感電
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感電(かんでん)とは、電気回路、電気製品の誤った使用や、漏電、落雷などの要因によって人体に電流が流れ、傷害を受けることである。人体は電気抵抗が低く、特に水に濡れている場合は電流が流れやすいため危険性が高い。軽度の場合は一時的な痛みやしびれなどの症状で済むこともあるが、重度の場合は死亡に至ることも多い。
一般に、感電は閉回路が形成された場合に起こる。1本の送電線だけに止まっているスズメは閉回路を作らないため感電しないが、大型の鳥類が複数の送電線に同時に接触すると感電することがある。
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[編集] 危険性による分類
- 電圧としては、一般に数10V以上が人体に影響を与える。このような電圧は商用電源から得られる他、低い電源電圧から高電圧を生成する電子回路や、特殊用途に使われる高電圧の積層電池も発生源となりうる。高電圧では直接接触が無くても、放電により感電を引き起こすことがある。また、電源回路からの接続が切り離されていても、コンデンサに充電された電荷が原因となり感電することがある。
- 電流としては、1mAが人体に感ずる最小の電流で、それ以上では筋肉の随意運動が不能となる。電流による発熱量が多い場合には、それによる組織の損傷も生ずる。人体の器官のうち心臓は特に電流に敏感であり、小電流(50mA程度)でも心臓に電流が流れると心室細動、心停止を起こし致死的になることがある。感電による死亡事故は、心臓に近い左手から電流が流れることが多いとする報告もある。
- 周波数としては、40-150Hzが最も有害とされ、直流や高周波(特に50,000Hz以上)は影響が少ない。ただし放送局のアンテナなどでは、大電力の高周波により感電に至る場合がある。この場合死ぬ事は少ないが失明や火傷を蒙る事がある。
また、危険性は通電時間によっても異なる。低電圧でも長時間の通電により感電することがある一方、高電圧の場合、無条件反射によって筋肉が瞬間的に収縮し、人体が跳ね飛ばされることによって稀に大事故を免れる事例がある。
[編集] 身体に与える影響
感電が身体に与える影響として次が挙げられる。
高周波電流は人体に与える危険が少ないため、人体に微弱な高周波電流を意図的に流し、刺激を与えて疲労回復などを図るマッサージ機器、電気風呂などに応用されている。また、スタンガンなど人為的に電気ショックを与える装置にも用いられる。ただし、電磁波による障害と同様に、長期間の暴露に対する危険性は解明されていない点が多い。
[編集] 対策
- 機器にアース、漏電遮断器を取り付ける。絶縁物の劣化などによる絶縁抵抗の低下に注意する。
- 濡れた手で機器を操作しない。機器は湿った所を避けて設置する。
- 幼児がコンセントに金属製品を差し込むいたずらを行い、感電することがあるので、金属製品を幼児の手の届く所に置かない。また、コンセントに感電防止用のカバーを取り付ける。
- 機器の操作や保守点検の場合は、必要に応じ、靴、手袋などで絶縁する。
- 内部で高電圧を発生させている電子機器(テレビ、ストロボなど)をむやみに分解しない。やむを得ず分解する際には、電源の接続を切り離して十分に時間をおき、コンデンサの電荷を放電させてから作業する。
- 電力回路の配線や器具の設置は専門家に任せる。
- 切れた送電線には触れず、最寄りの電力会社に連絡する。
- 送電線に凧などが絡まったら、自分で取ろうとせず、電力会社に連絡する。
感電している者を救護する際には、救護者が二次被害に巻き込まれないよう、絶縁を確保することが重要である。また、手で掴んで動かそうとすると、自分も感電して筋肉が硬直し外せなくなることがあるので、できることなら底がゴムの靴で蹴りを入れて動かすとよい。
[編集] 静電気による感電
特に空気が乾燥している条件では、電源からの電荷の供給が無くても、摩擦電気の蓄電による静電気が人体に対して放電し、電気ショックを感じることがある。これも非常に弱い感電の一種である。静電気は電気量が少ないため、大容量のライデン瓶、バンデグラフ起電機など特別な場合を除いては人体への危険はほとんど無い。
自動車のボディーへの接触、衣類を脱ぐ時などが、静電気による感電の代表的な例で、放電音や閃光を発することが多い。電気ショックを防ぐには、
- 水分を与える、湿度を高くする
- 自動車のボディーなどは、感覚が敏感な指先ではなく、手の甲などから触れる
- 金属製品などを身に付け、人体に感じない放電経路を設ける
などの方法が考えられる。