デモンパラサイト
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デモンパラサイトは2006年7月にグループSNEが制作した変身ダークヒーロー物のテーブルトークRPG(TRPG)である。著者は北沢慶。
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[編集] 概要
現代日本を舞台に、"悪魔寄生体(デモンパラサイト)"と呼ばれる寄生生物をその身に宿し、異形の姿に変身できる人間や動物「マイト」となり、理性を失った悪魔寄生体(ヴィシャス)たちが引き起こす事件を解決する。
近年の現代もののTRPGのジャンルでありがちな「スタイリッシュさ」へのアンチテーゼとして作られた部分が強いゲームで、「野蛮に、そして豪快に暴れ回る」ことができるようになっているのが魅力になっている。他にも、バケモノのような外見への変身、「異常なまでの食欲」がルール化されていることなど、非常な泥臭ささがあえて強調されているゲームになっている。
また、犬、猫、ハムスターなどの動物をPCとして使用できることも他のゲームではあまり見られない特徴になっており、今後のサプリメントでは牛や豚などの家畜もPCにできる予定である。
[編集] 変身ダークヒーローとは
『デモンパラサイト』のジャンルは「変身ダークヒーローTRPG」となっているが、このダークヒーローというのには「本来は悪に属する勢力の実力者が正義に転じた」というようなニュアンスの意味がある。Wikipedia項目アンチヒーロー#アンチヒーローの例も参考にされたい。
ダークヒーローの代表格ともいえるのは仮面ライダーである。本来は忌むべき怪人のはずのバッタ男が、悪を裏切り正義のヒーローとして活躍するドラマである。デモンパラサイトのPCたちもまた、本来は忌むべき存在である「悪魔憑き」たちが、人間社会を守るために同胞の「悪魔憑き」たちを倒す物語になっている。ただし、デモンパラサイトのPCたちは仮面ライダーのような正義のギーローのような外見はしないことの方が多い。むしろショッカーの怪人のような。恐ろしい外見に変身する。この「変身後は恐ろしい姿になる」という部分がこのゲームのキモであり、よりダークヒーロー路線が強調されている部分である。
同じような路線を目指しているゲームに『ダブルクロス』があり、実際、『デモンパラサイト』と『ダブルクロス』は比較される事も多いのであるが、『ダブルクロス』が人でないモノになったことへの「心の葛藤」をシステムで表現することでダークヒーロー路線を「精神的」な部分で強調してるのに対し『デモンパラサイト』は見た目の恐ろしさや衝動による破壊行動などあくまで「肉体的」な部分でダークヒーロー路線を表現することが重視されている。『デモンパラサイト』ではPCの心のあり方はプレイヤー次第であり、性格的にはあっけらかんとしたようなキャラクターも作りやすくなっている。
[編集] システム
[編集] キャラクターメイキング
『デモンパラサイト』のPCのおおまかなスタイルは「共生生物」と「職業」によって決定される。
PCは自分に寄生している共生生物のタイプを一つ決定する。これがキャラクタークラスに相当し、選んだ共生生物によって得られる特殊能力が変わる。特殊能力の多くは悪魔の姿に変身しないと使えない。街中や人前での能力の使用には大きな社会的リスクが伴うだろう。
共生生物以外にも職業を決定する必要があり、これは職業の選択によって動物になることもできる。職業はPCの技能や経済力を決定する。
[編集] 行為判定
行為判定は、上方判定に属する。六面体ダイスを複数(通常は2つ、変身中は3つ以上振ることも可能)振った出目に能力値(または技能に応じた数値)を加えたものを達成値とする。判定に使用したダイスのうち6の目が出たものが2つ以上あれば達成値に関わらず判定が必ず成功し、1の目が2つ以上あれば判定が必ず失敗する。6の目と1の目の両方が二つ以上ある場合は失敗の結果が優先される。
[編集] 衝動と暴走
『デモンパラサイト』の最も特徴的なルールが「衝動と暴走」である。
PCは衝動値というものが設定されており、これが高くなればなるほど、そのPCは理性を共生生物に食われて本能の衝動が強く表面に出ていることになる。全てのPCは任意のタイミングで衝動値を上昇させることで行為判定の振りなおしや特殊能力の使用ができるようになる。
この衝動値が一定量たまるたびに、PCは衝動に負けてわけのわからない破壊行動をしてしまう。PCがどのような奇異行動を行うかは、サイコロと表を使用してランダムに決定される。
衝動値が限界を超えて溜まったとき、そのPCは「暴走」する。暴走したPCは恐ろしいまでの超人的な力を発揮できるようになるが、「自我」と呼ばれるポイントを一点失う。暴走を繰り返してこの自我が全て失われたとき、そのPCは人間性を失った悪魔憑き「ヴィシャス」となり以後はNPCとなる。
[編集] 食事
『デモンパラサイト』は食事がとても重要なルールとして設定されている。食欲は人間の本能的な欲求であり、それを満足させることで衝動値が下がるのだ。そんなわけで、正義の悪魔憑き「マイト」たちは、ゲーム中に溜まっていった悪への衝動を、大量の食事を取ることで解消する(悪魔憑きは無限の胃袋を持ち例外なく大食漢である)。
ゲーム的には食事は金を払って購入する。食事に金をかければかけるほどど、美味なものを大量に食べれるため、衝動が下がりやすくなっている。
また、共生生物の驚異的な代謝能力により、PCは食事をとるだけでHPが回復する。骨折も内臓破裂も胃袋が満足すれば完治するのである。
[編集] 地形を利用した攻撃
『デモンパラサイト』では、悪魔憑きとしての怪力を利用して電柱をひっこぬいて振り回したり、車をなげつけて攻撃したりできる。これらの地形を利用した攻撃は誰でも行える。
このような攻撃はとても野蛮で原始的だが、ゲーム中最強の攻撃力を誇り、共生生物の特殊能力以上に役立つ状況も多い。なお、2007年2月現在で、データ化されている最強の地形攻撃は「ビルをひっこぬいて投げ飛ばす」である。
地形を利用した攻撃は『デモンパラサイト』の「現代を舞台に野蛮で豪快なアクションを行う」というコンセプトを如実に表したものだが、暴れすぎることは社会への迷惑行為になるので注意も必要だろう。
[編集] 世界設定
ゲームの基本的な舞台は現代日本となる。基本ルールブックでは舞台のサンプルとして架空の地方都市「大友市」が設定されている。
『デモンパラサイト』の世界では悪魔憑きの存在は一般には公表されておらず、表面的には我々の住むこの日本となんら変わらない世界になっている。
[編集] 悪魔憑き
悪魔憑きとは、謎の共生生物に取り付かれてしまった人(および動物)のことである。この共生生物は近年に存在が確認された完全なUMAであり、その解明にはいたっていない。寄生経路も謎であり、悪魔憑きの多くは普通に日常生活を送っていくうちに気づかぬうちに共生生物に寄生されていたといケースがほとんどどである。
この寄生体にとりつかれた者は悪魔のような恐ろしい外見に変身する能力を得て、その能力にふさわしいバケモノじみた力を得ることができる。また、本能的な衝動が強化され、欲望のままその力を振るうことになる。そのような様子がまさに悪魔に憑かれた者たちのようなので、この寄生生物にとりつかれた者たちを「悪魔憑き」と呼ぶようになったのである。
[編集] セラフィム
当然のように人間社会から危険視されている悪魔憑きたちではあるが、彼らのほとんどは望まぬ形で悪魔憑きになってしまった被害者である。そんな彼らの人権を守るために作られたNGO(ボランティア団体)が「セラフィム」だ。
「セラフィム」は、本能の衝動に負けて欲望のままに法を犯す悪魔憑きたちを探し出し、彼らを保護して治療することを目的とした団体である。悪魔憑きの共生生物は多くの謎に包まれているが、彼らを治療する方法が一つだけある。それは、別の悪魔憑きの共生生物が、相手の悪魔憑きの共生生物を食べることである。共生生物が食べられた場合、宿主となっていた者は解放される。
「セラフィム」は、欲望に負けない強い意志をもった悪魔憑きたちをメンバーにして犯罪を犯す悪魔憑きを保護し、人間社会に悪魔憑きたちの居場所を作り出そうとしているのである。プレイヤーキャラクター(PC)は基本的にこのセラフィムの協力者の立場となる。
[編集] 須佐山学園
大友市にある須佐山の中腹に作られた広大な学園都市。小学校から大学までが内包されており、住宅や商業施設なども整っていて、外部から切り離されたある種の閉鎖都市でもある。
学生の総数は約5000人だが、そのうち500人(1/10)が悪魔憑きという特殊な学園で(意図的にここに集められている)、悪魔憑きによる事件が多発している。それに対応するために悪魔憑き事件を解決するための生徒会などもつくられている。
[編集] 共生生物一覧
共生生物ごとに変身後のおおまかな姿も決まる。多くは衣服を破って変身するので変身から戻ったときの対処を考える必要もある。
- クレイモア
- 熱や炎を操る共生生物。白兵戦闘系。変身後は硬化した皮膚や突起物を生やした、悪魔的な姿となる。変身による衣服の影響は全損。
- ヴォージュ
- 強力を与える共生生物。変身後は巨大な獣人の姿になる。変身による衣服の影響は全損。
- ブリガンダイン
- 冷機や氷を操る共生生物。防御能力が高い。変身後は外骨格を纏った姿になる。変身による衣服の影響は濡れるだけですむ。
- ファランクス
- 風を操る共生生物。宿主は精密作業に強くなる。変身後は四肢の一部のみが武器のように変質する。変身による衣服の損傷は袖口が破れる程度。
- ショーテル
- 動物PCのみが選択可能。幻覚を操る共生生物。変身後は人間の姿になる。変身に伴い服も作り出される。
- カラドボルグ
- 電撃を操る共生生物。遠距離攻撃を得意とする。変身後は複眼を持つ蟲のような姿になる。変身による衣服の損傷は袖口が破れる程度。
- モリオン
- 光を操る共生生物。癒しの能力を持つ。変身後は流麗な外骨格に前身が纏われ、翼が生える(天使のイメージ)。変身による衣服の損傷は袖口が破れる程度。
- ウォーコイト
- 磁力や他人を操る共生生物。感情や記憶を操作する特殊能力を持つ。変身後は昆虫のような姿になる。変身による衣服の損傷は袖口が破れる程度。
- アルバレスト (『上級ルールブック』に収録)
- 射撃戦闘を得意とする共生生物。風を操り空を翔けることもできる。変身後の姿は昆虫のような姿。変身による衣服の損傷は体液により濡れるのみ。
- バルディッシュ (『上級ルールブック』に収録)
- 動物PCのみが選択可能。肉弾戦に強く電撃も操る。変身後は剛毛や害骨格の覆われて巨大化する。
- ドラグーン (『ディアボロス・スクールガイド』に収録)
- 自身の戦闘力を高める汎用・戦闘特化タイプ。変身後の姿は竜やキメラ、グリフォンのような幻獣の姿をとる。変身による衣服の影響は全損。
[編集] 製品一覧
- デモンパラサイト・ルールブック
- 基本ルールブック。2006年に新紀元社より書籍版にて発売。ISBN 4-7753-0482-8。
- デモンパラサイト・上級ルールブック
- 追加データ中心のサプリメント。2006年に新紀元社より書籍版にて発売。ISBN 4-7753-0506-9。
- ディアボロス・スクールガイド
- 須佐山学園の紹介を中心としたサプリメント。2007年に新紀元社より書籍版にて発売。ISBN 978-4-7753-0547-8。
- デモンパラサイト・リプレイ (富士見ドラゴンブックでのリプレイ )
- 悪魔憑きの目覚め ISBN 4-8291-4472-6
- 悪魔憑きの放課後 ISBN 4-8291-4484-X
- 悪魔憑きの学園 ISBN 978-4-8291-4492-3
[編集] 外部リンク
- デモンパラサイト紹介 (「Role&Roll」公式サイト内のデモンパラサイトページ)
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