欲擒姑縦
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欲擒姑縦(よくきんこしょう、擒(とら)える事を欲するならまず逃がせ)は兵法三十六計の第十六計にあたる戦術。
敵を捕まえようと思うならわざと逃がして気が弛んだところを捕えるのが良い。追いすぎれば敵は踏みとどまって必死に反撃するが、逃げ道を与えてやればそちらに向かって逃げようとする。敵を追い詰めてはならない。敵の闘志を殺ぎ、力を失わせてからであれば容易くこれを捕えることができる。孫子ではこれを「窮寇は追うなかれ」と表現しているのがこの事に当たる。
『三国志演義』において蜀の軍師である諸葛亮孔明は雲南征伐の際に南蛮王孟獲を捕えては逃がすことを繰り返しながら進軍し、七度目に逃がされたときについには孟獲も諸葛亮に心服した(七縦七擒の故事)。これは孟獲を容易く破ってみせることで武威を現し、解放してみせることで寛容性を示して南蛮一帯の諸族を一気に心服させる諸葛亮の巧みな欲擒姑縦の計であった。
このように、敵にある程度余裕を持たせながら逃がし、闘志を殺ぎつつ最後に一網打尽にする戦術を欲擒姑縦という。
ただし、純軍事的な観点から言えば敵将を何の見返りもなく解放するのは愚策である。春秋時代に晋の襄公が義母の願いを容れて秦の三将軍を解放したとき、名将として知られた宰相の先軫は非常に怒って襄公をなじっている。
出典は『漢晋春秋』、『華陽国志』。
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