大東亜戦争
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「大東亜戦争」(だいとうあせんそう、Greater East Asia War )とは、1941年(昭和16年)12月8日の真珠湾攻撃に始まる対米英戦争を指し、現在では「太平洋戦争」と一般に言われる戦争のことである。1945年(昭和20年)8月15日の終戦の大詔(ポツダム宣言受諾)に至る戦争をいう。日本政府(内閣)の定める正式な呼称で、次項(呼称について)にあるように真珠湾攻撃を受けた同年12月12日の閣議決定によって、対中国戦を含めた呼称とされた。しかし、それ以前の段階において、中国大陸における軍事行動は「支那事変」が正式呼称である。
注意
目次 |
[編集] 呼称について
[編集] 日本政府の公式見解
2007年2月6日の閣議決定において、日本政府は、「太平洋戦争」という呼称について「政府として定義して用いている用語ではない」との政府見解を了承し、先の大戦について昭和16年12月12日の閣議決定による「大東亜戦争」が正式な呼称だとしている[1]。
[編集] 閣議決定
1941年(昭和16年)12月12日の閣議決定事項「今次の対米英戦争及今後情勢の推移に伴い生起することあるべき戦争は支那事変をも含め、大東亜戦争と呼称す」により「大東亜戦争」と定められた。これは大本営政府連絡会議において、陸軍案として出されたものである。海軍側は「太平洋戦争」を案としたが採用されなかった。なお、海軍部内においては引き続き敗戦まで「太平洋戦争」が使用された。さらに同日、情報局より「今次の対米英戦は、支那事変をも含め大東亜戦争と呼称す。大東亜戦争と呼称するは、大東亜新秩序建設を目的とする戦争なることを意味するものにして、戦争地域を主として大東亜のみに限定する意味にあらず。」と発表され聖戦と呼称した。
大東亜戦争と正式決定される前は、「対米英蘭戦争」と呼称していた。
「大東亜」とは「東南アジアを含む東アジア」という地理区分を指す。
ただし、これらの変移はあくまで公文書上のもので、口語レベルでは様々な呼称が存在し、併用されていた。
[編集] GHQによる禁止令
1945年8月の日本の敗戦後、GHQはこの呼称を公文書において使用することを禁止した。国会での大東亜戦争の定義に関する質問に対する政府答弁によれば、「昭和二十年十二月十五日付け連合国総司令部覚書以降、政府として公文書においてこの呼称を使用しなくなった。」とされている[2]。 この禁止令により、大東亜戦争は、先の戦争、あるいは「太平洋戦争」と呼称させられることとなった。このことはGHQの「戦争への罪悪感を日本人の心に植えつけるための宣伝計画」の一環として実行された。占領政策のひとつ『ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム』である[要出典]。
[編集] 戦後の法令
敗戦により、GHQから大東亜戦争という呼称を使用することを禁じられたため、戦後に制定された法令では一般的に太平洋戦争という呼称を用いている。例えば、「在外公館等借入金の確認に関する法律」(昭和24年6月1日法律第173号)第1条には、「この法律において「借入金」とは、太平洋戦争の終結に際して・・・」とあるのにはじまり、「沖縄県の区域内における位置境界不明地域内の各筆の土地の位置境界の明確化等に関する特別措置法」(昭和52年5月18日法律第40号)第2条では、「・・・沖縄県の区域内において、太平洋戦争による破壊又はアメリカ合衆国の軍隊の行為によつて・・・」とあり、更に「沖縄振興特別措置法」(平成14年3月31日法律第14号)に至っては、別表において、「・・・指定区間内の国道を構成する敷地である土地のうち太平洋戦争の開始の日から復帰協定の効力発生の日の前日までに築造された道の敷地・・・」というくだりが見られ、関係する政省令にも踏襲されている。しかし、現行法令上の定義として、太平洋戦争とは何を指すのかを規定する条文等は、詳らかではない。
その他、省令等については大東亜戦争の名称を戦後に今次の戦争と名称のみを改正した法令が存在する。
[編集] 連合国における呼称
英米等連合国においては、戦時中は第二次世界大戦太平洋戦線と呼称されるが、太平洋戦争という呼称も併用されていた。ゆえに、“太平洋戦争”という呼称が用いられるようになったのは、戦争終結後ではない。
[編集] 脚注
- ^ 「大東亜戦争の定義等に関する質問主意書」(2007年1月26日提出 第166回国会 質問第6号)
- ^ 「大東亜戦争の定義に関する質問主意書」(2006年11月30日 第165回国会 質問第197号)
[編集] 関連項目
- 大東亜共栄圏
- 太平洋戦争
- 日中戦争
- ハル・ノート
- ABCD包囲網
- 自衛戦争
- 東条英機
- インドネシア独立戦争
- 十五年戦争
- 東京裁判
- 八紘一宇
- 五族協和
- ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム
- ブロック経済