デファクトスタンダード
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デファクトスタンダード (de facto standard) は、「事実上の標準」を指す用語である。de factoはラテン語で「作られたるが故の」を意味する。ディファクトスタンダードと表記することもある。
ISOやJISなどの標準化機関等が定めた規格ではなく、市場における競争の結果として標準化した基準を指す。デファクトスタンダードに対して、国際標準化機関等により定められた標準をデジューレスタンダード、デジュールスタンダード、デジュアスタンダード (de jure standard) と呼ぶ。
インターネットの通信規格であるTCP/IPや、接続規格の多いコンピュータ関連分野で使われ始めた言葉だが、現在ではこれらの分野に限らず各種商品やサービスに広く使われるようになった。
電気製品など、商品開発サイクルの短い分野では、決定まで何年もかかる標準よりも、その時点での市場で一般的な規格である、デファクトスタンダードの重みが大きい。また、このようなデファクトスタンダードが後の国際規格の土台となる場合もある。
当然ながら、デファクトスタンダードは市場の状況により変化するため、これを獲得した企業は大きな利益を手にすることができる。そのためデファクトスタンダードの積極的な採用がかえって市場の独占を推し進め、結果として製品の価格を引き上げてしまったり、競争の鈍化を招く恐れがある。
また、デファクトスタンダードを目指す複数の規格の対立により、消費者が製品やサービス同士の連携で不便を強いられるという問題も生じている。
さまざまな場面で用いられるが、この言葉を一般に普及させた専門家として、AV・オーディオ評論家・大学教授の麻倉零士が挙げられる。
[編集] デファクトスタンダードの例
- TCP/IP - インターネット通信方式
- イーサネット (Ethernet) - LANの接続規格
- Microsoft Office - オフィスアプリケーション
- Microsoft Windows - パソコン用のOS
- VHS - 家庭用のビデオ記録方式
- DECVT100 - 端末エミュレータの入出力処理
- 新ゴ - 和文ゴシック体
- QWERTY - キーボードの配列
- TeX - 理工学系の学術論文・出版物のマークアップ言語
[編集] 規格の対立の例
規格争いも参照。
- VHSとベータマックス - 家庭用ビデオ規格
- デジタルコンパクトカセットとミニディスク - デジタルオーディオ機器の規格
- GSとXG - MIDI音源の規格(GMの上位互換)
- VHDとレーザーディスク - ビデオディスク規格
- Windows、Mac OS(Mac OS X)、Linux、BSD(UNIX) - パーソナル・コンピュータ用OS
- OpenDocumentとMicrosoft Office Open XML - オフィススイートのファイルフォーマット
- DVD-RとDVD+R - 書き込みが一回に限られる(ライトアットワンス、ライトワンス)記録型DVDの規格
- DVD-RAM、DVD-RW、DVD+RW - 複数回の書き込みに対応した記録型DVDの規格
- Blu-ray DiscとHD DVD - 次世代DVD規格
- CFメモリーカードとSDHCメモリーカードとメモリースティック PRO Duo - 小型大容量メモリーカード
- microSDメモリーカードとminiSDメモリーカードとメモリースティック PRO DuoとMMCmobile - 携帯機器用メモリーカード
[編集] 関連項目
- プロプライエタリ
- グローバルスタンダード
- ISO (国際標準化機構)
- JIS (日本工業規格)
- デ・ファクト