ピューマ
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ピューマ | ||||||||||||||||
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分類 | ||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||
Puma concolor | ||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||
ピューマ | ||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||
Puma |
ピューマは、脊椎動物亜門 哺乳綱 ネコ目(食肉目) ネコ科に属する大型肉食獣。北アメリカ大陸のカナダから南アメリカ大陸南端のパタゴニア平原までの平地から標高3900mの高地まで、湿地の森林地帯から砂漠地方まで、非常に広い範囲の幅広い環境に適応し、生息している動物である。北アメリカでは、場所によっては絶滅あるいは絶滅の危機に瀕しているが、保護の成果があらわれ少しずつ増えている場所もある。別名 クーガー、アメリカライオン。英名は、"puma" の他に、"cougar"、"mountain lion"などが一般的だが、北米では単に "lion"、"panther" などと呼ばれる場合もある。勿論、 "lion"、"panther" は一般にはそれぞれライオン、クロヒョウの英名である。英名、属の学名になっている "puma" は、スペイン語の名前で、その由来は南米ペルーやエクアドルのインディオが呼んでいたケチュア語での名前が元である。学名の種小名 "concolor" は、「1色の」の意味。分類上、ピューマ属ではなく、ネコ属に含め、その中のピューマ亜属とする場合もあるが、その場合の学名は、Felis concolor。
目次 |
[編集] 特徴
ネコ科のなかでは、ヒョウ、ライオンなどのヒョウ亜科 (Pantherinae) ではなく、ネコ、ヤマネコと同じネコ亜科 (Felinae) に属している動物である。ネコ亜科では最大級の大きさの種類。オスは体長1~1.8m、体重65~100 kgに達し、メスは一回り小さい。成獣の体は黄褐色の毛で覆われ無紋、耳の縁と長い尾の先だけが黒い。幼獣は体中に黒~黒褐色のヒョウのような斑紋があり、尾には黒い輪があるが、これらは成長とともに消えていく。敏捷で瞬発力に優れ、高さ4 m、幅12 mほどの跳躍の記録が残されている。嗅覚が鋭い。またネコ科の大型肉食獣の中では特に眼球が大きく、視力がよいことでも知られる。寿命は野生のもので12年ほど、飼育下では25年程度である。
基本的に単独行動をし、オスでは平均の広さ250 km2(半径 9 km の円)程度の縄張りを持つという。メスの縄張りはずっと狭く面積はその半分から3分の1程度。ただし、縄張りの広さは環境に左右され、餌が豊富で条件がよい地域ではオスの縄張りが1頭当り25 km2(半径3 kmの円)程度の地域もあるという。主にシカなどの大型哺乳類を捕食する。自重の7倍以上の相手も容易に捕食する。ネズミ、リスなどの小型哺乳類や、バッタなどの昆虫まで食べる。インディアンの話によれば、ハイイログマも度々襲うという。なお、ヤマアラシをシカに次ぐ重要な獲物にする場合もあり、その場合は、まず鼻をたたき、次に獲物を転倒させて棘のない腹部を食いつくという。狩りの方法は、地面に伏せて獲物に忍び寄り、獲物の後ろや物陰から、敏捷性、瞬発力を利用して一気に飛びかかるというもの。獲物の行動を止めるため、顎や喉笛に食いついたり、獲物を転倒させて、腹部に食いついたりする。
ピューマは広い縄張りに単独行動をする種であるため、ピューマの生息地域に人間が住んでいる場合でもあまりピューマを見かけることはない。歴史的にピューマによる人の被害はあまり多くはないが、人間の子供、屋外で飼育しているペット、家畜などはピューマに襲われないよう注意が必要とされる。
[編集] 亜種と分布
ピューマは非常に広い範囲に生息しており、地域により形態的特徴が異なっている。北中米、南米合わせて20~30種類程度の亜種に分類される場合が多い。亜種の分類には非常に異同が多い。
北米では、1900年代に入り、米国の多くの州でピューマが害獣指定され、狩猟による駆除が行われことから、ほとんどの地域で個体数が激減した。特に、東部、中部ではピューマはほぼいなくなった。1970年代までにはこの指定は解除されたが、それまでにカナダから米国東部(ニューイングランド地方からテネシー州まで)に広く分布していた北アメリカ東部亜種(ペンシルバニア亜種、学名 P. concolor couguar、英名 Eastern cougar)や、米国中部(五大湖西岸からカンサス州まで)に分布していた北アメリカ中部亜種(ウィスコンシン亜種、学名 P. concolor schorgeri、英名 Wisconsin cougar)はほぼ絶滅したと考えられている。また、米国南部(ルイジアナ州から東側、フロリダ州まで)に分布していた北アメリカ南部亜種(フロリダ亜種、学名 P. concolor coryi、英名 Florida panther)がフロリダ半島の湿地帯の森林にわずかに残されており厳重な保護下に置かれている。この結果、北アメリカで確実にピューマが分布している地域は、カナダ西部から米国西部、メキシコにかけての西海岸よりの一帯だけになっている。西部諸州でも狩猟によりピューマは激減し、更に1980年代まで狩猟(ゲーム・ハンティング)の対象動物ではあり続けたため、西部のいくつかの亜種(カリフォルニア亜種 P. concolor californicaなど)も、一時分布が限局され、個体数の減少が深刻になったときもあったが、1990年代以降は、かなり個体数、分布が戻ってきているという。北アメリカ東部で稀にピューマが目撃される事件があるが、これはペットが野生化したものである可能性が高く、上記亜種とは関連がないといわれる。
中米では、ニカラグアからパナマにかけて分布している中央アメリカ亜種(コスタリカ亜種、学名 P. concolor costaricensis、英名 Costa Rican puma)が絶滅のおそれがある種に指定されている。保護区内での個体数は比較的安定しているものの、増加の傾向は見られていない。
一方、南米では、ほとんどの地域にピューマが生息しており、21世紀に入り絶滅の恐れがある地域、亜種はない。種の学名と同じ亜種名 concolor を持つ原名亜種は、ブラジル亜種 (英名 Brazilian puma、学名 P. concolor concolor)で、ベネズエラからブラジル北部に分布する。
ピューマは、ベルクマンの法則に従う種として知られている。ピューマの場合、カナダ西部のブリティッシュコロンビアに生息する北アメリカ北西部亜種(学名 P. concolor missoulensis)や、南アメリカ最南端に生息するパタゴニア亜種(学名 P. concolor patagonica)などの体の大きさは、赤道地方の亜種の倍近い大きさがある。ベルグマンの法則の通常の解釈では、その理由は体の容積と表面積との関係で、寒い地域では体からの熱を奪われるのを防ぐため、体の容積に対して表面積が小さくなるように体が大型化するというものだが、ピューマの場合には、その原因は餌の種類の違いなのではないかという指摘もある。
なお、ピューマのうち、北アメリカ東部亜種、北アメリカ南部(フロリダ)亜種、中央アメリカ(コスタリカ)亜種の3亜種は、ワシントン条約で国際間の取引が禁止されている。
[編集] 参考
- Shivaraju A, and Dewey T.(2003): Animal diversity web - Puma concolor(The Universiry of Michigan Meuseum) - ピューマ全般の情報(英語)
- Florida Panther Net - 絶滅が危惧されているフロリダ亜種(フロリダ・パンサー)保護を中心としたピューマ全般の情報(英語)
- Mortensen, C and Macaulay, T: The Mountain Lion on the Web - ピューマの特徴、生態、特にカリフォルニアなどピューマの生息する地域で生活する注意点など(英語)
- Meiri, S. et al.(2004):Carnivores, biases and Bergmann's rule. Biological Journal of the Linnean Society 81(4), 579. - ネコ目の動物では、ベルグマンの法則に従う種と従わない種がある(英語)
[編集] 関連項
- プーマ(スポーツ用品メーカー)