ホンハブ
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ホンハブ | ||||||||||||||||||
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![]() ホンハブ |
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分類 | ||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||
Trimeresurus flavoviridis (Hallowell, 1861) |
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和名 | ||||||||||||||||||
ホンハブ | ||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||
Okinawa habu |
ホンハブ(本波布、本飯匙倩、ハブ)(Trimeresurus flavoviridis ) は、爬虫類有鱗目ヘビ亜目クサリヘビ科ハブ属に分類されるヘビで、南西諸島のうち、奄美大島、枝手久島、加計呂麻島、請島、与路島、徳之島、伊平屋島、伊江島、水納島、瀬底島、古宇利島、屋我地島、沖縄本島、藪地島、浜比嘉島、平安座島、宮城島(うるま市・大宜味村両方とも)、伊計島、渡嘉敷島、渡名喜島、奥武島、久米島の計22島に生息する。日本特産種。猛毒。
目次 |
[編集] 特徴
全長は1~2mで、最大は241cm(奄美産)。沖縄本島産では、2005年11月13日に225cmの個体が捕獲されている。アオダイショウと同じくらいの全長だが、頭が大きく、大型の個体はアオダイショウが飲み込めないハトやウサギを飲み込むこともできる。ネコを飲み込んでいた例もある。
体の模様は島によって様々だが、基本的に黄褐色の地色に暗褐色の斑紋を持つ。ハブ属のヘビは、その多くが樹上性のクサリヘビであり、小型なのが本来の姿であると思われるが、ハブは例外的に大きな体を持つ。これは、奄美、沖縄群島にアオダイショウやスジオナメラなどの樹上性のナメラ属のヘビが生息せず、競争相手がいないために獲物を独占でき、そのために大型化したと言われる。
折りたたみ式の毒牙を持ち、口を開けると牙が直立する。毒は非常に強く、牙は長い。また、目と鼻の間にあるピット器官で相手の体温を感知して見境なく噛みつく。これは人間に対しても同じで威嚇もなしに突然噛み付くことも多い。また、本来は森林に生息するが、ネズミを追って人家に侵入することもあり、人間の生活の中で接する機会が多いので、世界で非常に危険な毒蛇の一つに数えられている。
[編集] 生態
平地から山地の森林、草原、水辺、農耕地に住む。基本的には樹上性だが、地表にもよく降りてくる。ネズミを追って、人家周辺にも入り込む。沖縄式の墓は、石垣を高く積み、藪や森の近くに作られるので、ハブがよく住み着くと言われる。実際に発見される場としては、サトウキビ畑も多い。サトウキビ畑は、年に一回の刈り取り以外は高い草に覆われ、外部からハブが侵入する機会が多い。これをすべて刈り取るので、その際に発見されるのである。ただし、キビ畑で常時生活しているものではなく、本島南部のように、森林も藪も少なくて一面にサトウキビ畑という環境では、ハブの出現は少なくなる。
夜行性。ネズミなどの小型哺乳類・小鳥などの鳥類・トカゲ・カエルがおもな餌である。
[編集] ハブの毒
ハブの毒は出血毒と言われ、噛まれた直後から細胞組織の破壊が始まるため、患部は大きく腫れ上がり、激痛を伴う。毒の回りは遅く、じわじわと組織を破壊しながらゆっくりと全身に回っていく。 これはハブの毒が元々獲物を消化する消化酵素であるためで、組織の破壊とはすなわちタンパク質の分解である。 飲み込む前から消化を始めることによって、獲物を消化管内に留める時間を短縮することができるのである。
かつては噛まれたら助からないと言われるほどの危険なヘビであったが、血清治療の発達により、今では死亡率は1%以下である。ただし、野外活動するものは、血清治療が間に合わない危険がある。戦後に琉球大学の生物学助手が離島でハブに噛まれ、死亡している。また、筋肉や血管を破壊する毒であり、命を取り留めても、筋肉が失われるなどの後遺症が残る場合がある。
また、奄美諸島のハブと沖縄諸島のハブは毒性等が異なり、奄美のハブが強いといわれている。
余談だが、ドラマ版の男はつらいよの最終回では、寅さんが、奄美大島でハブに噛まれて死亡した。
[編集] 特異な分布
ハブは、南西諸島において、飛び石状の特異な分布をしていることが知られている。北からトカラ列島に亜種のトカラハブが、奄美諸島と沖縄諸島にはハブとヒメハブが、八重山諸島にはサキシマハブが生息するが、宮古諸島には生息しない。また、奄美大島、徳之島、沖縄本島にはハブがいるが、その間の沖永良部島、与論島には生息しない。沖縄本島周辺では、久米島、渡名喜島には生息し、粟国島にはいない。慶良間諸島でも、渡嘉敷島には生息するが、座間味島にはいない(ただし、ヒメハブは生息)など、近接した島でも生息する島と生息しない島が分かれている。
この理由について、現在考えられているのは、間氷期の海進の影響である。南西諸島の島々は、大きく分けて隆起石灰岩からなる標高の低い島と、火成岩からなる標高の高い島があり、低い方の島は、最高部でも標高が100mほどしかない。そこで、以下のような仮説が立てられる。
- 氷河期に陸続きであった琉球列島に、ハブ類が分布を広げた。
- 氷期が終わり、海面が上がり、島々が孤立。
- さらに海水面が上昇し、低い島は水没、陸上動物は全滅した。
- 海水面が下がると低い島も顔をだすが、ハブは渡ってこられない。
ただし、ヒメハブがいるのにハブがいない島、その逆にハブはいるが、ヒメハブはいない島などもあり、詳細については問題もある。しかし、おおざっぱに言えば、ハブのいない島は標高の低い島であり、固有種も少ない傾向がある。