水平対向エンジン
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水平対向エンジン(すいへいたいこうエンジン)とは、偶数シリンダーの多気筒エンジンで、シリンダーとピストンを気筒毎交互に2つグループに分け向き合うように水平に配置しているエンジン。 向かい合うシリンダーのクランクの位相が180度の場合は、ピストンの動きをボクシングのパンチになぞらえ、「ボクサー(BOXER)エンジン」とも呼ばれている。
ひとつのシリンダーに二つのピストンが向かい合う、「対向ピストンエンジン」(de)と区別するため、正確を期する場合は「対向シリンダーエンジン」と呼ぶ。
水平対向にピストンを配置することにより、上下方向の振動が少なくできる・重心を低くできる、などの利点がある。欠点はストローク(シリンダー)を伸ばすとエンジン本体の横幅が大きくなり車体幅を広げる必要があるのでトルクを出しやすいロングストロークエンジンが作りにくいことである。そのため、ショートストロークのエンジンが主流である。
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[編集] ボクサーエンジンと180°V型エンジン
水平対向エンジンは、外見はバンク角が180°のV型エンジンの一種であるとも言える。アメリカでは、どちらも単に「flat engine」、つまり「水平なエンジン」と呼ばれる。しかし、180°V型エンジンが左右シリンダーのクランクピンが共通(同位相)であるのに対し、水平対向エンジンは左右のバンクで位相を180°ずらしたクランクシャフトを採用する[1]。このことを明確化した英単語は「boxer engine」または「horizontally opposed engine」であり、後者を訳すと「水平で向かい合ったエンジン」となる。
なお富士重工業では、レガシィより前の水平対向エンジンの英訳は「flat engine」というアメリカ英語で、レオーネのエンジンの愛称は、消滅まで「FLAT-4」である。余談だがスバル車同様水平対向エンジンを搭載していた古いフォルクスワーゲンのカスタムショップにもFLAT-4がある。(http://www.flat4.co.jp/)
水平対向エンジンは向かい合ったシリンダーのクランク位相角を180°とすることによって、V型エンジンに比較して振動を抑えることが容易である特徴を持つ。一方、バンク角が180°のエンジンのうち、クランクピンを左右のバンクのピストンで共有しているエンジンのことを本来の水平対向エンジンと区別して「180°V型エンジン」と呼ぶ。これは特に12気筒エンジンで例が見られる。12気筒エンジンの場合、片方のバンクで一次振動、二次振動ともバランスするため、あえてクランクの複雑なボクサーにせず、V型エンジンによく見られるクランクピンを共有した形式である。特にフェラーリのフラット12気筒モデルが知られている。
[編集] ベアリングの数
直列4気筒エンジンの場合、クランクシャフトを支えるベアリングは両端と気筒の間、合計5つという例が多い。V型4気筒の場合は両端とVの間、合計3つである。 水平対向4気筒の場合はいくつかバリエーションがある。かつてのフォルクスワーゲン・ビートルの例ではベアリングは両端と中央の3つであった。富士重工の水平対向4気筒は直列4気筒と同じくベアリングは5つである。そのためクランクシャフトが長くなりボアピッチも大きくなりボアの大きいエンジンとなっている。 かつてのフェラーリのF1カー、フェラーリ312Bのエンジンは水平対向12気筒であったがベアリングは両端の2つと片バンク2気筒に付き1つの合計4つであった。この方式の利点はベアリングで仕切られた4気筒のクランクケース内の容積が一定になり圧力の損失が最小限になるということであった。
[編集] 自動車および二輪車用
1936年4月、日産ディーゼル工業の前進である、日本デイゼル工業が、ドイツのクルップ・ユンカース式2サイクルディーゼルエンジンの特許を取得して、上下対向ピストン型エンジンの生産を開始した。これはひとつのシリンダー内に二つのピストンが向かい合っているもので、現在では馴染みのない形式である[2]。
ポルシェとスバルが現在も市販用水平対向シリンダーエンジンを生産している。
かつてはモータースポーツの分野においても、フェラーリやアルファ・ロメオがF1用に水平対向エンジンを開発していたが、グランド・エフェクト・カー時代になるとコンパクトなV型エンジンが必須となり、廃れていった。1990年代にスバルがF1に12気筒エンジンを供給した時代もあるが、現在F1レース仕様の水平対向エンジンを開発しているメーカーはない。
日本におけるナショナルフォーミュラーカテゴリーFJ1600では既に乗用車向けとしては生産されていないEA71型を使用する。富士重工業はFJ1600のためにEA71型をサポートし続けている。
二輪車ではBMWのRシリーズやツンダップをはじめ、その亜流も含めて数社が水平対向式エンジンを生産していたが、現在も開発が続けられているのはBMWのみとなっている。
[編集] 現行搭載車種
- スバル・レガシィ(6気筒/4気筒)、インプレッサ(4気筒)、フォレスター(4気筒)
- ホンダ・ゴールドウイング(二輪、1980年のGL1100より米国で生産)
- ポルシェ
- BMW・Rシリーズ(二輪)
- 第二次世界大戦中~現在のBMWのコピー
[編集] 過去の搭載車種
- トヨタ自動車・パブリカ、スポーツ800、ミニエース
- ゼネラルモーターズ・シボレー・コルベア
- 富士重工業・スバル1000、レオーネ、アルシオーネ、アルシオーネSVX
- タッカー
- フェラーリ・テスタロッサ、512TR
- フォルクスワーゲン・ビートル
- シトロエン・2CV、ディアーヌ、アミ、GS
- 日野自動車・RA100/900P(高速路線バス)
- ダイハツ・Bee(三輪乗用車)
- ランチア・ガンマ、フラビア
- アルファロメオ・アルファスッド、アルファ33、アルナ
- ライラック・R92、マグナム500、マグナムエレクトラ500(二輪)
- ホンダ・ジュノオM80、M85(スクーター)、ワルキューレ(二輪)
- 愛知機械工業・ヂャイアント・コンドル(オート三輪)
- その他・ジオット・キャスピタ(プロトタイプに搭載。市販化は実現していない)
[編集] 鉄道車両用
鉄道車両、特に気動車の場合はレールと車体の台枠の間という狭い空間にエンジンを収めなければならず、更に近年は低重心化・低床化のニーズが高まっていることから、直列エンジンでもかつては縦型は存在したが現在はシリンダーを寝かせた横型が主流となっている。そのため水平対向型はその高出力バージョンという位置づけで開発された。
国鉄で初めての特急気動車となったキハ80系では当時の標準エンジンだったDMH17H(直列8気筒、予燃焼室式)を2基(先頭車は1基)搭載していたが、エンジン単体の最高出力が180馬力で2基搭載した中間車でも360馬力と特急用としては力不足だった。そこで新型気動車の試作車としてキハ90系を開発、そのうちのひとつ、キハ91には500馬力のターボ付き水平対向式12気筒エンジンDML30HSAが搭載された。なお並行して開発された派生エンジンとしてDML30HS系の片バンク6気筒分をなくした直列6気筒のDMF15HS系があり、12系客車と14系客車の発電機用エンジン(DMF15HS-GおよびHZ-G)やキハ40系、キハ183系の初期型に採用された。
国鉄民営化後は直接噴射化とインタークーラーを装着したキハ183系のDML30HZ(660馬力)を最後に水平対向エンジンの採用は打ち切られ、以降の新型車では車体の軽量化や省エネルギー化、多段トランスミッションの採用などでインタークーラーターボ付き直接噴射式直列6気筒エンジン(排気量11~14リットル級)が主流となっている。
[編集] DML30HS/HZ系を搭載した気動車
[編集] 航空用
現代の小型飛行機が装備する航空用ピストンエンジンは、ほとんどすべて空冷の水平対向型である。エンジンのパーツナンバには対向型(Opposed)を表すO-が付く。
[編集] 主なエンジンメーカ
[編集] 種類
- 水平対向2気筒
- 水平対向4気筒
- 水平対向6気筒
- 水平対向12気筒