ロラン・セアック
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ロラン・セアックは、アニメ『∀ガンダム』に登場する架空の人物。(声優:朴璐美)
上記作品の主人公。中性的な顔立ちに浅黒い肌、ロングの銀髪、エメラルド色の瞳を持つ神秘的な雰囲気を纏う少年である。 ムーンレィス(月面居住者)であるが文明の遅れた地球人を軽蔑することなく、互いの平和と共存を毅然として希求する姿勢が印象的。マウンテンサイクルに封印されていたモビルスーツ、∀ガンダムを駆り、月と地球をめぐる戦いに挑む。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
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[編集] 出自
冷凍睡眠から覚醒させられた人間のため、両親の身元をはじめとしてロランの出自は明らかではない。生みの親ではなく、月でも運河人と呼ばれる下層階級の間で育てられて成長した。唯一の親との接点であるらしいブリキの金魚の『メリー』を肌身離さず持ち歩き、童謡の『メリーさんの羊』をよく口ずさんでいる。
このほか小説、漫画とメディアによってその出自は微妙に異なる。
佐藤茂による小説版では、下層階級出身という事で技術者である両親との血縁は無く、ブリキの人形に関しても、父親が気まぐれに露天で見つけて購入した物で、ロランにとっては家族の思い出の象徴となっている。
福井晴敏の月には繭地には果実においてはキースと同じ孤児院で育った孤児であり、ブリキの人形は捨てられた際に持たされていた物となっている。
キャラクターデザインの安田朗の漫画月の風においては、父親は教授職を勤める黒歴史の専門家で発掘作業で放浪生活を送っているのを見かねた叔父夫婦に引き取られて育てられたという経歴を持つ。
[編集] 地球へ
月の女王ディアナ・ソレルによって地球帰還計画が立案されると、それに先行して地球に潜入する調査員が募集されたため、ロランはこれに志願して地球に降り立つことになった。このときは月のモビルスーツ「フラット」に搭乗しての降下だった。
地球の社会を調査するという任務のため、ロランは身分を隠してアメリア大陸イングレッサの鉱山労働者として働いていたが、機械に明るいことを見込まれ鉱山主ハイム家に運転手・下男として仕えるようになる。その生活の中で、ロランは地球や地球の人々に深い愛着を抱くようになる。そうした中で月の市民軍ディアナ・カウンターによる地球侵攻が開始された。折しもそのときマウンテンサイクルで成人式に参加していたロランは、巨大な像の中からよみがえったモビルスーツ・∀ガンダムに乗り込むことになる。
[編集] ミリシャとともに戦う
ディアナ・カウンターの侵攻に対する地球側の戦力は各地方領主の持つ軍隊(ミリシャ)で、その装備はプロペラ戦闘機が最新鋭というレベルであった。まったく抗することのできない地球人を相手に一方的な侵攻を続けるディアナ・カウンターに対してロランは反感を抱き、∀ガンダムの戦力をもってイングレッサ・ミリシャに協力した。イングレッサ領主グエン・サード・ラインフォードの意向で、表向きには女性パイロット「ローラ・ローラ」として公表されており、プロパガンダ的にその存在を利用された。このため公の場では女装した状態で出席させられている。もともと華奢で中性的な顔立ちの為か、事実を知らぬ者に誰一人として違和感を感じさせる事は無かった。
やがて一時的な休戦となり、グエンが月へ赴いて和平交渉を行うこととなったたため、ロランはこれに従って月へ向かう。しかし月では、メンテナー家の反乱、黒歴史の開放、そしてギム・ギンガナムの蜂起などといった混乱が待っていた。そして黒歴史の技術力に魅入られたグエンがギム・ギンガナムと組むに至って、女王ディアナ・ソレルは地球への親征を開始する。ロランはディアナに従って、今度はグエンらを止めるために再び地球へ向かうのだった。 そしてその間、仕えていたハイム家の次女、ソシエ・ハイムに想いを寄せられるのだが、それに応えたとはっきり判るような明確な描写(映像)については、ラストのキスシーン以外では描かれていない。
なお、福井晴敏著『月に繭 地には果実』ではウィルゲムで宇宙に上がった後、ニュータイプの資質を急激に開花させている。
[編集] 戦いのその後
地球で行われたディアナ・カウンターとギンガナム軍との戦いの中で、ロランの∀ガンダムはギム・ギンガナム操るターンXと対峙。激戦の末、∀ガンダムは小破するが、ターンXを大破させ、ギンガナムは両機の形作った繭に取り込まれた。
平和の戻った地球でディアナ・ソレルは隠棲することを決めるが、ロランはハイム家の娘ソシエとの愛を振り切ってディアナに従う。一方、小説版ではソシエと結ばれる。また、曽我篤士版のコミカライズでは、ギンガナムのターンXとの大気圏内での戦闘後、行方不明となっている(ただし、恐らく生きているだろうと思われる表現はされている)。福井晴敏の小説版では、カイラス・ギリから発射されたビームを∀ガンダムで受け止めた後、コア・ファイターで地球に降下し、流浪の旅の末にソシエと再会している。
[編集] 性格
芯の強い心優しい少年であり、また、他者に使われる身分にも全く抵抗を感じない温和な人格である。物語終盤にはソシエの愛を振り切ってディアナ・ソレルへ殉じるが、キエル・ハイムにも恋心までとは行かなくとも憧れを持っていた。優柔不断な性格と捉えられがちだが、自らが「正しい」と感じないものには頑なに抵抗する。しなやかでありながらどんな強風にも折れない、竹のような人物。
[編集] ガンダム・パイロットの新基軸
ロランは、ムーンレィス(地球帰還作戦の潜入調査員)であることを隠し、地球人として2年間暮らす設定にされており、任務を終えて自由の身になった日に、ディアナ・カウンターによる地球帰還作戦が開始された。このため、月側と地球側のどちらにも十分に属することができない境界人(マージナル・マン)の立場で、双方の武力衝突を体験し、心を痛めることになる。実際、ミリシャの一員になってからも、ディアナ・カウンターの総帥ディアナへの尊敬の念であふれている。
さらにロランは、ムーンレィスにも地球人にも嘘をつき続け、心の葛藤(かっとう)が頂点に達したとき、自ら真実を明らかにするとともに旗幟(きし)を鮮明にした(8話ラスト)。月社会とアメリア社会の境界にいるロランが確立したのは、ムーンレィスであろうと地球人であろうと「人命を尊重しない人と戦う」という考え方であり、その後、殺傷を避ける戦い方を実践した。ここに新しいタイプのガンダム・パイロットが誕生したのである。
なお、戦う相手を所属先(たとえばムーンレィスやミリシャなど)で決めるのではなく、「人命を尊重しない人と戦う」という考え方そのものは、集団への帰属意識が希薄になりやすいことを含意(がんい)する。このことに加え、月側と地球側のどちらにも十分に属することができない境界人の立場に置かれたことは、戦後の隠棲生活(アニメ版)や放浪の旅など、結末に少なからず影響を与えた。
[編集] 声優について
『∀ガンダム』の富野由悠季総監督によれば、ロランに朴の起用を考えたのは、∀ガンダムの企画を考え始めた1997年頃、朴が所属する演劇集団 円が伊豆の土肥で行っている「菜の花舞台」を観に行った際、出演していた彼女の演技がイメージにぴったりだと思ったからだそうである。そこで、富野は彼女の声優としての適性を見る意味で翌年の『ブレンパワード』でカナン・ギモス役として起用した。
∀ガンダムのオーディションにはキエル・ハイム/ディアナ・ソレル役としてやってきた朴だったが、いきなりロランの台詞も言うことになったので面食らったという。もちろん富野は最初から彼女をロラン役の候補として呼んだのである。
[編集] 主な搭乗機
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