カント (線路)
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カントとは、鉄道線路の曲線部において、外側のレールを内側よりも高くすること、またはその高低差のことである。カントを設けることにより、通過する車両にはたらく重力と遠心力の合力が軌道面に対してより垂直に近い角度で作用するようになる。これにより曲線を安定して通過できるようになり、また乗り心地がよくなる。
カントの量は曲線の半径と通過する列車の速度によって決まり、半径が小さいほど、また速度が大きいほど大きなカント量が必要となる。速度の異なる列車の走る線路では、カント量の基準となる速度と比較して高速の列車に対してはカント不足、低速の列車に対してはカント超過となる。古くからある路線では、昔の低速の列車にあわせてカントが設定されているため、速度が向上した現代の列車ではカント不足となることがある。このためカント量を引き上げて路線の最高速度を上昇させる工事が行なわれることがある。
カントの量には上限が定められており、JRの場合、新幹線(標準軌)では180mm(東海道新幹線のみ200mm)、在来線(狭軌)では105mmとされている。これは何らかの事情で曲線上で停止した場合に車両が内側に倒れることを防ぐためである。このため、半径の小さい曲線では最大限のカントを設けても高速で通過する列車に対してカント不足が生じる。
カントつきの曲線線路では、直線の線路と比べ車両から線路にかかる力が大きくなるため、より多くの枕木やバラストが必要になる。
カント量は連続的に変化させなければならないので、線路が直線から曲線に入る場所や曲線半径が変化する場所では緩和曲線区間で徐々にカントを大きくする。S字カーブなど、緩和曲線を十分にとれない場合はカントの不足や超過が発生し、走行安定性や乗り心地が損なわれる。