実践倫理宏正会
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実践倫理宏正会(じっせんりんりこうせいかい)は、1946年5月3日に創立した社団法人である。一般的には、朝起会(あさおきかい)の名称で知られている。
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[編集] データ
名 称:社団法人 実践倫理宏正会
設 立:1953年(昭和28年)4月1日(社団法人許可)
創 立:1946年(昭和21年)5月3日
本 部:〒102-0073 東京都千代田区九段北1-14-1[1]
代表者:会長 上廣榮治(創設者・初代会長上廣哲彦の長男)
電 話:03-3264-8211(代)
会員数:約250万人(詳細は不明。一説には約400万人)
[編集] 概要
精神修養団体の中では最大の勢力を誇る団体であり、会員数は主婦層を中心に一説には400万人と言われているが、創立55周年式典のマスコミ報道では250万人とあり、詳細は不明(会員が知人等を自費で入会させている場合もある様子)。大規模な組織には珍しく、マスメディアの利用・公式ホームページなどの不特定多数を対象にした大規模な広報を実施せず、広報活動は専ら月刊誌(倫風)の発刊(会員による普及活動)のみとなっている[2]。
主な活動内容は、生活倫理の実践と朝型の生活リズムを奨励するためとして、毎日午前5時から6時まで[3]日本各地にある会場で朝起会(あさおきかい)と呼ばれる集会を開いている。そこでは「朝の誓」を全員で唱和し、その後、会員各自の活動状況や生活倫理を実践した過程・成果と新たな決意を発表する「演談」が行われる。また日中には各地域の家を一軒一軒訪問[4]し「頒布(普及活動)」を行う。これら普及活動はほぼ全国に亘って行われ、この会の通称である『朝起会』を名乗って行われるのが通例となっている[5]。
[編集] 政党との関係
会として公式に自由民主党の支持を表明してはいないが、国会議員や自治体首長・議員等の政治家で会の賛同者には自由民主党系(保守系無所属含む)、特に清和会(森派)が多数を占め、全国各地で開催する講演会や各支部の朝起会等へ出席することがある。また、5年毎に日本武道館で開催される会創立の周年記念式典には、過去に来賓として首相、大臣ほか多数の政治家・財界関係者が招待(出席)されている。
選挙時の繋がりは自由民主党の公認・推薦者を推薦する場合が多いが、政党に拘らず基本的に人物本位(会に対する理解度)で行われ、民主党はじめ他党候補者の推薦も一部に見られる。この点では「創価学会-公明党」はもとより、いわゆる利益誘導団体と支持政党ほどの繋がりは存在しない様子である。
[編集] 起 源
当会は1945年に広島市国鉄横川駅構内で原子爆弾に被爆した初代会長の上廣哲彦(1906~1972)が、翌1946年に石川県小松市の小松天満宮で「朝起会」活動を開始したのが発祥であるとされている(小松天満宮境内に「朝起発祥之地」の石碑がある)。ただ、上廣哲彦自身は丸山敏雄が主宰している「倫理研究所」で活動していた経験があり[6]、発足間もない両者(丸山敏雄と上廣哲彦)が互いに同じ目標(倫理性の復興)を目指している事から双方の活動が緒に着くまでは協力し合っていた節もある。宏正会側の見解では、初めから「朝起会」を主体とした活動(生活倫理実践会=後の「宏正会」)を上廣哲彦自ら主催するつもりであったとしているが、倫研側としては上廣哲彦のこの行動を丸山敏雄に対する裏切り行為と捉えている面もあって、双方の主張は噛み合っていない。
なお、実践倫理宏正会の「社団法人」設立許可日は1953年(昭和28年)4月1日で、文部科学省生涯学習政策局所管の社会教育団体であり、会は宗教的な教義を行っていないとしているが、一部の宗教学者には、これを戦後の新宗教として分類しているものもある。
[編集] 活動内容
毎日の午前5時から6時までの早朝集会(朝起会)が最も基本的な活動であり、会が発行する月刊誌「倫風」・パンフレット「愛和」等を持参して、各家庭を訪問する「頒布」と呼ばれる普及活動も盛んに行われている。
具体的な活動目的・内容や、会の詳細は「頒布」に来た会員から説明を受けるか、同様に会員が主催する座談会(月に数回開催)をはじめとする行事(活動)へ参加する必要があり、マスメディアを使用した広報活動や公式ホームページの開設などは行われていない。
また、会の薦める子育て法「捨て育て」が、その語感から一部にネグレクト(育児放棄)であるとの批判もあるが、会はこれを誤解であるとし、正しい「捨て育て」はネグレクトではないと説明している[7]。
[編集] スローガン
通常、国旗(日の丸)と共に「朝起会」の会場正面(演壇の背後)、講演会等の壇上背後に垂れ幕として以下のスローガンが掲げられている。
- 朝起きは、お国を興す第一歩
- 子供の善導は親の倫理実践から
「朝起きは…」のスローガンは、戦後復興の第一歩は「朝起会」から始まる日々が重要であるとの初代会長の思想を表したものであり、第二次大戦の傷跡が癒えた後は、倫理的に退廃した民心を復興するとの意図が示されている。「子供の…」には、初代会長が青少年の健全育成を最も重要な役割に据えてこの会を発足した、との認識が示されたものである。
[編集] 朝の誓
5つの項目があり、初代会長上廣哲彦が会の根本理念を示したもの。
- 今日一日 三つの恩[8]を忘れず 喜んで進んではたらきます
- 今日一日 人の悪をいわず 己の善を語りません
- 今日一日 気付いたことは 身がるに直ぐ行います
- 今日一日 腹を立てず 不足の思いをいたしません
- 今日一日 三つの無駄[9]を排し 新しく大地に生き貫きます
日本古来から伝わる生活思想、いわゆる「徳目」に属した事柄であり、事改めて珍しいものはないが、これを毎日「朝起会」で唱和し、「今日一日」新たな心で決意し、誓いを実践する事が重要とされている。
[編集] 朝起会
朝起会は通常、午前5時~6時の1時間を開催時間としている。全国に800程の公認「朝起会場」があり、47都道府県全てに分布している。開会時に上記の「朝の誓」を参加者全員で唱和し、会長が著した本の一部で学びあい、その後、会友相互(有志)が実践の結果と今日一日の決意(倫理実践の誓い)を発表しあう場としている。類似するものとして倫理研究所が主催する「おはよう倫理塾」がある。
開催日は年中無休で、毎朝必ず行われている。正月元旦には「元朝式」と称した特別な朝起会が行われる。 「元朝式」には各会場の代表者によって、会長の「年頭の辞」が代読される。
会場規模に応じて「支部」「支舎」「分所」「会場」の4区分があり、公認会場となる前(準備)段階の「準備会場」などもある。
[編集] 参考文献
- 上廣榮治 「倫理がひらく君たちの未来」
[編集] 註
- ^ 本部ビルは靖国神社のすぐ近くで、築土神社と隣り合わせで建っている
- ^ なお、東京メトロ東西線九段下駅のホームには、建物写真と会名・キャッチコピーのみを簡単に記載した広告を掲出し、日本武道館内にも簡単な内容を記した広告を出している
- ^ 熱心な会員は午前4時過ぎに行き、みそぎという会場の掃除、設営を行う
- ^ 朝は9:30頃、昼は13:30頃から
- ^ 中には『育児に関する講演があります』など、会名等を名乗らずに曖昧な勧誘を行うとの指摘もある
- ^ 後に講演等で語った内容にはその辺の経緯にも触れられたものがあり、1950年に倫研から独立したという説もある
- ^ 会員の中に「捨て育て」が誤解・曲解されて行われた事例がある、との指摘もある
- ^ 親の恩・師の恩・社会の恩
- ^ 物の無駄・時の無駄・心の無駄
[編集] 外部リンク
- 実践倫理宏正会って何? (会員主催のブログ。実践倫理の基本事項について記述)
- 倫理研究所 創立者紹介 (上広哲彦と倫理研究所との関係について記述)