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新幹線

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新幹線(しんかんせん)は、旧日本国有鉄道(国鉄)が1964年昭和39年)10月1日に営業運転を始めた東海道新幹線を初の路線とし、現在JRグループが運行する高速鉄道路線およびそれに用いられる車両、並びに関連する鉄道輸送システム全体をも指す呼称である。

東海道・山陽新幹線歴代車両。左から700系、300系、0系
東海道・山陽新幹線歴代車両。左から700系300系0系

目次

[編集] 定義・概況

全国新幹線鉄道整備法(全幹法)第2条では、新幹線鉄道を「主たる区間を200キロメートル毎時以上の速度で走行できる幹線鉄道」と定義している。新幹線はその性質から在来線とは構造も役割も異なり、一般の鉄道敷設法などに加えて、新幹線特例法などにより、法律的にも一般の鉄道とは違った扱いを受ける。それゆえ、同じ鉄道という枠の中にはあるが、両者は全く別の乗り物と考えられる。

建設は独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道運輸機構)が行ない、その費用は国や沿線自治体が負担する[1]。運営は旅客鉄道会社(JRグループ)が専ら行なっている。「新幹線の運営はJRでなければならない」など、法律面で鉄道事業者を特定していないが、運営がJRグループに継承される理由としては、

  1. 新幹線の経営には莫大な費用がかかり、それを負担できる資本力があるのは旧国鉄の業務を継承するJR各社しかない。
  2. 旧国鉄には東海道新幹線東北新幹線を経営してきた実績があり、それがJR各社に分割民営化されたことで、運営ノウハウを知っている人間がJR各社にしかいない。

ということが挙げられる。

[編集] 呼称

新幹線とは、元々は従来の幹線に対して「新しい幹線」という意味で、東海道新幹線は在来線である東海道本線の線増として建設された為こう呼ばれた。 日本以外の国々ではBullet Train弾丸列車)、Super Express超特急)、もしくはそのままShinkansen(シンカンセン)の名で広く知られている。一般的にはShinkansen Bullet Trainと説明されることが多い。1964年の東海道新幹線開業当初は、New Tokaido Line東海道新線)とも案内された(現在でも横浜市営地下鉄では車内電光掲示板で使われている)。なお現在では駅内の案内板等では路線名としてはShinkansenを使用し、列車名を表す場合は、例えばNOZOMI Superexpressなどと、Superexpressという名称が使われている。これはJRグループで特急を表すLimited Expressより上位の列車という意味でSuperという単語を用いている(日本語で言えば「超特急」)と考えられる。 ちなみに、車内放送では "Welcome to the Shinkansen. This is the NOZOMI superexpress bound for Tokyo." などと放送される。

[編集] 新幹線に関する主な技術

新幹線鉄道は、その大部分の区間において200km/hを超える速度で運行するため、在来線鉄道とは異なった様々な技術が用いられている。速度のみならず、乗り心地や安全面でも高い水準が確保され、その成功は日本以外の世界各国において鉄道の価値を見直すきっかけともなった。

[編集] 路線・軌道設備

新幹線のホーム
新幹線のホーム
新幹線の高架橋
新幹線の高架橋
安全柵やカラーの電光掲示板が設置されている駅(写真は東京駅)
安全柵やカラーの電光掲示板が設置されている駅(写真は東京駅)
  • 路線は、在来線と別ルートで新規に建設した線路設備を用いる(ミニ新幹線を除く)。
    • 軌間標準軌 (1,435mm) を用いる。
    • カーブにおける曲率半径を大きくし、できる限り直線を確保する。曲率半径は東海道新幹線が2500m(制限速度255km/h)、山陽新幹線以降に建設された各線は4000m以上(現状の最高速度300km/hでは減速せず通過できる)が基本となっている。但し、東海道新幹線の東京~新横浜間や東北新幹線の東京~大宮間のような都心部区間、あるいは全列車が停車する主要駅の前後においては、その限りではない。また、通過列車が多い熱海駅徳山駅の前後などにおいても、用地や地形の関係からやむを得ず急曲線が存在する区間がある。
  • 事故防止のため以下の設計を行う。
    • 自動車との衝突事故を防ぐため、踏切を一切設けない(ミニ新幹線として運行されている在来線の場合は踏切数を削減すると共に保安設備を強化している)。
    • 線路内に一般の人が立ち入れない様にする。前項も含めた対策として全線立体交差とする(ミニ新幹線を除く)。また、列車の運行妨害等に対しては法律面でも「新幹線特例法」によって在来線より厳しい罰則を定めている。
    • 通過列車との接触など人身事故を防ぐため、プラットホームに可動式の安全柵を設ける(例:新横浜駅新神戸駅など)か、通過線と待避線を分ける(例:静岡駅福島駅など)。但し、名古屋駅新大阪駅など全列車が停車する駅、あるいは大宮駅軽井沢駅など通過列車の通過速度が低い駅には設置されていない)。
  • 乗り心地や安全性の向上、騒音対策などから、レール分岐器(ポイント)にも様々な工夫が施されている。

[編集] 信号システム

  • 地上の信号機を車上から目視確認して運転する事は高速運転のため不可能であり、自動列車制御装置 (ATC) を備え、運転室内に車内信号による運行指示が表示される。
  • 運転指令所列車集中制御装置 (CTC) から、全ての列車の運行状況を一括管理している。現在では列車運行管理システム (PTC) も導入されており、通常のポイント操作や信号制御、駅自動放送から車両の管理整備、輸送障害時の復旧ダイヤの作成に至るまで、あらゆる業務がコンピュータによって高度にシステム化されている。

[編集] 電源方式

  • 単相交流25,000Vで電力を供給する。電源周波数は以下の通り。
    • 東海道新幹線では60Hzに統一して給電している。静岡県富士川を境に50Hzと60Hzの電源周波数区分をまたがっているが、それぞれの区間の距離の長い方を全線で採用し、車両設備の簡素化を狙ったもの。なお、電源周波数区分50Hzの地域では周波数変換所が設けられ、新幹線電源用に60Hzに変換している。
    • 北陸新幹線軽井沢駅佐久平駅間で50/60Hzの切り替えを行う。
    • 上記以外の山陽(東海道新幹線を延長した形で建設された)・東北上越九州(鹿児島ルート)の各新幹線はそれぞれの沿線地域と同じ(山陽・九州は60Hz、東北・上越は50Hz)。
  • ミニ新幹線である山形新幹線秋田新幹線は、改軌前より50Hz・20,000V交流電化された区間であったため、改軌後もこれをそのまま採用し、直通車両を複数電源対応とした。

[編集] 車両技術

  • 機関車などにみられる「動力集中方式」(無動力の客車を牽引する方式)ではなく、動力を編成各車両に分散させる「動力分散方式」(電車方式)を用いて、加減速能力の向上、軽量化、軌道への負荷軽減を図っている。ただし、非常に高価となるため、海外への販売(一時期韓国KTXなどにも導入計画があったが、韓国の場合、高価を理由にフランスのTGVに変更された)が困難であることや、修理時の費用が高いのが短所である。
  • 編成全体で大出力を確保するため、編成内における電動車(動力車)の比率を極力多くする。東海道・山陽新幹線の初代車両0系や、東北・上越新幹線開業時の車両である200系は全車が電動車であった。また東海道・山陽新幹線で使用されている500系は最高速度300km/hの高速運転を行うために、九州新幹線の800系は急勾配を走行するために、全車が電動車となっている。
  • 車両は、高速運転時にトンネルに進入するなどの気圧変動による居住性の低下を防ぐために気密構造となっている。
  • このほか、運転台構造ではマスコンブレーキの配置が在来線通勤電車とは左右逆の配置になっているほか、速度メーターも時速200キロ以上の運転に対応するため、在来線のような丸型式は基本的に無く、初期の車両は横線式、中期の車両は途中まで斜線その後横線、その右下には細かな速度が表示されるデジタルタイプ、そして最近の車両に関してはグラスコクピットを採用しているものもある。但し一部の形式(400系E1系)においては在来線車両を髣髴とさせるアナログ式丸型速度メーターを採用している例もある。

[編集] 他線区への直通

  • ミニ新幹線と呼ばれる区間(山形新幹線の福島~新庄間、秋田新幹線の盛岡~秋田間)は、在来線の線路を標準軌に改軌改良し、新幹線直行特急として直通乗り入れを行っているもので、法律や設備などの上では正式な新幹線路線ではなく、あくまで在来線である(これらの路線を新幹線と呼ぶのは、利便性やイメージ戦略上の理由である)。そのため、最高速度は一般の在来線と同じく130km/h程度に制限されている。制限されているというが、在来線ではもっとも速い部類にあたる速度である。また、このような運転形態を、新幹線と在来線を直通することから「新在直通(運転)」と呼ぶことがある。
  • 在来線を改軌せずに新幹線への乗り入れを可能にするフリーゲージトレインの開発が鉄道総合技術研究所により進められているが、現在のところ実用化の時期は未定である。

[編集] 営業中の路線

営業中の路線

[編集] 新幹線(フル規格)

なお、東海道新幹線と山陽新幹線を合わせて「東海道・山陽新幹線」、東北新幹線と上越新幹線を合わせて「東北・上越新幹線」と呼ぶ事がある。

他社の車両が乗り入れているのは東海道・山陽新幹線(東海道新幹線にJR西日本の車両、山陽新幹線にJR東海の車両)のみで、それ以外の新幹線はすべて自社車両(山形新幹線及び秋田新幹線用の車両の一部は正確には保有会社からの貸出)で運行されている。

ちなみに、東京駅では東海道新幹線と東北新幹線の線路が接続されていないため、現在、博多から八戸まで(その逆も)直通で行くことはできず、必ず東京駅での乗り換えが必要とされる。国鉄時代には、当初両線の直通運転を前提として建設の計画がなされていたというが(直通運転の実験用に試験車両961形も製造された)、東京を貫通する需要がほとんどないという調査結果、周波数の違い(東海道・山陽・九州新幹線は60Hzで、その他は50Hz)、それに東北・上越新幹線用のものには降雪対策が施されるなどといった車体設計の違いから、実現には至らなかった。

[編集] 新幹線直行特急(ミニ新幹線)

東北新幹線盛岡以北、及び長野新幹線の軽井沢以西はミニ新幹線として建設する事が計画されたが、結局フル規格で建設された。

[編集] 新幹線規格在来線

新幹線の回送線を旅客扱いするようにしたものであるが、距離が短く高速運転を行わないなどといった理由で在来線扱いになっている。しかし車両は新幹線のものであるため、同線を走る列車は一般の「特急列車」扱いとされ、乗車の際に特急券乗車券の他に要する。また博多南線の列車はJRにおける列車愛称がない唯一の特急列車ともなる。

  • 博多南線 博多駅~博多南駅間 8.5km (車両基地への回送線を旅客化)(JR西日本)
  • 上越線(支線) 越後湯沢駅ガーラ湯沢駅 1.6km (保守用の引き込み線を旅客化。上越新幹線と接続し、線路名称上も上越線の一部となっている。通称ガーラ湯沢線)(JR東日本)

新幹線では、東京駅から上野駅品川駅などの短距離区間でも自由席特定特急料金が840円となるのに対し、この区間は在来線特急扱いの列車しか走らないこともあり、特定特急料金がJRの特急料金では最低の100円となる。

[編集] 新幹線鉄道規格新線

新幹線鉄道規格新線とは、路盤・トンネルなどの構造物を新幹線規格で建設し、軌間1,067mmのレールを敷設して在来線の車両を走らせるもので、「スーパー特急方式」とも呼ばれる。以下の様な例がある。

  • 海峡線 新中小国信号場木古内駅間。線路間隔4.4m、ゲージ1,435mmに対応するスラブ軌道を採用。現在は1,067mmにボルトで固定してあるが、北海道新幹線の建設後は三線軌道となる予定。青函トンネル内は国鉄時代に製造された旧型特急車両(通常制限最高速度120km/h)でも140km/h現示まで出せ、新幹線のアナログATCと互換性のあるATC-L形を採用している(但しJR各社はATCシステムのデジタル化を進めており、北海道新幹線建設後は置き換えられる可能性が高い)。なお、勾配は±15‰以内、カーブ半径もR=6500程度と、新幹線規格の範囲で抑えている。架線電圧は現在は交流20kVであるが、新幹線開業時に25kVに昇圧予定で、貨物列車・夜行列車用には複電圧電気機関車が新規に必要となる。
  • 瀬戸大橋線 茶屋町駅宇多津駅間。但し児島駅~宇多津駅間の鷲羽山トンネル瀬戸大橋は新幹線と在来線の複々線にできる空間が確保されているだけで、新幹線用の線路は未敷設である。茶屋町駅~児島駅間は一部で勾配やカーブが新幹線規格に適合していない区間があるので、その区間は別途新幹線用の線路が敷設される。

北陸新幹線と九州新幹線鹿児島ルートの一部はスーパー特急方式で着工されたが、後にフル規格に変更された。また、九州新幹線長崎ルートについても一部スーパー特急方式で建設する事が検討されている。

その他の路線については、新幹線鉄道規格新線を参照のこと。

[編集] 計画中の路線

整備新幹線も参照の事。

[編集] 着工済

[編集] 次期着工予定

[編集] 未着手区間

[編集] 基本計画線

1970年に発布された全国新幹線鉄道整備法に基づき、以下の新幹線が基本計画線として挙げられたが、オイルショック国鉄の経営悪化などの影響を受けて着工は見送られた。現在でも着工の目処は全く立っていないものの、一部では建設を望む声が根強く残っている。

[編集] 未成線

  • 成田新幹線 東京駅~成田空港駅間 約70km
    • 1974年に着工したが、オイルショックの影響や、用地取得の困難、沿線自治体の建設反対運動が激しかったこともあり、1983年に工事は中止され、その後1987年の国鉄民営化に伴って基本計画が失効した。建設済みの施設は京葉線東京駅や成田空港高速鉄道線(成田線空港支線)に転用された。
  • 第二東海道新幹線
  • 上越新幹線 新宿駅~大宮駅間 約30km
    • 建設中止(東北新幹線に乗り入れ)となったが、一部区間では用地買収が済んでおり(埼京線高架沿いの空き地など)、新宿駅地下にもスペースが確保されている(都営地下鉄京王新線の新宿駅は上越新幹線の駅空間を避けるために深い位置に作られている)。整備新幹線開業後の大宮~東京間及び東京駅の容量逼迫に備えてこの区間の建設を再開すべきだという意見がある。

[編集] 新幹線の列車愛称

新幹線の列車愛称はJR東海・西日本が運営している東海道・山陽新幹線では速度別に付けられているが、JR東日本が運営している路線では方向・目的地別に付けられている。E1系E4系Max」を使用する場合は列車愛称の前に「Max」が付く。JR東日本の長野新幹線およびJR九州が運営している九州新幹線は単一愛称である。

かつて存在したグランドひかりの食堂車
かつて存在したグランドひかりの食堂車
東海道新幹線最終日の初代新幹線0系のこだま
東海道新幹線最終日の初代新幹線0系のこだま
  • 東海道・山陽新幹線
    • のぞみ」 - 最速列車。料金も下記2種とは別建てとなっている。500系700系、まれに臨時で300系が使用される。
    • ひかり」 - 「のぞみ」の補完列車。当初は大都市駅のみに停車し、各駅停車の「こだま」に対して超特急の代名詞であった。しかし利便性から徐々に乗降客数の少ない駅の停車が増やされ、「のぞみ」が加わった以降では「のぞみ」でも「こだま」(各駅停車)でもない列車という定義になる。山陽新幹線では"ひかりレールスター"と呼ばれる、顧客ニーズに応える形で登場した列車も運行されている。過去には"ウエストひかり"や"グランドひかり"などもあった。「のぞみ」と違い、一部区間が各駅停車となる列車もある。700系、500系、300系が使用される。
    • こだま」 - 各駅停車の列車。早朝、深夜のものには、時刻表に「普通車全車自由席」や「全車自由席」と書かれたものがある。東海道区間と山陽区間をまたがる「こだま」は存在しない。700系、300系、100系、0系が使われるほか、早朝・夜にひかりレールスター用700系7000番台を使用する列車がある。
  • 九州新幹線
  • 東北新幹線
  • 秋田新幹線
  • 山形新幹線
  • 上越新幹線
    • とき」 - 下記の「たにがわ」を除く列車。開業当初は、各駅停車の列車に使用されていた。一時は「たにがわ」への統合で消滅していたが、東京駅から高崎駅まで同じ区間を運行する「あさま」との混同を防止するため、2002年12月1日のダイヤ改正で「あさひ」からの改称という形で復活した。
    • たにがわ」 - 越後湯沢駅(スキーシーズンはガーラ湯沢駅)以南を走る列車。通常は各駅停車だが、冬季のガーラ湯沢までの運行のとき、一部の駅を通過することがある。
  • 長野新幹線

また、かつて使われていた列車の愛称として下記のものがある。

  • 東北新幹線
    • あおば」 - 各駅停車の列車。1997年10月1日のダイヤ改正で「なすの」・「やまびこ」へ統合して消滅した。
  • 上越新幹線
    • あさひ」 - 速達型列車(長野新幹線開業後は各駅停車もあった)。「あさま」と名称が紛らわしいため、2002年12月1日のダイヤ改正で「とき」へ改称された。

[編集] 新幹線車両

詳細は新幹線車両を参照
青と白のカラーリング(JR西日本仕様)の初代0系
青と白のカラーリング(JR西日本仕様)の初代0系

0系100系など国鉄時代の東海道・山陽新幹線車両では車体の素材に普通鋼が使われていたためやや重かったが、東北・上越新幹線用の200系からは耐雪装備による重量増加を抑えるためアルミニウムが用いられて軽量化が図られた。国鉄民営化後に開発された新幹線車両はアルミニウム車体が一般化、さらにアルミ材の加工手法の発達により、製作費のコストダウンとさらなる軽量化の両立が図られた。この結果、近年の車両は国鉄時代に開発された初期新幹線車両より著しく軽量化されている。

現在の新幹線車両の価格は、1両あたり概ね2~3億円と言われている。なお、新幹線車両の製作を行っているメーカーは現在、日本車輌製造川崎重工業日立製作所近畿車輛(JR西日本のみ)・東急車輛製造(JR東日本のみ)の5社である。

一方で、JR発足以降積極的に行われた高速化に伴い、走行中のパンタグラフ架線の接触や風切り音による騒音の発生や、接触部の著しい消耗などが問題とされた。このため、0系では2両おきに付いていたパンタグラフが300系では8両毎に1つに減ったほか、500系では翼型と呼ばれるT字型の特殊なパンタグラフが設置されるなど改良されて、集電効率も向上した。また、ふくろうの羽ばたく音が他の鳥と比べ静かであることをヒントに、パンタグラフに流線型の突起物を取り付けるなどの改良も加えられた。その他、高速でのトンネルの突入時のトンネル内部の急激な気圧変化による騒音(トンネル微気圧波)の発生を抑えるための、走行時の空気の流動性やトンネル進入時の面積変化率を考えた先端車両の開発などが行われているため、初期の0系に比べ先頭車先端部が長く伸ばされるとともに、通常の電車とは著しく異なった形態(鋭い流線型やカモノハシのような形)を呈する傾向にある。

新幹線においても定期的な車両整備を要する事から、沿線各地には車両基地が置かれている(検査項目についての詳細は鉄道車両の検査を参照の事)。

[編集] 新幹線の歴史

[編集] 新幹線の実現まで

[編集] 戦前における高速鉄道

日本の鉄道は明治時代の草創期にコストの面から狭軌を採用したため、その規格の低さに制約を受け、欧米の鉄道の様な高速運転とは無縁であった。最高速度は1910年代から1950年代まで100km/h以下に留まっていた。

そこで標準軌に改軌する提案も、明治から大正にかけて何度か出されていたが、政争や予算問題などから結局実現しなかった(日本の改軌論争も参照)。

また1910年代には、東京~大阪間に電車による高速新路線「日本電気鉄道」を敷設する計画が民間から出されたが、国の許可するところとならず、実現していない。

日本における現実的な高速列車開発は、日本の勢力下に在った満州(現在の中国東北部)を縦断する南満州鉄道(満鉄)に始まる。同社は日本の資本と技術により運営されており、ほとんどの幹部・技術者が日本人で、実質的に日本の鉄道と言っても過言ではない。

当時の満鉄は電化以前の鉄道で蒸気機関車牽引であったが、1,435mmの国際標準軌(日本では広軌と称した)を用いた高規格路線であり、保守的な日本内地の鉄道省とは一線を画した先進的な試みを早くから行っていた。

1934年、満鉄は自社設計によって当時の欧米の潮流に互した流線形蒸気機関車「パシナ形」を開発、これに新開発の流線形客車編成(全車冷暖房完備)を組み合わせ、大連~新京(現・長春)間701kmに特急「あじあ」号を運転開始した。この列車は最高速度120km/h以上を誇り、最高95km/hに留まる鉄道省の列車を遙かに凌駕した。所要8時間30分、表定速度は82km/hに達した。

とはいえ、当時の欧米の鉄道はさらに上を行っていた。例えばイギリスのLondon and North Eastern Railwayがロンドンエディンバラ間に運転していた特急列車「フライング・スコッツマン」は、蒸気機関車牽引で最高速度160km/h以上での営業運転を行っており、ドイツ国鉄では気動車列車「フリーゲンダー・ハンブルガー」が150km/h以上の高速で営業運転していた。さらにアメリカの私鉄各社には、定期運転列車を牽引して優に180km/hに達する蒸気機関車さえ存在していたのである。

120km/h運転そのものは、当時の欧米の主要幹線では標準的な水準であり、「あじあ」号の水準はそれに達したものでしかなかった(ただし、冷暖房装置完備は世界の最先端であった)。

この技術が、日本本土の鉄道に直接活かされる事はなかった。しかし同列車の開発関係者には鉄道技術者の島安次郎がおり、その長男の島秀雄と共に後述する「弾丸列車計画」を推し進める事になる。

なお前述した日本電気鉄道のように、民間による大規模な都市間電車は実現しなかったが、中近距離の都市間電車に関しては、新京阪鉄道阪神急行電鉄関西急行鉄道阪和電気鉄道のように、アメリカのインターアーバンの技術を取り入れるなどして、実現させた所もあった。これら路線の多くは、既存の鉄道線と競合する形で敷設されたものとなっており、「(既存の並行線よりも)高規格な路線において、高速運転を行うこと」がその建設目的となっていた。「新しい高規格線を敷く」という意味では、新幹線に通じる所もある。

その中でも、関西急行鉄道は途中での乗り換え(伊勢中川駅)こそあるものの、大阪名古屋という中距離の2大都市間(当時の営業キロで、189.5km)を電車で結ぶことに成功しており、また阪和電気鉄道は「あじあ」号の水準に匹敵する、表定速度81.6km/hの「超特急」を狭軌路線で運転していた。

これらの私鉄で用いられた電車は、当然ハイレベルな仕様の物が多く(新京阪デイ100形参急2200系阪和モヨ100形など)、後述する国鉄における動力分散方式の開発にも、いくらか影響を与えている。

[編集] 弾丸列車計画

1930年代に入ると満州事変日中戦争などによる日本から中国へ向かう輸送需要の激増で、東海道山陽本線の輸送量も増大した。

この頃鉄道省内部に「鉄道幹線調査会」が設立され、主要幹線の輸送力強化についての検討が行われた。ここから抜本的な輸送力増強手段として1939年に発案されたのが「弾丸列車計画」であった。

これは、東京から下関まで在来の東海道・山陽本線とは別に広軌(1,435mm・標準軌)の新路線を建設し、最高速度200km/hと満鉄「あじあ」号を超える高速運転を行い、東京~大阪間を4時間、東京~下関間を9時間で結ぶ事を計画したものであった。この計画は翌1940年9月に承認され、建設工事が始められる事になった。

既にこの時点で、新しい幹線を引くという事から「新幹線」や「広軌新線」という呼称を内部関係者は用いていた。「新幹線」の語はここが起源だとされている。

また将来的には対馬海峡に海底トンネルを建設して朝鮮半島へ直通、釜山から奉天(現・瀋陽)を通り満州国の首都新京(現:長春)、さらには北京・昭南(現:シンガポール)に至る、という構想も一部では描かれていた。

当時の鉄道はまだ機関車が客車を牽く方式が一般的で、「弾丸列車」も電気機関車と蒸気機関車を併用する方式で計画された。

1941年の太平洋戦争勃発後も工事は続けられ、日本坂トンネル(後に新幹線に利用)などの工事が進展したが、最終的には戦況の悪化で頓挫した。しかし、そのルートの相当部分が後の東海道新幹線建設で役立てられた。特に、土地買収が戦時中の時点で半ば強制的な形で相当な区間において終わっていた事は、新幹線建設をスムーズにした。

この弾丸列車計画の技師たちが居住した地として、静岡県田方郡函南町には「新幹線」という地名が、東海道新幹線の開業前から存在した。

詳しくは、弾丸列車の項目を参照の事。

[編集] 動力分散化への流れ

太平洋戦争終結後数年間、鉄道をも含めて混乱の極みにあった日本も、1950年の朝鮮戦争以降本格的に復興し、鉄道の都市間輸送需要も急激に伸張していった。

旧日本軍の研究部門や軍需企業に所属し、戦後その職を失ったり技術を持て余していた優秀な人材を、昭和20年代の国鉄が多数獲得した事は見逃せない事実である。高速走行中の車両の振動や、空力特性の研究は、旧軍出身技術者の存在によって大きく進展した。

1955年に国鉄総裁に就任した十河信二は、国鉄出身の卓越した技術者であるが一時民間に在った島秀雄を再度招聘し、国鉄技師長に就任させた。彼らを中心とする人々が、その後新幹線計画を推進する事になる。

地盤が悪く山がちな日本において列車を高速運転するには、機関車が客車を牽く「動力集中方式」よりも、電車気動車の様に編成の各車両に動力を持たせる「動力分散方式」の方が適している。カーブや勾配の多い条件でも加減速能力に優れ、また線路への負担が小さいため、脆弱な地盤に敷かれた線路でも高速を出せるからである。当時は蒸気機関車主流の時代であり、また国際的に見ても主流であることから、動力集中式に固執する者の多かった国鉄部内で、例外的に戦前から動力分散方式の特性を理解し、研究して来たのが島秀雄であった。

島は1951年に事情によって国鉄を離れていたが、彼の指揮の下で1950年に開発された東海道線普通列車用の80系は、電車が長距離運転にも優れた特性を発揮するという事実を実証し、その後国鉄の在来線に電車・気動車の普及を進める原動力となった。島の復帰以降、国鉄の動力分散化の流れはさらに加速する。

[編集] 高性能電車の出現

日本では1953年以降、欧米からの新技術移入や国内メーカーの技術開発に伴い、電車の高性能化の動きが始まった。

この過程で、振動を抑制し、乗り心地改善と高速運転に資する「カルダン駆動方式」、床面シャーシだけでなく側板や天井にも応力を分散させた「全金属製軽量車体」、全車両にモーターを搭載して加速力を高める「全電動車方式」、反応速度が速い上に取り扱いが容易な「電磁直通ブレーキ機構」など、それ以前の電車とは一線を画する重要な革新的技術が、1953年からわずか数年の間に実用化されて普及した。

この結果、高速性能・加減速性能に優れ、しかも居住性の良い「新性能電車」が、1954年以降大手私鉄を中心に続々と出現して、大きな技術的成功を収めた。国鉄もこの潮流に乗って高性能電車の開発に取り組み、1957年に新型通勤電車モハ90系(後の101系)を完成させる。

同年に小田急電鉄が完成させた低重心・連接構造の流線型特急電車3000形「SE車」は、アメリカで1941年に開発された高性能連接電車「エレクトロライナー」に影響を受けた設計で、最高速度145km/hを目指した野心作であった。

これに着目した国鉄は、高速走行時の特性に関する研究を目的に、小田急からSE車を借り入れ、1957年9月に東海道本線で速度試験を行った。結果SE車は計画通りの145km/hに到達して当時の狭軌鉄道の世界速度記録を達成した。続いて国鉄は90系通勤電車をギア比変更などで高速化改造、空気抵抗の面で不利な形態ながら135km/hの好記録を達成した。

これらの実績を踏まえて、1958年には90系の技術を応用し、東海道本線特急「こだま号」用に国鉄初の特急形電車モハ20系(後の151系)が開発された。流線型の軽量・低重心な車体は冷暖房完備で、空気バネ台車も装備し、スピードと快適な乗り心地を両立させて、動力集中方式の客車列車を完全に凌駕した。翌1959年7月には、東海道本線での速度試験で最高速度163km/hに達し、SE車の速度記録を更新した。

これらの電車における顕著な成績は、動力分散方式の資質を実証し、ひいては新幹線車両に電車を用いる事への強力な裏付けとなった。

また1955年から国鉄は交流電化方式の実用化に独自に取り組み、1957年の北陸本線を皮切りに、地方線区での交流電化を開始していた。これ自体は従来の直流電化に比べ、地上設備コストが低いと考えられたことによるものであったが、後に新幹線の電化システムに応用されることになる。超高速の電気鉄道においては大量の電力消費が生じ、これを架線から効率よく集電するには、従来から用いられて来た1,500Vの直流電源より、高圧交流電源を用いる方が適していたのである(日本の鉄道の交流電化方式は在来線20kV、新幹線25kV)。

[編集] 新幹線建設へ

これに先立ち、戦後の復興と共に鉄道及び道路輸送の需要が増大すると、当時の日本における最重要幹線であった東海道本線の貨客輸送能力は、ほぼ限界に達していた。1956年に東海道本線の全線電化が完成するが、需要の増加には焼け石に水であった。

1957年、国鉄内部の「幹線調査会」は、東海道線の輸送力飽和は早晩必至とし、現在線以外の線路増設が必要であると答申した。実際の手法として様々の案が出されたが、特に有力だったのは以下の案だった。

  1. 現在線に沿って線路を増設、複々線とする。
  2. 別ルートで狭軌新線を建設する。
  3. 別ルートで広軌新線を建設する。

結局東海道の線増計画は、従来の常道であれば複々線案が採られたところであるが、十河ら国鉄幹部は将来の発展性を視野に入れ、あえて困難の多い広軌新線を建設する事としたのである。それは戦前の弾丸列車計画を、戦後の技術革新の下で、改めて実現しようとする超高速列車計画であった。

同年5月25日には鉄道技術研究所(現:鉄道総合技術研究所)が、広軌新線ならば東京~大阪間の3時間運転は技術的に可能であるという報告を創立50周年記念講演会で述べた。十河総裁はその話を聞くや強い関心を示し、国鉄幹部を集めて技術研究所員に詳細を話させたという。

当時欧米では、将来の大量輸送手段として航空機高速道路網による高速輸送が有望視され、鉄道はそれらに取って代わられる時代遅れのものだという見解が広まっていた。日本でもこれを範としようとする向きが一般的であり、在来線とは別規格の高速新線を建設するというプランは、国鉄内部でさえも疑問視する者が多かった。

鉄道ファンでもある作家の阿川弘之ですら、戦艦大和大和型戦艦)・万里の長城ピラミッドが「世界三大馬鹿」であり、この時期に莫大な投資をして新幹線を造れば「第2の戦艦大和」となって世界の物笑いの種になると批判した(後に阿川は新幹線が世界の鉄道斜陽論を覆すに至るまでの成功を収めたのを見て、十河の跡を継いで国鉄総裁を務めた石田禮助との対談において、自らの不明を悔やむ発言をしている)。

その様な厳しい状況下で、十河と島は東海道に新たな大規模高速輸送用の鉄道路線(新幹線)を実現すべく政治的活動(十河が担当)と、技術的プロジェクト(島らが担当)を続けた。

技術的裏付けの下、1958年に建設計画が承認され、翌1959年4月20日に起工式が行われた。総工費は当初予定から修正され、3,800億円にまで膨らんだ。元々十河などが国会内での承認を取るために安く見積もっていたのであり、十河と島は新幹線開業前に責任を取る形で国鉄を退職する事になる。

1961年5月1日に国鉄はこのプロジェクトに対し、世界銀行から8,000万ドル(当時は1ドル=360円の固定相場制)の融資を受けたが、1964年までに完成させるという厳しい条件が付けられた(この融資は1981年に返済が完了した)。

その建設に関しては前述の通り、戦前の「弾丸列車計画」の際に掘られたトンネルや、買収された用地の多くが活用された。5年という短期間で完成したのは、このときの用地買収及び工事があったからだともいわれている。また京都府では、完成した新幹線の線路を高架工事中の仮線として用いて、暫定的に阪急京都本線の電車を走らせていたこともあった(→新幹線の線路を走った私鉄電車)。

[編集] 鴨宮モデル線区

1962年には神奈川県小田原市近郊に鴨宮モデル線区(小田急線高座渋谷駅付近~東海道線鴨宮付近)が完成した。ここが試験地域に選ばれた理由は以下の通りである。

  1. 戦前の弾丸列車構想に際してすでに用地を取得しており、早い時期に着工する事が可能である。
  2. 直線・カーブ・トンネル・鉄橋と、線形や地上設備のシチュエーションが一通り揃っており、データ収集が容易である。
  3. 鴨宮付近では東海道本線と隣接しており、車両・資材などの搬入に便利である。
  4. 鉄道技術研究所からも近く、問題が発生した時も対処が容易である。

ここで2編成の試作電車「1000形」が走行テストを繰り返した。2両編成の「A編成」(1001・1002)と、4両編成の「B編成」(1003~1006)が製造され、台車や車内設備、窓形状などに差異を付けて比較材料としている。

試験中の1963年3月20日、1000形B編成は256km/hの国内速度記録を達成している。

鴨宮モデル線区での研究は、初代新幹線電車となる0系や、線路設備の開発に活かされる事になった。

しかし、この鴨宮モデル線区にはある欠点があった。相模湾に近く、冬でも比較的温暖な鴨宮では、降雪時の高速運転を想定した試験データは十分に得られなかったのである。

東海道新幹線の名古屋~新大阪間経路は、当初計画した鈴鹿山地経由ルートが費用や技術、工期の制約から断念され、東海道本線同様に関ヶ原を経由するルートに変更されていた。

関ヶ原周辺は谷間で標高も高く、冬期には激しい降雪のある地域でもある。この様な区間を冬期に高速列車で通過する状況の研究が、開業前には十分に行えなかった。このことは、1964年の開業後初めての冬期に関ヶ原での着雪による車両故障を頻発させる原因となった。

この鴨宮モデル線区は、開業後も設備が無駄にならないよう、建設中の路線の一部を先行完成させて利用する手法が採られた。このため、東海道新幹線開業に当たっては、その一部に組み込まれている(新横浜小田原間の一部)。この手法は後続の他の新幹線路線や、リニアモーターカー試験線にも踏襲されている。

またテストに使われた試作電車は、東海道新幹線開業後に改造を受けた。A編成は救援車941形に、B編成は電気軌道総合試験車922-0形となり、それぞれ役立てられる事になる。

[編集] 開業以後

[編集] 国鉄分割・民営化まで

1964年10月1日東京オリンピックの開催に合わせて東海道新幹線が開業した。併せて専用の0系が開発され、営業に投入された(→1964年10月1日国鉄ダイヤ改正も参照)。

開業当初の営業最高速度は200km/h。路盤の安定を待って翌年に210km/h運転を開始した(→1965年10月1日・11月1日国鉄ダイヤ改正も参照)。

日本の二大都市である東京~大阪間は、1958年から在来線の特急で日帰り可能になっていたものの滞在時間がわずか2時間余りしか取れなかった。しかし新幹線の開通により、日帰りでも滞在時間を充分取れる様になり、社会構造に著しい変化を及ぼした。ビジネスやレジャーの新しい需要を喚起し、東海道新幹線においては当初の12両編成が、1970年大阪万博の開幕を機に16両編成まで拡大され、高速大量輸送機関としての確固たる地位を確立した。

その一方で、新幹線の建設や特急・急行列車の増発、さらには都市部における通勤輸送増強(五方面作戦など)などの設備投資に追われた事から、新幹線の開業した1964年度から国鉄収支は赤字に転落し、以後それは拡大する一方となって、結果的に新幹線建設は国鉄破綻の1つの原因となった。しかし以後の国鉄において、新幹線は重要な収入源ともなっていく。

その後、東海道新幹線に続いて、同じ様に需要の増加していた山陽本線の抜本的輸送力改善と高速化を目的として、1967年に東海道新幹線を延伸する形で山陽新幹線が着工され、1972年3月15日に岡山まで、1975年3月10日には博多まで開業した(→1972年3月15日国鉄ダイヤ改正1975年3月10日国鉄ダイヤ改正も参照)。「ひかりは西へ」がそのキャッチコピーであった。

さらに東北方面への延伸も計画された。1971年東北新幹線上越新幹線が着工され、1974年には建設中の成田空港へのアクセス路線として成田新幹線も工事に入った。折しも田中角栄内閣総理大臣による「日本列島改造論」という発言があり、整備は順調に進むかに見えた。

だが、実際には用地買収の難航やトンネル工事での異常出水などがあり、前者2つの新幹線は予定より工事が5年も遅れ、成田新幹線に至っては工事中止となってしまった。また、新幹線沿線での騒音振動による公害問題がこの頃深刻化した(名古屋新幹線公害など)。さらに国鉄財政の悪化に伴う運賃・料金値上げの繰り返し、労働紛争によるストライキの頻発化などから、既存新幹線の乗客が減少傾向に陥った。そして労働紛争の影響からか技術革新が見られなくなり、新幹線の発展・発達は一時停滞した。

1982年に大宮発着という暫定的な形で東北新幹線と上越新幹線は開業し(→1982年11月15日国鉄ダイヤ改正も参照)、1985年には用地買収の関係で遅れていた都心(上野)乗り入れを果たした(→1985年3月14日国鉄ダイヤ改正も参照)。これにより東北・上越地方における鉄道シェアは大幅に拡大した。だが、国鉄財政はそれら新幹線の建設費負担も重なって遂に破局的状態となり、中曽根内閣の下で断行された1987年の国鉄分割民営化に至るのである。

[編集] JR発足から現在までの流れ

国鉄の分割・民営化後、東北・上越新幹線はJR東日本、東海道新幹線はJR東海、山陽新幹線はJR西日本の運営とされたが、当初設備は第3種鉄道事業者の「新幹線保有機構」が保有し、各会社が第2種鉄道事業者として路線を借り受けて運営する形とした。新幹線の保守費用は各社が負担し、新幹線保有機構は設備の貸し代だけを受け取るもので、利益の出る新幹線事業によって赤字となる他地域JR会社への補填を行うのが目的であった。

しかし、前記JR3社の経営が安定化して、東京証券取引所などへの上場が視野に入ると、輸送量に応じて貸し賃が変わるこの制度のままでは会社の営業努力が反映されない事や、各社の資産・債務の額が確定できない事などが問題視され、結局1991年に制度を変更し、各鉄道会社が新幹線資産を新幹線保有機構を改編した鉄道整備基金から60年賦で買い取る事にした。

分割・民営化後、技術・営業面で停滞していた新幹線も新型車両の登場、新形態など積極的な流れが見られる様になった。

後者の代表として、JR東日本は新幹線規格(フル規格)の線路を新規に建設することなく、既存の在来線を改良し、専用の車両を新造したうえで、新幹線と在来線が直通運転できるようにしたミニ新幹線を整備した。

1992年400系を新造し、山形新幹線として奥羽本線福島駅山形駅が、1997年E3系を新造し、秋田新幹線として田沢湖線・奥羽本線の盛岡駅秋田駅が、1999年E3系1000番台を増備し、山形新幹線の延伸として奥羽本線の山形駅~新庄駅が、それぞれ順次営業運転を開始した。

JR西日本は山陽新幹線博多総合車両所への回送線を旅客線化し、1990年博多南線として博多駅~博多南駅を、こだま号に使用される車両を用いる在来線特急という形態で営業運転を開始した。

また最高速度は210km/hの時代が長く続いたが、国鉄末期頃(→1985年3月14日国鉄ダイヤ改正1986年11月1日国鉄ダイヤ改正も参照)から次第に向上されるようになり、2006年現在では300km/hに至っている。

そして国鉄末期に建設が凍結されていた整備新幹線は工事が再開され、東北新幹線(盛岡~八戸・2002年)・北陸新幹線長野新幹線・1997年)・九州新幹線(新八代~鹿児島中央・2004年)が部分開業し、残った区間や未開業の北海道新幹線なども工事が次第に進みつつある。

また近年、新幹線による通勤通学が増加しつつある。これは、いわゆるバブル以降の大都市における地価の高騰で、新幹線で通勤・通学が可能な郊外(主に東京への通勤・通学を目的に栃木県群馬県静岡県東部が多い)の住宅に住む人が増えたためである。1983年2月の新幹線定期乗車券販売開始をきっかけに、新幹線通勤定期券を支給する企業の増加、さらに企業が支給する通勤定期券代の所得税非課税限度額の引き上げがそれに輪をかけた。朝・夕の新幹線においては通勤客で混雑が激しくなり、現在では通勤客向けのダイヤも設定されるようになった。これに対応してJR東日本ではMaxという多座席型の2階建車両を投入し、1列車あたりの定員を大幅に増やした。

[編集] 新幹線の安全神話

1964年10月1日に最初の新幹線である東海道新幹線が開業して以来、40年以上に亘って新幹線に乗車していた乗客の(新幹線に起因する)死亡事故は発生していない。

投身自殺による死亡例は多数発生しており、またドアに乗客の手を挟んで引き摺り死亡させたケース(1995年三島駅乗客転落事故を参照)はあるが、これらは新幹線システムそのものの根本的欠陥に起因する事故ではないため例外と考えられ、新幹線の安全性は概して非常に高いものと捉えられている。新幹線の安全を確保するシステムが的確に運用され、恒常的に維持されてきていることは、日本の鉄道技術の水準を端的に示す要素であるとも言える。この事実は新幹線の安全神話などと称され、一部にはこれを過信する向きもある。確かに従来の実績から、新幹線における事故の発生確率は低いと考えられるが、死者こそ生じなかったものの、重大な事故は実際に何度か発生している。

[編集] 新幹線における事故の事例

1973年に東海道新幹線の大阪運転所(鳥飼基地)からの回送列車が脱線した事故、1997年山陽新幹線の岡山新幹線運転所内で過走して脱線した事故、そして1999年に山陽新幹線福岡トンネルで通過中の列車にコンクリート片が落下し天井が破損した事故は、安全確保に悪影響を及ぼす事例と考えられ、重大視されている。

また在来線と直通運転する山形新幹線では、つばさ号と自動車との踏切事故がしばしば発生している。この様なケースは新幹線の事故というよりは、在来線での日常的事故の範疇に属するものであるが、新幹線の在来線直通における高速運転の課題として常に想起される事例でもある。

[編集] 阪神・淡路大震災の事例

1990年代以降、日本国内における大きな地震災害の多発により、高速鉄道の地震に対する脆弱性が指摘される様になった。

1995年1月17日阪神・淡路大震災では、被災地域において山陽新幹線の高架橋が破損・一部落下し、新大阪~姫路間が80日間に亘り不通となった。地震発生は午前5時46分で、この日の運転が始まる前であったため、惨事には至らずに済んだ。これを機に高架橋の補強など耐震対策が進められた。

[編集] 新潟県中越地震の事例
地震により軌道から脱線した車両
地震により軌道から脱線した車両

さらに、2004年10月23日新潟県中越地震においては、上越新幹線が甚大な被害を受けた。高架やトンネルなどの構造物に損傷が発生したほか、上越新幹線列車のとき325号(10両編成、200系=K25編成)が長岡駅の手前付近を約200km/hで走行中に脱線した。これはまた新幹線史上初の営業運転中の脱線事故となった(詳細は上越新幹線脱線事故の項を参照されたい)。

上越新幹線には地震感知システム「ユレダス」をカスタマイズした「コンパクトユレダス」が採用されているが、とき325号のケースでは通過地点でほぼ直下型の地震であったため、初期微動P波)検知後にブレーキをかけたものの地震の被害を受ける前に停車する事はできなかった。この時の脱線の衝撃で、レールの多くは道床の締定が外れ、一部のレールはねじ曲がるなどの大きな被害を受けた。200km/h走行時の衝撃がいかに大きかったかが推察できる。

通常、列車がこの規模の地震に震源地付近で直撃された場合、たとえ停車していても脱線は免れ得ないと考えられるが、この事例では脱線したとはいえ編成全体の大規模な横転などには至らず、死者・重傷者などは奇跡的に生じなかった。とき325号の事例では、対向列車の不在などの偶然が幸いし、正面衝突など致命的事態には至らなかったが、満車時に対向車と正面衝突していれば極めて重大な死傷事故を起こしたことは想像に難くない(ただし、地震発生5分後に対向列車とすれ違うダイヤになっていた)。また、事故現場は積雪の多い地帯のためレール脇に雪を融かして流すための溝があり、そこに車体一部が填まり込むことで横転せずに済んでいた。一般にはレール脇は平坦であるため、もしそのような場所で脱線していれば車体は完全に横転していたかもしれない。この事故は新幹線を運営するJR各社に新幹線における地震対策の重要性を強く認識させる事になった。

[編集] 災害・テロへの対策不足

新幹線では、航空機や船舶と異なり、通常の運行では乗客名簿などは整備されない。万一、転覆事故などで多数の死傷者が生じた時には、死傷者の身元特定に支障を来すのではないか、との指摘もある。もしそうなった場合、家族への連絡や事故の補償などで大きな問題となることが予想されるが、新幹線を運営する各鉄道会社はこの課題について踏み込んだ対策を採るまでには至っていない。

20世紀末から世界的に増加しているテロリズムに対しても、新幹線は脆弱ではないか、との指摘もされている。現状では航空機のような搭乗時の手荷物検査がなく、その気になれば車内やプラットホームに、爆発物刃物を容易に持ち込むことができるのも事実[2]である。また高架橋などの軌道設備には周囲から容易に接近できる箇所が多く、この面でもたやすくテロの対象となりうる。

なお、東海道山陽新幹線の次世代車両N700系はデッキに防犯カメラをとりつけている。しかし、ロンドン同時爆破事件を見れば明らかな通り、防犯カメラを取り付けてもテロに対する対策にはならない。また、防犯カメラの設置が「プライバシーの侵害につながらないか」と危惧する声もある。

[編集] 新幹線の世界への影響

[編集] 世界の高速鉄道の最高速度

世界初の210km/h運転を達成した新幹線の成功は、欧米各国に影響を及ぼした。鉄道先進国を自負していたフランスは、1967年5月28日より高速列車TGS (fr:TGS) を欧州において初めて200km/hで運転し、その後も複数の列車を200km/hで運行していた。新幹線の開業後、1981年に本格的な超高速列車TGVを開発し、営業最高速度260km/hというスピード世界一を達成し、新幹線の記録を凌駕した。

その他、ドイツ(ICE)やイタリアペンドリーノ)でも高速列車が計画され、実現に移された。イタリアのペンドリーノは欧州初の高速新線であり、1970年に工事が始まり、1978年に部分開業を迎え、1983年に250km/h運転を開始したものの、その後の整備で仏独に遅れを取り、全線が開業したのは1992年である。 スペインは、高速新線の導入を検討していたが、TGV方式の高速列車を採用、その他にもフランスからTGVを導入する国が増えている。 ロシアの高速列車ソコルは1997年、ドイツ鉄道の技術支援を受け、モスクワ~サンクトペテルブルグ間654kmを営業時の最高速度250km/hで結んだ事に拠り、これまで4時間20分掛かっていたものが、2時間30分に短縮された。

なお、既に標準軌の鉄道網が整備されているこれらの国では、駅周辺は従来の路線をそのまま使用し、郊外区間では諸条件によって高速新線建設と在来線改良を使い分けることが多く、システム的には全線を新線として建設する新幹線とは別物と言える。

走行試験を除くと、2007年1月現在、フランスのTGVの320km/hが世界最高である。日本のJR西日本の500系 (300km/h)、ドイツが自国開発したICE (300km/h) がそれに続く。韓国では2004年、フランスのTGV方式の韓国高速鉄道 (KTX) が300km/hで開業し、台湾では2007年、日本の新幹線方式(一部仏独の技術を導入)の台湾高速鉄道が300km/hで開業した。また、中国でも2007年、日本の新幹線はやてやドイツのICE3などをモデルにした高速車輌が在来線での運行を開始し、300km/h以上の高速運転が可能な新線の建設を目指している。

TGVは360km/hへの速度向上を計画している。2007年後半からフランスのTGV方式のスペインのAVEは、マドリードバルセロナ間630kmの新造線で、ドイツのICEの技術に使われているシーメンス製のVelaro Eという列車を使い350km/hで運転する計画がある。それが実現すれば、マドリード~バルセロナ間は2時間30分に短縮される。 ロシアでは、日本企業などとも接触し、モスクワ~サンクトベテルブルグ間に高速新線が建設中であり、これが完成すると350km/h運転が可能となる。さらに世界一長いシベリア鉄道(モスクワ~ウラジオストック間9,288km)を350km/hの高速で結ぶ計画もある(ただし莫大な建設費用が掛かると言われており実現の程は未知数である)。 ベトナムにも将来、日本の円借款で新幹線をモデルにした南北高速鉄道が最高速度350km/hで開業予定である。

リニアモーターカーを含めた2006年現在における世界最速の旅客営業鉄道路線は、2003年にドイツの技術によって開業した中国上海浦東国際空港のアクセス用トランスラピッドで、最高速度は430km/hである。またドイツでもミュンヘン空港のアクセス用にトランスラビッドが建設中である。

試運転での現在の運転最高速度の世界一は、リニアモーターカーを除くと先述のTGVで574km/hである(日本の新幹線は443km/h世界第2位)。リニアモーターカーでの世界一山梨リニア実験線のMLX01で581km/hである。

東海道新幹線は建設が古く、カーブやトンネルなどは200km/h台の設計になっている。より新しい山陽新幹線・東北新幹線などもフランスやドイツなどと比較すると山岳区間が多く、路線の起伏やカーブの設計などにおいて高速化を妨げる点が多い。特に後者は上越新幹線共々寒冷地の耐寒・耐雪装備が不可欠であり、重量的に不利である。また沿線に住宅地が多いため、騒音への対策も必要となるため、300km/h以上の運転には解決すべき課題が多い。

しかしJR東海・西日本では2007年より山陽新幹線で500系と同じ最高速度300km/h、東海道新幹線でも500系より高速で運転できるN700系を導入予定である。また、JR東日本は2004年から360km/h走行を前提とした試験車両(E954・E955形)の開発を開始しており、2005年からはE954形、2006年からはE955形も走行試験を行っている。

[編集] 営業運転での最高速度記録(磁気浮上式鉄道を除く)

  • 1964年 - 東海道新幹線開業。210km/h。軌道の安定を図るため一部区間で180km/h運転
  • 1965年 - 東海道新幹線 徐行運転が解除され全線で210km/h
  • 1972年 - 山陽新幹線開業。210km/h
  • 1981年 - フランスでTGVがパリ~リヨン開業。260km/h
  • 1982年 - 東北新幹線・上越新幹線開業。210km/h
  • 1983年 - フランスでTGVが270km/h
  • 1985年 - 東北新幹線で240km/h
  • 1986年 - 東海道・山陽新幹線で220km/h
  • 1988年 - 上越新幹線で240km/h
  • 1989年 - 山陽新幹線で230km/h
  • 1989年 - フランスでTGVが大西洋線を開業。300km/h
  • 1990年 - 上越新幹線で275km/h(大清水トンネル下り坂利用) 
  • 1992年 - 東海道新幹線で270km/h
  • 1993年 - 山陽新幹線で270km/h
  • 1997年 - 東北新幹線で275km/h
  • 1997年 - 山陽新幹線で300km/h(500系電車による)
  • 1997年 - 長野新幹線開業。260km/h
  • 2002年 - ドイツでICE-3が開業。300km/h
  • 2004年 - 九州新幹線開業。260km/h
  • 2004年 - 韓国で韓国高速鉄道 (KTX) が開業。300km/h(専用軌道内での最高速度。在来線軌道内での最高速度は150km/h)
  • 2007年 - 台湾高速鉄道開業。300km/h

(新幹線以外の高速鉄道の詳細な記録は高速鉄道をご覧下さい)

[編集] 新幹線の輸出

[編集] 台湾

台湾台北から高雄に至る約345kmのうち、台北左営の約342kmで運行中の高速鉄道路線(台湾高速鉄道)は、独仏連合との熾烈な受注競争の末、日本連合が最終的に逆転、受注に成功した。この高速鉄道は新幹線のシステムを導入して建設されており、車両には700系をベースとした700T型が用いられている。日本が受注した背景には、技術や安全性もさる事ながら、台湾は歴史的にも日本に対し親近感を持っている事、地理的に日本と類似した条件にある事、地震に備えるシステムが構築されている事などが挙げられるが、最終的には日本側が提示した資金面での優遇措置を加えた事が契約締結の決め手となった。

当初は2005年10月の開業を目指して建設が進められたが、台湾高速鉄道のコンサルタント業務を欧州連合が先に受注していたため、施工方法やスケジュールの調整が難航。また建設工事の一部区間を受注していた韓国企業による路盤の手抜き工事が発覚するなど、各国企業の思惑が入り乱れたため、開業時期が徐々に遅れ、結局2007年1月5日までずれこんだ。台北~板橋間は2007年3月に開業し、左営~高雄間は未定。

[編集] イギリス

イギリス戦略鉄道庁とHSBC Rail UKは2005年6月2日、ロンドンケント州間における高速新線CTRL (Channel Tunnel Rail Link) の国内専用車両に関して、日立製作所が導入・保守契約を締結した事を発表した。

日立製作所に正式発注が決定した場合、UIC規格路線を走る初めての新幹線車両となり、CTRL線上においてTGVベースのユーロスターと混在して運行される事となる。

30編成で計180両となり、受注総額予定は2億5000万ポンド。

営業最高速度は、CTRL線上で140マイル毎時 (225km/h)、在来線では70mph (112km/h) で、将来的には時速170mph (275km/h) を目指す。

この契約の背景には、オーストラリアでの鉄道高速化に日立がその実績を持っていたことと、国民レベルで存在するフランスを嫌悪する意識(cf.百年戦争)、そして古くはイギリス国鉄時代に始まり、民営化後ハットフィールド事故で極まった鉄道運行・保守システムの荒廃を、日本からの技術導入によって立て直す嚆矢としたい狙いがある。

[編集] 中国

中国本土、北京上海間1300kmの高速鉄道建設計画を巡り欧州企業との熾烈な受注競争が続いているが、第1段階として主要都市間の在来線高速化 (200km/h) 用にフランスのTGV、ドイツのICEと共にJR東日本のE2系をベースにした120両の高速車両が導入されている。

日独仏の3陣営が三つ巴で採用を争っていた中国の高速鉄道は、これらの車両の運用実績をもとに本格採用が決定されるものとみられる。2006年2月から完成車の納入が開始された。

また技術供与による現地生産も行われ、そのうち、川崎重工と青島の南車四方機車車両が製造したCRH2型「子弾頭」“China Railway High-Speed2”が2007年1月28日から運行を開始した。中国では反日テロを警戒したため、日本の技術供与については報道されなかった。

なおJR各社では、JR東日本が受注に積極的なのに対し、台湾への技術供与を行ったJR東海の葛西敬之会長は、トラブルが発生した場合の責任問題や技術流出の危惧から反対の意見を表明している。

行政及びJR各社は、中国への技術流出を防止するため、受注するにしても当たり前のことであるが詳細な取り決めを中国側と交わさなければならないだろう。


[編集] 韓国

韓国の高速鉄道「KTX」計画においては、日本の新幹線方式も入札に参加していたが、最終的にはフランスのTGV方式となった。

[編集] その他

  • ベトナムではハノイホーチミン間 (1,630km) で円借款での南北高速鉄道(最高速度350km/h)の建設計画があり、完成すれば現在30時間以上掛かっている所要時間が10時間弱に短縮されると期待されている。
  • アメリカカリフォルニア州ロサンゼルスサンフランシスコ間にも建設計画があるが、州の予算や採算性の問題もあり、建設時期は未定のままである。
  • ロシアではモスクワ~サンクトベテルブルグ高速鉄道運行プロジェクト(路線距離645km、最高速度350km/h)が進行中であり、同プロジェクト一行が日本企業と接触している。モスクワ~ウラジオストック間にも路線距離世界一(9,288km)になるシベリア鉄道(最高速度350km/h)の建設計画がある。

世界的に見ると、高速鉄道を必要とする国には、日本の様に地理的条件や騒音対策、輸送量の面で過酷な条件に置かれているケースはさほど多くはないため、新幹線方式よりもコスト面でより有利なTGVに代表される半動力集中式を採用するケースが多い。

[編集] 新幹線による貨物輸送

交通博物館で展示されていた東海道新幹線貨物列車(電車)の模型
交通博物館で展示されていた東海道新幹線貨物列車(電車)の模型

いわゆる「貨物新幹線」は、東海道新幹線の建設時から構想だけは存在したものの(旅客列車のない深夜に超高速コンテナ電車を走らせる構想があった)、いまだに実現されていない。新幹線による貨物輸送は従来よりも経済的であるとされるが、最高速度や制動距離などの違いからダイヤグラム上で旅客列車と混在させることは現状では困難である。また、高速で走ったとしても積み替え等の時間が必要なことから、時間短縮効果が旅客ほど出てこないともされる。なお、約40年の時を経て同様の列車が在来線に「JR貨物M250系電車(スーパーレールカーゴ)」として登場した。

東海道新幹線建設時の計画は、実際のところは世界銀行からの新幹線建設の資金調達のため、旅客だけでなく貨物輸送もあるというポーズをつけるための、ダミー構想といえるものであった(当時の欧米は鉄道斜陽論が台頭していた上、世界銀行のあるアメリカでは、すでに鉄道は旅客利用ではなく貨物が中心となっていたため、「旅客専用」の新しい鉄道建設を理解してくれないだろうから、建設資金を貸し出しさないだろうと考えていた)。しかしながら、新幹線大阪第二車両所(鳥飼基地)の京都側に、東海道新幹線の本線を跨ぐ構築物や、事業用地などに使われている線路用地の跡など、新幹線貨物輸送の構想の遺構が確認できる箇所もある。また、JR貨物大阪貨物ターミナル駅は新幹線貨物輸送で大阪側の貨物取扱駅として用意されていた土地を転用したものといわれており、可能ならば実用化しようという姿勢自体は見られた。

2005年から建設が始まった北海道新幹線は、青函トンネルとその前後の区間を在来線の貨物列車と共用するため、同区間では片道あたり新幹線・貨物それぞれ2本/時しか走らせることができないと予想されている。JR北海道ではこのボトルネックを緩和する方法の1つとして、在来線の貨車をそのまま搭載する専用列車(トレイン・オン・トレイン)の研究が進められている。


[編集] 運賃・特急料金

[編集] 運賃

新幹線の運賃は、並行在来線の営業キロを元に決められる。これは、元来新幹線が並行在来線の別線増設として建設されたという歴史的経緯や、運賃計算の繁雑化を避けた事によるものである。詳しくは以下の通り。

注:「並行在来線」とは、東海道新幹線では東海道本線、山陽新幹線では東海道本線・山陽本線鹿児島本線、東北新幹線の東京駅盛岡駅間では東北本線、上越新幹線では(東北本線)・高崎線上越線信越本線、九州新幹線の川内駅鹿児島中央駅間では鹿児島本線のこと。

  • 新幹線と並行在来線は原則として同一路線とみなされる(「幹在同一視」)。そのため、新幹線を利用した場合と在来線を利用した場合とで基本的に運賃は変わらない(後述するように例外もある)。
    山陽本線には岩国駅櫛ヶ浜駅間を含む区間について岩徳線経由のキロ数で運賃を計算する特例がある(経路特定区間)が、山陽新幹線にもこの特例が適用される。
  • 並行在来線と接しない新幹線駅については、それに最も近い(もしくは対応する)並行在来線の駅に相当するものとして営業キロを定める(例: 新花巻駅花巻駅の営業キロを用いる)。
  • 並行在来線(の一部)が廃止されたり第三セクター鉄道に転換されたりして「並行するJR線」が消滅した区間(長野新幹線の高崎駅軽井沢駅長野駅間・東北新幹線の盛岡駅~八戸駅間・九州新幹線の新八代駅~川内駅間)については、実際のキロ数を営業キロとする。
  • 幹在同一視の原則により、片道乗車券の経路に新幹線とそれに対応する区間の並行在来線の両方を含む事はできない。
    例えば、名古屋→(新幹線)→静岡→焼津と乗車する場合、静岡~焼津間が重複となるため1枚の片道乗車券にはできず、名古屋→静岡と静岡→焼津の別々の乗車券が必要である(連続乗車券にする事もできる)。

一方、新幹線と並行在来線とを完全に同一視すると旅客にとって不利になる場合を考慮して、以下のような例外がある。

  • 並行在来線と接しない新幹線駅を含む区間(例:品川~新横浜~小田原)については別の路線として扱う。
    例えば、大阪→新大阪→(新幹線)→名古屋→大垣と乗車する場合は、名古屋~大垣間を重複とせず、全体を1枚の片道乗車券にする事ができる。

また、山陽新幹線の新下関駅小倉駅博多駅間については、新幹線(JR西日本)と在来線(JR九州)とで管理する会社が異なることから、他の区間とは扱いが異なっている。

  • 基本的には同一の路線として扱うにも関わらず、運賃が異なる。
    JR九州管内となる下関以西の在来線では乗車距離に応じた加算額が課されるのに対し、JR西日本管轄の新幹線ではそれがないため。
  • 運賃が異なることに起因して、片道乗車券の発売条件の判定がかなり煩雑である。規則を厳密に解釈すると、条件によっては片道乗車券でも連続乗車券でも発売できない経路が存在する。

詳しくは、旅客営業規則第16条の2、第16条の3及び第16条の4を参照。JRグループ旅客営業規則(JR東日本版)

[編集] 特急料金

新幹線(山形・秋田新幹線を除く)の特急料金は、乗車券や在来線の特急列車のような対キロ制ではなく、各駅の区間ごとに決められた、いわゆる三角表方式となっている。

新幹線と在来線の乗り継ぎについては、乗り換えを強いられる旅客の経済的負担を抑えるため、一定の条件で在来線の特急・急行料金を半額に割り引く制度がある(乗継割引)。

なお、制度上在来線である山形新幹線と秋田新幹線については、新在直通運転を行うという特殊性から、以下のような取扱いになっている。

  • 福島駅新庄駅の区間内相互間、および盛岡駅秋田駅の区間内相互間での利用の場合
    在来線として扱い、A特急料金を適用する。
  • 東北新幹線と福島・盛岡で乗り継ぎまたは直通する場合
    東北新幹線区間の特急料金に、在来線区間の乗車距離に応じた特定の特急料金を加算する。この在来線区間の料金は、通常のA特急料金とそれに乗継割引を適用した金額との中間的な額になっている。

また、九州新幹線には乗継割引の制度がないが、新八代で鹿児島本線の特急列車と改札を出ずに乗り継ぐ場合は、両方の列車を通じて特定の特急料金を適用する。ただし、鹿児島本線の特急列車からさらに山陽新幹線に乗り継ぐ場合はこの取扱いをしないなど、複雑な制度になっている。詳しくは乗継割引の項を参照のこと。

[編集] 営業上の競合など

[編集] 航空便との競合

長距離移動においては国内航空便との競合がこれまで続いてきたが、航空会社の規制緩和による各種割引運賃の一般化(早割、特割、激割など)や、さらに旅行業者とタイアップして宿泊料金込みで格安の料金を打ち出して来る航空便に対し、事実上、値段(運賃)の面では太刀打ちできなくなっているのが現状である。

また、航空会社によるマイレージサービスの存在も大きく影響している。高頻度の利用客に対し通常より多いボーナスマイルや専用ラウンジの用意、渡航先宿泊の割引など高いサービスを与えて優遇する制度があり、これらのサービスが存在しない新幹線を利用しない旅客も多い。近年、エクスプレス会員に対しポイントシステムを開始しているが、そのサービス内容や、高頻度利用客への優遇サービスは格段の違いがある。さらに新幹線には飛行機のような手荷物検査が一切ないので、セキュリティの面で不安感が残っている点も不利であるともいえる。新幹線の優位点は、割引料金に対する予約変更の優位性、発車場所へのアクセス性、本数(輸送力)の多さと定時性、手荷物検査や持込品目の制限などの煩雑さがない点にある。日航機事故のような大規模の航空事故が起こった後には、乗客が新幹線に流れることがある。

航空会社との対抗については、航空路線と競合する区間を中心に割引率の大きい特別企画乗車券の発売や、ビジネス客の多い東海道・山陽新幹線ではJR東海エクスプレス・カードJ-WESTカード(エクスプレス)による「エクスプレス予約」、東北や上越・長野新幹線では「えきねっと」といった、運行会社自身の会員制インターネット予約による割引特急券の発売が行われている。とりわけ2006年の神戸空港新北九州空港の開港は、競合する東海道・山陽新幹線への影響が大きく、「エクスプレス予約」の山陽新幹線への拡大、300km/hの高速性能と700系車両を上回る居住性の両立を目指した次世代車両であるN700系車両の共同開発など、それまで対立の多かったJR東海とJR西日本両社は連携を強化する体制に転換しつつある。一方、航空会社も東京~大阪間でのみ使える予約変更自由、航空会社選択自由のシャトル便往復割引を導入して迎え撃っているほか、羽田空港の滑走路増設による発着能力増強や、横田空域の一部返還により、更なる所要時間短縮による競争力強化が見込まれている。また、京浜急行電鉄名古屋鉄道といった空港連絡鉄道路線を持つ鉄道各社とのタイアップも行っている。これらの鉄道会社が保有する路線の多くは、JRの在来線と競合しているため、その影響もあると見られている。 なお、JR各社がインターネット予約サービスを設けているが、主にビジネス客向けの会員カード制である点や、それぞれ各社が独立して運営しているので、JR同士であっても会社が異なると発券や割引が受けられないといったことが起きている点は、閉鎖的なサービスとみられ、航空会社のそれに比べると劣っているともいえる。

なお山陽新幹線においては、終点である博多駅福岡空港がほぼ隣接しているという他の地域にはない特徴もあり、福岡~名古屋間では新幹線と航空会社との競争が非常に激化している。福岡~大阪間は従来競争が激しかったが、昨今では「ひかりレールスター」の登場などにより、ほぼ鉄道の独占状態になっている。

[編集] 他の鉄道との競合

特に国鉄時代は、頻発する運賃・料金の値上げとストライキに対する嫌気から、運賃・料金の大幅値上げが繰り返された昭和50年代に航空機などへの乗客移行が多く見られた。名古屋~大阪間においては、特に急がない個人客を中心に、近鉄特急列車へ移行する例も見られた(参照:近鉄特急史)。

また、山陽新幹線の小倉~博多間では、JR同士での競合が起こっている。JR西日本(新幹線)は小倉~博多間のみの「こだま」を増発している。一方JR九州(在来線)では特急料金の値下げや高頻度の運行で対抗している。この区間には西鉄バスによる低廉(片道1,000円)な予約不要の高速都市間バスひきの号」・「なかたに号」・「いとうづ号」も多数運行されており、三つ巴の様相を呈している。

他には、東京方面からの富士箱根伊豆国立公園方面へのアクセスにおける、東京・品川~熱海間(東海旅客鉄道東海道新幹線と東日本旅客鉄道東海道本線)の競合があげられる。“棲み分け”が成されているとも見ることもできるが、両社はこの区間において在来線同士の直通運転を除き新幹線と在来線の相互連携は特に見られず(特別企画乗車券「伊豆フリーQきっぷ」で、東京-熱海-三島間で東海道新幹線あるいは在来線特急自由席の利用が可能である程度)、JR東日本側では在来線特急を伊豆急行伊豆箱根鉄道駿豆線と東京を直通させている。

[編集] 高速バスとの競合

高速バス昼行の長距離では、たとえ格安であっても新幹線の速度と定時性にはかなわないものがあるが、既出の例を含む中距離区間や、新幹線が中心とされた東京・大阪間を初めとする区間を夜行バスで寝ている間に格安で移動できるということで1980年代ごろから人気が出ており、現在国鉄の名残からJR新幹線沿線をJRの子会社が運行する路線もあるが(東京-名古屋・京阪神間が中心)、JRグループ以外の競合会社(私鉄・専業系路線バスのほか、貸切バスによる会員制ツアーバスもある)の進出も急増し、各JR新幹線と実質競合している。高速バスは、バスの特性を生かして都市の市街地に直接乗り入れるなどしているため、新幹線の駅を結ぶ競合でなくても新幹線の客を奪っているのである。なおJR新幹線は協定により深夜・早朝の運転を行わない。

[編集] 政治の影響

新幹線の建設に関しては、その開業効果が大きいことから沿線の利害に関係することとして、建設時より様々な政治介入がなされてきたといわれる。

最も古い話では、東海道新幹線の建設時に起こった、京都駅の設置是非をめぐる問題や、大野伴睦の介入による岐阜羽島駅の設置騒動がある(ただし、岐阜羽島駅の設置には関ヶ原の降雪対策という、政治的な影響力とは別の理由もあり、政治力のみで設置されたわけではないと言われている)。

詳しくは、鉄道と政治の項目を参照のこと。

[編集] 世界の高速鉄道の呼称

日本では、高速鉄道といえばすなわち新幹線という先入観があるため、報道などでは日本国外の高速鉄道についても国名を付けて「○○新幹線」又は「○○版新幹線」という呼称が広く用いられている(TGV:フランス新幹線、ICE:ドイツ新幹線、KTX:韓国新幹線、ER200:ロシアン新幹線、HSR:台湾新幹線など)。

日本の新幹線は、厳密には車両軌道架線信号(ATC)などの総合システムであり、他の高速鉄道システムとは区別される。英語でも、日本の新幹線はShinkansenと表記される様に、新幹線とは日本の高速鉄道システムの固有の名称とみなすべきものである。技術的にも、他国の高速鉄道と異なり在来線とは完全に独立したシステムとなっているのが特徴で、動力分散方式など極めて独自性が強い。

従って、「日本の新幹線」以外の高速鉄道を「新幹線」と呼ぶ事は本来適切とは言えない(台湾高速鉄道は日本と同じように在来線とは独立したシステムとなっており、日本の技術が導入されているため、台湾でも「台湾新幹線」と呼ばれることがあるが、独仏の技術も取り入れられているので同等のものではない)。しかしながら、現実には「新幹線」の独自性は一般にはあまり認識されておらず、他国の高速鉄道に対する「○○版新幹線」の呼称が通用しているのが実情である。

[編集] 駅での新幹線案内表示

  • 新幹線の乗り入れる駅において、駅構内の表示では、ピクトグラムとして国鉄時代は0系200系を元にした絵(丸型の先頭車両)が描かれていた。JR東日本の東北・上越新幹線の駅、及び東京駅での東海道新幹線乗り場案内サイン(JR東日本構内)は現在もこれを踏襲している。しかし、JR東海と西日本ではその後登場した車両の絵を用いている。
  • 地下鉄など国鉄・JR以外の駅では、乗り換え表示に「JR線」の他に「新幹線」を記載する例がみられる。
  • 新幹線の英語表記の案内表示では表記が統一されていないものがある。たとえば、「新横浜」をShin-Yokohamaと表記しているところもあれば、Shin-yokohamaと表記しているところもある。この点は専門家の間でもまとまった意見は出ていないのが現状である。

[編集] 地名における「新幹線」

静岡県田方郡函南町には「新幹線」という地名が存在する。これは戦後の新幹線計画からの地名でなく、戦前の弾丸列車計画時代に新丹那トンネルの工事を行うための従業員宿舎が置かれた場所である。工事終了後に宿舎は撤去されたが、その後同地に住宅団地が建てられ「新幹線」という地区が生まれる事となった。この地区には新幹線公民館や「幹線下」という名のバス停も存在している。

また、東京都国分寺市の鉄道総合技術研究所のある場所の地名は「光町」である。新幹線開発を記念し、東海道新幹線の列車愛称「ひかり」から付けられたという。

[編集] 歌・絵本・キャラクターなど

開業以来主として幼児・年少の子供に対し、多数の新幹線に親しむ様なアイテムが作られた。

[編集] ゲーム

  • 電車でGO!2』・『電車でGO!64』・『電車でGO!プロフェッショナル仕様』:秋田新幹線の秋田~盛岡間上り線(一部は大曲まで)と東北新幹線盛岡~新花巻間上り線がプレイできる。
  • 『電車でGO!新幹線 山陽新幹線編』:山陽新幹線の新大阪~博多間上下線がプレイできる。条件を満たせば博多南線及び博多総合車両所まで運転できる。
    • どちらも実際の距離はデータ容量の関係上、再現できないため、区間によってバラつきはあるが、概ね3分の1程度の距離に縮小されている。そのせいで新大阪~博多間が実際は3時間ほどかかるのにゲームでは1時間少し(のぞみの場合)で走りきってしまう。

[編集] 関連項目

[編集] 参考文献

[編集] 脚注

  1. ^ 全国新幹線鉄道整備法が制定された時点で既に開業していた東海道新幹線と、建設中だった山陽新幹線はこれに該当しない。
  2. ^ 過去に東海道新幹線の車内において、統合失調症患者が刃物で別の乗客を殺害した事件があった

[編集] 外部リンク

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