事実婚
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事実婚(じじつこん)とは、婚姻届を出してはいないが、事実上婚姻状態にある関係。内縁と同義。特に法律上は内縁とされることが多く、実際に法的意義は内縁と同一である。なお、事実婚配偶者の一方もしくは両方に別の婚姻関係がある場合は、「重婚的内縁」と言われる。
目次 |
[編集] 概説
[編集] 事実婚で認められる権利
内縁法理として蓄積されてきた例には、次のようなものがある。もっとも、内縁法理の中には、第二次世界大戦前の民法が採用していた家制度に起因する事実上の婚姻障害から救う目的で生まれたものもあり、家制度を廃止した現行民法下でどこまで妥当するのかについては、再検討が必要であるとの指摘もされている。
- 夫婦の同居・協力扶助義務(民法第752条)
- 貞操義務、婚姻費用の分担義務(民法第760条)
- 日常家事債務の連帯責任(民法第761条)
- 夫婦財産制に関する規定(民法第762条)
- 内縁不当破棄による損害賠償、内縁解消による財産分与(民法第768条)
- 遺族補償および遺族補償年金の受給権(労基法第79条・労基則第42条)
- 避妊手術の同意(母体保護法第3条)
- 各種受給権(厚生年金保険法第3条の2、健康保険法第1条の2、労働者災害補償保険法第16条の2)
- 賃貸借の継承(借地借家法第36条)
- 公営住宅の入居(公営住宅法第23条の1)
なお、双方が独身であることが確認されれば、住民票の続柄で「夫(未届)」「妻(未届)」と表記することが可能である。
[編集] 刑法上の事実婚の扱い
事実婚の配偶者が、刑法244条にある親族相盗例における配偶者にあたるかという問題につき、2006年に最高裁は「配偶者」の意義を厳密に解釈し、事実婚の配偶者による窃盗には、親族相盗例を適用しない旨を決定した。
刑法第184条にある重婚罪の構成要件は、法律婚の重複に限られるので、重複する婚姻の一方または両方が事実婚(重婚的内縁)の場合、重婚罪は成立しない。
[編集] 事実婚で認められない権利
事実婚の場合、相続に関しては特別の扱いが無いので、事実婚のパートナーに相続させたい場合は遺言をする必要がある[要出典]。
[編集] 事実婚vs法律婚
2005年4月21日の最高裁判所第一小法廷判決では、私立学校教職員共済法に基づく私立学校教職員共済制度の加入者で同法に基づく退職共済年金の受給権者の男が重婚的内縁関係にあった場合に,遺族共済年金の支給を受けるべき配偶者に当たるのは戸籍上の妻ではなく、内縁の妻であるとした事例があり、近年の判例では事実婚にも法律的な保護を行う傾向がみられる[1]。
[編集] 関連文献
- 上野千鶴子著『近代家族の成立と終焉』岩波書店、1994年3月、ISBN 4000027425
- 太田武男、溜池良夫編『事実婚の比較法的研究』有斐閣、1986年5月、ISBN 464103625X
- 大橋照枝著『未婚化の社会学』日本放送協会、1993年6月、ISBN 4140016663
- 婚差会編『非婚の親と婚外子 差別なき明日に向かって』青木書店、2004年5月、ISBN 4250204111
- 西川栄明、西川晴子著『結婚の新しいかたち フレキシブル結婚の時代』(『宝島社新書』)、宝島社、2001年2月、ISBN 4796621008
- 二宮周平著『事実婚の現代的課題』日本評論社、1990年3月、ISBN 4535578575
- 二宮周平著『事実婚を考える もう一つの選択』日本評論社、1991年5月、ISBN 4535579423
- 二宮周平著『事実婚』(『叢書民法総合判例研究』)、一粒社、2002年2月、ISBN 4752702991
- 善積京子著『非婚を生きたい 婚外子の差別を問う』青木書店、1992年2月、ISBN 4250920062
- 善積京子著『〈近代家族〉を超える 非法律婚カップルの声』青木書店、1997年6月、ISBN 4250970248
- 榊原富士子『女性と戸籍:夫婦別姓時代に向けて』明石書店、1992年
[編集] 参照
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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