俺の屍を越えてゆけ
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『俺の屍を越えてゆけ』(おれのしかばねをこえてゆけ)は、1999年に株式会社アルファ・システム開発・株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント発売のプレイステーション用ロールプレイングゲームである。
ゲームデザイナーは桝田省治。
平安時代の日本をベースとした独特の世界観やキャラクター、健康度に代表される独特のゲームシステムで知られる。
2007年2月22日からはゲームアーカイブス対応ソフトとしてもPSP用にダウンロード販売が開始された。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
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[編集] ストーリー
平安時代、京の都は朱点童子を頭目とする鬼たちの襲撃によって壊滅寸前に追い込まれた。事態を重く見た帝は勇士達を集め、朱点童子の住む大江山へと討伐に向かわせるが、朱点童子に指一本触れることなく、ことごとく戦死した。
そうした中、お輪と源太という一組の夫婦が朱点童子の居城・朱点閣へと迫っていった。二人は奮闘するも、源太は朱点の罠にかかって討ち死にし、お輪も幼子をタテに捕らわれてしまう。
さらに朱点童子は一人残された幼子に二つの呪いをかける。 一つは生後わずか一年半から二年以内に死亡する短命の呪いであり、もう一つは人と交わり、子を生すことができない種絶の呪いである。
一方で、地上の様子を憂いていた神々がこの一部始終を見て、呪いをかけられた源太とお輪の子どもに力を貸すことを決めていた。
神々によって助けられた源太とお輪の子は天界から派遣された、イツ花のサポートを受けつつ、神との間に子を生すことになる。そして、その一族は朱点童子打倒の悲願を達成するまで戦い続ける。
[編集] 概要
このゲームはまず前述の源太とお輪の子(初代当主)に名前を付け、天の声の言うままに最下層の神様と子供を作ることから始まる。総監督の桝田省治は初代当主には自分の本名を付け、生年月日も正確に入力することを推奨しているが、それにはちゃんと理由がある(エンディングでその理由は明らかになる)。 その後は好きな迷宮に行き、雑魚敵を倒すことで奉納点を手に入れ、より強い(それだけ奉納点を必要とする)神様と契ることで、いつかは父の敵朱点童子を倒し、一族にかけられた呪いを解こうというもの。1代や2代で目に見えて強くはならないが、徐々に、しかし確実に強くなっていくそのシステムから、ゲームアナリストの平林久和などはダービースタリオンとの類似性を指摘している。 一見して非常に自由に見えるが、主人公一族は短命の呪いの為長くて2年しか生きられないという絶対的な縛りがある。この時間の縛りは同じく桝田省治の「リンダキューブ」や「我が竜を見よ」に通じるところがある。「あなたの名前を付けたキャラクターがプレイ開始3時間後に確実に死にます!」と謳っていることから間違いないものだと思われる。
[編集] メインキャラクター
- 主人公一族
- 朱点童子と戦い敗れた、源太とお輪の血を引く一族。名前などは自由に設定できる。
- イツ花(いつか)(声:吉田古奈美)
- 天界から主人公一族をサポートするために遣わされた少女。性格は大雑把で、本人曰く「風邪を引かないだけが唯一のとりえ」。お使いから町内会・近所づきあい、さらには一族の子供が初めて身に着ける武器防具の製作まで行うスーパーメイドでもある。
- 黄川人(きつと)(声:高山みなみ)
- 自称、天界からの使いっ走り。赤毛の美しい容姿をした少年。天性陽気な性格をしているが、皮肉屋。基本的に主人公一族の討伐を案内してくれる。ゲーム序盤は戦闘上の心得やダンジョンの背景を教えてくれるが、その性格故か前半・後半共に皮肉を交えて解説する事が多い。後半以降は物語の重要なエピソードを話してくれる。また、過去に姉がいたと、本人は語る。
- お輪(おりん)(声:小山茉美)
- 主人公一族の初代当主の母親。
- 源太(げんた)(声:屋良有作)
- 主人公一族初代当主の父親。朱点童子に殺害された後も当主ノ指輪に宿り、一族を見守る。
- 朱点童子(しゅてんどうじ)(声:堀内賢雄)
- 大江山に本拠地を持つ、鬼の総首領。怒りや恨みを持って死んだ動物や人あるいは物を鬼へと変え、世界に災いをもたらすようになる。
- 太照天昼子(たいしょうてんひるこ)(声:吉田古奈美)
- 天界の最高位に位置する神。
[編集] 職業
新たな子どもが誕生したとき、名前と共に職業も決定しなければならない。一度決められた職業は変更できない。なお、初代当主とその第一子の職業は固定されている。
最初から選択できる職業は3種類しかないが、指南書と呼ばれるアイテムを入手することで、最大8種まで種類を増やすことができる。以下、職業の種類と特徴について解説する。
- 剣士
- 最初から選択できる。武器は刀。攻撃力・防御力共に高く、安定した力を見せる。ただし、攻撃できるのは奥義や術を使わない限り、前列の一体だけで、また攻撃するためには自らも前列に立たなければならない。
- 薙刀士
- 最初から選択できる。武器は薙刀。攻撃力は中の上程度だが、攻撃範囲が広いため使いやすい(防御力は高め)。薙刀という武器の特質上、女性専用の武器が多い。
- 弓使い
- 最初から選択できる。武器は弓。攻撃力は高いが、防御力がやや低い。敵単体しか攻撃できないものの、どの敵も攻撃できるため、最初から敵の大将を狙い撃ちするような戦い方もできる。飛び道具を使うため、前列でも後列でも戦えるが、防御力の関係から後列に配置するのが基本である。
- 槍使い
- アイテム槍の指南を入手することで選択できる。武器は槍。攻撃力・防御力共に高い上に、前列から攻撃すれば、敵を貫通して、後列の敵にもダメージを与えられる。奥義が使い難い。
- 拳法家
- アイテム拳の指南を入手することで選択できるようになる。武器は拳爪。攻撃力・守備力共に平凡。ただし、回避率が高く、攻撃面でも連続攻撃を繰り出すことがある。また、全職業の中で最も素早く、高い確率で先手を取ることができる。
- 壊し屋
- アイテム槌の指南を入手すると選択できる。武器は鎚。攻撃力・守備力共に最高であるが、素早さや術の力は最低という極端なステータスを持つ。迷宮のボスクラス以外の敵ならばほぼ一撃で倒せるが、命中率に難があるため、肝心なところで攻撃が当たらないことも珍しくない。
- 大筒士
- アイテム筒の指南を手に入れると選択できる。武器は単発銃と散弾銃。単発銃は敵単体に弓と同等の攻撃力を発揮する。一方、散弾銃は攻撃力こそ低いものの、前列ならばすべての敵に、後列ならば敵前列にダメージが与えられる。欠点は防御力が最低クラスであることと予備の大筒を盗まれるリスクがあることである。
- 踊り屋
- アイテム扇の指南を入手すると選択できる(指南書の中で最も入手難)。武器は扇。攻撃力は最低だが、敵の前列もしくは後列全員を攻撃できる。守備力も低いが、専用防具が多いため、大筒士よりは高い。特徴としては術の威力が高く、術の習得スピードも抜きん出ている。また、拳法家に次ぐ素早さも持つ。
[編集] 迷宮
ここでは、討伐に行くことができる迷宮を紹介する。なお、大江山の朱点童子(鬼)を倒すまでを前半、倒した後のことを後半と呼ぶ。
- 鳥居千万宮
- 元々は多くの人々の信仰を集めた霊験あらたかな神社だったが、ある事件を契機に寂れ、鬼の住処となる。中ボスは稲荷ノ狐次郎。ボスは九尾吊りお紺。
- 相翼院
- 子どもの身代わりに殺された天女を祀る寺院。中ボスは歓喜の舞(後半のみ登場)。ボスは片羽ノお業。
- 九重楼
- 人間に火と風の御し方を伝えた罰として二柱の神が幽閉されている場所。中ボスは七転斎八起。ボスは太刀風五郎・雷電五郎のコンビ。
- 白骨城
- 朱点童子が、大江山で斃れたものたちの骨で作った城。夏の間だけ姿を見せる。中ボスは恨み足(アシゲの祭壇)と右カイナ・左カイナのコンビ(テウチの祭壇)。ボスは大江ノ捨丸。
- 大江山(前半のみ)
- 鬼たちの最大拠点。11月と12月のみ入ることができる。また、朱点童子(鬼)を倒してしまうと二度と入れなくなる。中ボスは太り仁王・痩せ仁王のコンビ(仁王門)と石猿田衛門(朱点閣去る橋)。ボスは朱点童子(鬼バージョン)。
- 親王鎮魂墓(後半のみ)
- 100年前の帝が自分の弟を無実の罪で生き埋めの刑に処した後、弟の祟りを鎮めるために造られた巨大な墓。中ボスは土偶器四体(四面の階段)とアガラ封印像(封の間)。ボスは崇良親王。
- 紅蓮の祠(後半のみ)
- 天界から追放された、火遊び好きの化け猫の棲家。中ボスは鳴神小太郎。ボスは赤猫お夏。
- 忘我流水道(後半のみ)
- ある高位の神によって造られた都の上水道。中ボスは敦賀ノ真名姫。ボスは氷ノ皇子。
- 地獄巡り(後半のみ)
- 朱点童子の七本の「髪」を集めることで入ることができる最終ダンジョン。地獄の定番・三途の川に血の池、針の山などがある。中ボスは脱衣婆・三途の渡しコンビ(賽の河原)、大八手(血の池地獄)、大百足(氷雪針地獄)。ボスは朱点童子と八つ髪のコンビ。
[編集] 用語説明
- 短命の呪い
- 朱点童子が主人公一族にかけた二つの呪いの一つ。急速に成長する反面、生後一年半から二年程度で老衰死(?)する。
- 種絶の呪い
- 二つの呪いの一つ。人と交わり、子どもをつくることができなくなる。ただし、神と交わるならば子どもをつくることが可能であるため、主人公一族は青年期(生後八ヶ月)以降、神と交わる交神の儀を執り行い、一族の血を残すことになる。
- 交神の儀
- 主人公一族の者と神とが交わり、子を生す儀式。交神の儀から二月以上後に新しい子が登場する。交神の儀に際しては神々の力に比例した奉納点を奉げなくてはならない。また、交神の儀を執り行うと強制的に一月が経過する。
- 戦勝点と奉納点
- 戦勝点は通常のロールプレイングゲームにおける経験値と同じ。また、戦闘に勝利すると戦勝点と同等の奉納点とよばれるポイントが加算される。これは交神の儀に際して必要なポイントであり、一度神と交わるごとに奉納点を消費していく。
- 健康度
- 主人公たちの健康を表す数値。通常100であるが、奥義を用いたり、体力を消耗しているとき(目安は最大体力の7割以下)に高速移動したり、戦闘ターンが回ってきたりすると減少する。また、寿命が近いと何もしなくても自然に減少するようにもなる。月が替わるときに自宅にいれば自動的に回復するが、自宅コマンド「休養」を選んだり、漢方薬の服用やアイテムの使用によってさらに回復できる。なお、この数値が極端に低下すると寿命が縮んだり、天寿を全うすることなく死亡することもあるので、十分な管理が必要である。
- 神
- このゲームにおける神とは、不老不死の方法を見つけたことにより、地上を去っていった者たちのことである。また、朱点童子の呪いから解放された鬼が天界へ上ることで神となったり、主人公一族の中ですぐれた人物が氏神として登録されることもある。
なお、神々の名前は現実世界の神仏や歴史上の人物・地名に由来するものが多い。 - 髪
- 朱点童子のいる地獄巡りへの鍵。「髪」という名前こそついているが、龍の姿で登場し、主人公一族に襲い掛かる。後半以降、迷宮の奥深くに潜む。他のボスたちと違い、一度倒すと二度と復活しない。
[編集] 補足
攻略本『「俺の屍を越えてゆけ」公式指南書~ソノ血、絶ヤサヌ為ニ~』は神の解放条件の伏字が多く、攻略本としては不十分な出来である。 しかし本編だけでは知りえることができない、緻密な世界設定とストーリーの詳細を読み解くことができる。