トーナメント方式
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トーナメント方式(トーナメントほうしき)とは、競技会で勝者や順位を決める方式。
ただ一人の勝者を選ぶこと、優劣の順位を決めること、興行として面白いものにすること、などの目的の違いや、期間、場所等の制限、に応じて、さまざまな方法が考案されている。
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[編集] 一般的なトーナメント方式
最も一般的なトーナメント方式は、1対1の戦いによる勝ち抜き戦である。勝負に負けたチーム(または個人)はその時点で脱落し、勝者同士で対戦を繰り返しながら勝者を決定する。勝ち残り式、ノックアウトトーナメント(knockout tournament)などとも呼ばれる。日本語で単にトーナメントといえばこの方式を指すことが多い。
図の下の段から順に第n回戦と呼ぶ。しかし、最後の3回戦は第n回戦ではなくて準々決勝(quarterfinal)→準決勝(semifinal)→決勝戦(final)と呼ぶ。また、準決勝の敗者同士の試合を行われる場合がある。これを3位決定戦(third-place play off) と呼ぶ。
対戦表は、勝ち抜いたときの試合数が同数となるようにバランスをとって構成する。ただし、参加者数が 2n ぴったりでない場合、試合数が1試合少なくなるチームができてしまう。その場合は、1試合少ないチームをランダムに選んだり、他の大会での成績が優秀なものにしたりする。
Tチームでノックアウトトーナメントを行うと、試合数は、全部でT-1試合になる(回戦数ではなく全試合数。たとえば4チームのとき3試合)。試合数は敗者数と一致し、1敗もしないチームつまり優勝者が1チームだけ存在するからである。
[編集] シード
力のある参加者同士がトーナメントの序盤で対戦しないように、参加者をトーナメント表上にばら撒くように配置することをシードと呼ぶ。シード(seed)=種まきが語源である。シードは大会の面白さを増す目的でも行われる。トーナメントの構成上、試合数が少なくなる参加者が出る場合、シード対象者の試合数が減らされることが多い。また、シード対象者の試合数が必ずしも少なくなるのではなく、逆に試合数が少なくなることそのものがシードと誤用されることが多々見受けられる。
機械的にシードを設定する、次のようなアルゴリズムが知られている。
- 最初に過去の成績などから仮の順位を決め、トーナメント表の片方の端に1位の参加者を、もう片方の端に2位の参加者を配置する。
- 3位以下を順に、トーナメント表の頂上から以下のルールに従ってたどることによって配置する。
- 先に配置されている参加者の数が少ない山を選ぶ。
- 同数の場合は、山の最下位の順位が低いほうを選ぶ。
例えば6人の参加者をこれに従って配置すると、{1-(5-4)}-{(3-6)-2} という組み合わせが得られる。8人だと {(1-8)-(5-4)}-{(3-6)-(7-2)} となる。上位になるほど強い相手と早く当たる可能性が低く、また試合数も少なくなって有利である。
[編集] 利点と欠点
ノックアウトトーナメントは、ただ一人の勝者を決定する場合に適している。利点として、事前に組合せが決定されるので予想や興趣がわきやすい、準備や運営が簡単であるなどの特徴がある。しかし、欠点として、結果が組合せの運に左右される、安定した順位が決められない、敗者はその後試合をすることができないなどがある。また何らかの不確定要素やその時の選手の体調などの違いで、格下チームが勝ってしまうこと(ジャイアント・キリング)が多いため、厳密に優勝者を決められないこともある。それらを補うため、コンソレーション(consolation)と呼ばれる敗者復活戦、慰安試合を含む場合がある。
[編集] 適用例
サッカーのW杯決勝トーナメント、高校野球の夏の選手権と春のセンバツ、テニスの四大大会などに用いられている。
[編集] スイス式トーナメント方式
スイス式トーナメント方式(Swiss style tournament)は、積極的に同じ強さのもの同士を組み合わせ、少ない試合数においても、順位の正しさ、強弱の離れた試合を少なくすることを狙う方式である。
具体的には以下のような手順で行われる。
- 1回戦はランダムな組み合わせで対戦する。
- 2回戦は、勝者同士と敗者同士が対戦するように組み合わせる。
- 3回戦は、2戦全勝・1勝1敗・2戦全敗のそれぞれが、同じ成績同士で対戦する。
- 4回戦以降も同様にできるだけ同じ成績同士で今まで当たっていない相手との対戦を繰り返す。
規定の試合数をこなした時点で最も成績の良い参加者が勝者となる。成績の算定方法は基本的に
- 勝ち星の数(引き分けは0.5)
- 対戦した相手がどれだけの勝ち星をあげているか(ソロコフ、ソルコフとも)
- 勝利した相手がどれだけの勝ち星をあげているかの合計数(SB)
の順序で決定される。
1 | 2 | 3 | 4 | 勝 | 負 | ソロコフ | SB | 順位 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Anna | ○(J2) | ○(F2) | ●(H3) | ○(C2) | 3 | 1 | 9 | 6 | 2 | |
Bill | ●(I2) | ●(E1) | ●(J2) | ●(D2) | 0 | 4 | 7 | 0 | 10 | |
Charlie | ●(H3) | ○(I2) | ○(D2) | ●(A3) | 2 | 2 | 10 | 4 | 4 | |
Davis | ○(G3) | ●(H3) | ●(C2) | ○(B0) | 2 | 2 | 8 | 3 | 5 | |
Emmy | ●(F2) | ○(B0) | ●(G3) | ●(I2) | 1 | 3 | 7 | 0 | 9 | |
Frank | ○(E1) | ●(A3) | ○(I2) | ●(J2) | 2 | 2 | 8 | 3 | 5 | |
Gill | ●(D2) | ○(J2) | ○(E1) | ○(H3) | 3 | 1 | 8 | 6 | 3 | |
Hance | ○(C2) | ○(D2) | ○(A3) | ●(G3) | 3 | 1 | 10 | 7 | 1 | |
Ichiro | ○(B0) | ●(C2) | ●(F2) | ○(E1) | 2 | 2 | 5 | 1 | 8 | |
Jan | ●(A3) | ●(G3) | ○(B0) | ○(F2) | 2 | 2 | 8 | 2 | 7 |
勝敗の算定方法や組み合わせ方法にはいくつかの亜種が存在する。例えば、
- 勝利した相手の勝ち星のうち、最大のものと最小のものを除いた合計数(ミディアム、MD)
- 直接対決での勝敗(DH)
- 自分が負けた相手がどれだけの勝ち星をあげているか
を評価する方法や、負け星(引き分けがある場合)にも注目する方法がある。
スイストーナメント(Swiss tournament)、スイスドロー(Swiss draw)とも呼ばれる。この方式は、参加者の実力が伯仲しているが、リーグ戦方式にするには参加者が多すぎる場合に適している。
また、変形スイス式トーナメントもある。この場合は、通常のスイス式と対戦相手の決定方法が若干異なる。以下に示す。
- 2回戦の対戦相手は、1回戦で表の上位者が勝ったと仮定して組み合わせる。
- 3回戦以降は、最終戦を除いて2戦前までの結果に基づいて組み合わせる。
[編集] 利点と欠点
ノックアウトトーナメントに比べ順位がより厳密に算定され、また、すべてのプレイヤーが一定回数の対戦を行うことが期待できる。レーティングとの相性も良い。一方、次の対戦相手が、前のラウンドのすべての試合が終了するまでわからないこと、判定、組み合わせ決定に時間と手間がかかる欠点がある。
[編集] 適用例
思考型のゲームで使われることが多く、海外のチェスやチェッカーの競技会の多くはこの形式を利用している。日本でも将棋や囲碁のアマチュア大会では積極的に採用されている。マジック:ザ・ギャザリングをはじめとするトレーディングカードゲームでも使用例は多い。 以下にスポーツ競技での使用例を幾つか紹介する。
- 関東大学ラグビー対抗戦グループ
- 長年これに準じた方式が採用(試合数や対戦相手の決定方法などが本来の当方式の主旨とは決定的に異なる。詳細は当該項目の説明を参照)されていたが、試合数が揃わないことの影響などが問題視され1997年から実力別2階級=各クラス8チームずつの総当りリーグに変更された。
[編集] ラウンドロビントーナメント
日本でいう総当り戦、リーグ戦のことを、日本以外ではラウンドロビントーナメント(Round robin tournament)と称する。また、総当たりより少ない場合もそう呼ぶことがあり、その場合はスイス式と重なる。総当り戦についての詳細はリーグ戦を参照。
[編集] パラマストーナメント(ステップラダー)
まずある組み合わせの対戦を行い、次にその勝者と新たなプレイヤー、次にまた、と行っていき、最終的な勝者が優勝となる組み合わせ方式。極端に山の偏った、シードばかりのノックアウトトーナメントと同義である。一般には事前に決定している弱いプレイヤーから強いプレイヤーへと組み合わせる。
これは公平な組み合わせ方法ではない。しかし興趣などのため、強いプレーヤーになんらかの優先権を与える必要がある場合に用いられる。
最終的な勝利者だけでなく、勝ち星総数が多いものにもなんらかの権利を与えたり、敗者復活戦を組み合わせる複雑な方法も存在する。
特に(4人(組)で行う場合は)
- (1)1位選手は自動的に決勝戦、2位選手は準決勝(3位決定戦)に進出
- (2)まず3位と4位の選手で準々決勝(4位決定戦)を行う
- (3)(2)の勝者と2位選手が準決勝を行う
- (4)更に(3)の勝者と1位選手で優勝をかけて決勝戦を行う
[編集] 適用例
ボウリング競技や、韓国プロ野球の決勝トーナメントなどで用いられている。
2004年度より日本プロ野球パシフィックリーグのプレーオフ、ラグビーの日本ラグビーフットボール選手権大会に適用されている。
社会人野球や大学野球の地区代表決定戦において、第二代表以下を決定する際の敗者復活戦に用いられている。
将棋の銀河戦や囲碁の竜星戦で用いられ、各トーナメントブロックの優勝者と優勝者以外の最多勝ち抜き者が、その先の決勝トーナメントに出場する。
[編集] ページシステム方式
通常のトーナメントとパラマストーナメント(ステップラダー)を組み合わせており、敗者復活でも優勝できる可能性を持つ、変則的なトーナメントである。 以下の手順で行われる。
- 予選の1位と2位(A)、3位と4位(B)がそれぞれ対戦し、(A)の勝者は自動的に決勝戦へ進出、(B)の敗者は4位となる。
- (A)の敗者と(B)の勝者が決勝戦進出のもう1つの枠をかけて対戦し、その勝者が決勝戦へ進出、(A)の勝者と優勝を争う。敗者は3位となる。
[編集] 適用例
ソフトボールやカーリングで用いられている。Vリーグの2005-2006年シーズンのファイナルラウンド、都市対抗野球の四国代表決定の予選で、2006年にこの方式が採用された。
オーストラリアサッカー・Aリーグのファイナルシリーズでも採用されている。