ダイナブック
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ダイナブック
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[編集] 理想のコンピュータとしての「ダイナブック」
ダイナブック (Dynabook) は、アラン・ケイが提唱した理想のパーソナルコンピュータ(パソコン)である。
ケイの構想したダイナブックとは、GUIを搭載したA4サイズ程度の片手で持てるような小型のコンピュータで、子供でも扱える低価格なものである。 ダイナブックは、文字のほか映像、音声を持つ「本(book)」のような存在であり、それを扱った人間の思考能力を高める存在であるとした。
ケイがXEROXのパロアルト研究所在籍時に「暫定ダイナブック」として開発したのが、Smalltalk を GUIベースの オペレーティングシステム に用いて動作させていた Alto で、これを目にしたスティーブ・ジョブズが Lisa 、そして Macintosh を開発するきっかけとなったとされる。 ケイの論文の「ダイナミックパーソナルメディア(動的個人媒体)」を使う、「本」のようなもの。からDynabookと名前が付けられた。
[編集] 東芝製ノートパソコン「ダイナブック」
ダイナブック (dynabook) は東芝製のJ-3100SS(1989年発売)に始まるノートパソコンシリーズのブランド名称。
[編集] 歴史
[編集] 由来
ブランド名の由来は、アラン・ケイの提唱した「ダイナブック」を意識したネーミングである。「ダイナブック」はアスキーが取得していた商標であり、DOSベースのただのノートパソコンにダイナブックという名前をつけるとは何事か、という批判もあったが、現在では東芝のブランドとして定着している。
[編集] ラップトップPCの開発
ポータブルパソコンの黎明期、東芝では1985年に当時としてはコンパクトなPC/AT互換機・ラップトップPC第一弾、T-1000(重量4Kg)を輸出専用モデルとして発売。
ラップトップPCの欧米市場での成功を機に東芝は本格的にPCハード市場へ参入、1987年には世界初のハードディスク(10MB)搭載ラップトップ型パソコン、T-3100(日本国内向けJ-3100)を発売する。ラップトップ型で培った小型化への技術の進歩は、その後に登場するノートブック型パソコンDynabookシリーズへの布石となる。
[編集] 小型ノートパソコンの登場
ダイナブック初代のJ-3100SSは20万円を切る低価格とそれまでのラップトップPCより小型軽量な筐体で注目を集め、「ブック型PC」(後のノート型PC)という新ジャンルを普及させた。
アーキテクチャ的にはそれまでのラップトップ型J-3100シリーズ同様にIBM PC互換で、独自の日本語表示機能を追加したものであり、英語モードではIBM PC用ソフトウェアが実行できた。コンベンショナルメモリとして使用可能な640KBのメモリの他に、RAM-DISKとして使える1.2MBの拡張メモリを搭載。ハードディスクを持たないとはいえ、日本語環境とテキストエディタ、通信ソフト、コンパイラなどを外部メディアに頼る事なく携帯できるという、ノートパソコンに求められるスペックを十分に満たしたバランスのとれたマシンである。以後、ノートPCの市場拡大に合わせ各種の後継機が発売され、東芝はノートPCにおいて1993年から2000年までノートPCシェア7年連続世界1位をを獲得する。
[編集] 日本国内・海外展開のラインナップ
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過去を含めた日本国内でのラインナップは
- Qosmio
- テレビチューナーを標準装備した大型のハイエンドAVノートPC。コンパクトデスクトップのような位置づけであり、モバイル用途には適さない。HDDを2基(160GBx2)備えるモデルもある。
- dynabook
- A4ノートのミドル~エントリークラスのノートPC。一般的なA4ノート。Qosmio登場後は主に普及帯のPCで使われる。
- dynabook SS
- B5モバイルノート。現在は光学ドライブの有無で2タイプ存在する。モバイルPCの先駆的存在。
- dynabook Satellite
- 企業向けA4ノートPC。コンシュマー向けではほとんど廃された内蔵FDDを標準装備している。
- DynaBook SatellitePro
- 企業向けA4ノートの上位モデル。現在では使われていない。
- dynabook TECRA
- 業務用A4ハイエンドノート。現在はアキュポイントとタッチパッド両方を装備したTECRA M5のみ。
- Libretto
- モバイルサイズのミニノート。Windows95の時代からスーツのポケットに収まる小型ボディを実現していた。05年のU100を最後に発売されていないが一部に根強い人気がある。
- BREZZA
- AV機能に特化したタワー型デスクトップPC。現在では販売されていない。
- DynaTop
- 企業向け液晶一体型デスクトップPC。現在では販売されていない?
- Equium
- 企業向けデスクトップPC。現在はスリムタイプのみのラインナップ。
ダイナブック(dynabook)の商標は日本国内のみで使用されており、日本国外では、
- Tecra(テクラ)
- A4ハイエンドノートパソコン
- Satellite(サテライト)
- 家庭向けA4エントリーノートパソコン
- Satellite Pro(サテライト プロ)
- ビジネス向けA4エントリーノートパソコン
- Portégé(ポーテジェ)
- B5ノートパソコン・薄型ノートパソコン(日本で言うdynabook SSシリーズにあたる)およびタブレットPC
- Equium(エクィアム)
- A4デスクノートパソコン(屋内、特に机上のみで使用されることを想定された比較的大きなノートパソコン)
- 欧州のみで販売されており、日本国内で販売されている同名の企業向けデスクトップパソコンとは全く別の商品。
という名称で展開されている。
また、一時期日本国内でもdynabookの名称と併記する形でこれらの名称が使用されていたが(例:DynaBook TECRA)、現在ではSatelliteを除き廃止されている。ただし、裏面の製品ラベルにはこれらの名称が記載されているものもある。
[編集] 最近のラインナップ
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東芝の、一般向けデスクトップ型パーソナルコンピュータは現在の販売ラインナップに無く、ノートパソコンも「リブレット(Libretto)」のラインを「ダイナブック」に集約している。また、最近ではパソコンの生産はコスミオシリーズの一部を除いて中国の工場で作られている。
2006年BCNランキングにてPOSデータ集計セールスナンバーワン・ベンダーを選ぶ第8回「BCN AWARD 2007」実売数ノートPC部門1位[1]を初受賞するなど、日本国内ノートパソコン販売シェアも堅調である。
- dynabook
- 1989年の初代モデルから2003年のC8シリーズ登場までは、DとBが大文字で斜体の『DynaBook』ロゴを使用してきたが、以降は小文字のみで正体の『dynabook』ロゴに改められた。
- Qosmio、Libretto
- Libretto(リブレット)及びQosmio(コスミオ)の名称に関しては日本・海外共に統一されている。(Qosmioに内蔵されているTVチューナーは各国の放送方式・周波数帯にローカライズされている)
- dynabook Satellite(ダイナブック サテライト)
- ビジネス向けA4ノートパソコン。現在はハイエンドとエントリーの区別は無くなっている
- 基本的には法人販売のみである。
[編集] アキュポイント
かつての東芝ノートパソコンの特色の一つにアキュポイントがある。人差し指で操作するポインティングスティック・マウスとしてノートPCに採用され、独特の操作感覚・使用感には今なおファンは多い。初期のタッチパッドマウスが誤動作・機能面の貧弱さから安定した動作のアキュポイントを法人向け需要が多かった東芝のダイナブックは2000年頃まで多くのノートPCに搭載された。
タッチパッドマウスの機能・感度が改善され長時間使用した操作性も良好になったことで、東芝ノートにも2000年頃よりタッチパッドが採用され始め現在では、ほぼすべての商品からアキュポイントは姿を消すことになった。
[編集] 脚注・出典
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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