声東撃西
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声東撃西(せいとうげきせい、東に声して西を撃つ)は兵法三十六計の第六計にあたる戦術。
東で声を発してそちらにいると見せかけ、実際は西を撃つ戦術。陽動作戦の一種。敵に対しては弱小のように見せかけて誘い出し、堅強な兵で迎え撃つ。西に領土を広げようとするなら、まず東に進むのが良い。
『三国志』では、官渡の戦いで曹操が袁紹と戦ったとき、十万の袁紹軍に対してわずか一万の兵力しか持たなかった曹操は荀攸の献策に従って軍勢を二つに分け、片方に袁紹本陣を突かせる振りをさせた。慌てた袁紹も軍勢を分裂させて本陣を守らせたが、曹操軍はその隙に合流して前線で孤立した袁紹軍を叩き、猛将として知られた顔良を討ち取った。曹操・荀攸による、声東撃西の計の勝利であった。
このように、こちらの動きによって敵を翻弄し、相手の防備を崩したところを攻めるのを声東撃西の計と呼ぶ。
ただし、この戦術は統率の取れた相手には通用しない。呉楚七国の乱のとき、漢の周亜夫は城に篭って決して打って出ようとはしなかった。呉兵が東南を攻める動きを見せたときも、周亜夫は西北を守らせた。果たして呉兵は西北より攻めかかってきたが、待ち構えていた漢兵によって撃退された。官渡の戦いの曹操も、軍を分けたときに袁紹軍に攻めかかられたら一溜まりもなく壊滅しただろう。これは必勝の戦術ではない。
出典は『淮南子』。
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