市場化テスト
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市場化テスト(しじょうかてすと)とは、小さな政府論の下、公的サービスを民間に移譲するにつき、期待された成果を上げるかどうか試すため行われる官民競争入札制度のことを言う。2006年5月26日に成立した『競争の導入による公共サービスの改革に関する法律』に基づく。 市場化テスト制度のモデルはアメリカ、イギリスなどである。 小泉内閣の構造改革の中で打ち出した施策の一つとして採用した。
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[編集] 概要
「民でできるものは民へ」の基本姿勢の具体化や公共サービスの質の維持向上・経費節減等を図る方法で、官の世界に競争原理を導入し、官における仕事の流れや公共サービス提供のあり方を変える取り組みである。この背景には、民間にできることを行政が独占しているとの批判や、財政赤字が膨らむ中で公的サービスをもっと効率化すべきである、といった議論があった。
市場化テストを導入するためには、
- その行政サービスが本当に必要か
- 仮に民間が落札した場合、弊害が出ないかどうか
を熟慮した上で入札にかけるかを決めなければならない。
[編集] 目的
目的はまず、行政の効率化である。「小さくて効率的な政府」をスローガンに、三位一体の改革と並んだ、共通の目的である。次に、競争入札形式にすることで、現行の行政サービスをよりよいものにするだけでなく、民間の持つマーケティング力を活かして国民(市民)のニーズにあったサービスを提供するのである。また、民間に事業を開放することで新たな事業分野が創出されることも、目的のひとつである。さらに、官の側も入札に参加することで意識改革が期待できる。あるいは、今まで不透明だった行政サービスの内容やコスト構造を透明化することも、目的のひとつである。
[編集] 入札実施の手法・過程
- 基本方針を決定する。
- 市場化テストにかける対象を特定する。その際、規制が存在する場合には規制緩和をするか、地方自治体の業務の場合には特区扱いにできるかを検討する。
- 行政内部での体制構築と入札準備の段階に入る。
- 業務実施部門と入札企画部門を分離したり、プロセス全体を監視する第三者機関を準備する。
- 情報開示を進め、求められるサービスの質や内容に関して定義する。
- 競争条件を整えたり、民間が落札した場合の業務移管方法や公務員の処遇について決定する。
[編集] 効果および弊害
市場化テストはコスト削減だけでなく、人材の有効活用や公務員の意識改革が図れるとされている。さらに、公園などの管理・運営では利用者に適切な費用負担を求めることでフリーライドの防止が期待されている。しかし水道等のインフラ事業の場合、低所得者が料金を払えず利用できない、管理がおろそかになり設備が荒廃する等の弊害が発生しており、上水道事業においては世界的に問題となっている。小さな政府論そのものが世界中で破綻を来していることから、その実効性には強い疑問があるという意見がある。しかしながら一般に既得権益を失う側が主体となってなんらかの評価がなされる場合には慎重な判断が必要となろう。
[編集] 対象業務
- ハローワーク関連事業(「人材銀行」事業、「キャリア交流プラザ」事業、求人開拓事業)…32条で職業安定法の特例を措置
- 国民年金保険料収納事業…33条で国民年金法等の特例を措置
- 統計調査関連の業務(指定統計調査、独立行政法人統計センター)
- 登記関連事業(証明事業)
- 雇用・能力開発機構の業務(アビリティガーデン、私のしごと館)
[編集] 既に特例を設けたもの
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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