オデッサ・ファイル
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オデッサ・ファイル (The Odessa File) は、若いドイツ人記者と元ナチのための組織オデッサとの間の暗闘を、イギリスの作家フレデリック・フォーサイスが描いたスリラー小説である。処女作「ジャッカルの日」と並ぶ代表作。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
タイトルは1964年2月末、当時の西ドイツ司法省宛、匿名の人物によって郵送で引き渡された、オデッサの支援を受け海外逃亡した元親衛隊(SS)隊員達の、顔写真や詳細な所在などを記録したファイルの通称にちなむ(これは事実)。
ドイツ降伏直前、ナチス政権下でユダヤ人の絶滅政策を遂行してきた親衛隊の幹部たちは、連合軍の追及を逃れるため、オデッサと言われる秘密組織を立ち上げていた。それは元SS隊員たちの国外脱出を支援するなど庇護を行なう組織であった。
ある若いドイツ人のルポライターが、一人の老ユダヤ人の自殺と遺された日記をきっかけに、強制収容所長の一人が司法の追及を逃れてドイツ国内で堂々と生活している事を知る。しかもその男は、国防軍中尉だった自分の父を殺し、戦死に仕立て上げた人物だった。その所在を掴もうと試みるが、同志を庇おうとするオデッサの妨害は、彼を命の危険にまで曝すようになる。ついに彼は、調査中に知り合った、収容経験者で作るユダヤ人過激派グループの力を借り、居場所を突き止めたら彼らを通じてモサドに知らせる条件の下に、6週間にわたる特訓を受けて元SS隊員になりすまし、組織に潜り込む……
登場人物の元強制収容所長はエドゥアルト・ロシュマンといい、実在の人物。ラトビアのリガにあった強制収容所の所長で、人呼んで“リガの屠殺人”。1977年8月、パラグアイで死亡が確認されている。この作品の出版に当たっては、作者のフォーサイスの元には多くの脅迫状が届いたと言う。
- ダスティン・ホフマン、ローレンス・オリビエ主演のマラソンマンは同作品を下地としている。