カイオ・ドゥイリオ級戦艦
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カイオ・ドゥイリオ級戦艦(伊:Navi da battaglia Classe Conte di Cavour)はイタリア海軍(王立海軍)戦艦の艦級。コンテ・ディ・カブール級戦艦に引き続き、イタリア海軍が第一次世界大戦中に竣工させた3番目の弩級戦艦の艦級である。
カイオ・ドゥイリオは砲塔艦カイオ・ドゥイリオの艦名を受け継ぎ、2隻目にあたる。カイオ・ドゥイリオの方が進水も就役も早かったが、起工の早かったアンドレア・ドリアを艦級名にアンドレア・ドリア級戦艦(英:Andrea Doria class battleship)とも表記する。
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[編集] 特徴
基本的な船体設計は前級を踏襲しているが、前級での不具合を改善している。船体は短船首楼型で、艦首から前級より引き継いだ新設計の「1909年型30.5cm(46口径)砲」を1、2番主砲塔を背負い式に2基、司令塔を組み込んだ操舵艦橋と1番煙突の間に立てられた三脚檣までで船首楼甲板は終了しており、一段下がった二番甲板から、3番主砲、三脚檣、2番煙突、後部艦橋、4番、5番主砲塔を背負い式に配置した。主砲塔は前級と同じく、1番、3番、5番のみ3連装砲に、2番、4番のみ連装砲塔の変則配置である。副砲は前級よりも若干、口径がアップしているがこれは従来口径では軽巡洋艦までの水上艦迎撃に不向きであるとの判断である。こうして「1909年型15.2cm(45口径)砲」を採用し、1番、2番主砲塔直下の左右に4門ずつ、4番、5番主砲塔直下の左右に四門ずつの計16門搭載した。その他に対水雷艇用に「7.6cm(50口径)砲」を13門、「7.6cm(40口径)高角砲」を6門、45cm水中魚雷発射管2基を装備した。船体は艦首と艦尾が斜めになった分の重量を軽減できるカットオフ方式を引き続き採用し、舵は主舵と副舵を直列に装備した。
[編集] 戦歴
[編集] 第一次世界大戦
2隻とも第一次大戦中に竣工したが、大きな作戦に参加したことはなくコンテ・ディ・カヴール級と同様にその後1920年代に練習艦任務に配属され、コンテ・ディ・カブール級の近代化改装の終了した1937年にヴィットリオ・ヴェネト級戦艦の設計プランを流用して改装に入った。そのため、コンテ・ディ・カブール級戦艦よりもヴィットリオ・ヴェネト級戦艦に近い。
[編集] 海軍休日と改装
カイオ・ドゥイリオとアンドレア・ドリアは1937年4月に近代化改修工事を実施し、イタリア海軍の技術の粋を凝らして、数々の改良・改修が加えられた。基本的な改造は前級と同一だが、機関は安定性と航続距離拡大のためデチューンされ93,000hpから85,000hpに落ちた(それでも元の出力の32,000hpの2.6倍である)。前級では高角砲を艦橋(後檣)と副砲の間の狭い場所に配置した結果、射界の中央舷側が死角になるという問題がでた為、副砲の背後に「9cm(50口径)単装砲」を片舷5基計10門搭載した。また、副砲も12cmから13.5cm3連装砲4基にインチアップされたが、これはフランスの大型駆逐艦の主砲口径が13.8cm砲で、軽巡並の射程を持つ事によるアウトレンジを防ぐためである。仰角は45度までで、両用砲ではない。主砲の口径32cmは変わらないが、仰角を27度から30度に引き上げて射程を延ばした。ケースメイト配置だった副砲は13.5cm(45口径)3連装砲塔4基に纏められ、片舷あたり背負い式に2基、計4基12門になった。設計の元になったヴィットリオ・ヴェネト級戦艦では艦橋と後檣の脇に四隅に配していたが、これはダンケルク級戦艦よりも劣る前方火力を少しでも補う為の、用兵側の要求であったろう。艦橋構造は二重円筒型を採用していたが、7.2m二段式測距儀の上にも新たに見張り所が設けられ、よりヴィットリオ・ヴェネト級に近くなった。「プリエーゼ式水雷防御」の採用や、艦首を延長したのは同様だが、長さは前級よりも0.5m長い10.5m長くなった。
[編集] 第二次世界大戦とその後
近代化改装後第二次世界大戦に参加、大戦初期に地中海方面で英軍補給路の妨害作戦に従事したが、1940年、英国艦隊による「タラント空襲」によりカイオ・ドゥイリオは魚雷一発を受け小破したので曳航され、ドック入り後修理された 。1942年2月にマルタ島付近で作戦活動に従事したが、1943年9月にイタリアの降伏を受けてマルタへ回航され、紆余曲折(ソ連がイタリア戦艦全艦の保有を連合国側に主張した為、処理に長引いた)の末1944年6月にイタリア海軍籍に復帰し、僚艦アンドレア・ドリアと共に練習艦任務にあたる。戦後はNATO演習にも参加し、イタリア海軍の健在を見せ付けた。しかし、1956年11月にスクラップとして除籍。44年余にわたる長い艦生を終えた。
[編集] データ
[編集] 竣工時
- 水線長:-m
- 全長:176.1m
- 全幅:28m
- 吃水:9.46m
- 基準排水量:22,964トン
- 常備排水量:25,216トン
- 満載排水量:-トン
- 兵装:30.5cm(46口径)3連装砲3基+同連装砲2基、15.2cm(45口径)単装砲16基、7.6cm(50口径)単装砲13基、7.6cm(40口径)単装砲6基、4cm(39口径)機砲2門、45cm水中魚雷発射管2基
- 機関:重油混焼缶20基+低速タービン3基、高速タービン3基4軸推進
- 最大出力:32,000hp
- 航続性能:10ノット/4,800海里
- 最大速力:21.5ノット
- 装甲
- 舷側装甲:250mm
- 甲板装甲:97mm
- 主砲塔装甲: 280mm(前盾)、-mm(側盾)、-mm(後盾)、-mm(天蓋)
- パーペット部:280mm
- 司令塔:230mm
- 航空兵装:-
- 乗員1,000名
[編集] 近代化改装後
- 水線長:-m
- 全長:186.9m
- 全幅:28m
- 吃水:10.4m
- 基準排水量:28,700トン
- 常備排水量:29,000トン
- 満載排水量:-トン
- 兵装:32cm(43.8口径)3連装砲2基+同連装砲2基、13.5cm(45口径)3連装砲4基、9cm(50口径)単装砲10基、37mm(54口径)機銃19基
- 機関:重油専焼缶8基+タービン2基2軸推進
- 最大出力:85,000hp
- 航続性能:20ノット/3,390海里
- 最大速力:27ノット
- 装甲
- 舷側装甲:250mm
- 甲板装甲:135mm
- 主砲塔装甲: 280mm(前盾)、-mm(側盾)、-mm(後盾)、-mm(天蓋)
- パーペット部:-mm
- 司令塔:260mm
- 航空兵装:-
- 乗員1,495名