大地讃頌
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大地讃頌(だいちさんしょう)は、大木惇夫が作詞、佐藤眞が作曲した合唱曲。混声合唱とオーケストラのためのカンタータ『土の歌』の第7楽章(終曲)として、1962年に作曲された。日本ビクターの委嘱による。「土の歌」全体の初演は、岩城宏之指揮、東京混声合唱団、NHK交響楽団によって行われた。大地“賛頌”と書かれることもあるが、この表記は誤り。
この曲のみ独立して演奏される機会が多い。1980年代はじめに出版された『新しい私たちの合唱曲集』(教育芸術社)にてすでに単独収録が行われており、その後もさまざまな出版社の楽譜に収められている。なお初演当時、この曲の調性は変ニ長調(調号=♭5つ)であったが、後にピアノ伴奏版として出版された際に、アマチュア合唱団の声域に配慮するかたちで減3度下げられ、ロ長調(調号=♯5つ)になった(その結果、テノールが低い嬰ヘ音をバスとともに歌う箇所が出てくる)。現在では中学校の合唱コンクールや卒業式などでも歌われている。
作曲者自らの手による吹奏楽伴奏版、女声合唱とピアノ版、男声合唱とピアノ版があり、ほかに平野淳一による男声合唱とピアノ版(カンタータ「土の歌」全曲のトランスクリプション。作曲者による男声合唱版より先に作られた)、後述のPE'Zによるバージョンもある。なお、作曲者本人は「自分が承認していない編曲版は使わないでほしい」と明言している。
カンタータ「土の歌」の概要は以下の通り。
- 第一楽章「農夫と土」 - 自然の恵みの神秘、土への感謝が描かれている。
- 第二楽章「祖国の土」 - 人は皆土に生まれ、土に還っていくという意味の詩で行進曲風。
- 第三楽章「死の灰」 - 原爆の事が取り上げられ、人間の汚さが描かれている。
- 第四楽章「もぐらもち」 - 第三楽章と同じく原爆の事が書かれている。
- 第五楽章「天地の怒り」 - 天災と人間悪について描かれている。
- 第六楽章「地上の祈り」 - 大地への想いと反戦の祈りが書かれている。
- 第七楽章「大地讃頌」 - そして最後で大地に限りない祈りをささげ、締めくくられている。
[編集] 楽曲をめぐるエピソード
- 1970年当時ピアノ伴奏版混声四部は合唱曲集として発売されておらず、「合唱界」という音楽雑誌の巻末付録に2、3曲づつの綴じ込みで付録とされていた。出版社がその付録を合本し、ねずみ色の模造紙の表紙をつけて発売した楽譜が現在歌われている「土の歌」の原版である。
- 1971年東京杉並の某合唱団の第一回定期演奏会で全曲演奏され、その後杉並区内や近隣の中学高校で終曲のみ、校内行事等で盛んに歌われるようになり、その後教育芸術社より単独収録され出版されるに至る。
- 2003年、PE'Zが日本音楽著作権協会の許可を得てジャズアレンジでカバーし、シングル「大地讃頌」、およびアルバム「極月-KIWAMARIZUKI」に収録した。しかし作曲者は、同曲の編曲権、同一性保持権を侵害しているとして、翌年、東京地方裁判所に販売停止の仮処分を申請した。これに対し、PE'ZおよびCDの発売元である東芝EMIは、当該CDを出荷停止して和解した。
アルバム「極月-KIWAMARIZUKI」については、後に「A Night In Tunisia ~チュニジアの夜~」に差し替えられて再発売されている。