化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律
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通称・略称 | 化審法、化学物質審査規制法 |
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法令番号 | 昭和48年法律第117号 |
効力 | 現行法 |
種類 | 環境法 |
主な内容 | 化学物質による環境汚染防止のため、化学物質の製造・輸入に際して性状を審査し、製造・輸入・使用の規制を行う。 |
関連法令 | 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律、ダイオキシン類対策特別措置法、毒物及び劇物取締法 |
条文リンク | 総務省・法令データ提供システム |
化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(かがくぶっしつのしんさおよびせいぞうとうのきせいにかんするほうりつ、昭和48年法律第117号)は、日本の法律。略称は化審法(かしんほう)または化学物質審査規制法。
目次 |
[編集] 目的
難分解性の性状を有し、かつ、人の健康を損なうおそれ又は動植物の生息若しくは生育に支障を及ぼすおそれがある化学物質による環境の汚染を防止するため、新規の化学物質の製造又は輸入に際し事前にその化学物質が難分解性等の性状を有するかどうかを審査する制度を設けるとともに、その有する性状等に応じ、化学物質の製造、輸入、使用等について必要な規制を行うことを目的とする。(法第1条)
[編集] 法制定の背景
昭和43年(1968年)に起こったカネミ油症事件のポリ塩化ビフェニル(PCB)による健康被害を契機に、昭和48年(1973年)に制定された。カネミ油症事件が起こるまで、人への健康被害の防止は、直接、化学物質と接触して被害を及ぼすような毒劇物の製造・使用等の規制や排出ガス・排出水等の規制によっておこなわれてきた。 ところが、この事件は、従来規制対象になっていなかった安定で分解しにくい物質が、長期間にわたって人体に残留して健康に被害を及ぼしたことで、これまでの化学物質の安全性に関する考え方を根本的に覆すものだった。
このため、化学工業の発展に伴って新しい化学物質が次々に製造されるにあたり、PCBのような難分解性・蓄積性の化学物質に対して、その安全性を確認し、人の健康を損なうおそれのある化学物質の製造・輸入の規制が求められるようになった。そこで、厚生省(現:厚生労働省)・通商産業省(現:経済産業省)によって、昭和48年に化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律が策定された。ここで、難分解性、高蓄積性、長期毒性のある化学物質を特定化学物質(現:第一種特定化学物質)に指定し、製造・輸入の規制を行った。
その後、昭和61年(1986年)にトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンによる地下水汚染問題を契機に、高蓄積性ではないが難分解性、長期毒性のある化学物質を第二種特定化学物質及び指定化学物質(現:第二種監視化学物質)に指定し、規制をおこなうことになった。
平成11年(1999年)には、中央省庁再編がおこなわれ、厚生省が厚生労働省へ、通産省が経済産業省へ再編されるとともに、業務の見直しがおこなわれ、環境省も共同で業務をおこなうこととなった。
しかし、ここまでの化審法は、人の健康被害の防止のみを目的としており、一般環境中の動植物への影響を考えていなかった。また、OECDからも、日本の化学物質管理政策に対して「生態系保全」の考え方を導入するように勧告がなされた。そこで、平成15年(2003年)に法律を改正し、動植物への影響に着目した制度の導入や環境中の放出可能性に着目した制度の見直しなどが行われ、現在に至っている。
[編集] 規制対象物質
化審法で対象となる化学物質は、放射性物質、毒物及び劇物取締法、覚せい剤取締法、麻薬及び向精神薬取締法に規定の物質を除くもので、元素又は化合物に化学反応を起こさせることにより得られる化合物であり、以下のように分類され、厚生労働大臣・経済産業大臣・環境大臣により指定される。(2006年7月18日現在)
- 第一種監視化学物質:難分解性・高蓄積性のあるもの。25種。
- 第二種監視化学物質:難分解性あり、高蓄積性なし、人への長期毒性の疑いのあるもの。クロロホルム、二硫化炭素など882種。
- 第三種監視化学物質:難分解性あり、高蓄積性なし、動植物への毒性のあるもの。2006年7月14日以降指定の公示が始まり、計51種が指定されている。
以上につき必要に応じて有害性調査を行い、有害性が明らかな場合には以下に指定する。
- 第一種特定化学物質:難分解性・高蓄積性・人への長期毒性または高次捕食動物への毒性のあるもの。PCB、DDTなど15種。製造、輸入および一部用途以外の使用が禁止される。
- 第二種特定化学物質:難分解性あり、高蓄積性なし、人への長期毒性または動植物への毒性があり、被害の恐れが認められる環境残留があるもの。トリクロロエチレン、四塩化炭素など23種。製造・輸入の予定・実績数量等の届出が義務付けられ、その数量が規制される。