医療法人
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医療法人(いりょうほうじん)とは、病院、医師や歯科医師が常勤する診療所、または介護老人保健施設の開設・所有を目的とする法人である。根拠規定は医療法第4章であり、その冒頭の39条において社団と財団の2種類が認められている。設立には都道府県知事の認可を必要とする(医療法44条)。なお、2つ以上の都道府県において病院等を開設する医療法人については、認可権限が厚生労働大臣となる。
1950年(昭和25年)8月に前年に行なわれた医療法改正に伴い、医療法人制度が施行。50年以上の制度である。日本全国では41,720の医療法人があり(2006年3月末)、持分の定めのある社団がそのうち約98%を占め、持分の定めのない社団と財団は約1%ずつ存在している。また、常勤医師を一人しか持たない「一人医師医療法人」は34,602件で、医療法人全体の約82%に達している。 なお、全国の病院の 約60%(病院分類中1位)、全国の診療所の 約30%(診療所分類中2位。最多は「個人」の約50%)、全国の歯科診療所の 約13%(歯科診療所分類中2位。最多は「個人」の約85%)が医療法人であり、数的には医療の根幹を支えている。
医療法人は剰余金の配当ができない点(医療法54条)で通常の営利法人とは区分されているが、原則非課税となる公益法人等とはされていない。そのため、医療法人は非営利法人であるのにもかかわらず、法人税等の税制面では原則的に営利法人と同じ扱いを受け、更におこなえる事業の種類が非常に限定されていることから、比較的近い目的を持つ社会福祉法人に比べ著しく不利であるとの意見が多い。 この点については、医療法人は出資持分を定めることが可能で、その場合解散時には残余財産が全て出資者に払い戻されることとなり、残余財産を原則国庫に帰属させる公益法人等とは同一視できないと考えられるためである。 なお、改正医療法が施行される2007年4月以降に医療法人を設立する際、解散時の残余財産の帰属先は「国、地方公共団体、公的医療機関の開設者、財団または持ち分の定めのない社団の医療法人」の中から選ぶことになる。また、出資持ち分はなしとなる。
そのため、財団・持分の定めのない社団については一定の要件を満たすことで医療法上の特別医療法人(42条2項)あるいは租税特別措置法に規定される特定医療法人となることができる。特別医療法人になった場合には、医療法人の目的は医療に専念することが基本ではあるが、付帯事業について制限を大幅に緩和した制度である。但し、通常の医療法人についても最近では老人ホームの運営など緩和される傾向にある。特定医療法人となった場合には、相続税や法人税の減免を受けることもできる。但しどちらの場合にも収入要件や役員の給与要件、残余財産の原則国庫への帰属など公益法人等と同一視することとなっている。
医療法人社団においては、社員と呼ばれる株主に似た構成員からなる社員総会が、形式上、最高意思決定機関となり、理事の選任等を行う。実際に法人経営の最終的な意思決定を行うのは理事会であり、理事会で選任された理事長が法人代表者となり、経営を行う。
財団の場合、社員総会はなく、理事会が最高意思決定機関となる。評議員会なる監督機関が置かれることもある。
医療法人の理事長は原則として医師又は歯科医師でなければならない。また、開設する病院の管理者(いわゆる院長)を原則として理事に加えなければならず、この院長たる理事が理事長を務めることが多い。
私法上の建前からいうと、法人格を有するのはあくまで医療法人であり、病院はその所有の客体となる資産にすぎないが、行政法規等ではあたかも病院そのものが法人格を有するかのように扱われることが多い点、注意を要する。
個人経営の病院や診療所に比べて、医療法人の資産が個人の資産と分離ができて効率よく経営ができるメリットがある。また税制にも有利になる。
[編集] 医療法人の種類
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 社団法人 日本医療法人協会
- 医療法人のホームページ - 厚生労働省