オモダカ科
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オモダカ科は河川や湿地で生活する、湿地性・抽水性の植物である。大きなものでは1m近いが、小さなものでは葉長は数センチ程度である。日本を含むアジア、南北アメリカ大陸と広範囲に分布している。
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[編集] 人間との関わり
種によって、関わる者の目的によって大きく異なる。クワイのように食用に給されるものもある。一部は薬用に用いられることもある。ウリカワなどのように水田雑草として厄介者扱いされる場合もある。園芸やアクアリウムに使用される場合もあるが、観賞目的で栽培されるものの中には、水田雑草としては厄介者であるというケースもある。
[編集] サジオモダカ属 Alisma
[編集] サジオモダカ
A. plantago-aquatica。北日本と朝鮮半島、中国東北部にさんする水草。塊茎を澤瀉(たくしゃ)といい、漢方の薬味の一つで、利尿剤などとして用いられる。
[編集] オモダカ属(Sagittaria)の仲間
主にアジアや北米に、一部は中南米や南米に分布する、オモダカ科の代表的なグループである。学名の「サジタリア」とは射手座」のことであるが、葉の形が矢に似ていることから、この名前が付けられたという。
[編集] オモダカ
Sagittaria sagittifolia。本属の代表的な種。水田雑草であるが観賞用としても栽培される。矢尻のような葉を持ち、葉長は5~10cm。日本を含むアジアに分布。水槽での栽培は不向き。
[編集] サジタリア
Sagittaria subulata var. subulata。北米から中米に分布。細長い葉を持ち、葉長は20~30cm。アクアリウムの世界では古くから栽培される水草で、サジタリアの仲間としてはポピュラーな部類である。ランナーを伸ばして繁茂する。
[編集] ピグミーチェーン・サジタリア
Sagittaria subulata var. pusilla。北米に分布。細長い葉を持つが、葉長は10cmに満たない、サジタリアより小型の水草である。日本に分布する「ウリカワ」に草体が似ているが、水槽での育成は本種のほうが容易である。チェーンを伸ばすように、ランナーで繁殖し、繁殖力旺盛。
[編集] ウリカワ
Sagittaria pygmaea。日本各地に分布する小型の種。細長い葉で、10~20cmほどだが、水中葉は水上葉より大きくなる。サジタリアやピグミーチェーン・サジタリアに比べると、水槽での栽培は困難である。水田雑草で、休耕田などにみられる。
[編集] エキノドルス属(Echinodorus)

主に南米大陸に分布する。アマゾン川やその水系、パンタナール大湿原にも多くの種類が生息している。アクアリウムの世界では、このグループに属する水草が多種栽培されているが、日本においてはアクアリウム以外での利用はあまり聞かない。サバナ~熱帯雨林の原産であるが、日本国内で屋外栽培を行って越冬した例もある。本来は抽水植物であるが、アクアリウムでは水に沈めた状態で栽培されることが多い。
[編集] アマゾンソードプラント
【学名】Echinodorus amazonicus
南米に分布。大型で剣状の葉をもつ。観賞用に栽培されるエキノドルスではもっともポピュラーで、国内・海外の多くのファームで栽培されている。観賞魚用の水草としては古くから知られ、代表的な「アクアリウム用の水草」のひとつでもある。性質は丈夫。
[編集] ラジカンス
【学名】Echinodorus cordifolius
20~50cm。多少の耐寒性があるため、日本国内で屋外栽培して越冬した例もある。
[編集] エキノドルス・ホレマニィ
【学名】Echinodorus horemanii
南米南部に分布。細長く透明感のある葉をもち、海草を思わせる草体で、葉長は40~50cm。 清浄な水質を好む。赤みがかった「レッド」と呼ばれるタイプや、葉幅の広い「ブロードリーフ」と呼ばれるタイプも流通している。
[編集] エキノドルス・テネルス
【学名】Echinodorus tenellus
南米に分布。通称「ピグミーチェーン・アマゾン」とよばれ、小型で細長い葉を持つ。ランナーを伸ばし、芝生のように広がって育つ。
[編集] エキノドルス・オパクス
【学名】Echinodorus opacus
ブラジル南部に分布する。深緑色で丸く小型の葉を持ち、葉長は30~60cm、ギボウシのような草姿をしている。2006年現在では、流通量も少なく、かなりの高価で流通している。
[編集] 改良種
オモダカ科には改良種も多く存在している。
[編集] エキノドルス・ルビン
エキノドルス属。欧州で作出された、エキノドルスの改良種としては古い部類である。細長い葉を持ち、一部が赤く染まる。葉長は40~50cm。
[編集] エキノドルス・ルビン・ナローリーフ
上記のルビンから作出された改良種。内側の葉はルビンより濃いワインレッドを呈し、外側の葉は緑色に変化する。緑色に変化した葉にはエンジ色の葉脈が表れる。名前の通り、ルビンよりしなやかで細長い葉を茂らせる。ルビンより小型で、成長しても葉長は20~30cm。
[編集] エキノドルス・オゼロット
エキノドルス属。濃褐色の斑が細かくまだらに入る明るい緑色の葉を持つ。葉の斑点からオセロットという名前が付けられている。葉長は20~30cm。
[編集] エキノドルス・ローズ
ドイツの植物学者で水草ファーム「ハンス・バース・デサウ」オーナーでもある、ハンス・バースが開発した種で、初期の改良エキノドルスのひとつ。新芽がバラ色に染まる。葉長は20~50cm。
[編集] エキノドルス・キューピーアマゾン
エキノドルス属。小型の丸い葉を持ち、丸い葉の先からは突起が出る。葉の形からキューピーと名がつく。
[編集] エキノドルス・マーブルクィーン
エキノドルス属。ラジカンスの斑入りを固定した改良種。欧州にて比較的早くに作出された。最近では東南アジアのファーム産も流通している。
[編集] エキノドルス・バーシー
ハンス・バースが開発した種で、彼の名を冠した種。水上葉は黄緑色だが、水中葉は鮮やかなワインレッドになる。ワインレッドの葉で葉脈だけ緑色という配色をもつ。
[編集] エキノドルス・アフレイム
かなり濃い赤紫(見方によってはかなり黒っぽい)の特徴的な葉を持つ。オランダのアクアフローラ社が開発した改良種。大きくするのは比較的難しく、成長も遅いため苔に侵され易い。水中では矮小化する傾向がある。水中葉は細長い茎の先に長卵形の葉が付く、水上葉はやや大きく黄緑色で別種のように違う見た目になる。
[編集] エキノドルス・サンクトエルムスファー
ドイツのズーロジカ社が開発した、比較的新しい改良種。バーシーとオゼロットの交雑種だ。小豆色の水中葉を幾重にも茂らせ、ギボウシを赤くしたような草姿をしている。小型の種類である。
[編集] エキノドルス・アパート
ハンス・バース・デサウが開発した、赤系のホレマニィ・レッドと深緑系のポルトアレグレンシスの交配種。入手しにくいポルトアレグレンシスに似た姿をした、深緑系エキノドルスの廉価版を量産する狙いで作出された種である。性質は強健で栽培は容易。新芽はホレマニィ・レッドのように赤くなるが、成長するにつれコンブのようにウェーブがかかった、深緑色の葉に変化する。葉長は20cm前後。
[編集] クワイ
【学名】Sagittaria sagittifolia var. edulis
サジタリア属。オモダカの栽培変種で食用として栽培される。塊茎を食用とする。詳しくは→クワイ
オモダカ科には他にも多くの野生種・栽培種が存在する
[編集] 参考文献と参考資料
『ピーシーズ(監修・発行) アクアリウムで楽しむ水草図鑑 2001年10月10日発行 P126~153 南米の自生地の写真集とエキノドルス、サジタリアの仲間解説の項』
『文・高島実 写真・佐々木浩之 はじめての水草ガーデニング 2002年6月20日発行 P104 エキノドルス・アフレイムの写真入解説』
「月刊アクアライフ 2006年4月号増刊 アクアプランツ No.03 マリン企画 平成18年4月1日発行 」