指定管理者制度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
指定管理者制度(していかんりしゃせいど)とは、それまで地方公共団体やその外郭団体に限定していた公の施設の管理を、株式会社をはじめとした民間法人にもさせることができるという制度。地方自治法の一部改正で2003年6月13日公布、同年9月2日に施行された。小泉内閣発足後の我が国において急速に進行した、「公営組織の法人化・民営化」の一環とみなすことができる。
目次 |
[編集] 手続き
プロポーザル方式などで管理者を選定し、施設を所有する地方公共団体の議会の決議を経て管理者の指定(=管理運営の委任)をすることができる。管理者は民間の手法を用いて、弾力性や柔軟性のある施設の運営を行なうことが可能となる。また、その施設において利用料金制により利用者に施設を利用させる場合は、利用者から得られる収入を自治体との協定の範囲内で管理者の収入とすることができる。
[編集] 意義と問題点
[編集] 意義
一般的には、以下の意義があるとされる。
- 利用時間の延長など施設運営面でのサービス向上で利用者の利便性の向上
- 管理運営経費の削減によって施設を所有する地方公共団体の負担の軽減
[編集] 問題点
一般に指摘されている問題点には以下のものがある。
- 適切な指定管理先が見当たらないという理由で、従来から管理委託等してきた外郭団体等に委ねる事例がみられる。
- 行政改革の面に過剰に着目されることがある。制度導入の狙いが運営費削減にあることから、制度導入以前からその施設に勤務している職員(つまり公務員)だけでなく一般の利用者からも、「行政と直接結びつかない施設及び職員の切り捨てである」という意見も見られる。
- 管理者の「弾力性や柔軟性のある施設の運営」の名のもとに、公共施設として不適切かつ問題のある例が見られる。以下のような事例である。
[編集] 運用上の留意点
指定管理者制度は、施設の管理運営全般を管理者に委ねているために「公の施設が民営化される」という見方をされることが多い。しかし、税金で設置された施設が管理者によって私物化されるのを防ぐという観点からも、
- 定期的な収支報告会・運営協力会議などを設ける
- 利用者であり本来の所有者でもある市民のチェック制度をきちんと機能させる
- サービス向上と改善のための情報収集を指定管理者が行う
- 管理を委託した地方公共団体による監査
などを条例や協定書、団体募集要項及び仕様書などに盛り込んでいくことが必要となる。
また、移行期には、公務員として制度導入以前から勤務していた職員と、制度導入以降に管理者が独自に採用した職員とが混在することが多くなる。当該職員らに対する給与・勤務体系だけでなく、人事異動も含めた身分の扱いなどが問題となる。
[編集] 適用
現在、地方公共団体の所有する施設のうち、下記の施設を中心に制度の導入が図られている。管理者の指定は地域の公益法人やNPOなどが多いが、民間のビルメンテナンス会社などの指定もある。
ただし、施設の運営に関して設置者が自治体である事等を求める法律(「個別法」という。)がある施設や、複数の住民がサービスを享受しない学校や給食センターなどはこの制度から除外されたり、複数ある同種施設の業務の一部のみを「指定管理者が行う業務」として委任することがある。一般的には、以下の施設がこれに当たる。