機動戦士ガンダム
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機動戦士ガンダム | |
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ジャンル | ロボットアニメ |
テレビアニメ | |
監督 | 富野喜幸 |
アニメーション制作 | 日本サンライズ |
製作 | 名古屋テレビ 創通エージェンシー 日本サンライズ |
放送局 | 名古屋テレビ |
放送期間 | 1979年4月7日 - 1980年1月26日 |
話数 | 全43話 |
映画: 機動戦士ガンダム | |
監督 | 富野喜幸 |
制作 | 日本サンライズ |
封切日 | 1981年3月14日 |
上映時間 | 137分 |
映画: 機動戦士ガンダムII 哀・戦士篇 | |
監督 | 富野喜幸 |
制作 | 日本サンライズ |
封切日 | 1981年7月11日 |
上映時間 | 134分 |
映画: 機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙篇 | |
監督 | 富野喜幸 |
制作 | 日本サンライズ |
封切日 | 1982年3月13日 |
上映時間 | 141分 |
シリーズ作品 | |
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『機動戦士ガンダム』(きどうせんしガンダム、MOBILE SUIT GUNDAM)は、日本サンライズが制作し名古屋テレビをキー局として放送されたロボットアニメ。「ガンダムシリーズ」の第一作である。テレビ朝日系で毎週土曜日17:30 - 18:00にて1979年(昭和54年)4月7日から1980年(昭和55年)1月26日にかけて、全43話が放送された。
それまでのロボットアニメに対して、戦場を舞台としたリアリティに富んだ人間ドラマと、ロボットを「モビルスーツ」とよばれる兵器の一種として扱う設定等を導入したことでその変革の先駆けとなり、後に「リアルロボット」と称される大きな潮流を作った作品である。それらの要素が放映当時の10代以上の視聴者を中心に人気を博し、本放送終了後の1981年から1982年にかけて劇場用アニメーション映画3部作の制作に結びついた。なお、本作は後に続々と制作されていく「ガンダムシリーズ」と呼ばれる一連の作品群の第一作目であることから、ファンからはファーストガンダム(最初のガンダム)とも呼ばれている。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
物語
スペースコロニーへの宇宙移民開始を紀元とした未来世界、宇宙世紀0079年が舞台である。人類は増え続ける人口のため、半数が月軌道周辺にあるラグランジュ点に浮かぶスペースコロニー群(作中ではサイドと呼ばれる)に居住していた。その中で地球に最も遠いコロニー群サイド3はジオン公国を名乗り、宇宙移民であるスペースノイドの独立を求め、人型機動兵器「モビルスーツ」の開発成功を機に、地球連邦に独立戦争を挑んでいた。そのわずか一週間あまりで双方の陣営は総人口の半分を死に至らしめた。
そんな中、サイド7に住む少年アムロ・レイは、連邦軍が進めていた「V作戦」に対する調査のためサイド7に侵入したジオン軍のモビルスーツ・ザク[1]の攻撃に巻き込まれ、偶然が重なり、連邦軍の新型モビルスーツ・ガンダムのパイロットになってしまう。ガンダムの性能もあり敵モビルスーツを撃退することはできたものの、ガンダムの母艦である最新鋭戦艦ホワイトベースは正規乗組員のほとんどを失い、アムロを初めこれに避難した少年少女たちは、生き残った乗組員達と協力しながらサイド7を脱出する。しかし宇宙には、赤く塗装した専用のザクを駆り数々の戦果を挙げたことから「赤い彗星」と呼ばれる凄腕のパイロット、シャア・アズナブルが待ち構えていた。
この物語は、アムロ達が長年の宿敵となるシャアを初め、様々な人々との出会いや戦い、そして別れを経て数々の困難を乗り越え、成長していく姿を描く。
作品解説
『機動戦士ガンダム』は、3機合体のロボットが主役の『無敵超人ザンボット3』、3段変形のロボットが主役の『無敵鋼人ダイターン3』に続くサンライズのオリジナル作品第3作として、富野喜幸(現・富野由悠季)を監督に据え、玩具メーカーのクローバーをメインスポンサーとして企画・制作された。
作品の特徴とそれ以前の作品との比較
これ以前の1970年代当時は、一般にはアニメとは子供のものであるという認識、そして玩具市場のものでしかないという固定観念が強かった。だが『機動戦士ガンダム』に先立つ例として、『宇宙戦艦ヤマト』の劇場公開を求めた高年齢層のファンの署名活動があったり、高年齢層をターゲットと銘打った劇場版『ルパン三世』の公開といった、ファンサイドの行動や製作サイドの様々な積み重ねにより徐々に市場が広がりつつあった。
そのような中、『鉄人28号』(1963)や『マジンガーZ』(1972)などによって開拓されたロボットアニメは、従来の時代劇や冒険活劇同様、強い正義感を持つ主人公が操縦する強力な巨大ロボットが技と武器を駆使し、「悪の組織」の敵ロボットや敵怪物を撃退し、最後に世界に平和を取り戻すというプロットが基本であった。先にあげた作品のほか『UFOロボ グレンダイザー』や『グロイザーX』『合身戦隊メカンダーロボ』『超電磁マシーンボルテスV』など幾つかの先例では、したたかにその「裏」や「戦争をしているという全体状況」を描き込むような片鱗こそあったが、いずれも「敵」の設定に「異星人」「異文明」という概念を必要としていた。ここに「コロニー」という設定を持ち込み、敵も味方も全く同じ人間としたのは、幼年視聴者主体の当時としてはかなり冒険だったと言える。さらに『宇宙戦艦ヤマト』という先例があるにしろ、1話完結の「戦況」へ加えて1年という放映期間を通した「戦史」といった低年齢層には理解しがたい大枠の概念をかぶせ、主人公とは別に「戦争」という状況を全面的にロボットアニメのシリーズの中で描き出そうとしたのは『機動戦士ガンダム』の重要な試みの一つと言えよう。
またロボットアニメは登場するロボットの玩具がメインスポンサーとなるおもちゃ会社の重要な商材であり、その売れ行きが番組そのものの命運を決めることから、主役ロボットには変形や合体など、玩具として魅力的なガジェット(仕掛け、機構)を備えることが求められた。これらのために主人公ガンダムは試作品という設定によって、旧来のパワーアップイベントや合体などの要素をクリアしていた。だがむしろ、当時スポンサーにとっては商品化の対象外ともいえる敵ロボット・ジオン軍モビルスーツに「量産機」という設定上の概念をはっきりと与えたことが作品のミリタリズムを高め、後の評価を決定付けたともいえる。
このように『機動戦士ガンダム』は子供向けの要素を残しながら、より上の年齢層をもターゲットとしつつ制作された。ロボットアニメという枠組を破綻させることなく、現実味を持たせた物語や設定によって、高年齢層の視聴に堪えうる作品作りが可能であることを示すこととなった。主なストーリーは政治的に対立する2つの組織による戦争の中で、偶然、試作の軍用ロボットを操縦することになった主人公とその仲間たちが、戦火が拡大する中で必死に生き延びていく姿を描いた群像劇である。彼らが新劇をベースとしたケレン味・含みを持たせた象徴的なセリフを口にしながら苦悩する一方で、背景に大状況の「戦争」と「政治」が進行する重層的な作りは特に高年齢に訴えた。主人公・アムロたちはもちろん、彼らをサポートする人々や相対するジオン公国軍の兵士にも、個性的な人物像がセリフや行動で示された。また必ずしも主人公サイドの「連邦軍」が一枚岩でない様子や、敵サイドに配されたもう一人の主人公であるシャア・アズナブルの復讐劇の要素も交えつつ、全体のプロットには直接触れない登場人物まで、それぞれが信念や思想、哲学を持ってこの戦争を生き抜いている様子も描かれていることで作品世界が豊かになり、厚みがあるエピソードやストーリーを生んだのである。
「フリーダム・ファイター」から「ガンダム」へ
ただし、当初の企画『フリーダム・ファイター』ではロボットを登場させるつもりはなかったという。『宇宙戦艦ヤマト』とジュール・ヴェルヌの『十五少年漂流記』にヒントを得て、宇宙戦艦に乗り込んだ少年少女が宇宙戦争の中で協力しながら生き延び成長するという点は『ガンダム』と共通している。この時点では主人公たちは宇宙戦闘機に乗り込み、異星人と戦うという設定であった。[2]
しかしクローバーはあくまで巨大ロボットもの、それも「変形・合体」といったおもちゃとして楽しめる仕掛けを備えたものを要望した。企画に詰まったスタッフに相談を持ちかけられた、SF作家でスタジオぬえの一員もである高千穂遥は、ロバート・A・ハインラインのSF小説『宇宙の戦士』の一読を薦めた。これに掲載されている、スタジオぬえによる装甲強化服「パワードスーツ」の挿絵を元に考案されたのが全高18mの「モビルスーツ」である。この時点での仮題は『ガンボーイ』であった。これがアメリカでトラック軍団を指す「コンボイ」と掛け合わせて『ガンボイ』に、さらにチャールズ・ブロンソンがテレビコマーシャルで流行語にした「う~ん、マンダム」のイメージから『フリーダム』のダムとかけて『ガンダム』という名前が生み出された。
最終的に、主役機「ガンダム」は上半身と下半身の間に小型戦闘機を変形させて組み込むという形を採り、前出のパワードスーツに着想を得たデザインの「ガンキャノン」と、戦車風の「ガンタンク」もこのシステムを取り入れることとした。
これら3機はそれぞれ一機種一体[3]の試作機であるものの、「ザク」をはじめとしたジオン側のモビルスーツは多数の同形機が存在する量産兵器とされた。そしてモビルスーツは主役機と言えども一体で戦局が一変することはほとんどない。ザクに続く新型機として登場する「グフ」や「ドム」などや、ガンダムを元に量産された連邦軍の「ジム」もまた数多く登場する。一方、モビルスーツの存在意義に説得力を持たせるために、ミノフスキー粒子という架空の粒子が設定された。これはレーダーや電波誘導兵器を攪乱・無効化することでモビルスーツ同士の白兵戦に説得力を持たせるものである。アニメとしての制約の中でも無重力状態の描写などにも注意が払われ、細かい設定によって作品世界に奥行きと現実感が持てる作品となっている。こうしたリアリティを重視した設定から、『機動戦士ガンダム』はそれまでの巨大ロボットがヒーローとして扱われるスーパーロボット作品から一線を画す、リアルロボット路線の元祖とされる[4]。
もうひとつ、『機動戦士ガンダム』において重要なキーワードが、「人類の革新『ニュータイプ』」である。超能力にも似た特別な感覚を得た人々として設定されたニュータイプは、当初は主人公アムロに超人的活躍をさせるためのアイデアであったが、やがて宿敵シャアもまたニュータイプであることが明かされ、そして同じくニュータイプである少女ララァ・スンとの出会い、そして三人の間で起こる悲劇を通じて、「人類の革新」とは何なのかと問いかけるに至っている。
初回放映時の評価と後の社会現象
当時、現代劇やスペースオペラでならともかく、よもや巨大ロボットという荒唐無稽の代名詞のようなガジェットを用いて通り一遍な勧善懲悪ものではないシリアスな作劇が可能だとは全く予想もされていなかった。このような従来タイプのロボットアニメとのギャップのため、ターゲット層はこれを見ず、置いていかれた幼児はついてこれず、ガンダムは初回放送時の視聴率は名古屋地区で平均9.1%、関東地区で5.3%[5]と振るわなかった。その結果、従来通りの子供の視聴者をターゲットにした関連玩具の売上も伸びなかった[6]ことで、全52話の予定が全43話に短縮される形の打ち切りとなった。[7]
しかしその一方で、放送当時からアニメ雑誌がたびたび熱意ある特集記事を組んだり、終盤からハイティーンを中心に口コミで徐々に評判が高まり、シリーズ後半の視聴率は、放映時間帯としては健闘したといえる。
本放送終了後も当時盛んだったアニメファンによる再放送要請嘆願署名が行われ、またアニメ誌が放送終了後もなお特集記事を組むなど熱意は衰えず、これらを受けて再放送、再々放送が重ねられ、世間一般へ「ガンダム」が浸透していった。再放送では平均視聴率も10%を超え、1982年における再放送では名古屋地区で25.7%(最高視聴率29.1%)を記録するなど、視聴率からもガンダム人気の上昇ぶりを伺うことが出来る。
また、放送終了後に商品化権を取得したバンダイから半年後に発売されたモビルスーツのプラモデルが、『ガンプラ』と呼ばれ、低年齢層も含めて爆発的な売れ行きを見せ、ガンダム人気を広げる一助となった。ガンプラは大変な人気を得たことで「モビルスーツバリエーション」と呼ばれる派生シリーズを産み、それらにおける種々の設定はアニメ雑誌において生み出された設定と合わせてガンダムの世界観をより深く掘り下げるものとなった。一方で『機動戦士ガンダム』の作中における描写や「ニュータイプ」の存在に対して、高千穂遙がSF考証の観点から批判する意見を述べ「ガンダムSF論争」を巻き起こした。
劇場版三部作と「アニメ新世紀宣言」
テレビ版の再編集に新作カットを加え、ストーリー・設定を一部変更した劇場版の制作が発表されたのは1980年10月のことである。第1話から第13話までを再編した第一作の題名は数字等を付けず単に『機動戦士ガンダム』とされ(ただし公式リリース以外では、便宜上『砂の十字架編』と呼ばれる場合もある)1981年3月14日全国松竹系にて公開された。これに先立つ1981年2月22日、新宿にて「アニメ新世紀宣言」と呼ばれるイベントが開催され、1万5千人ともいわれる数多くの若者が詰めかけた。中にはシャアとララァなど登場人物の(今日で言う)コスプレをして現れた者達もいたほどである。[8]彼らを前に富野は、これだけの若者がアニメ映画のイベントのために集まった事を通じて、アニメを低俗・俗悪と決めつける社会の認識を問う発言をおこなっている。
第一作の成功を受けて、『機動戦士ガンダムII 哀・戦士編』(あいせんしへん)(第16~31話前半を再編、1981年7月11日公開)、続けて『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』(めぐりあいそらへん)(第31話後半~第43話を再編、1982年3月13日公開)が公開された。またこれらの映画の主題歌がオリコンチャートの上位にランキングされる[9]など、様々な要素が組み合わさって大きな社会現象にまで発展した。
その後も本作と世界観や設定、歴史などを踏襲、あるいは共有する小説や漫画が数多く制作された、メディアミックスの先駆けともいえるアニメ作品でもある。後年、本作の7年後を舞台とするテレビアニメ作品『機動戦士Ζガンダム』を始め、その歴史に連なるアニメ作品、あるいは世界観をモチーフに「ガンダム」の名を冠したアニメ作品や、小説、漫画、コンピュータゲームなどが、様々なクリエイターの手によって制作された。
アニメ史上の評価と後続作品への影響
『機動戦士ガンダム』は複雑な人間模様を描き出したドラマ性が初回放送から四半世紀を経てなお高く評価される作品である。戦争賛美でもなければ安易な「反戦」でもない、独特の戦争観は「ガンダム世代」と呼ばれる当時の視聴者達の戦争観に影響を与えたとされる。
また『機動戦士ガンダム』のヒットは新たなアニメブームをもたらし、これに影響されたアニメも玉石混淆で無数に製作されることになる。特にロボットアニメは『機動戦士ガンダム』同様に、登場人物や世界観の描写に力を注ぐことで高年齢層も意識した作品作りがなされるようになり、後述するような数多くの作品を生み出した。ガンダムシリーズ自身は『機動戦士ガンダム』以来のファンを維持しつつ、新しい設定のガンダムが若いファンを獲得して親子二世代にわたって人気があるシリーズとなっている。
「アニメ新世紀宣言」に集まるなどしてガンダムブームを支えた視聴者達の中からは、数多くのクリエイターが生まれている。例えばそこでシャアとララァのコスプレをした二人も、後にメカニックデザイナー・永野護と声優・川村万梨阿として『機動戦士Ζガンダム』の制作に参加している(さらに言えば、二人は物語の中で結ばれる事の無かったシャアとララァとは異なり、現実の夫婦となっているのだが、それはまた別の話)。
「モビルスーツ」と「ミノフスキー粒子」という、有人ロボットに意義を持たせる設定はアニメファンや制作者だけでなく、他の分野にも衝撃を与えた。以降のロボットアニメにおいては、ロボットが人型をしている理由、それが車両や航空機などの従来兵器を凌ぐ理由、絵になるショートレンジ戦闘の起きる必然、なぜ主人公とその乗機が頭一つ(圧倒的ではいけない)抜きん出るかの理由などを設定する事が多くなった。そうして生まれた有人ロボットとして、「バトロイド、デストロイド(『超時空要塞マクロス』)」、「コンバットアーマー(『太陽の牙ダグラム』)」、「ラウンドバーニアン(『銀河漂流バイファム』)」「アーマードトルーパー(『装甲騎兵ボトムズ』)」、「レイバー(『機動警察パトレイバー』)」、「エヴァンゲリオン『新世紀エヴァンゲリオン』」などが挙げられる。
モビルスーツ同様ロボットを主役といえども唯一無二の存在として描かないロボットアニメが出現した一方で、それ以前からの主役ロボットをヒーロー同様に描きロボットの格好良さと痛快さを売りにしたタイプのロボットアニメも、相応の論理性を取り入れながら発展している。やがてそれぞれの流れは、古今のロボットアニメのロボットが一堂に会するゲームソフト『スーパーロボット大戦シリーズ』において、「リアルロボット」「スーパーロボット」と呼ばれるようになった。
また等身大のロボットを描いた最初のテレビアニメ『鉄腕アトム』がロボット研究者の大きな目標になったように、モビルスーツもロボット研究者にとって大きな目標の1つとなっている。
主要登場人物
『機動戦士ガンダム』の登場人物も、従来のアニメの登場人物とは異なった性格、あるいは描かれてこなかった立場から描かれており、それぞれの残した名台詞と相まって後の作品に多大な影響を及ぼしている。
- アムロ・レイ
- 主人公アムロ・レイは当初一介の民間人、それも機械いじりの好きな内気な少年として登場する。この点において従来のロボットアニメの典型的な主役像である熱血漢・正義漢とは一線を画している。彼は急遽リーダーとなった士官候補生ブライト・ノアとの衝突や、サイド7脱出以来の宿敵シャア・アズナブルやモビルスーツパイロットとしても人間としても経験豊富な強敵であるベテラン軍人ランバ・ラルとの戦い、初恋の女性マチルダ・アジャンや兄貴分のリュウ・ホセイの死といった現実を経て人間的に成長してゆく。
- さらに、人類の革新「ニュータイプ」として覚醒し、超人的・英雄的活躍を遂げる過程は、SFヒーローアニメとしての制約からはじまったといえるが、人類の進化の過程と意義、個人のもつ戦争参加への葛藤など普遍的な問題をも触れられており当時としては画期的であった。
- シャア・アズナブル
- アムロ達のライバルとなるシャア・アズナブルは、仮面をかぶりつつも従来からのいわゆる「美形悪役」の流れにあるキャラクターではあるが、ジオンの独裁者ザビ家に対する復讐のためにこの戦争を巧妙に利用する人物として設定されている。ホワイトベースに乗る妹セイラ・マスの存在に悩む一方でニュータイプの少女ララァ・スンと出会い、さらに彼もまたニュータイプとして覚醒することによって、従来型の悪役を脱して、人類の進化のため独立戦争を利用するに過ぎないという高い理念を抱くようになってゆく。
- アムロとシャアとの戦いは、本作では完全には決着が付かず、後に『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』において、人類の進化を企てるシャアとそのための破壊を阻止しようとするアムロとの間で、その戦いに決着が付くこととなる。
- その他の人物
- カイ・シデン、ハヤト・コバヤシ、フラウ・ボゥ、ミライ・ヤシマといったホワイトベースの仲間達もそれぞれに成長を遂げてゆく姿が描かれる。また、戦争を嫌悪する元軍人、戦争に加担する民間人、スパイ、武器開発者、主人公に殺される学徒動員パイロットなどそれまでのアニメーションでは無視されていたキャラクターを描ききっている。この方向性はサンライズとして最初に手がけた『無敵超人ザンボット3』でも試みられたものであったが、後の作品にまで影響を及ぼすほど徹底したのは、本作の非常に大きな特徴である。
詳細については、下記のページを参照のこと。
スタッフ
- 企画:日本サンライズ
- 原作:矢立肇、富野喜幸(現 富野由悠季)
- 総監督:富野喜幸(現 富野由悠季)
- プロデューサー:関岡渉、大熊信行、渋江靖夫
- アシスタントプロデューサー:神田豊
- 脚本:星山博之、松崎健一、山本優、荒木芳久、富野喜幸
- キャラクターデザイン:安彦良和
- メカニカルデザイン:大河原邦男
- 動画チェック:浜津守
- 特殊効果:土井通明、山本公
- 美術設定:中村光毅
- 音響監督:松浦典良
- 音楽:渡辺岳夫、松山裕士
- 整音:日向国雄
- 効果:松田昭彦
- 背景:アートテイクワン、アップル
- 仕上:シャフト、ディーン
- 撮影:斎藤秋男、平田隆文
- 編集:鶴渕友彰、小谷地文男
- 現像:東京現像所
- アニメーションディレクター:安彦良和
- 作画監督:安彦良和、山崎和男、青鉢芳信、富沢和雄、大泉学、中村一夫、鈴村一行、
- 絵コンテ:斧谷稔(富野喜幸)、山崎和男、貞光紳也、久野弘
- 演出:貞光紳也、藤原良二、小鹿英吉、横山裕一郎、斧谷稔(富野喜幸)、行田進、関田修、久野弘
- 製作進行:豊住政弘、草刈忠良、植田益朗、望月真人、八木岡正美、深田節雄、神田豊、滝口雅彦
- 制作:名古屋テレビ、創通エージェンシー、日本サンライズ
主題歌
- テレビ版オープニング『翔べ! ガンダム』
- テレビ版エンディング『永遠にアムロ』
- 作詞:井荻麟 作曲:渡辺岳夫 編曲:松本祐士 唄:池田鴻 キングレコード
- 劇場版(I)主題歌『砂の十字架』
- 劇場版II主題歌『哀戦士』『風にひとりで』
- 作詞:井荻麟 作曲・編曲・唄:井上大輔
- 劇場版III主題歌『めぐりあい』『ビギニング』
放送リスト
- 括弧内は、名古屋テレビにおける初回の放送日
- ガンダム大地に立つ!! (1979年4月7日)
- ガンダム破壊命令 (1979年4月14日)
- 敵の補給艦を叩け! (1979年4月21日)
- ルナツー脱出作戦 (1979年4月28日)
- 大気圏突入 (1979年5月5日)
- ガルマ出撃す (1979年5月12日)
- コアファイター脱出せよ (1979年5月19日)
- 戦場は荒野 (1979年5月26日)
- 翔べ! ガンダム (1979年6月2日)
- ガルマ 散る (1979年6月9日)
- イセリナ,恋のあと (1979年6月16日)
- ジオンの脅威 (1979年6月23日)
- 再会、母よ (1979年6月30日)
- 時間よ、とまれ (1979年7月7日)
- ククルス・ドアンの島 (1979年7月14日)
- セイラ出撃 (1979年7月21日)
- アムロ脱走 (1979年7月28日)
- 灼熱のアッザム・リーダー (1979年8月4日)
- ランバ・ラル特攻! (1979年8月11日)
- 死闘! ホワイト・ベース (1979年8月18日)
- 激闘は憎しみ深く (1979年8月25日)
- マ・クベ包囲網を破れ! (1979年9月1日)
- マチルダ救出作戦 (1979年9月8日)
- 迫撃! トリプル・ドム (1979年9月15日)
- オデッサの激戦 (1979年9月22日)
- 復活のシャア (1979年9月29日)
- 女スパイ潜入! (1979年10月6日)
- 大西洋、血に染めて (1979年10月13日)
- ジャブローに散る! (1979年10月20日)
- 小さな防衛線 (1979年10月27日)
- ザンジバル、追撃! (1979年11月3日)
- 強行突破作戦 (1979年11月10日)
- コンスコン強襲 (1979年11月17日)
- 宿命の出会い (1979年11月24日)
- ソロモン攻略戦 (1979年12月1日)
- 恐怖! 機動ビグ・ザム (1979年12月8日)
- テキサスの攻防 (1979年12月15日)
- 再会、シャアとセイラ (1979年12月22日)
- ニュータイプ、シャリア・ブル (1979年12月29日)
- エルメスのララァ (1980年1月5日)
- 光る宇宙 (1980年1月12日)
- 宇宙要塞ア・バオア・クー (1980年1月19日)
- 脱出 (1980年1月26日)
ネット局
- 同時ネット:名古屋テレビ(キー局)、テレビ朝日、北海道テレビ放送、東日本放送、静岡けんみんテレビ(現・静岡朝日テレビ)、広島ホームテレビ
- 時差ネット:青森放送(26話で打ち切り。再放送は青森テレビで放映)、テレビ岩手、秋田放送、山形テレビ、福島テレビ(後にテレビ朝日系専門の福島放送が開局、以後の再放送はこちらで放送)、新潟総合テレビ、長野放送、富山テレビ放送、石川テレビ放送、福井テレビ、朝日放送、山陰放送、瀬戸内海放送、テレビ山口、南海放送、テレビ高知、九州朝日放送、長崎放送、熊本放送、宮崎放送、沖縄テレビ放送
関連作品
『機動戦士Ζガンダム』以降の新たなアニメ作品等に関してはガンダムシリーズ一覧を参照。
映画
先述した劇場版三部作は、2000年にDVD化された際、5.1チャンネル用にオリジナルキャスト(一部を除く)によるアフレコのやり直しや効果音、BGMの細かい変更が行われている。そういった事情の元に製作された事もあり、DVD版は内容こそ公開当時と全く同じであったものの、オリジナル当時に映画を見た世代や、後にビデオで映画版を見た人達には違和感を覚えた人が多く、ファンからはオリジナル音声版の発売が望まれている。
レコードドラマ(CDドラマ)
テレビ版放送終了後の1980年に中島紳介と氷川竜介によってキングレコードからサントラ盤『機動戦士ガンダム III アムロよ…』が発売されており、レコード2枚にドラマ部分(とそれまでのサントラに収録されなかったBGM)が収録されている。これは単にテレビ版のうち何話かを抜粋して、その音声のみ収録したに過ぎない作品であるが、当時はビデオなどの映像媒体がほとんど普及していなかったため、このような手法がよくとられた。1991年にCDとして再販されたが、現在は入手困難となっている。1、2、9、10、19、21、24、34、36、38、41、42、43話から抜粋して収録されている。
小説
アニメ作品の総監督・富野喜幸(現・富野由悠季)によって、アニメ作品の物語を元により高年齢層向けの物語として小説版が執筆され、朝日ソノラマから出版された。話が進むに従い、アニメ作品とは全く異なる展開をするため、『機動戦士Ζガンダム』など後発の作品とは相容れない内容となっている。後に角川書店の角川文庫に版元が変更され、角川スニーカー文庫の独立後は同文庫より発売されている。通常、単に小説版といえばこの作品を指す。全3巻。
アニメ版との最大の違いは、物語の途中で主人公のアムロが戦死する事であり、この事は当時ファンに大きな衝撃を与えた(後年、富野はスニーカー文庫からの再版時に、アムロとハヤトの死を削るなど『Ζガンダム』との整合化を試みようとしたが、過去の自分を否定する事になるとして断念したと語っている)。また連邦とジオンの描写についても、連邦は官僚の腐敗が進んでいるとしてむしろ悪者的描写がなされており、これが後の『Ζガンダム』におけるエゥーゴ対ティターンズの内紛に繋がっているとも取れる。小説版オリジナル設定の一部は、後のアニメ劇場版に取り入れられている(アムロの母の名前、ギレンの秘書アイリーン、ハヤトのガンキャノン搭乗等)。
また、外伝として富野により『密会 アムロとララァ』も執筆されたが、こちらはアニメ作品の内容に沿った形で製作されている。当初は角川mini文庫で全2巻として発売されていたが、後に角川スニーカー文庫から全1巻で発売されるようになった。
なお、中根真明によって執筆された小説版も朝日ソノラマから発売されていたが、こちらはアニメ作品とほぼ同じ内容となっている。2005年現在は絶版である。
漫画
本作が放映された1979年当時、秋田書店発行の少年向け漫画雑誌「冒険王」にて本作の漫画が岡崎優により連載された。アニメが月に約4回、30分ずつ進行する事にあわせて、ページ数が限られている中で漫画を月1回連載、かつ、同時進行し続けなければならず、また、原作がある程度青年層向けを意図して制作されているのに対して、「冒険王」は少年漫画雑誌であったため、原作とはかなりの部分で改変が行われていた。(本作は連載半ばで打ち切りとなっている)詳しくは『機動戦士ガンダム (冒険王版)』を参照。
1992年には、原作をリメイクした近藤和久による漫画がバンダイ出版発行の漫画雑誌「サイバーコミックス」にて『機動戦士ガンダム0079』という題にて連載された。その後、メディアワークス発行の漫画雑誌「MS・SAGA」、「電撃大王」と連載誌を変えながら、足掛け10年以上の長期連載が行われていたが、2005年に完結した。後述の安彦版がアニメと比べて大胆な変更が加えられているのに対し、この近藤版は設定やストーリーの変更を極力抑え、自身のデビュー作である『MS戦記』のエピソードを絡めるようになってる。
2002年からは、アニメ作品の主要スタッフでキャラクターデザインなどを手がけた安彦良和が『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』を、この作品のために創刊された角川書店発行の漫画雑誌「月刊ガンダムエース」にて連載している。ストーリーの一部や細かな設定が見直され、アニメ作品から大きく変更された部分も多い。またアニメで描かれた期間以前の物語(ジオン・ダイクンの死から戦争前期まで)も詳細に描かれている。
ビデオソフト・DVD
当作品のパッケージ版は長らく劇場版のみで、TV版の方は本放送から長い間発売されていなかったが[10]、2006年に待望のDVD-BOXが2セットに分けて初回限定生産で発売される事が決定し、同年12月にBOX1(1~24話)が発売され、翌2007年1月にBOX-2が発売された。単品版の発売も今後予定されている。
今回のDVD化に当たっては富野監督自ら、本放送から約27年近く経過した原版フィルムの劣化部分のデジタル補正作業や、ハイビジョン仕様のリマスター制作に関るほど、大規模なリファイン作業が行われた。この為、旧作作品のDVDとしては1話当たりの単価がやや高めになっている。
脚注
- ^ 後に『GUNDAM CENTURY』や『モビルスーツバリエーション』などにおいて、いわゆるザクは『ザクII』、シャア専用ザクは『指揮官用ザクII』と設定された。
- ^ 『十五少年漂流記』をモチーフとしたこの構想は、後に神田武幸監督の手でロボットアニメ『銀河漂流バイファム』として制作された。『バイファム』の原案に富野由悠季の名前があるのはこのためである。
- ^ 後に追加された設定として、プロトタイプガンダムなどが存在している。
- ^ ただし、ガンダムそのものにはこれまでのスーパーロボットの要素も色濃く残されており、リアルロボットとスーパーロボットとの中間的存在、間の子であるという表現もなされる。
- ^ 視聴率の数値は名古屋テレビ「GUNDAM HOMEPAGE PROJECT」より。外部リンク参照。
- ^ 『富野由悠季全仕事』によれば、視聴率低迷以上にメインスポンサーであったクローバーの経営不振が主要因のようである。当時の名古屋テレビの関岡プロデューサーの証言では、局の立場的には打ち切り対象にする程ではなかったという。玩具業界のサイクルでは年末、正月の次は三月の春休みに需要が見込めるため、二月に新番組を投入すれば『丁度その時期に玩具が売れて、経営危機を乗り切れるのではないか?』との判断で乗り換え需要を喚起するため一月一杯で打ち切りとなったようである。しかしそれも空しく、1983年に同社は倒産へと追い込まれた。
- ^ 当初の52話分の構想について、富野がそれを記した「トミノメモ」と呼ばれるものが存在している。『機動戦士ガンダム 記録全集5』などで、打ち切りによって変更された部分を読むことが出来る。またこれに書かれたモビルスーツの名前などの中には、後に続編やモビルスーツバリエーションの中で用いられたものもある。
- ^ 彼らはラポート発行の「ファンロード」1980年8月号(創刊号)の記事より、当時流行した竹の子族と富野とをもじって「トミノコ族」と呼ばれていた。
- ^ 1977年に首位を記録した『宇宙戦艦ヤマト』のアルバムなど、それ以前にもオリコンチャート上位にランク入りしたアニメ関連楽曲は存在している。
- ^ バンダイの『切り札』的商品として温存していたとの説も根強いが、正確な理由は未だ定かではない。
参考文献
- 日本サンライズ「機動戦士ガンダム 記録全集」(全5巻、1980~1981年)
- みのり書房「月刊OUT」別冊『宇宙翔ける戦士達 GUNDAM CENTURY』(1981年発行。2000年、樹想社より再販)ISBN 4-87777-028-3
- ガンダム者 ガンダムを創った男たち (Web現代「ガンダム者」取材班、講談社、2002年)ISBN 4-06-330181-8
他に参考となる文献や関連する書籍をお持ちの方は、是非その情報を加筆お願いします。
関連項目
模倣作品
韓国アニメの宇宙黒騎士は、この作品からの無断剽窃が多数見受けられる。
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