メタンハイドレート
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メタンハイドレートとは、メタンを中心にして周囲を水分子が囲んだ形になっている物質である。この構造を維持するためには低温かつ高圧であることが求められる。地球上では、シベリアなどの永久凍土の地下、そして海底でこの条件が満たされメタンハイドレートが存在できる。実際にはほとんどが海底に存在し、地上の永久凍土などにはそれほど多くない。これらの場所では、大量の有機物を含んだ土砂が低温・高圧の状態におかれ結晶化している。
見た目は氷に似ているが、火をつけると燃えるために「燃える氷」と言われることもある。1立方メートルのメタンハイドレートを解凍すると164立方メートルのメタンガスに変わる。石油や石炭に比べ燃焼時の二酸化炭素排出量がおよそ半分であるため、地球温暖化対策としても有効な新エネルギーである。
日本近海は世界最大のメタンハイドレート埋蔵量を誇ると言われ、このため日本のエネルギー問題を解決する物質として考えられているが、メタンハイドレートは固体であるため液体である石油とは違い、(石油が枯渇していない現状とも相まって)採掘にかかるコストが販売による利益を上回ってしまう。そのため現段階では商売として成立せず、研究用以外の目的では採掘されていない。ただし地球上から石油が枯渇した場合、日本は世界最大のエネルギー資源大国になると言われている。なお、日本政府は2016年までにこれらのメタンハイドレートの商業化に必要な技術を完成させる計画を行うとしている。
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[編集] 海底のメタンハイドレート
(状況によって異なるが、おおむね)大陸棚が海底へとつながる、海底斜面内、水深1,000から2,000メートル付近での、地下数百メートルに集中する、メタンガス層の上部境目に多量に存在するとされている。通常は、高圧下でありながら、凍った水分子の、篭状の結晶構造に封じ込められている。
前述のとおり、石油資源に換わるエネルギー源として期待される一方、海中に湧き出したメタンが、さらには、空中に達することによって、地球温暖化の一因になっていると考えられている。メタン自体が大気中に放出された場合、二酸化炭素の20倍もの温室効果があるとされている。しかし二酸化炭素が大気中で分解されるのに50年から100年程度かかるのに比べて、メタンは12年程度で分解される。
[編集] 採取方法の課題
海底のメタンハイドレートは潜水士が作業できない深海に存在し、また地層中や海底で氷のように存在するため、石油やガスのように穴を掘って簡単に汲み上げることも、石炭のように掘ることもできない。ゆえに低コストでかつ大量に採取することは技術的に課題が多い。採取方法によっては、大量のメタンハイドレートが一気に気化し大気中に拡散、地球温暖化に拍車を掛ける恐れもあり、慎重に検討すべきと指摘する研究者もいる。
[編集] 発見の歴史
- シベリアなどの寒地において、天然ガスのパイプライン内にできるガスハイドレート(周辺構造は、メタンハイドレートとほぼ同じ)という現象や物質自体は、1930年代に確認されていた。
- 1960年代には、永久凍土内で、天然ハイドレートの堆積層が発見された。
- 1970年代に至って、海底において大量に存在する可能性が予測され、実際に計測が行われた。
- 1996年、アメリカ合衆国内の海底において発見され、具体的研究が進められる。
- 2000年 南海トラフでメタンハイドレートの存在を確認。
- 2006年 東京大学や海洋研究開発機構の研究グループによると新潟県上越市直江津港沖合30km付近に海底上(水深約900メートル)に露出しているメタンハイドレートを確認。 海底面上にあるのは東アジア初。
[編集] 原因
メタンガスが海底下で大量に発生する要因は、非生物(マントル)起源と、生物起源に大別される。
中でも、現在までに報告されているメタンハイドレートを構成するメタンの炭素同位体比は比較的小さい値(Carbon-13に乏しい)を示しており、これらのメタンは海底熱水系等において確認されている非生物起源のものではなく、堆積物中で有機物の分解によって生じる生物起源のものを主としていると考えられている。
[編集] 関連事項
- 天然ガスハイドレート(NGH)
- 太陽の黙示録