スバル・EJ20
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スバル・EJ20は富士重工業(スバル)で製造されている排気量2リットルの水平対向エンジンで自然吸気とターボチャージャー付きで使用されている。
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[編集] 概要
1989年、初代レガシィ登場とともにデビューしたEJ20は、その後改良を重ね、2007年現在販売されているスバルの全ての普通車に搭載されている。SOHC、DOHC、さらにターボチャージャー搭載型のDOHCやCNG対応タイプなど幅広いラインナップを誇る。またターボチャージャー搭載エンジンでも220馬力(スバル・フォレスターなどに搭載)、250馬力(スバル・インプレッサWRXなどに搭載)、260馬力(スバル・レガシィのAT車に搭載)、280馬力(スバル・レガシィのMT車、及びスバル・インプレッサWRX STIなどに搭載)と幅広いラインナップを誇る。
[編集] 搭載車種
[編集] 構造的特徴
直系の先祖となるEA52(スバル1000に搭載)と同じく水冷方式を採用し、コンパクトネスを重視したため隣接するシリンダー間が比較的狭くクランクシャフトは薄いウェブ、大きなクランクピン-ジャーナルのオーバーラップを持つ形状をしており、俗に剃刀クランクと呼ばれることもある。
左右シリンダーブロックはクランクシャフト軸にて分割され、一般的なエンジンにおけるハーフスカート形状をしており、ボルト結合されている。
一般的なエンジンにあるメインベアリングキャップは存在せず対向するブロックがこれを兼ねるため、支持剛性は高いものとなる。開放口は下側のオイルパン取り付け部のみである。
この構造によりコンロッドキャップを分離してコンロッド-ピストンを一体でシリンダーから抜くことは難しいため、シリンダーブロック横にはピストンピンの脱着を行うサービスホールが設けられている。
分解組み立ての際にはここを通してピストンとコンロッドを分離して行う。コンロッドはクランク側に組み付けた状態で一体として脱着する。
切れ角を伴うフロントタイヤ間に搭載されるため、横幅へのサイズ的要求もありストロークを大きくすることはできず、ショートストローク・ビックボアなプロフィールを持つ。
動弁機構はSOHC、DOHCでタイミングベルトによりクランクシャフトより駆動されるが、左右バンクを1本で駆動するため非常に長いベルトを採用している。
組み付けの際には左右バンク同時にベルト掛けする必要があり、クランクとカムシャフトの位相によってはバルブとピストン、あるいはバルブ同士の干渉を起こすこともあるので、注意が必要である。特にDOHCではカムプーリーも4つになるため、更に難易度が上昇する。
搭載車種の性格に合わせた差異があり結果的に、出力の大小、特性に膨大なバリエーションを持つ。
[編集] 変遷
スバル車は年改と呼ばれる1年周期の改良が施されるため、変遷が多い。特に三菱・ランサー(エンジンは直列4気筒の4G63)という好敵手を持ち、モデルライフの比較的長いインプレッサについては、年改で搭載エンジンのサフィックスが変わるほどの変更を受けることがある。
- エンジン本体
- 特に高出力型EJ20においてシリンダーブロックには開発の苦労の跡が偲ばれる。
- EJ20Gの初期はクローズドデッキであったが、狭ボアピッチに伴う熱対策のためかオープンデッキも併用された。しかし、競技ユースが想定されるR、RA、STiバージョンRAについては引き続きクローズドデッキが使われた。
- オープンデッキタイプについてはシリンダーの振れが発生するため、後にグロメット付きメタルガスケットの採用が拡大される。
- さらに近年では、シリンダー上面を比較的細いビームでブロックに結合するセミクローズドデッキとすることで一応の決着を見ている。
- シリンダーヘッドはNA、ターボに限らず変遷が激しい箇所で、初期はスキッシュ域の比較的大きなペントルーフ燃焼室形状であったがレガシィRS-RA STiにおいては、スキッシュを削除した教科書的なペントルーフ形状を持っていた。以降のサフィックス変更を伴う進化の中でこの形状に近づいていったが、初代レガシィの特別なバージョンにおいて既に存在していたことは興味深い。
- 同じEJ20G(Gサフィックス)を持つエンジンを搭載した初代レガシィ、初代インプレッサにおいてもレガシィはIHI製RHB52、インプレッサは三菱製TD05となっており、更にそれぞれワゴンとセダンでA/Rや羽根枚数が異なるなど搭載車種の性格に合わせ細かく選定が行われている。またこの二車ではインタークーラも水冷と空冷という差がある。
- EJ20H以降のレガシィ用(車両形式ではBD/BG~BE/BH)ではシーケンシャルツインターボを採用していたが、BP/BLからシングルターボに再変更されている。これはシングルターボでも十分に低速トルクを確保できるようになったことに加え、シーケンシャルツインターボ特有の段付き感のある加速にユーザーの不満があった為である(以前Option誌に「シングルからツインに切り替わる際の段付き時にタバコに火をつける」とまで書かれた事がある)。
[編集] チューニング界でのEJ20
正直な所、同レベルの車となるランエボと比べると、極端にインプレッサのチューナーが少ない。それに比例しEJ20を知り尽くしているチューナーも少ない。よってあまりEJ20チューンも一般的ではないが、チューニング自体は行われている。
現在GDBの定番メニューとなりつつあるのがHKSのVALCONを使ったハイカムチューンである。これを用いるとハイカムの気持ちよさを残しつつ、低回転も犠牲にしないため、乗りやすくそこそこ速い車に仕上げることが出来る。
それ以上のメニューとなると2.2L化や、兄弟エンジンであるEJ25のシリンダーブロックを流用した2.5L化を平行して行い、元々の弱点である低速トルクの細さを補いながら、タービンの大型化を進めて行くことになる。