ノーチラス号
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ノーチラス号(ノーチラスごう、仏: Nautilus)はフランスのSF作家ジュール・ヴェルヌの小説『海底二万リーグ』と『神秘の島』に登場する架空の潜水艦である。ノーチラス号の艦名は、ロバート・フルトンにより1800年に設計された潜水艦ノーチラスの名にちなむ。なお、ノーチラス (Nautilus) はラテン語でオウムガイの意味である。
ノーチラス号は元インドの王子にして技術者であるネモ船長により設計され、その指揮下にある。ノーチラス号の推進機関はナトリウム-水銀電池による電力の供給を受けており、電池の原料は乗組員の手により海中から賄われている。
ノーチラス号は防水隔室によって区切られた二つの船体から構成されている。ノーチラス号の最高速度は50ノットで、排水量は通常時1356.48トン、潜水時1507トンである。ネモ船長自身の言葉によれば、以下の通りである。
- 「ムッシュウ・アロナクス、あなたがいる船の各寸法をここに示しましょう。この船は両端が尖った細長い円筒形をしています。その形状は葉巻の形に非常に似ており、既にロンドンで同じ種類の各構造物に利用されています。船首から船尾まではちょうど70メートルの長さがあり、最大直径は8メートルあります。この船はあなたが長い船旅を送ってこられた汽船のように、10対1の比率には従ってはおりませんが、船体は充分に細長く、かつ湾曲させてありますので、水は容易に掻き分けられて巡航の障害にはなりません。ノーチラス号の表面積と体積は、これらの二つの寸法から単純な計算によって求められます。ノーチラス号の表面積は1011.45平方メートルで、体積は1500.2立方メートルです。つまりは、ノーチラス号が完全に潜水した状態で1500.2立方メートルの水が排水されます。1500.2メートルトンと言い換えてもよろしいでしょう」
ノーチラス号による船舶の攻撃では、船首の衝角で目標となる船を喫水線の下から貫いていたため、その襲撃は世界中で海の怪物の仕業だと思われていた。
ノーチラス号を建造するための部品は、ル・クルーゾー、ロンドン、リバプール、グラスゴー、パリ、プロシア(クルップ社)、モタラ(スウェーデン)、ニューヨーク、及びその他の都市で注文され、無人島でネモの部下達によって組み立てられた。
ネモ船長は後にクルーの多くを失い、孤島の洞窟にノーチラス号を隠し隠居をはじめたが、漂着したアメリカ人数人に自分の所業を語ると死去。 ノーチラス号は遺言どおりネモ船長の棺として、彼らによって洞窟のそこへと沈められた。
[編集] 他作品におけるノーチラス号
ノーチラス号は最も有名な潜水艦の名前となり、オリジナルである『海底二万リーグ』や『神秘島』以外にも、多くの作品で超時代的な装備を備えた万能潜水艦として登場している。
- 巨大生物の島(アメリカ映画、1976年) - 冷凍睡眠から目覚めたネモ船長により指揮される。
- アトランティスの謎(アメリカ映画、1978年) - バリアとレーザー兵器を装備した原子力潜水艦として登場。冷凍睡眠から目覚めたネモ船長により指揮される。
- ふしぎの海のナディア(テレビアニメ、1990年) - アトランティス人の宇宙船を改造した万能潜水艦として登場。アトランティス人の子孫であるネモ船長と、副長のエレクトラを始めとする多国籍クルーにより操舵される。艦長152メートル、最大巡航速度108ノット。「常温対消滅機関」と言う動力炉と、「水流ジェット推進」と言うスクリュープロペラに頼らない推進装置が特徴的。VLSを備えるなど20世紀の潜水艦に通じる兵装も持つ。敵組織ネオ・アトランティスの一方的な攻撃で撃沈の憂き目に遭ったが、後に万能宇宙戦艦Ν-ノーチラス号が再登場した。
- リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン(アメリカン・コミック、1999年) - 概ね原作設定のままで、ネモ船長が操る潜水艦として登場。その名の通りにオウムガイを連想させる8本の伸縮自在の触手を備え、第二篇では火星人の三脚機を主砲の一撃によって斥けた。映画版の『リーグ・オブ・レジェンド』では専用探査艇とミサイルが標準装備になり、外観も「大海の剣」と形容される鋭利なデザインになった。
- ヴェルヌワールド - (スーパーファミコンソフト) - 水中でも使用可能な多数の超光学兵器(通常の光学兵器は水中・湿度が異常に高い場所では使用できない)、波動砲と思われる二門の超巨大主砲を搭載した超重装備ド級潜水艦として登場。この作品では、外観はオウムガイの名に相応しい・・・というよりは、オウムガイそのものである。
- スタートレック(テレビドラマ) - 宇宙艦隊保有の、U.S.S.ノーチラス(U.S.S. Nautilus、NCC-31910)という宇宙船が登場する。ヴェルヌのオリジナルの「ノーチラス号」と、後述するアメリカの原子力潜水艦「ノーチラス」にちなんで名付けられた。ミランダ級を参照。
- マンハッタンを死守せよ(小説、クライブ・カッスラー著、2002年) - 19世紀に実在した潜水艦の設定で登場。
- ファイナルファンタジーIII - (ファミコンソフト) - サロニア城の学者たちの手で遺跡より発掘された飛空艇。後に潜水機能が備わる。
[編集] 実在のノーチラス号
ノーチラス号は、ナポレオンの要請によりロバート・フルトンが1800年に設計した、世界最初の実用的な潜水艦の名前であり、ヴェルヌのノーチラス号はこの潜水艦の名前に基づいている。
ノーチラス号はアメリカで1954年に完成した世界最初の原子力潜水艦「ノーチラス」の名前としても採用された。この潜水艦は、1958年に初の北極海横断潜航に成功した。
実際の潜水艦ではないが、東京ディズニーシーのミステリアスアイランドにネモ船長のノーチラス号を再現したものが繋留されている。ただし中に入ることはできない。