卒業式
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卒業式（そつぎょうしき）は、学ぶべき課程を全て修了した事を認定し、そのお祝いをする式典の事である。多くの場合は、卒業証書（修了を認定する証書）の授与も合わせて行う。その為「卒業証書授与式」という名称で実施する学校も多い。大学・大学院においては「卒業証書」ではなく「学位記」が授与される為、「学位記授与式」となる。但し、卒業証書と学位記を合わせて授与する「卒業証書・学位記授与式」と称する所もある。幼稚園・保育園では、「卒園式」と呼び、卒業証書のような体裁の「保育証書」が授与される。
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[編集] 日本における卒業式
日本の小学校、中学校、高等学校等においては、始業式、終業式、入学式、修了式などと並んで、特別活動の中の学校行事で、儀式的行事に分類される学習活動である。
通常、3月に実施される（早春の歳時記的なものにされるほどである）。高等学校では上旬、大学・短大では下旬が多い。小中学校では、従来は3月20日頃が多かったが、近年ではやや早まるケースもある。函館ラ・サール高等学校のように2月1日に実施するところもあるが、2月以前や4月以降に行われる例はほとんど見られないようである。
参考までにアメリカでは6月、韓国では2月が多い。これは学年年度（アメリカでは6月に1年度終了、9月から新学期）による違いである。
学習指導要領では、「その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする」と定められている。
学校によっては、この式において「学事報告」という、教育委員会（来賓として招待した教育委員会関係者）への業務報告を行う所もある。これは、1年間の職員の体制、各学年の入学・進級の実績などを報告するもので、公立小学校で行われる事が多い。」
[編集] 卒業式の形式
卒業証書授与がメインであるが、その前後に校歌やその学校独自の卒業時に歌う歌を歌う場、在校生送辞、卒業生答辞などが行われる。 卒業証書授与は校長（幼稚園・保育園なら園長、大学・短大なら学長・総長）によって行われる。校長の脇には教頭や卒業生の学年主任、（幼稚園・保育園などの場合）担任教員などの教員が付く。 授与の際、教員は卒業生にねぎらいの言葉を掛ける場合もある。但し、学年の規模や校風による。（2005年3月放映の「3年B組金八先生」（中学校）や、2004年放映の連続テレビ小説「天花」（保育園）など、ドラマではよく見られるが、一般的に実際に行われるかは不明）
[編集] 卒業式での卒業生の服装
制服制度のない場合、（校則の範囲内ではあるが）卒業生や出席する在校生の服装が自由であることはいうまでもない。しかし、多くの卒業生は親などの意向や、慣例の墨守として改まった服装を着用することが多い。 また、その服装文化には、「在校時のフォーマルな服装（昭和戦前期以前の日本、または欧米の伝統的な服装）」場合と、卒業後のフォーマルな（あるいは日常的に着用する）服装に近いものとの2つの文化があるが、後者に近い服装文化が優勢といえる。
[編集] 幼稚園・保育園
卒園児は、制服（園服）があれば制服を着用する。ない場合は通常の服装が多い。
[編集] 小学校
制服制度のある場合は、その制服を着用する。つまり小学校生活の最後まで、ボトムは男児は半ズボン（近年ではハーフパンツも多い）であり、女児は小学生らしいスカートである。
制服制度のない、あるいは体操服が制服同様とされている場合は、卒業生の服装は、「ブレザーなどのややフォーマルな服装」と「小学校卒業後に入学する中学校の制服」の2系統の文化がある。服装を区別する事により、関係者全員に「新しい学校へ進む」事を意識付けする、節目としての効果がある。
前者の場合、中学校入学後も着用することを想定したものが多い。そのため、ボトムは、半ズボン・ハーフパンツや女児らしいスカート・ズボンではなく、男児なら長ズボン、女児でも中学生的なスカートが多い。また和装の卒業生もみられる。
後者の場合、卒業式やその往復時の風景を見た時、見慣れない人はそれが小学校の行事か中学校の行事か判らなくなる様な雰囲気である。中学校の制服が一般的な（既製品のある）学生服・セーラー服などの場合、ボタンは既製品のままの場合と、その中学校のボタン・徽章などを事前に取り揃えてつける場合がある。なお、卒業生の進学先のほとんどが同じ中学校（つまり小学校の校区内の公立中学）なら卒業後の連帯感の象徴ともなるが、進学先の私立中学が名門であることを誇示するかのように着用する（あるいは親に着用させされる）卒業生もいる。
[編集] 中学校
ほとんどの中学校は制服制度があるので、それを着用する。なお、普段は体操着を着用する生徒（そういう校則がある場合と、生徒らが勝手に着用する場合がある）も、この時には制服を着用する。
[編集] 高等学校
制服制度がある場合それを着用する事はいうまでもない。一部の学校では、「白線流し」と称して制帽の白線とセーラー服のリボンを結んで川に流す例もある。 制服制度がない場合は、和装（男子は羽織袴、女子はいわゆる昔の女学生風の袴）・ビジネススーツ・ブレザーなどが多い。この意味で、後述する大学・短大の服装に似る。
[編集] 大学・短大
和装（男子は羽織袴、女子はいわゆる昔の女学生風の女袴）・ビジネススーツ・ブレザーなどを着るケースが多い。「ビジネススーツ」が特に多いが、卒業後堅気の職に就く事を誇示するような雰囲気でもある。角帽とガウンという「大学」を伝統的に象徴する服装の着用は、欧米や韓国などと違い、日本では一般的でない。なお、金沢のデザイン系大学のように、卒業生が仮装する大学もある。神道系の大学の場合は、神官装束、巫女装束の場合がある。
[編集] 卒業生の心理
教育機関に共通する意識として「生徒・教職員らや教育機関そのものとの別れを惜しむ気持ち」「卒業により在校故の特権・生活文化などを喪失することの残念さ」および卒業直前に入学試験等があった場合には「受験勉強等による疲労感や進学等が必ずしも本位ではなかったことなど」の負の気持ちと、「卒業後への希望（進学先など卒業直後のみならず成人後あるいは壮年期以降にまで及ぶ）」や「学校生活や教育を通じて多くのものを得た喜び」などの正の気持ちがある。メディアでの卒業式に関する報道（3月の歳時記的な報道）や、卒業時の学校行事としての公式な気持ちとしては正の気持ちが主に取り上げられる。
なお、幼稚園・保育園と大学以降を除き通常卒業式は10代に行われ、かつ幼稚園・保育園と小学校を除き青年期に卒業式があるため、卒業式は卒業生自身・世間ともに「青春」の1コマとして語られることが多い。
[編集] 幼稚園・保育園
自分が幼稚園・保育園を卒園しその教員らと別れる自覚がなく、無邪気に式の行事に関わる卒園児が多いとされる。また幼稚園の卒園による悲しみよりも小学校へ入学する期待感や楽しみのほうが園児にとっては大きいため小学校以降のように、卒園に際し涙を流す卒園児は普通見られない。これには、この時期において心理的に未発達であるほか、幼稚園・保育園（特に年長組）と小学校低学年の教育や生活文化が類似していることや、小学校入学後も「学童保育」で幼稚園・保育園と関わる場合があるためでもある。但し親は子供が成長した様子をみて感無量になってしまい涙を流してしまう事がある。
[編集] 小学校
小学校の時期が6年間と長いこと、小学校卒業が狭義の子供時代（児童期）の終了（児童文化・児童的なライフスタイルなどとの別れ）を意味することなどから、卒業生は小学校や小学生時代の別離への悲しみと、中学校以降の人生への希望を抱くものが多いとされる。卒業に際し涙を流す卒業生も多いとされる。
なお、卒業時の思いは、主に5・6年生時の生活に関するもので、特に課外活動に関するものが多いとされる。したがって、4年生以前はあまり回想されない（思春期に差し掛かっているので、あまりに子供っぽい時期は回想したくないのであろう）。ただし、これは卒業文集や卒業時の校内放送などで言われる公式の卒業生の思いであり、実際には小学校の全期間に関する思いを持つ場合も多いはずである。
小学校卒業時に中学校で（中学校以降に特有とされる）問題行動、つまり校内暴力・非行・引きこもりおよび中学校以降型のいじめなどが多発しているような情勢（地域・時代など）でも、その意識はあまり変わらない。主な進学先となる中学校であまりそうした問題行動が見られない場合は、特にそうである。
あるいは小学校と中学校での教育内容の違い、つまり科目名の変化（算数→数学、図画工作→美術など）・教科担任制・3年後に高校受験を控えていることなどへの不安感もあろうが、そのことはあまり表には現れない。
なお、これらは主に一般の中学校に進学する卒業生に関するものだが、中学受験を必要とする中学校に進学する卒業生はやや異なる思いをもっている。
[編集] 中学校
義務教育終了の時期であり、「小中学生」の時期の終了、また中学校入学以前以来の仲間との別離の時期でもある事から、小学校より卒業時の感慨は深いとされる。ほとんどの卒業生は高校に進学するため中等教育は続き（この意味で持続性も大きいはず）、また高校入試の疲れや高校受験が不本意な結果となるなど心理的に不安定・疲労感もあるはずだが、その感慨は少なくとも卒業式の日にはそれらを打ち消すほどである。また、中学校での仲間や教師との様々な生活の思い出は人生の中でも特に強烈な印象として鮮明に残ることが多く、それらを思い返して懐かしみ、親しんだ学校や仲間、教師との名残惜しさがよくあらわれる。なお、学校によっては、公立高校の入試より前に卒業式を行う所もあり、そのような所では受験前の不安と向き合う生徒もいる（特に北陸地方でその傾向が高い。これは入試時期の気象が考慮されているものと思われる）。なお、中高一貫校の場合は、感慨はそれほど大きくないとされる。
中学校の3年間は思春期など心身の変化を伴い、教師対生徒、あるいは生徒同士の摩擦が顕在化し始める時期でもある。生徒間のつながりだけを見ても、その団結が強い学年が出来る一方、特定の生徒による抑圧を伴う学年も出てくる。卒業において感極まる姿はどの年にも等しく映るが、そのときの生徒の心境は「学校生活への未練」「異なる進路による仲間との別れ」あるいは「特定生徒による抑圧からの解放」など、学年の特性によって異なる。
県外の高校を受験し見事合格し入学をする生徒にとっては、中学校までの友人との決定的分離がなされるが、寮生活・下宿生活の場合は長期休暇を利用して実家に帰省する期間が大学生や社会人と比較して圧倒的に長い為、旧友と再会するチャンスは大学進学後より多い。それでも長い期間の隔たりがある為、自然と交流がなくなるようである。
[編集] 高等学校
中等教育終了の時期であり、また「18歳未満」の時期の終了（これ以降は成人に準じたものとされる）、それ以前の仲間との決定的別離、さらには地方などの場合郷里との別離をする卒業生も少なくないことから、中学校以前以上にその感慨は大きいとされる。それが大学受験・就職などの疲労感や学習負担、進学・就職の不本意感を打ち消す事は中学校と同じである。その反面、卒業式の時期が大学受験（主に国公立大学の二次試験）などと重なる場合もあり、卒業生が全員揃わないこともある。その点では全員揃っての卒業式は中学校が最後という見方もある。
学校の校風や生徒による差も大きく、卒業後の生活への希望ばかりではなく、生徒によっては学校生活等での不安や不満を乗り越えた意味での「肩の荷が下りた」という思いが強い場合もある。生徒によっては、将来の進路より「高校までは卒業しておく」こと自体が入学目的の場合もあり、それを象徴するように、生徒指導で問題が多い生徒も、卒業が確定的になると教職員に対し謙虚になる事が多い。
[編集] 大学・短大・専門学校
この時点で「学業の終了」を迎える学生が多く、次の世界への喜びや希望が強くなる場合が多い。但し、最近では大学新規卒業者の雇用情勢も厳しい為、必ずしも大学を卒業したからといって進路が保障される訳ではないなど不安定な情勢であり、将来への不安を抱えたまま卒業する場合もある。
企業への就職が決まっている場合、卒業の前後に引越しを伴い、大学の所在地やその近隣地区に残らない限り、この時期の行動は非常に慌しくなる。また場合によっては卒業式より前に新人研修などが始まったり、式当日に就職試験を控える学生も登場してくる。よって高等学校同様に全員が揃うことは考えにくい。但し学生数の規模も初等・中等教育の頃とは比べ物にならないほど大きくなっていることは考慮する必要がある。
[編集] 大学院
[編集] 証書授与のスタイル
卒業式のメインである「卒業証書授与」では、学校ならびにその規模により、授与のスタイルが異なる。
- 全員が壇上で授与を受ける
- 予め決められたコースを壇上に向かって順番に進み、校長から授与を受ける。その際「5人前の者が証書を受け取ったら起立する」など、手順が細かく決められる。担任が司会の教務主任にかわって司会台にたち、順番に指名し返事をして起立をするパターンも多い。壇上での礼について、授与を受けた者とこれから授与を受ける者2名が並び、同時に校長に一礼するところもある。きわめて機械的な進行である。筒に丸めてリボンで止めた証書を、校長が卒業生に左手で渡しつつ右手で握手するアメリカ式（大学、士官学校での様子）を行なう学校もある。
- クラスの代表が壇上で授与を受ける
- 学級担任が出席番号順に氏名を読み上げ、呼ばれた生徒は返事をして起立する。最後に「代表者」が指名され、この代表者が壇上で、クラスの代表として人数分の卒業証書を授与される。この場合、前項のように「壇上で並んで礼」ではなく、代表者以外は自分の席で一礼する。クラスごとに「読み上げ」「授与」が行われる。
- 学科や学校の代表が壇上で授与を受ける
- 大学など人数が多いところでは、学科単位、あるいは学校全体の代表（総代表）に授与するスタイルが採用される。
- 学位を認定する学校の場合、卒業証書と学位記が授与されるが、それぞれ個別の証書とする学校と、1枚の「卒業証書・学位記」とする学校がある。
[編集] 卒業式に歌われる歌
幼稚園・保育園の卒園式では、「おもいでのアルバム」など、幼稚園・保育園生活を四季ごとに辿り、もうすぐ小学校1年生になるという内容の歌詞の歌が歌われる事が多いようである。
小学校以降では、国歌・校歌に加え、かつては「蛍の光」や「仰げば尊し」が広く歌われたが、近年では他の歌に変わる傾向が強く、「旅立ちの日に」などの、教師が作った歌がよく歌われるようになっている。学校によっては、教職員と児童生徒が交互に多数の歌を斉唱し、式次第（プログラム）において「卒業（式）の歌斉唱」と記す学校も見られた。
現在は、校長・来賓による祝辞や、生徒間での送辞・答辞、卒業に当たって実施される各種表彰などが中心となり、国歌・校歌以外の歌を多数採用する学校は少なくなっている。
下述するように国歌に関する問題が発生していることもあるが、学習指導要領に則り粛々と斉唱する学校が多いことは言うまでもない。
[編集] 卒業式における問題
[編集] 学生運動による卒業式中止
1968年、安田講堂での卒業式実力阻止を図った学生運動によって、東京大学の卒業式が中止になった。
[編集] 日章旗の掲揚や君が代の斉唱における問題
1990年代以降、卒業式（及び入学式）における日章旗の掲揚、君が代の斉唱について、その「強制」に反対する教師がいることに関連して、様々な問題が発生している。
卒業式ガイドラインのようなものを策定するなどして、各学校・校長へ指示・指導を行っている都道府県あるいは市区町村の教育委員会もある。ガイドラインとは、例えば以下のような内容のものである。
- 式場正面中央に日章旗を掲揚し、児童・生徒は日章旗に正対する。
- 式次第に「国歌斉唱」と明記する。
- 君が代の斉唱は教師のピアノ演奏で行い、一同起立し、日章旗に注目する。
- 警備要員を除く全教職員が参列する。
しかし、教職員や児童・生徒の中には、「『思想・信条の自由』に反し不服である」などとして、君が代斉唱時の起立を拒否したり、君が代を斉唱しなかったりする者もいる。教職員のこれらの意見や行動は、教育の場に混乱を招いており、教育委員会が前述のガイドラインを職務命令とし、これに反する教職員を訓告・戒告・減給等の処分にする例が年々増加している。
東京都では東京都教育委員会（都教委）が、都立高校の卒業式（入学式も）において、国旗を壇上向かって左側に掲げ、国歌斉唱の際は国旗に向かって起立し、ピアノ伴奏を伴って歌うこととしており、これに違反した者は職務上の責任を問われる（懲戒解雇など）としているが、これに対して反発する教職員もいる。違反を理由に処分された教職員らは、都は思想及び良心の自由（憲法19条）を侵しているとして、都教委を相手に処分の取り消しなどの裁判を起こしており、東京地裁において、原告の教師側が勝訴したこともある（詳しくは国旗及び国歌に関する法律を参照）。
これらの件に関連して、国旗及び国歌に関する法律（国旗国歌法・平成11年8月13日法律第127号）制定における答弁の中で、当時の小渕恵三首相は「教育現場に強制をするものではない」としているが、同じく当時の文部省の矢野重典・教育助成局長は、参議院国旗・国歌特別委員会で、学校での日章旗掲揚や君が代斉唱の指導について「教職員が国旗・国歌の指導に矛盾を感じ、思想・良心の自由を理由に指導を拒否することまでは保障されていない。公務員の身分を持つ以上、適切に執行する必要がある」と述べている。
なお、大学の卒業式では国立大学法人といえども国旗掲揚や国歌斉唱がなされない事が多い。
[編集] 歌手・ミュージシャンによるサプライズライブ
2000年以降、私立高等学校、大学の卒業式を中心に学校側から卒業生へのプレゼントとして有名ミュージシャンを招いてサプライズライブを行うというイベントが各地で起こり、「一生思い出に残る」と生徒達から好評を得ている。しかし、本来卒業生が主役であるべき卒業式で、ミュージシャンがそのお株を奪うような事をしていいのかと問題視する声もある。又、こうした企画自体が企業の協賛によって行われている場合もあり、さらにそうしたミュージシャンは大抵自分とは縁もゆかりもない学校でライブを行っている為、「本当に彼らは純粋に卒業を祝いたくて来ているのか？」と疑問視する声もあがっている。
