切断されたことによるショックからか、元々病弱だったかは不明)。死体卿に奪われた彼女の両脚は、報酬としてジョン・ドゥの花嫁のパーツとなった。
- 死体卿(したいきょう)
- 人間。死体愛好家で博士。本名不明。
- 1年前、マリゴールドらの住む地に現れ、彼女の父が保有していた工場を奪いそこを根城とする。墓を掘り起こすだけでは飽き足らず、生身の人間から人造人間用のパーツを奪うという残虐さを持つ。約50体の人造人間を創り、自らを「神」と呼ばせている。最期は激昂したジョン・ドゥによって殺される。「禁書」を所持していた。
- 裁断者(ザッパー)
- 人造人間。死体卿により創造された。
- 選りすぐりの100人分の筋繊維を基盤の死体に移植された、機能強化型。大剣を振るう怪力の持ち主。知能はほとんど無いようでジョン・ドゥに持ち上げられたときの「化…物…」以外の台詞を一切発していない。
- 執事(バトラー)
- 人間。元々マリゴールドの家に務める執事だったが、死体卿と裏で繋がっていた。
- 人造人間の魅力に惹かれたらしいが、劇中ではその理由については触れられてない。最期はリトル・ロゼに成敗として始末されたと思しき描写が描かれる。
[編集] 『エンバーミングII』-DEAD BODY and LOVER-
- アシュヒト・リヒター
- 人間。人造人間の整備と解体を請負ながら博士になるためにエルムと旅をしている。
- その真の目的は恋人のエルムを再人間化する技術を探し出す事。少年時代に起動暴走したジョン・ドゥによって幼馴染であった恋人と同時に右足を失っており、義足になっている。義足には人間を超えた怪力が備わっており、電力を内蔵したトランクをコードで繋ぐ事によって周囲に電撃を放出させる機能が備わっている。
- 少年時代の姿がロゼとよく似ているので何らかの関係があると思われる。また『るろうに剣心』の完全版にて再筆(描き下ろしリデザイン)された四乃森蒼紫がほぼ同じデザインであるため、一部では蒼紫のリボーンではないかという説もある。
- エルム・L・レネゲイド
- 人造人間。自らの製造主を見つけて自分の身体を大人にしてもらう為、アシュヒトと共に旅をしている。
- 人間であった頃はアシュヒトの幼馴染で恋人だったが、起動暴走したジョン・ドゥによって殺された。人間であった頃の記憶は何も覚えておらず、性格も正反対に明るくなった(他にも、嫌いだった雷が好きになったり、など)。その為、人造人間と化してから実の両親に「もう娘ではない」と言われてしまった過去を持っている。
- 体力は子供並だが、皮膚を自在に調整(瞬間再生や真空密着)出来る能力を持っている。アシュヒトが義足で電撃放出する際には、皮膚再生能力を生かしてアースの役割をはたす。
- 『るろうに剣心』の巻町操の性格や顔、体型が酷似しているので、アシュヒトが蒼紫のリボーンという説に合わせて、エルムは操のリボーンではないかという説もある(ちなみに『武装錬金』の武藤カズキも、巻町操のリボーンである)。
- 余談だが、リボーンという繋がりからか、『るろうに剣心』完全版7巻の初版に付いている『るろうに短信』では四乃森蒼紫と巻町操が本作の宣伝をしていた。
- キーファー
- 人間。流行り病によって壊滅した廃村の生き残り。三つ編みおさげの女性。
- 死んだ兄を人造人間として蘇らすために先生(ドクトア)と協力し、彼の研究材料とするため廃村に旅行者を誘き寄せる。だが、その病んだ心をエルムに救われ、傷心を癒される。
- 先生(ドクトア)
- 人間。人造人間創造に執着する狂気の博士。前作の敵である死体卿と同じく、本名不明。額に大きなつぎはぎ跡がある。
- 技術力は乏しく、大量の死体を繋げた“墓場の住人”のようなレベルの低い人造人間しか創ることが出来ない。最期はアシュヒトの電撃により黒焦げになって死亡。
- “墓場の住人”(フリートヘーフェ)
- 人造人間。先生(ドクトア)により創造された。
- 大量の死体(流行り病により壊滅した村人達やキーファーによって騙された観光客や旅人)を複数並列で繋げられた巨体を誇るが、人造人間としてのレベルは低い。中枢はキーファーの死亡した兄。
- アシュヒトの電撃で行動不能にされた後、キーファーの望みで中枢である彼女の兄の活動を停止させられた。
[編集] 関連項目
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