シュド・カラベル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』
シュド・カラベル （SE 210 Caravelle）とはフランスのシュド・アビアシオン（1957年成立）の前身会社のひとつであるSNCASEが1951年に設計を開始し、1955年に初飛行に成功し1958年に路線就航したヨーロッパ域内の路線用に開発された西側初の短中距離ジェット旅客機である。
目次 |
[編集] 概要
カラベルは開発コストの軽減のためにイギリス製のジェットエンジンを使用し、機首と尾翼の部分は、先行して開発されていたイギリスのデハビランド・DH106 コメットの設計を流用したが、その他は新設計であった。当時として革新的であったのが、胴体後部の尾翼付近ににエンジンを設置したエンジン後部マウント方式を初めて採用したことである。それにより客室の騒音が減少するメリットがあった。また世界各国で使用され、中には21世紀まで運用された機体もあった。
[編集] 開発の経緯
1951年10月12日にフランスの民間資材委員会はフランスの航空機メーカー向けの中短距離用のジェット航空機の仕様要望書を公表した。それによれば、600km/h前後の巡航速度で2000kmまでの航続距離を55〜65人の乗客と1000kgの貨物を運べる旅客機であった。カテゴリーに該当する航空機については様々な計画案の研究が1946年以降進行中であったが、フランスの航空業界には開発するだけの財力がなかった。
この要望に対してフランスの航空機メーカーから合計20案にも上る提案書が出されていた。これらの提案ではターボジェット機とターボプロップ機の提案もあったが、ターボジェット機の方が有力であったが、エンジンの数については規定がなかったため双発からなかには5発というものまであった。また当時のフランス国産のものやコメットで使われていたイギリスのロールス・ロイスアターの推進力が弱かったため当初は3発機にする予定であったが、新開発されたロールス・ロイス エイボンの新型エンジンが推進力が強化されたために双発とすることになった。
1952年3月28日にはユレル・デュボアHD45とシュド・ウェストSO60とシュド・エスト（SNCASE）X-210に絞られ、SNCASEがエイボン双発としたX-210の設計を再提出すると要求した。その際に、エンジンの位置を動かし翼の下にエンジンを取り付けた。2ヵ月後に再提出したこの案が当局に認められて、政府の援助のもとでカラベルとして開発されることになった。
[編集] 就航
開発期間の短縮を図るために先行するイギリスのコメットで使われていた設計や技術を流用し1955年4月21日に完成し、5月27日に初飛行した。その後改良が加えられ1956年には最初の発注をエールフランスから受け、翌年にはSAS）から受けた。カラベルが就航したのは1959年5月であった。
また損益分岐点を200機としていたが、最終的に全タイプで279機が生産され、明確な意味で最初に利益を出した旅客機となった。またWorld Airline Fleets News2004年9月号によれば、アフリカ・ルワンダにあるGisenyi空港への進入中にカラベル11R（登録記号3DKIK）が墜落したため、最後に就航していたカラベルが失われたとのニュースが掲載された。しかし2005年5月に同誌は「カラベル50歳」の特集記事の中でコンゴ民主共和国の首都キンシャサにあるWaltairが2機のカラベルを所有しているとしている。いずれにしても就航から50年以上たった21世紀までカラベルがアフリカの空を飛んでいたことに間違いないようである。
[編集] 派生型
- Caravelle I
最初の生産型で試作機に類似していた。エールフランスとSAS向けに19機製造。
- Caravelle IA
試作機よりも50ｃｍ延長されエンジンが強化され重量も増加された。13機製造。
- 速度: 746 km/h
- 乗客: 60-80
- 航続距離: 1500 km
- Caravelle III
再びエンジンが強化され重量も増加されたモデル。78機製造されカラベルシリーズのなかで一番多く作られた。また以前のシリーズで作られた32機中31機がこのモデルに改修された。
- 速度: 805 km/h
- 乗客: 64-80
- 航続距離: 1700 km
- Caravelle VI-N
さらなるエンジン強化型、カラベルIIIのうち5 機が1960年にこのクラスに改修された。53機製造。
- 速度: 825 km/h
- 乗客: 68-118
- 航続距離: 2500 km
- Caravelle VI-R ：
VI-N ユナイテッド航空向けの機体。
- Caravelle VII ：
エンジンがゼネラル・エレクトリックのGE CJ-805に換装されたカラベルIIIである。
- Caravelle 10A ：
アメリカ市場でより多く販売するために、アメリカ連邦航空局の基準に適合するために様々な改修が加えられたが、最終的には1機つくられただけで計画がキャンセルになった。
- Caravelle 10B ：
プラット・アンド・ホイットニーJT8Dエンジンを取り付けたモデルで1964年に初飛行し、22機作られた。
- Caravelle 10R ：
Series VI-RのエンジンをJT8Dにしたもので、小型であるがハイパワーな飛行機となった。1965年に初飛行し20機作られた。
- 速度: 800 km/h
- 乗客: 64-99
- 航続距離: 2900 km
- Caravelle 11R ：
貨客混載型
- Caravelle 12（スーパーカラベル） ：
胴体を3.2メートル延長し、エンジンもJT8Dを使用したものである。また最大128人の乗客を乗せることが出来た。このシリーズが2004年までのアフリカで就航していた。
- 速度: 800 km/h
- 乗客: 128-139
- 航続距離: 1600 km
[編集] 日本におけるカラベル
最終的に日本の航空会社で採用した会社（1960年代前半に国内線に投入する機種の候補になったことはある）はなかったものの、中華航空、タイ航空などが日本路線用に使用し、1960年代後半までの間に羽田空港や伊丹空港に就航していた。
