CD-R
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CD-R (CD Recordable) は、データを書き込みできるコンパクトディスク (CD)の一つである。一度書き込まれたデータは書き換えも消去もできないが、容量の許す限り追記が可能であり、このことから「追記型」と呼ばれる。当初、太陽誘電が開発したもので、現在は規格書「オレンジブック」に規定されている。
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[編集] 概説
在来の記録済みCDが、アルミニウム製の薄膜に「ピット」と呼ばれる微小な凹みを設けて光の反射の度合いの変化でデータを読み取るが、これに対してCD-Rでは、金属薄膜に塗布された有機色素の有無で反射の度合いを変化させる。
記録時には強いレーザー光の照射による熱でこの膜を除去し反射層へ直接透過する点を発生させ、これをピットに相当させる。このためデータの記録は非可逆的となり、一度書き込まれた情報の消去ができない。
反射率の変化は在来の記録済みCDにほぼ匹敵しており、一般のCD読み出し装置での使用が可能となっている。
反射層の材質として、かつては金や白金が用いられたこともあったが、現在は主に銀が使われている。
記憶容量は最大で700メガバイト(MB)である。現在は650MBと2000年頃に登場した700MBの二種類のディスクが主流となっており、音楽CD換算でそれぞれ74分、79分58秒に相当する。以前は550MB(63分相当)のディスクも使われていた。一部には99分などの長時間記録ディスクもあるが、扱える装置に限りがある。
書き込み速度は初期(1996年頃)には等倍速(1倍速)から4倍速であったが、徐々に向上し、2000年頃には8から16倍速、2003年頃には52倍速程度まで実用化された。この速度競争には、1994年に、ソニー、ヤマハ、太陽誘電など数社が「オレンジ研究会」なる部会を立ち上げ、製造段階でディスクに識別符号を割り振り各々の互換性を保証する「ライトストラテジー」を制定したことが影響している。(フィリップスはオレンジブックに準拠する立場から反対した。)
[編集] CD-Rの記録面材質
- シアニン色素
- 太陽誘電が実用化した記録面材質で、初期から現在まで一番多く使われている。他の色素に比べて光や熱などによる化学的安定性が低いが、CD-Rの普及に1役買った色素である。台湾製のメディアの一部などは一時期、シアニンを薄く塗ったCD-Rを販売して品質的にも問題があったが、現在はフタロシアニンの普及などにより解決されている。
- フタロシアニン色素
- 三井化学が実用化した記録面材質である。当初は1社のみであったが、元々安定しており、シアニンと比べて薄くしてもそれなりの効果が得られ、低価格化なども重なり、近年の台湾製ディスクで多く使用されている。
- アゾ色素
- 三菱化学メディアが実用化した記録面材質で、裏面が青くなるのが特長である。最も安定性が高く、採用は現在この一社に限られるものの、市場で根強い人気を誇る。他よりも比較的高価であるが、耐久性や耐光性に特に優れる。2005年6月以降、三菱化学メディア製ディスクにもフタロシアニン色素の採用が進み、希少性が高まる中で、同社の生産工場の火災からアゾ色素採用製品の供給が止まり、市場から姿を消した時期もある。
[編集] バッファーアンダーラン回避
「バッファーアンダーラン」とは、CD-Rへの記録中に、記録装置へデータの転送が途切れ、記録用バッファー内のデータが必要量を下回る現象で、メディアへの記録中にコンピュータの負荷が増大した際に発生する。CD-Rでは書き込み不良がそのまま不良ディスクとなるため、記録速度の高速化に伴い発生率が上昇した際に問題となった。
記録速度が8倍速以上のCD-R(「High-speed」の記載がある)が登場した2000年頃、そうしたバッファアンダーランエラーを回避する技術がCD-R記録装置メーカーによって開発された。書き込みソフトウェアと連携し、記録中にドライブへのデータ転送が停滞した場合にディスクへの記録を一時的に中断し、その後データ転送が復旧した際に中断地点より記録を再開するもので、三洋電機の「BURN-Proof」(バーン・プルーフ)や、リコーの「JustLink」(ジャストリンク)といったものが知られている。これらはその後多くのコンピュータ向け記録装置や書き込みソフトウェアに採用され、ドライブバッファの大容量化やコンピュータの性能向上などと共に書き込み不良の減少に寄与している。
DVD-Rドライブでは、仕様で必須の機能となっている。
しかしながら、これらの機能の作動による記録品質の悪化は避けられない。音楽CDとして記録された場合、この多くは音質の劣化として現れる。