大気圏
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

大気圏(たいきけん)とは、巨大な物質を取り囲んでいる気体の層の総称。これら気体は、物質の重力によって引きつけられている。重力が十分で、かつ気体の温度が低ければ低いほど引きつける力は強くなる。
惑星には地球・金星・火星のように豊富な種類の気体によって囲まれ、非常に深い大気圏を持つ(木星型惑星参照のこと)ものもある。また、外惑星の衛星の中にもタイタン・エンケラドス(土星の月)・トリトン(海王星の月)のように大気圏を持つものもある。
また、太陽系の外側の木星型惑星にある木星・土星・天王星・海王星は、主に気体によって構成される。太陽系のうちこの他の惑星は、極めて薄い大気圏しか持たない。例えば、月(ナトリウムガス)・水星(ナトリウムガス)・エウロパ(酸素)・イオ(硫黄)である。矮惑星の一つである冥王星にも同じく気体成分が存在するが、気体として存在するのは太陽に接近した時のみで他の大部分の期間は固体となる。
地球の大気圏は、その全てが対流圏・成層圏・中間圏・熱圏から成る。なお、別の視点から命名したものとして電離圏・外気圏・オゾン層・磁気圏・プラズマ圏・ヴァン・アレン圏とするものもある。
大気圏の形成は一般的に、惑星の形成期と内部気体漏出後の、銀河内星雲の化学作用と温度に関連があると考えられている。大気圏は最初の発生から何度も変革を繰り返し、それぞれ多用な組成となって現在に至る。
表面重力(気体を押さえつける力)は、惑星の間で大きく異なる。たとえば、木星型惑星の内で最も最も大きな表面重力をもつ木星は、水素やヘリウムのように非常に軽く、表面重力が弱い惑星は保持することができないような気体も保持することができる。
このほか太陽からの距離も、気体分子を宇宙速度(気体分子が惑星の重力による捕捉を逃れる速度)を上回るまで熱する事ができるか否かを決定する要因である。従って、遠く離れ低温のタイタンやトリトン、そして冥王星はその重力が比較的小さいにもかかわらず大気を保持することができる。
気体はどんな温度であるにせよ、様々な速度で動き回る分子を持っているので、常に少量は宇宙空間に放出されている。同じ熱運動エネルギーを持っている場合、軽い分子は重い分子よりも速く移動するので、低分子の気体は高分子のそれより早い段階で失われる。
金星と火星はその大部分の水を、水が太陽の紫外線により水素と酸素に光解離されそのうち水素が宇宙に放出された段階で失ったと考えられている。この点地球の持つ磁場は、太陽風の水素の放出を補助する働きを妨げる。
大気の減少をもたらし得る要因には、表土や極冠への太陽風によって誘発されたスパッタリング現象、浸食、風化などがある。地球の大気の構成は、主にそれらの現象の副産物によって維持されているのである。
恒星間の惑星は、理論的には高濃度の大気を保持している可能性もある。
[編集] 重要性
惑星という観点から見ると、大気は地質学者が惑星が惑星の形態をなすまでの作用を考える上で重要なものである。
風は、ちりや粒子など、土地の起伏を浸食し堆積物を残す(風成システムとも呼ばれる)。霜や降水も、起伏に左右される。気候変動は、惑星の地史に影響を及ぼしうる。逆に言えば、地球の表面についての研究は、惑星の大気圏・気候の現在、過去両方の理解をもたらす。気象学者にとって、大気圏の構成は気候とその変化を決定するものであり、生物学者にとっては、大気圏の構成は生物の発現や進化と密接に関連しているものなのだ。