太陽系
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太陽系(たいようけい、solar system)とは、銀河系に多数存在する惑星系の一つ。太陽および太陽の周囲を公転する天体と微粒子、さらに太陽活動が環境を決定する主要因となる空間から構成される領域をいう。
太陽は、銀河系では典型的な質量の主系列星、すなわちありふれた星である。
太陽の周囲を公転する天体には、8個の惑星、数個のdwarf planet(日本語訳はまだ正式決定していないが「準惑星」となる見込み)、多数のSmall Solar System Bodies(SSSB, 「太陽系小天体」:訳語についてはdwarf planetに同じ)、惑星間塵がある。SSSBには小惑星(メインベルト天体)、Trans-Neptunian-Objects(TNOs, 「太陽系外縁天体」:訳語についてはdwarf planetに同じ。エッジワース・カイパーベルト天体を含む)、彗星などがある。惑星や準惑星、小惑星、TNOsには、その周囲を公転する衛星や環を持つものもある。
目次 |
[編集] 太陽系の位置・軌道
太陽は、約10万光年の直径を持ち約2000億個の恒星からなる銀河系という渦巻銀河(であろうと考えられている銀河)の中の一恒星であり、太陽系とは、太陽重力の影響によって構成される天体の集団のことであり、太陽はその中央に位置している。銀河系の中で太陽は典型的な恒星の一つであると考えられている。
太陽系は銀河系の中心から25,000~28,000光年ほどの位置にあると考えられている。太陽系は約220km/sの速度で銀河系内を周回しており、約2億2600万年で銀河系内を1公転する。
[編集] 太陽系の構成
[編集] 主要天体
名前 | 直径(km) | 質量(kg) | 軌道傾斜角 (度) |
離心率 | 軌道長半径 (AU)(1) |
公転周期 (年) |
自転周期 (日) |
衛星数 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
太陽 | 1,392,000 | 1.9891E+30 | - | - | - | - | 27.275(2) | - | |
1 | 水星 | 4,879.4 | 3.302E+23 | 7.004 | 0.20563069 | 0.38710 | 0.241 | 58.65 | 0 |
2 | 金星 | 12,103.6 | 4.869E+24 | 3.39471 | 0.00677323 | 0.72333 | 0.615 | 243.0187(3) | 0 |
3 | 地球 | 12,756.3 | 5.9742E+24 | 0.00005 | 0.01671022 | 1.00 | 1.000 | 0.997271 | 1 |
4 | 火星 | 6,794.4 | 6.4191E+23 | 1.85061 | 0.09341233 | 1.52366 | 1.881 | 1.02595 | 2 |
小惑星帯 | - | - | - | (1.8 ~ 4.2) | (2.41 ~ 8.61) | - | - | ||
5 | 木星 | 142,984 | 1.899E+27 | 1.30530 | 0.04839266 | 5.20336 | 11.86 | 0.4135 | 63 |
6 | 土星 | 120,536 | 5.688E+26 | 2.48446 | 0.05415060 | 9.53707 | 29.46 | 0.4264(2) | 56 |
7 | 天王星 | 51,118 | 8.6832E+25 | 0.774 | 0.0461 | 19.19138 | 84.01 | 0.7181(3) | 27 |
8 | 海王星 | 49,572 | 1.024E+26 | 1.76917 | 0.00858587 | 30.06896 | 164.79 | 0.6712 | 13 |
エッジワース・カイパーベルト | - | - | - | (30 ~ 50) | (160 ~ 350) | - | - |
- (1):1AU=149,597,870km
- (2):赤道での値
- (3):逆行
[編集] 惑星の数について
1930年に冥王星が発見されてからも、海王星の摂動を説明するには冥王星の質量が小さすぎる事(後に海王星自体の質量推定を間違えたための計算ミスであったと判明)から更に別の「惑星X」の存在が予想され、捜索が続けられていた。20世紀終盤からはエッジワース・カイパーベルトと呼ばれる領域で、かつて想定されていた惑星Xほどではないが比較的大きな天体が続々と発見されるようになり、冥王星もエッジワース・カイパーベルト天体の一つであるという認識が学界で定説となってきたことから、逆に冥王星を惑星から除外すべきだという提案もされたが、国際天文学連合は歴史的な重みを考慮して、1999年に「惑星の地位から格下げは行われない」ことを発表した。
21世紀に入ってから発見されたクワオワーやセドナなどは第10番惑星として報道された事もあるが、いずれも冥王星より小さかったり極端な楕円軌道だったりするため正式に惑星としては認められなかった。しかし2005年1月に至って、ついに冥王星より大きいエリス(仮符号:2003 UB313)が発見された。
2006年8月24日の国際天文学連合総会で、惑星の定義を確定することが議題となった。当初の定義案ではケレス、カロン、エリスが新たに惑星とされる可能性があったが、反対意見が多かったことから定義案が改定され、これが採択された結果として冥王星が惑星という分類からはずれることとなった(詳細は惑星、冥王星を参照)。
冥王星は、科学的に定まった惑星の定義を満たさないので惑星という分類項目には入らなくなったが、新分類項目のdwarf planet(準惑星)に含まれることとなった。
[編集] 準惑星(dwarf planet の訳語、仮称)
- 小惑星帯の準惑星
- ケレス(セレス)
- 太陽系外縁天体(Trans-Neptunian-Objects の訳語、仮称)の準惑星
[編集] 衛星
名前があるもののみ
- 惑星の衛星
- 地球の衛星
- 火星の衛星
- 木星の衛星
- イオ - エウロパ(ユーロパ) - ガニメデ - カリスト - アマルテア - ヒマリア - エララ - パシファエ - シノーペ - リシテア -
カルメ - アナンケ - レダ - テーベ - アドラステア - メティス - カリロエ - テミスト - メガクリテ - タイゲテ -
カルデネ - ハルパリケ - カリュケ - イオカステ - エリノメ - イソノエ - プラクシディケ - アウトノエ - スィオネ - ヘルミッペ -
アイトネ - エウリドメ - エウアンテ - エウポリエ - オーソシエ - スポンデ - カレ - パシテー - ヘゲモネ - ムネーメ -
アエーデ - テルクシノエ - アーケ - カリコレ - ヘリケ - カルポ - エウケラデ - キュレーネ
- イオ - エウロパ(ユーロパ) - ガニメデ - カリスト - アマルテア - ヒマリア - エララ - パシファエ - シノーペ - リシテア -
- 土星の衛星
- 天王星の衛星
- 海王星の衛星
- 準惑星(仮称)の衛星
[編集] 太陽系小天体(Small Solar System Bodies の訳語、仮称)
[編集] 太陽系の起源と進化
太陽系のすべての天体は、太陽の誕生とほぼ時を同じくして形成された。太陽はありふれた恒星であるので、観測と理論により解き明かされてきた恒星の誕生過程を、太陽系の起源に当てはめることができる。
天の川銀河には、水素を主成分とし、岩石質や有機質の微小な塵(ダスト)(星間塵)を含む星間ガスがある。このような星間ガスが103個/cm3(以下、単位は同じ)を超える数密度となる場合を星間雲といい、内部で水素分子が形成されるようになる。通常、星間雲はごくゆっくりと回転している。星間雲は均質ではなく、密度の偏りがある。この偏りが大きくなって数密度が1010個程度を超える部分ができることがあり、そうなると一酸化炭素、シアン化水素、アンモニアなどさまざまな分子が形成される。これを分子雲と呼ぶ。
分子雲に特に密度の高い領域ができると、それ自身の重力(自己重力)によってより濃密な分子雲となる。これを分子雲コアという。典型的な分子雲コアの質量は太陽質量の数倍である。星間雲は密度が低く、放射によって熱エネルギーを失うため、10~20K程度の極低温であるが、分子雲コアは密度上昇のため放射による熱エネルギーの散逸が抑えられ、温度がやや上昇して数10K程度となる。
何らかのゆらぎにより分子雲コアが収縮し始めると、ダストを含むガスが中心部に向かって落下する。分子雲コアの中心近くの物質は中心に集まって原始星となる。一方、分子雲コアは星間雲と同様に回転しているので、外側の物質は落下するにしたがって回転が速くなり、それ以上は速やかに落下できない限界に達する。ただし、回転軸方向には自由に落下できるので、結果として円盤状の高密度ガス雲ができる。原始星を取り巻くように形成されるこのようなガス雲を原始惑星系円盤という。太陽系の場合、特にこれを原始太陽系星雲(あるいは原始太陽系円盤)と呼ぶ。また、原始星を特に原始太陽という。なお、原始太陽系星雲という呼び方は、惑星形成が起こる領域を指す場合が多い。ここでもこの用法に従う。
原始太陽は、まだ熱核融合を始めていない。物質の落下に伴って重力エネルギーが解放されるのだが、これに由来する熱エネルギーを放射エネルギーとして放出して輝く。原始太陽には、原始太陽系円盤を通して物質が落ち込み続けるが、分子雲コアが一気に崩壊した時の勢いはなく、徐々に成長する。この頃の円盤内では対流が生じており、物質はかき回されている。温度は高いところで1000Kを優に超える。ダストの一部または全部がいったん揮発すると考えられる。
やがて原始太陽の成長が一段落し原始太陽系円盤が落ち着くと、温度も下がりダストが形成され、さらにガスとダストの分離が始まる。ダストは原始太陽の重力により円盤の赤道面に向かって沈降を始めるのに対して、ガスはそれ自身の圧力によって支えられているために厚みを保つためである。以下では、原始太陽系星雲という用語を用いる。
こうして、原始太陽系星雲は二層に分離すると考えられる。ガス円盤とその中にある厚みの薄いダスト円盤である。ダスト円盤はやがて自己重力によって不安定になり、一気に分裂する。分裂塊はひとまとまりになって質量1018~1020kg程度の微惑星となる。このような出来事が起きた時間は、地球軌道付近では1年程度と見積られている。微惑星の質量は、現在の小惑星や彗星の典型的な質量と調和的である。
微惑星はガス円盤中で原始太陽の周りを公転する。軌道は必ずしも円ではないので互いに衝突することがあるが、ガスの存在により相対速度が低く抑えられ、破壊されるより合体する傾向の方が強い。これを衝突合体というが、実質的には付着と言う方が近いであろう。このような衝突合体によって微惑星が成長することを集積という。数値シミュレーションによると、微惑星は全部が同等に成長するのではなく、少しでも他より大きくなったものが優位に立って、近い軌道の微惑星を取り込んでどんどん大きくなる。やがて、取り込むことができる周囲の微惑星がなくなると成長が止まる。このようにして、現在の小惑星帯よりも原始太陽に近い領域では、火星程度の質量の原始惑星が多数形成される。このような原始惑星は岩石質である。もっと遠い領域では、凝固点の高い物質が氷として存在し、岩石質のダストよりも総量で上回るので、微惑星も氷質となる。このような微惑星が集積してできる天体も、氷成分が卓越したものになる。小惑星帯よりも遠い領域では固体物質が多いために、集積した天体も大きく成長した。これを原始惑星コアと呼ぶ。
原始惑星や原始惑星コアの特徴は、周囲の星雲ガスをまとって大気ができることにある。 原始惑星コアは周囲の微惑星をなお取り込み、次第に成長する。時には原始惑星コア同士の衝突があったかもしれない。こうして地球質量の10倍程度まで成長すると、原始惑星コアの様相が一変する。原始惑星コアは、成長するにつれてまとう大気の量が増えていく。それがこの頃になると、大気をそれ自身の圧力で支えきれなくなり、大気そのものが惑星の材料として付け加わっていくようになるのである。周囲には星雲ガスが大量にあるため、これが次々に付け加わり、周囲のガスがすべて落ち込むまでこの過程が続く。こうして、木星や土星の原型となる原始惑星が形成されたと考えられている。木星と土星の質量が異なるのは、土星形成の後期に、何らかの理由で星雲ガスが消失し、材料となるガスそのものがなくなったためであり、天王星、海王星が小質量にとどまったのも、この2つの惑星は星雲終末期にガスの取り込みが始まったため、あまり成長できずに終わったためであると考えられている。
星雲ガスの消失については、その機構は不明である。原始太陽で熱核融合が始まり、強い紫外線でガス分子が分解され星風で飛ばされたため、あるいは星雲ガスが中心星(原始太陽)に落ち込んだためなどと言われている。どのような機構であれ、現在の太陽系の姿になるには、星雲ガスが消失する必要がある。
地球のような固体惑星がいつ形成されたかについては、星雲ガスがある時か、消失後か、議論の余地がある。ここでは、星雲ガス消失後に形成されたというシナリオを紹介する。星雲ガスがなくなると、ガス抵抗がなくなるため、原始惑星の軌道が乱れるとその乱れを抑えるものがなくなる。すると、原始惑星は互いの重力相互作用により接近し、軌道が乱されるようになる。微惑星同士の衝突があったように、原始惑星同士も衝突するようになる。星雲ガスがないので衝突は激しいものになり、破壊も合体もいずれも起こるようになる。巨大衝突である。このような衝突の繰り返しで、金星、地球が形成されたと考えられる。水星と火星は原始惑星の生き残りか、成長がわずかであったものであろう。地球の月は、地球形成末期に起きた巨大衝突の産物であるとする説(ジャイアント・インパクト説)が有力である。
小惑星帯では、木星の重力に天体が振り回され、衝突の相対速度が上がり、原始惑星があっても破壊されてしまったと考えられる。実際に、小惑星帯からやってくると考えられる隕石の中には、ある程度の大きさの天体にならなければ起こらない物質の分離が見られるものがある。
海王星以遠では、衝突合体によって微惑星が成長している途中で星雲ガスが失われ、相対速度を緩和するガスがなくなったため衝突速度が上がった。その結果、衝突合体が起こらず、惑星にまで成長するものがなかったと考えられている。これがエッジワース=カイパー・ベルト天体の起源である。
[編集] 系外惑星
太陽がありふれた星であることから、他の恒星の周囲にも惑星があることが期待されていた。近年、間接的手法により200を超える太陽系外の惑星(系外惑星)が発見されている。手法特有の観測限界によるところも大きいが、木星以上の質量の惑星が、太陽系では考えられないくらい恒星の近くを回っている例(ホット・ジュピター)や長楕円軌道を巡る例(エキセントリック・プラネット)が、多数発見されている。
[編集] 豆知識
[編集] 直径
- 太陽系一大きな天体 太陽 直径約139万km
- 太陽系一大きな惑星 木星 直径142984km
- 太陽系一小さな惑星 水星 直径4879km
- 太陽系一大きな衛星 ガニメデ 直径5262.4km
- 太陽系一大きな小惑星帯(メインベルト)の小惑星 ケレス 直径約950km
[編集] 太陽からの距離
- 太陽系一太陽から近い惑星 水星 約5800万km
- 太陽系一太陽から遠い惑星 海王星 平均軌道半径約45億km
- 太陽系一太陽から遠い天体 セドナ 近日点114億km(しかしながら、彗星には遠日点ならばこれより遠いものも多い。例えばNEAT彗星(C/2001 Q4)は遠日点は約7.8兆km離れたところにある)
- 太陽系一太陽から遠い位置に位置する人工物 ボイジャー1号 149億5980万km(2006年8月現在)
[編集] 重力
[編集] 自転・公転周期
- 太陽系一自転周期の短い惑星 木星 9時間55.5分
- 太陽系一自転周期の長い惑星 金星 243.0187日(逆まわり)
- 太陽系一公転周期の短い惑星 水星 87日23.3時間
- 太陽系一公転周期の長い惑星 海王星 164年288日13時間
[編集] 平均軌道速度
[編集] 時間の長さ
- 太陽系一「1年」の長さが「1日(太陽日)」と比較して短い惑星 水星 1日=地球の176日、1年=地球の88日
- 太陽系一「1年」の長さが「1日(太陽日)」と比較して長い惑星 海王星 1日=地球の16時間、1年=地球の164年288日
[編集] 平均密度
[編集] 衛星
[編集] 峡谷・山
[編集] 関連項目
- ケプラーの法則
- 天文単位
- 架空の惑星:バルカン - 反地球(ヤハウェ、クラリオン、ゴル等) - 惑星X - 惑星O - テミス
- コーディレフスキー雲
- 美少女戦士セーラームーン(主要な登場人物の名が太陽系に由来する漫画)
- 占星術・西洋占星術
[編集] 外部リンク
- NASA's Solar System Exploration site
- Solar System Simulator(NASA)
- [1] 天人フリーな3Dリアルタイムスペースシミュレーション
- ザ・ナインプラネッツ日本語版 (非営利のみ再配付可能)
- ススムくんの太陽系探検隊
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