ディスクドライブ仮想化ソフト
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ディスクドライブ仮想化ソフト(ディスクドライブかそうかソフト)とは、記録媒体の内容をイメージファイルと呼ばれるファイルに保存しておき、それを開くとソフトウェア的に記録媒体がマウントされている状態をエミュレートして、あたかもその記録媒体をドライブに挿入してアクセスしているかのように制御するソフトウェアでのことである。特に、フロッピーディスクの場合はRAMディスクを兼ねているものも存在する。
ディスク仮想化ソフトや、単に仮想化ソフトと呼ばれることもある。
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[編集] 概要
光学メディアからデータを別の媒体にコピーする際、エクスプローラなどからファイル単位で行った場合には、光学メディアのどのセクタにどのデータがあるのか・盤面の物理的情報・ボリュームラベルなどの情報が欠落してしまう。一方で、ライティングソフトに搭載されているイメージファイル保存機能を用いれば、光学メディアの情報構造や物理的情報など、特有の情報を保持した状態で保存できる。
しかしこのイメージファイルは通常、抽出したライティングソフトによる書き込みにしか利用できない。このイメージファイルを光ディスク仮想化ソフトウェアは展開し、ソフトウェア的に通常の光学ドライブと変わらないアクセスを提供する。それにより、次のような事が可能である。
- 光学ドライブのついていないノートPC上で光学ドライブが必要な動作(特定のアプリケーションソフトの起動)などを行う。
- 「キーディスク」など、起動にCD/DVD/FDDが必要なアプリケーションソフトを、面倒なディスクの出し入れ無しに起動できる。
- ハードディスクを仮想化すると、システムに変更が行われたりした際に簡単に修復が可能になる。
- 物理的にメディアのバックアップを行うとかさばるのが、イメージファイルとしてバックアップすると整理が簡単でスペースの節約にもなる。
- 複数台のPCを所持している際の、ディスクの同時使用(場合により、ライセンスの制約事項と私的複製権の兼ね合いで賛否がある)
- 各種のコピーガード技術を突破したアクセス(同様に、場合によりライセンスの制約事項と私的複製権の兼ね合いで賛否がある)
このように物理メディアをソフトウェア化することで柔軟な管理、整頓を行うことができる利点がある一方で、ファイル交換ソフトなどで不正に入手したイメージファイルを運用するためのソフトウェアとして著作権侵害の温床となっているという批判もある。
なお、複数のアプリケーションソフトを導入し同時に実行した場合、ソフトウェアの競合によって正常な動作が妨げられる場合があり、注意を要する。
[編集] 主なアプリケーションソフト名
[編集] 光学ドライブを対象とするもの
- Alcohol 120%
- 本来はライティングソフトであるが、付随する機能として最大31台までの仮想DVD/CDドライブを作成できる。
- Alcohol 52%
- 上記のものからDVD/CD書き込み機能を削除するかわり、フリーウェアとしたもの。
- CD革命/Virtual
- この分野では先駆けといってもよく、古くからあるが、作成されるFCD形式のイメージファイルがDaemon Toolsで利用できないため、国内普及率はかつてほど高くはない。
- Daemon Tools
- 仮想CD/DVDドライブ作成ソフト。数多くの形式に対応している。非商用用途ではフリーウェアである。
- SimDisc
- 上記のDaemon Toolsを元に、イメージファイル作成機能の付与などを行った商業製品。
- Subst
- MS-DOSおよびWindowsに付属の、パスにドライブ文字を割り当てるコマンド。
- TOMCAT Media Port Ex
[編集] 磁気ドライブを対象とするもの
- HD革命/Virtual
- 仮想ハードディスクの作成、およびイメージファイルの作成
- Virtual Floppy Drive
- 仮想フロッピーディスクドライブの作成、およびイメージファイルの作成
- TVD - Secure Virtual Disk
- 暗号化による仮想ディスクドライブの作成、およびイメージファイルの作成
[編集] イメージファイル
ディスクイメージ、イメージファイルとは、ファイルシステムの完全な内容と構造を1つのファイルに格納したデータのこと。
通常のバックアップではブート情報やOSによりロックされた部分・機械工学的/物理的な情報はバックアップすることができないが、ディスクイメージをバックアップするとそれら全てを含んだ完全なバックアップを作成できる。
また、この点を利用して、フロッピーディスクを常時マウントする必要のある各種OSのエミュレータを使用するにあたって、フロッピーディスクを使わずに済むようにディスクイメージを作成しておくことで、快適にエミュレータを使用できるようにしている。
UNIX系OSの場合 : ddなどの標準的なコマンドを使ってメディアからディスクイメージを作成したり、逆にバックアップしたディスクイメージからハードディスクを復元したりすることができる。 2.4系列のLinuxカーネルにはISOイメージをマウントする機能が備わっているため、ディスクドライブ仮想化ソフトを用いなくてもファイルアクセスが可能である。
Mac OSの場合 : OSに標準装備されているDiscCopyやディスクユーティリティを利用して記憶媒体のディスクイメージを作成したりマウントすることが出来る。マウントはダブルクリックで行える。
ほかの用途としては、bzip2などでの圧縮や暗号化機能を備えるためソフトウェアの配布でいわゆるアーカイバのように使用したり、CD、DVDを作成する前に書き込みたいデータをディスクイメージに格納しておき、ディスクユーティリティでディスクイメージからディスクを作成するという使い方をされる。 ディスクイメージはあらゆるファイルシステムの構造に対応しており、HFS以外のファイルシステムのディスクを作成することが可能である。
かつてはDiscCopyに不満を持って独自にディスクイメージ作成ソフトを開発することがあったが、十分実用的になるとともに消滅した。代表作としてShrinkWrapがあった。もちろん現在もDiscCopyの隠された機能を利用できるようにするツールや、より高速にマウントするためのツールは存在する。独自のファイルフォーマットを使用するものがなくなったということである。DiscCopyの隠された機能とは、Internet-Enabled Disk Image(インターネット対応イメージ;ダウンロードしたイメージをマウントすると中身だけ抽出し、イメージファイルは自動的にゴミ箱に捨てられる)やチェックサムの検証を行わないようにするといったものである(後にチェックサムの検証は簡単に設定できるようになった)。
また、Mac OS X以前はDiscCopyをインストールしていないユーザのために、マウントプログラムを組み込んだ自己マウントイメージ(Self mount image、拡張子.smi)もあったが、DiscCopyがシステムに統合されるとともになくなった。
Windows系の場合 : 各種のライティングソフトを用いて、「イメージファイルの保存」・「ディスクイメージの抽出」などといったコマンドを選択することに行うことができる。
[編集] 主要なイメージファイル形式
一般的に利用されている仮想ディスクイメージには次のような形式がある。
[編集] 光学ディスク
- ISO形式
- 標準ISO9660イメージ。多くのCD/DVDライティングツールで作成可能で、イメージから元のCD/DVDを復元することも可能。
- BIN+CUE形式
- CDRWINイメージファイル
- CCD+SUB+IMG形式
- CloneCDで作成されたCDイメージファイル
- DVD+000形式
- CloneCDで作成されたDVDイメージファイル
- FCD形式
- CD革命イメージファイル
- MDS+MDF形式
- Media Descriptor (Alcohol 120% 標準)イメージファイル
- CDI形式
- Disc Jugglerイメージファイル
- NRG形式
- Neroイメージファイル
- CUE+IMG形式
- CD Manipulatorイメージファイル
[編集] 磁気ディスク
- VHD形式
- Virtual PCで作成、利用されている仮想ハードディスクイメージ
- VFD形式
- Virtual PCで作成、利用されている仮想フロッピーディスクイメージ
- IMA形式
- Virtual Floppy Driveの仮想フロッピーディスクイメージ
- DCU形式
- DCU(Disk Copy Utility)とDCPの仮想フロッピーディスクイメージ
- 主に国内MS-DOS資産に利用されている。
- DCPはPC-9800シリーズ専用のDOSアプリケーション。
- MHL形式
- PC-98用DOSアプリケーション「MAHALITO」で作成できる仮想フロッピーディスクイメージ